2025.03.17

「ゴジラ オリジナル・サウンドトラック」伊福部昭

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聴いてみた、映画のサウンドトラック・アルバム。2014年発表。

日本の作曲家「伊福部昭」が手掛けた、「ゴジラ」(1954年公開)の映画音楽。本アルバムはその際に使用された楽曲を、全て集めるというコンセプトのもので、公開当時にはそうした形態ではリリースされていなかった。…伊福部昭生誕100年、ゴジラ誕生60周年の記念企画として、アナログレコードが発売された。

で昨年が伊福部昭生誕110年ゴジラ誕生70周年で、同アルバムがCDでリイシューされるついでにレコードの方も再発された。今回購入したのもその再発レコード、元のは「完全初回プレス限定盤」と謳っていた筈だが…まあいいか。

内容の方はお馴染みの楽曲がまとめて聴けるので、よいものなのに決まっている。ただモノラル録音なのに加えて、音源にほぼ手を加える事なくそのままお出ししたそうなので、何というか音楽と言うより記録音源みたいな感覚がある。…とは言え「平和への祈り」等は、やはりレコードで聴くと格別の味わいがあるな。
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2025.03.16

「Nordheim」CIKADA DUO

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聴いてみた、ノルウェーの現代音楽作曲家。2007年発表。

「アルネ・ノールヘイム」は1931年に誕生し、オスロ音楽院でオルガンそして作曲を学んだ。後にコペンハーゲンやパリで、電子音楽への道へと進む事となる。同国を代表する現代作曲家として知られるようになるも、2010年に逝去。

本作は彼の電子音楽作品「Electric」(1974年)を、Kenneth Karlsson(per)とBjørn Rabben(syn)の「シカダ・デュオ」が演奏したもの。そちらにエレクトロニクスや女性ソプラノを加え、Nordheimの世界をモダンに再現している。

まあ自分はNordheimを聴くのは初めてなので、比較した訳でもないが。感じとしては声楽が多めでその印象が強い。現代声楽曲は、すぐOpus Avantraと挙げたくなる辺り、例えの幅が狭くてお恥ずかしい。でもギリシャの詩人アルキロコスを歌詞に採り入れているそうで、意外と近いかも。演奏の方は2001年の、スターゲート場面で流れる曲みたいな印象があったり。…その例えもどうだろう。
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2025.02.28

「Accordion & voice」PAULINE OLIVEROS

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聴いてみた、アメリカの現代音楽作曲家。1982年発表。

「ポーリン・オリヴェロス」は1932年、テキサス州ヒューストンで誕生。大学等で音楽を学んだ後に、第二次世界大戦後の米国における電子音楽の中心人物となる。自身の音楽性を「ソニック・メディテーション」と称しており、瞑想的な響きを持った持続音によるドローン・ミュージックを中心に制作した。2016年没。

本作もそうしたドローン音楽の一つだが、演奏に用いられているのは機械ではなく、「アコーディオン」と彼女自身の「声」によるもの。…Tr1は一片のメロディーすら無い曲だが、Tr2の方には多少音階らしきものも採り入れられている。

という説明をしてしまうと如何にも難解そうだけど…電子機器の発する音ではなくアコーディオンと声という耳に馴染んだ、肉体的・有機的な音響なので、意外に結構気持ちよく聴ける筈。灰野敬二によるハーディガーディでの演奏曲の感じに近いかな。でもジャケットの自然風景と、一体化した空気も感じてみたい。
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2025.02.27

「Below the salt」STEELEYE SPAN

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聴いてみた、イギリスのフォーク/ロック・バンド。1972年発表。

3rdアルバムの発表後、創設メンバーのAshley Hutchingsが脱退し、Maddy Prior(vo.)、Tim Hart(g他)を中心に再編された「スティーライ・スパン」。本作4thアルバム以降ロック色を強めて、現在まで続く活動の礎となった。

