2018.06.18

岸辺の旅

観てみた。深津絵里主演、黒沢清監督映画。2015年公開。

3年前に夫が失踪し、今はピアノ講師の仕事に就く瑞希。ある夜突然彼女の前に夫・優介が姿を現したのだが、彼は自分を既にこの世の者ではないと言う。瑞希は夫の誘いで、彼が失踪していた間世話になったという人々を訪ねる旅に出る。そこでは様々な体験、そして意外な人との出逢いがあって…という内容。

湯本香樹実の小説を原作とする本作は、カンヌ映画祭のある視点部門で監督賞を獲得した。黒沢監督が同映画祭で栄誉に輝いたのは、本作で3度目になる訳だけど…最初に受賞した「回路」と同じく、本作も幽霊が登場する話ではある。

ただ本作がホラーとは異なるヒューマンドラマという辺り、同じ題材を採り上げつつも全く違った料理の仕方をしたのには成程と。…そうは思いつつもJホラーの旗手だった黒沢も変わったわ〜、なんて斜に構えた見方をしてしまったり。とは言え一瞬で廃墟化する新聞販売店の幻想シーンなどは、いい意味で黒沢らしい。
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2018.06.17

どぶ川学級

観てみた。山本亘主演、橘祐典監督映画。1972年公開。

大学生の須藤は、アルバイト先で争議只中にある組合に参加していた。そこで組合員の子供の家庭教師を任せられる事になるのだが、更に生徒は増え「どぶ川学級」と名付けられた無償の学習塾へと発展する。生徒達の学力は目に見えて向上したものの、高圧的な教師や子供自身の問題に直面し…という内容。

自身の体験を綴った須長茂夫の小説を原作に、資金カンパを基にした製作や自主配給・自主上映が行われた社会派映画。まあそういう作品だけに内容は至って真面目。だから筆者も普段鑑賞するような類の映画ではないのだが…今回観る気になったのは、大地丙太郎監督が想い出の作品として紹介していたから。

高校生だった同監督は本作にえらく感情移入したとの事。確かに小うるさい説教や問題提議一辺倒ではなく、ある種の清々しい達成感が得られる内容なのは確か。…児童達の生き生きとした描写も眩しい学園物として観てもいいかも。
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2018.06.16

アンナと過ごした4日間

観てみた、イエジー・スコリモフスキ監督映画。2008年公開。

病院の火葬場に勤め、祖母と2人暮らしている中年男・レオン。彼はある日釣りに出掛けた際、アンナという女性が暴行されている現場に遭遇してしまう。警察に通報する彼だが、犯行を疑われ逮捕されてしまった。数年後釈放されたレオンは彼女の身を案ずる余り、アンナの部屋へ忍び込む様になって…という内容。

スコリモフスキが1991年から17年のブランクを経て監督した作品。その間バートンやクローネンバーグの映画に俳優として出演していたそうなので、案外充実してたのかもしれん。本作はザックリと言えばストーカー男の映画なのだけれど…殆ど台詞のない進行や一方通行の懸想から、現代的な「孤独」を描いている。

そういや次作「エッセンシャル・キリング」も台詞無しだから、本作で気に入った手法なのかな。…まあ薄気味悪いと言えば薄気味悪いけど、男の在り様を無垢なる精神によるものとして描いているので、ちょっと微笑ましく感じられるかも。
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2018.06.14

中国女

観てみた。ジャン=リュック・ゴダール脚本、監督映画。1967年公開。

中国で文化大革命が進められていた頃。遠く離れたフランスでは女子大生・ヴェロニクを始めとする5人の若者達が、共同生活をする中で激しい政治的討論を交わしていた。そしてヴェロニクは、ある文化人の暗殺を提案するに至る。グループは割れて自殺者まで出したものの、遂に決行の日が訪れて…という内容。

ゴダール監督による「政治の時代」の作品(ニュース映画並に、時代性に敏感に反応していた事が判る)。毛沢東の事を歌詞に採り上げた「マオ・マオ」という主題歌が妙に耳に残るが…ちなみにYMOの同名曲は、本作から引用したもの。

引用と言えば本作の美術は原色で統一され、本の表紙などは全て「真っ赤」になっている。これは勿論思想的なアレを反映しているのだろうけれど…筆者が連想したのは「化物語」神原駿河の蔵書の表紙。まあそっちはいかがわしい本だったけど、背景に文章を配する手法も含め新房監督にも影響与えてそうな。
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2018.06.13

家路

観てみた、マノエル・ド・オリヴェイラ監督映画。2001年公開。

老名優・ヴァランスは、今日も舞台に上がっていた。ところが上演中、妻と娘夫婦が事故で命を落としたという悲報が届く。遺された孫・セルジュとの新たな生活が始まったものの、オファーのあったTVの仕事は彼の意にそぐわない内容。だが急遽映画の代役仕事が舞い込んで、撮影へと臨んだのだが…という内容。

106歳でこの世を去ったオリヴェイラ監督、93歳時の映画。生涯現役だった人だけにまだまだ若い時分…という気がしてしまうが、本作の内容も近親者の死や自らの衰えに戸惑う俳優を中心に、「老い」に向き合った作品となっている。

でもインタビューを見ると本作のテーマは、疲れ果てた俳優が自宅へと帰る場面から「胎内回帰」。そして俳優が受けた社会的抑圧から、「現代文明批判」へと話が飛んで目が点になった。…これ額面通り受け取っていいものか正直迷うけれど、何でもかんでも「老い」に結びつけるのは自分も否定したい所だしね。
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2018.06.11

