2020.08.11

わが青春のマリアンヌ

観てみた、ジュリアン・デュヴィヴィエ監督映画。1955年公開。

緑豊かな湖畔に建つある古城で、少年達が学童生活を送っている。そこへ新たに加わったのが、アルゼンチンからやって来た少年・ヴァンサン。少年達はある日度胸試しとして、対岸の謎めいた屋敷へと足を運ぶ。そこで仲間とはぐれてしまったヴァンサンが出逢ったのは、美しい少女・マリアンヌだった…という内容。

ペーター・メンデルスゾーンの小説「痛ましきアルカディア」が原作。…まあそのタイトルからも察するとは思うけれど、本作は松本零士に多大な影響を与えた事で知られている。特に「銀河鉄道999」辺りに顕著だが…マリアンヌの美貌がメーテルを始めとする、松本ヒロインの原型だと言われたら成程納得してしまう。

と言うかこれ、デュヴィヴィエ監督の作品だったのか。今でこそあまり語られる事も少なくなった様だが、戦前戦後の日本では(本国フランス以上に?)大変な人気だったらしい。デビュー間もない松本が心酔したのも、判るってもんだね。
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2020.08.10

「蝦夷地別件」船戸与一著

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読んでみた、日本人作家による長編歴史/冒険小説。1995年発表。

江戸時代「蝦夷地」と呼ばれる北海道。長年和人から迫害を受けるアイヌ人は、ロシアからの鉄砲入手を元に反乱を画策していた。ところが購入計画は頓挫。それでも憤懣を押さえきれないアイヌの一部が、遂に決起して…という内容。

船戸の代表作にして数ある名作中の一つだが、主に海外が舞台の現代劇を手掛けて来た著者が、日本の時代物を題材にした異色作でもある。でもこれまで常に少数民族へのシンパシーを描いて来ただけに、本作でアイヌを採り上げたのはやはり一貫している。意図としては、自身(や読者)の原点回帰なのだろう。

より深い社会派メッセージが込められている様に思うが…内容自体は血と暴力が渦巻く一大復讐絵巻。まあそこはいつもの船戸作品と変わらんな。ただ江戸時代のせいか、復讐場面はむしろ因果応報の怪談噺みたいになってる。勘違いで身内を殺める葛西政信は、(山猫かと思ったら)これほぼ民谷伊右衛門だ。
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2020.08.08

眼には眼を

観てみた。C・ユルゲンス主演、アンドレ・カイヤット監督映画。1957年公開。

シリアの病院で医療活動を行う、フランス人医師・ヴァルテル。彼が非番の際に院内である患者女性が死亡した為に、夫のボルタクという男から怨みを買ってしまったらしい。執拗な嫌がらせを受けた末に砂漠地帯に誘い出されたヴァルテルは、激しい渇きの中ボルタクと共に街を目指す事になるのだが…という内容。

言うなれば、時代をかなり先駆けたストーカー・サスペンス映画。理不尽すぎる発端から絶望的なラストまで、飽きずに観る事が出来たものの…このストーリー展開自体なら別に、わざわざシリアで撮影しなくてもよかったのでは?、って。

一応理屈や動機の説明はされているものの、話を聞いても不毛感や虚無感ばかりが募るのが本作のストーリー。…でもそれ以上に画面に映し出される「砂漠」の風景(パンフォーカスを用いて、対立する人物と同等の存在感で撮られている)が空恐ろしく、多分これこそが本作で最も描きたかったものじゃないかなと。
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2020.08.07

愛と憎しみの伝説

観てみた。フェイ・ダナウェイ主演、フランク・ペリー監督映画。1981年公開。

映画界の大女優として華やかな生活を送る、ジョーン・クロフォード。彼女は世間向けアピールに子供を欲しがるも、不妊体質の為に養子縁組を希望していた。遂にクリスティーナという女児を迎い入れ親子関係が始まったのだが、極端に潔癖な彼女は自分の理想に届かない子供に対し、虐待を始め…という内容。