元々はFairport Conventionを脱退したHutchingsの意向により、(基本的にはドラムスを導入しない)硬派な伝統曲のフォーク演奏を行って来た当グループ。本作でも全曲トラッドを採り上げているものの、ヒット曲「Gaudete」も輩出した事もあって、よりダイナミックでポピュラリティあるスタイルを強めている。

まあ当グループは初期3枚の評価が高い、という認識で間違いないと思うが(筆者が先にYBO2のカバーで知った、Boys of Bedlamも2ndに収録)本作も…と言うか、本作以降もスティーライは全部いい。殆ど全ての作品に参加しているPriorの歌声が素晴らしいので、多少演奏の方が変わっても魅力は不変だな。

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2025.02.26

「The 5000 spirits or the layers of the onion」THE INCREDIBLE STRING BAND

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聴いてみた、スコットランドのサイケ/アシッドフォーク・バンド。1967年発表。

1966年に1stアルバムの発表をしたものの、一旦は解散した「ザ・インクレディブル・ストリング・バンド」。その後、Robin Williamson(g,p他)とMike Heron(vo他)のデュオとして再結成され、翌年リリースした2ndアルバムが本作。

前作での主に伝統的なフォーク音楽から、サイケデリック・フォークやアシッド・フォークへと音楽性を発展。同時代的なヒッピームーブメントとも呼応して、アメリカでも高く評価された。…当時流行っていたシタール等を採り入れており、英国のフォークという感覚で聴いていると、余りのスモーキーさにむせてしまう。

無国籍フォーク…と言うよりは、移動民族的な自由さと横断性が感じられるのではないかな。Paul McCartneyやDavid Bowieからも、高く評価されたそうだが…本作のサイケサイケしたジャケットを手掛けた「ザ・フール」という集団は、アップルブティックの建物にも壁画を描いたりしたそう。成程、当時っぽいねえ。

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2025.02.24

愛人ジュリエット

観てみた。G・フィリップ主演、マルセル・カルネ監督映画。1951年公開。

刑務所に囚人として収監されたミッシェルは、夢の世界へ旅立つ。彼がたどり着いたのは山の中腹にある小さな村で、そこの住人は皆記憶を失っていた。ミッシェルはそこで現実世界で恋人だった、ジュリエットの姿を求めて訪ね歩く。ジュリエットもまた記憶を失い、しかも青髭という男の虜となってしまい…という内容。

一応夢の話となってはいるけど、仙境・桃源郷に迷い込むといった類の異界譚。ファンタジーと呼んでもいいけど「美女と野獣」等の、上級生向け童話に近い。本作では「忘却」というのをどう捉えるかで、解釈が変わりそうだが…(最後に行くのが現実でなくそっちという事は)理想郷的なものと見ていいんじゃないか。

正直なところ「現実を忘れる=幸福」と言われたら、その方が納得しやすいもんなあ。…日本でなら泉鏡花的な幽玄物語か、あっけらかんななろう展開にでもなりそうだけど、本作における「逃避」の感覚は現実への心残りと痛みが伴う。
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2025.02.22

しのび逢い / ムッシュ・リポアの恋愛修行(公開時タイトル:しのび逢い)

観てみた。G・フィリップ主演、ルネ・クレマン監督映画。1954年公開。

資産家の妻を持ちながらも恋多き男、アンドレ・リポワ。彼は妻・キャサリンの不在中、彼女の友人であるパトリシアを自宅に招く。これまでの人生をプレイボーイとして生きて来たリポワは、パトリシアを物にするべく過去の女性遍歴を語って聞かせる。教養も金も何も無い彼が、ロンドンで送った生活とは…という内容。

公開時にはフランス映画らしい、しっとりとした邦題が付けられたけれど、内容を踏まえてしまうといかにも不似合いなので…日本再公開の際に、上記の副題が付けられた模様。と言うのも頭カラッポの見掛けだけいい色男が、しまいにゃホームレスにまで堕ち、無茶苦茶なカサノバ生活を送るというコメディなので。