ハドソン川の奇跡

観てみた。トム・ハンクス主演、クリント・イーストウッド監督映画。2016年公開。

2009年1月15日。飛行中のUSエアウェイズ1549便は突然のエンジン停止に見舞われ、危険な緊急着水を敢行。無事乗員155名全員の生還を果たした。機長のチェスリー・サレンバーガーは「ハドソン川の英雄」として一躍脚光を浴びたものの、国家運輸安全委員会からは厳しい事故の調査を受けて…という内容。

実際に起きた航空機事故を題材にした実話映画。本作では当時救助に当たった人々などに本人を起用する他、実際の事故を念入りに再現した映像に見応えがあった。…とは言え内容面の本筋は、不時着水の必然性を疑われた機長が最後に信頼を取り戻すという、名誉や誇りを回復する「再生」の物語なのでは。

これはおそらく(本編中でもさらりと触れられた)911の記憶からの、再生を謳ったものでもあるのだろう。…まあ個人的には機長が過去空軍のパイロット時代に搭乗した、シャークマウスF-4Eによる着陸シーンがカッコよかった。みたいな。
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2018.06.10

ロシュフォールの恋人たち

観てみた。ジャック・ドゥミ脚本、監督映画。1967年公開。

フランスの港町「ロシュフォール」で開かれる祭に合わせ、バイク芸を披露するべくエチアンヌとビルがやって来た。町にはソランジュとデルフィーヌという双子の姉妹が暮らしており、2人はいつの日か恋人に巡り会う事を夢見ていた。双子の前にはエチアンヌとビル以外にも、様々な男性が現れるのだが…という内容。

カトリーヌ・ドヌーヴ主演&ドゥミ監督という、「シェルブールの雨傘」コンビによるミュージカル映画。…なのだが全編の台詞を歌に置き換えたそちらとは違って、本作ではダンスを中心とした「ウエストサイド物語」風?の内容となっている。

でもそれが音楽もファッションも何もかも60年代フランスの最先端文化を反映し、今見ても「オシャレ!」と言いたくなる作品となっている。ただ逆に言うと繊細なドラマのあった「シェルブールの雨傘」とは違って、オシャレ以外何も無いんだけど。…とは言え観ていて何となく、幸せな気分になれればいいんじゃないかなと。
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2018.06.08

グランド・イリュージョン

観てみた、ルイ・レテリエ監督映画。2013年公開。

「アイ」を名乗る何者かに導かれて集まった、路上マジシャン4人。彼らはチーム「フォー・ホースメン」として、大掛かりなイリュージョンを次々成功させた。だがそれは現金の強奪と言った犯罪で、FBI捜査官ディランとインターポールのアルマに加え、マジックの専門家サディアスが捜査に当たる事になり…という内容。

Four HosemenってMetallicaの曲…というか、黙示録の四騎士か。で本作はマジシャンがすごいイリュージョンを見せる映画かと思ったら、マジシャンが泥棒をするまじっく快斗とかセイントテールみたいな話だった。だからそういう部分は結構面白かったんだけど、警察との追いかけっこになると急激になんか違う感が。

ビックリオチ?を用意してあるので、作り手的にはそういう辺りで驚かせたかったんだろうけど…結構そこもどうでもいい。キャラに裏がありそうと匂わせる反面掘り下げも出来なかった為、感情移入まで出来なくなってしまったのがちとな。
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2018.06.06

ラーメンガール

観てみた、ロバート・アラン・アッカーマン監督映画。2008年公開。

アメリカ人女性・アビーは恋人を追って日本にやって来たものの、関係は決裂し失意の中にあった。そんな時に出逢ったのが前住が経営するラーメン店で、彼女は日本語も判らない状態ながら弟子入りを願い出る。前住のラーメン修行は厳しい上理不尽にも感じられ、アビーは一旦は弟子を辞めたのだが…という内容。

伊丹監督の「タンポポ」へのオマージュだというハリウッド映画。同作で主役だった山崎努が出演しているだけでなく、全編日本ロケの上ほぼ日本人スタッフで撮影は行われたとの事。…まあオマージュと言えば西田敏行演じる前住のラーメンが醤油スープな辺りもそうかなって気がするけど、別に関係ないかもしれん。

ただ本作はラーメン作りにおける技術的な描写が省かれ、全部精神論に置き換えられているのが何かな。でも主テーマは米人女性のアイデンティティ探求なので、最終的に「自分らしさ」を貫いて成功する所からして、まあそんなもんかと。
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2018.06.05

我等の生涯の最良の年

観てみた、ウィリアム・ワイラー監督映画。1946年公開。

第二次大戦が終結し、故郷のブーンシティへと帰って来た復員兵3人。ホーマーは戦地で両手を失った事から周囲との溝を感じ、アルは銀行に好待遇で復職出来た一方、フレッドは妻との不和や再就職への壁に苦しんでいた。そんな彼にアルの娘ペギーは惹かれるのだが、父親から猛反対を受けて…という内容。

米アカデミー賞で9部門に渡って受賞を果たした本作。戦争終結の翌年に、復員兵/傷痍兵の苦悩を描き高く評価された。…中でもホーマー役を演じたハロルド・ラッセルは本物の傷痍軍人で、同賞では助演男優賞他を獲得している。

以前にも書いたけれど、ワイラー監督は戦時中B-17爆撃機の取材をしただけあって、本作でも重要な役所として登場している。主人公達を故郷に届けるのが同機で…更にクライマックスでは戦争が終わって用済みとなり、廃棄を待つばかりのB-17の姿を捉えた侘びしい情景には、様々な想いが去来するのでは。
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