実在の女優を題材にした実話映画で、養女クリスティーナが執筆した暴露本「親愛なるマミー」を原作としている。そのクロフォードをアカデミー賞女優のダナウェイが熱演しているのだけれど…熱演が昂じすぎてもはや異様の域に達してしまい、とうとう作品がラジー賞で殿堂入りを果たすまでになってしまった。

ダークナイト版ジョーカーみたいな顔をしたオバハンが、針金ハンガーを刑事物語の武田鉄矢よりも凶悪な武器として振り回すという…ハリウッドのバックステージ物と言うより、これもうホラーだわって作品。怖いものが観たいなら是非。
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2020.08.05

キンスキー、我が最愛の敵

観てみた、ヴェルナー・ヘルツォーク監督映画。1999年公開。

1991年にこの世を去った、ドイツ人俳優「クラウス・キンスキー」。生前彼の代表作とも言える映画5作品を監督したヘルツォークが、熱狂とも狂気ともつかない、キンスキーとの愛憎に満ちた撮影秘話を語る…というドキュメンタリー。

特に南米のジャングルで撮影が敢行された「アギーレ 神の怒り」「フィツカラルド」でのエピソードが凄まじく、暴力や対立といった困難が秘蔵映像からも窺える(後者の没テイクでは、途中脱落したMick Jaggerの姿も)。…まあ別にそういう極限状況の下でなくても、普段から狂ってるオッサンだったみたいなのだが。

かと言ってヘルツォークはヘルツォークで、キンスキーを襲撃して殺害寸前までいったとか語ってるし(ただ犬に吠えられて簡単に諦めてるんだから、本気度はわからんけど)。…色んな意味で本当に最低な人間だったキンスキーが、銀幕では最高に輝いている。これも映画における、一つの奇跡だったんだろうな。
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2020.08.04

悪い種子(わるいたね)

観てみた。ナンシー・ケリー主演、マーヴィン・ルロイ監督映画。1956年公開。

クリスティーンの一人娘・ローダが出掛けたピクニック先で、同級生の少年が事故死した。その少年とローダは学業におけるライバルで、負けた彼女は褒章のメダルを貰い損なっていたのだ。過去にも欲しい物を手に入れる為人を殺めていたローダは、遂に本性を表す。それを知ったクリスティーンは…という内容。

原作はウィリアム・マーチの小説。児童の殺人鬼を題材にした先駆的作品の様だが、見ていてイラッイラしてもうた。実は本作には所謂「ヘイズ・コード」に伴い、因果応報的な結末が付け足されている。余り肯定的には見られないヘイズ〜だが、個人的には溜飲が下がったし、原作のままだと憤死していたかもしれん。

本作は映画化の前に舞台劇としてヒットしており、キャスト陣がそのまま起用されているけれど…みんな大袈裟な舞台演技そのままで、不自然この上ない。そこでまずイライラしてしまったので、まあ内容どうのはそんなに関係ない気も。
posted by ぬきやまがいせい at 23:05 | Comment(0) | 映画

2020.08.02

「虎口からの脱出(ここうからのだっしゅつ)」景山民夫著

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読んでみた、日本人作家による長編冒険小説。1986年発表。

1928年の中国。奉天軍指導者の張作霖が、関東軍による列車爆破で暗殺。その際偶然に事件を目撃して命を狙われる中国人少女・麗華を、日本へ脱出させるべく白羽の矢が立ったのが、日本軍少尉・西真一郎だった…という内容。

著者はバラエティ番組を数多く手掛けた放送作家で、小説家としても「遠い海から来たCOO」で直木賞を獲得している。彼の作家デビュー作となる本書は、(上記したイメージからだと)意外な事に本格的な冒険小説。…満州事変前夜の中国を舞台にした歴史要素に加え、迫真のカーチェイスを描いて高く評価された。