ただ人々との交流の並列構成と、主人公の独白で内面を語る趣向が、「田舎司祭の日記」にちょっと近い。要はいわゆる「ビルドゥングスロマン」(小説じゃないけど)と同種の作品。まああれで、主人公が成長できたかどうかは疑問だが。
posted by ぬきやまがいせい at 23:17 | Comment(0) | TrackBack(0) | 映画

2025.02.21

田舎司祭の日記

観てみた。ロベール・ブレッソン脚本、監督映画。1950年公開。

アンブリクールという田舎の村に赴任して来た、若き「司祭」。彼は村人との交流で起きた出来事や、胃痛に悩まされる自身の健康状態等について、日々「日記」を付ける。だが伯爵家庭での夫人やその娘との交流をはじめ、人々からの視線は厳しかった。結局彼は医者から、末期の胃癌と診断され…という内容。

ブレッソン監督らしく、宗教を題材にした作品。しかも「バルタザールどこへ行く」でのロバみたいに、寓意的手法も採ってはいないので…多分本作で語られるのは、若き司祭が受ける受難と試練という、観たそのままなんじゃないかな。

無理に普遍的な見方をすると、田舎とのディスコミュニケーションで…余所者がアメリカのテキサス辺りで地元民から迫害?され、結局死んでしまうという、ちょっとH・G・ルイスのホラーみたいな話になる。流石に無理があるけれど、まあ信仰心の是非云々は仲々理解が難しいので、そういう風に曲解してみました。
posted by ぬきやまがいせい at 23:27 | Comment(0) | TrackBack(0) | 映画

2025.02.19

はなればなれに

観てみた。ジャン=リュック・ゴダール脚本、監督映画。1964年公開。

フランツとアルチュールは、英語学校でオディルという娘と出逢い、2人ともが恋に落ちてしまった。彼女の話では同居している叔母の家には、大金が隠されているという。彼らは札束を手に入れるべく、計画を進めるのだが…という内容。

傑作コメディ/犯罪映画ながら日本では長らく公開されず、正式に上映されたのは2001年になってからという本作。また傑作なのにアマプラで妙に点数が低いのは、同名日本映画と評価が混同されてしまっている為みたい。…内容はポップな青春描写を、ゴダールお得意の脱臼的な演出で見せる、いつもの感じ。

会話中急に無音になったり、3人が急に振り付けを合わせたダンスを始めたり。更にルーブル美術館内を大疾走した後、急にノワール調の破滅を迎えるという…自由過ぎる空気が楽しい。実験的と言うほどかしこまった感じではないし、今観ても斬新で意表を突いたこの感覚は、「永遠の青春」と言いたくなるのだな。
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2025.02.18

5時から7時までのクレオ

観てみた。アニエス・ヴァルダ脚本、監督映画。1962年公開。

タロット占いで出た不吉な予言におびえる、女性歌手のクレオ。彼女は2時間後の7時に医者から聞かされる検査結果で、癌だという告知を恐れているのだ。クレオはパリ市内を移動し、様々な知人たちと顔を合わせるも、不安は消えない。そんな時公園で、休暇中の兵士・アントワーヌと出逢ったのだが…という内容。

作中の経過時間と上映時間を大体一致させて、若い女性の行動と内面とを描いた作品。癌うんぬんはそれなりに重い題材だが、過度にシリアスに展開する訳でなく、ポップでキュートな当時のパリ文化を切り取っている辺りが見所。

加えて街中の人々の会話や兵士の存在が、リアルタイムの(アルジェリア等)社会問題もさりげなく織り込む辺りは巧み。それでも自分が知る中では、ヴァルダ作品としてはストーリーがちゃんとある劇映画なので観やすい方だと思う。…因みに劇中のサイレント映画に出演しているのは、ゴダールなのだそうです。
posted by ぬきやまがいせい at 23:22 | Comment(0) | TrackBack(0) | 映画