まあ個人的には意外ではないと言うか…自分が「冒険小説」ってジャンルに興味を持ったのは、この人がTV番組で紹介していたからなんだよな(ランキング形式で、1位が「ジャッカルの日」だった)。…本書も同ジャンルの定番的な要素を押さえつつ、独自の視点から斬新な冒険小説をものにした、まさに快作だと思う。
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2020.07.31

「軌道エレベーター / 宇宙へ架ける橋」石原藤夫、金子隆一著

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読んでみた、日本人著者による科学解説書。2009年発表。

地球表面から宇宙に向けた、ロケットに代わる画期的な交通・運送設備として期待される「軌道エレベーター」。本書ではその基礎概念から始まり実現の可能性、更に巨大な規模に発展させた未来の技術を解説していく…という内容。

本書は1997年に刊行された同名書の増補版。今でこそこの話題に関する類書も増えたけど、その当時本書は「軌道(宇宙)エレベーター」のみを採り上げた世界唯一の書籍だったらしい。…著者のお二方は「ハードSF研究所」の師弟同士?なので、(クラーク「楽園の泉」等)SF作品についての話題も多く楽しめる。

無論現在でも軌道エレベーターの事を要領よく知る事が出来る良書で、個人的には特に他天体での建設等の発展的アイデアが刺激的だった。…実は金子は日本アニメに初めて軌道塔を出した人だそうだが、「恐竜惑星」の南極点に設置された発展型(磁性流体の勢いで塔を支える)は本書では触れてなかったな。
posted by ぬきやまがいせい at 14:28 | Comment(0) | 読書

2020.07.30

「別冊映画秘宝 / 世界鬼才監督列伝」別冊映画秘宝編集部、岡本敦史著

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読んでみた、日本人執筆者による映画解説書。2015年発表。

世界中の映画監督のうちで、「鬼才」と呼びうるパワーを持った人々。本書では園子温、三池崇史といった国内作家から、パク・チャヌク、ダン・オバノン等の海外勢まで、尋常ならざる才能を持った監督達を一気に紹介する…という内容。

本書の編集方針としては、主に若手を中心に紹介したとの事だが…本書刊行当時話題をかっさらっていた、「マッドマックス 怒りのデス・ロード」の出来を受けて、ジョージ・ミラー監督も採り上げたらしい。その前に既に鬼籍に入っていた、大島渚や若松孝二も載ってるのな(まあ「鬼才」と呼ぶに異存は無いけど)。

上記数名以外は殆ど聞き覚えの無い名前の監督ばかりで、実に圧倒されたものの…作品自体は知っていた人も案外いて、改めて「監督の名前」で映画を観る面白さが判った。ような気が。こうした情報量と切り口による映画本は他に無いので、(今更ながら)「映画秘宝」編集部復活はやはり喜ばしい事だなって。
posted by ぬきやまがいせい at 23:30 | Comment(0) | 読書

2020.07.29

「Cine Lesson 7 [逆引き]世界映画史!」フィルムアート社刊

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読んでみた、日本人執筆者による映画解説書。1999年発表。

「現在から世界の映画史を改めて見直してみよう」という趣旨の本。幾つかの映画史的に重要なキーワードを出発点に、そこから現在への影響や過去のエピソードを振り返るもので、それを本書では「逆引き」と呼んでいる…という内容。

人名・作品名から始まって、映画史上の出来事に映画技法といった、普段耳にすることの多いトピックが採り上げられる感じ。…耳にする事は多くても、案外知らないまま済ませていた言葉も改めて知る事が出来て勉強になる。だから手っ取り早く映画(史の用語)に詳しくなれる本、と見てくれてもいいかもしれない。

ただ流石にそういう切り口からは取りこぼされる要素も多いので、(当たり前だが)実際の作品鑑賞も併せて続けるのが良いだろう。個人的にはこんな作品・人物が大きく採り上げられるのか?…と少々不思議に思ったりする事が、無きにしも非ずだったけれど。まあそういう辺りも含めて「逆引き」の面白さ、なのかも。
posted by ぬきやまがいせい at 23:37 | Comment(0) | 読書