2024.09.06
「ファントム」ディーン・R・クーンツ著
読んでみた、アメリカ人作家による長編ホラー小説。1983年発表。
アメリカのとある田舎町で、住民全てが謎の大量死を遂げるという事件が発生。たまたま難を逃れた女医・ジェニーと妹のリサは、その異常な状況と原因不明の事態に恐怖する。そのの背後には、ある邪悪な存在がいて…という内容。
キングとも並び評される、モダンホラーの大家による代表作。元々の出身がそうだからか、かなりSF的なテイストが強い。その事もあってか、瀬名秀明の「パラサイト・イヴ」(1995年)が、日本のクーンツと呼ばれたというのにも成る程納得。…バイオホラー要素や、太古からの異常存在等、そうも言われるわなって。
本書はジェットコースター展開の連続で、手に汗握るけれど…超巨大な風呂敷を広げた割には、ちっちゃく畳み過ぎではなかろうか。エンタメってそういうものよ?、と言われたら仕方ないが…なんかよく判らんやつが、なんかよく判らんまま存在し続けてコワイ。というラヴ先生的なオチでも、よかったんじゃないかな。
2024.09.05
「ゾンビ」ジョージ・A・ロメロ 、スザンナ・スパロウ著、藤沢良寛訳
読んでみた、アメリカ人作家による長編ホラー小説。1978年発表。
「死者=ゾンビ」が大量に発生し、社会は大混乱を来たしていた。TV局員・フランは恋人やSWAT隊員2名と共に、市街地からヘリで脱出。ショッピングモールで一時の安全を得た。だがゾンビ、更にはそれ以外の危機が…という内容。
同年に公開された映画、「ゾンビ」のノベライズである本書。ロメロ監督自身が共著者にいる通り、内容自体は映画のストーリーそのままと言っていい。そちらに人物の心理描写等を補った感じだけれど…映画なら数秒で済むアクションシーンを、馬鹿丁寧に文章で描写していくもんで、だいぶモタモタしてしまってる。
先に映画を観て内容を知っているから、これ正直つらいな。仮に本書を先に読んでいたら、結構楽しめそうではあるものの、それならやはり映画を観るべきだし。…とは言え結構貴重な本なので、ファンならば手に取ってもいい。モールを「資本主義の象徴である」なんて、真正面から書いているのには驚いたかも。
2024.09.03
ローレル・キャニオン / 夢のウェストコースト・ロック
観てみた、A・エルウッド監督によるドキュメンタリー映画。2020年公開。
ウェストコースト・ロックにおける聖地と呼ばれるのが、カリフォルニア州LAの「ローレル・キャニオン」。The ByrdsからEaglesまで、1960年代のアメリカで勃興し、その地で革新的なロックサウンドを発展させた人々。本作では当時の写真や映像に加え、当事者自身の証言からロックの時代を追う…という内容。
変に欲張らずに焦点を絞ってはいるものの、60年〜70年代にかけての米ロック、メインストリームがここにあると言ってよいだろう。…焦点と言えば本作は映像を当時の素材に限り、インタビュー音声は(近年のものっぽいけれど)数秒と間を開けずに証言や歌詞を繋げて、連続させるという構成・編集を行っている。
成る程、オーラルヒストリー。お陰でその時代への没入感や地続き感が高く、この手のドキュメンタリーは結構見てきた自分でも、斬新に感じた。…この時代の米ロックへの興味は個人的にはそこそこながら、素晴らしい作品だと思う。
ウェストコースト・ロックにおける聖地と呼ばれるのが、カリフォルニア州LAの「ローレル・キャニオン」。The ByrdsからEaglesまで、1960年代のアメリカで勃興し、その地で革新的なロックサウンドを発展させた人々。本作では当時の写真や映像に加え、当事者自身の証言からロックの時代を追う…という内容。
変に欲張らずに焦点を絞ってはいるものの、60年〜70年代にかけての米ロック、メインストリームがここにあると言ってよいだろう。…焦点と言えば本作は映像を当時の素材に限り、インタビュー音声は(近年のものっぽいけれど)数秒と間を開けずに証言や歌詞を繋げて、連続させるという構成・編集を行っている。
成る程、オーラルヒストリー。お陰でその時代への没入感や地続き感が高く、この手のドキュメンタリーは結構見てきた自分でも、斬新に感じた。…この時代の米ロックへの興味は個人的にはそこそこながら、素晴らしい作品だと思う。
2024.09.02
スティーヴ・ベイター / ロックにすべてを捧げた男 その短すぎる生涯
観てみた、D・ガルシア監督によるドキュメンタリー映画。2019年公開。
NYパンクを代表する「Dead Boys」や、「The Lords of the New Church」のボーカリストとして活動し、1990年に40歳の若さでこの世を去った「スティーヴ・ベイター」。本作は彼の激しくも短い生涯を、バンドメンバーを始めとする関係者のインタビューや、貴重なライブ映像により振り返っていく…という内容。
筆者はDead Boysなら以前聴いたけれど、The Lords of〜と同じ人だったとは知らなかった。本作では、そちら以外にもBatorが関わった多くのグループを紹介しており興味深い。「知る人ぞ知る」と言うのが、最も合っているのでは。
いかにもパンクロッカー的な奇行エピソードをに留まらず、当時の音楽界の有名人達との関わりも併せて語られて楽しい。ただいかにもパンクロッカー的に衝撃的な死に様とは違って、緩やかな衰弱死みたいに感じられる(交通事故死なのに)のが哀しい。…とは言え本作で、「知る人ぞ知る」彼を知るのもよいと思う。
NYパンクを代表する「Dead Boys」や、「The Lords of the New Church」のボーカリストとして活動し、1990年に40歳の若さでこの世を去った「スティーヴ・ベイター」。本作は彼の激しくも短い生涯を、バンドメンバーを始めとする関係者のインタビューや、貴重なライブ映像により振り返っていく…という内容。
筆者はDead Boysなら以前聴いたけれど、The Lords of〜と同じ人だったとは知らなかった。本作では、そちら以外にもBatorが関わった多くのグループを紹介しており興味深い。「知る人ぞ知る」と言うのが、最も合っているのでは。
いかにもパンクロッカー的な奇行エピソードをに留まらず、当時の音楽界の有名人達との関わりも併せて語られて楽しい。ただいかにもパンクロッカー的に衝撃的な死に様とは違って、緩やかな衰弱死みたいに感じられる(交通事故死なのに)のが哀しい。…とは言え本作で、「知る人ぞ知る」彼を知るのもよいと思う。
2024.08.31
ブリティッシュ・ロック誕生の地下室
観てみた、G・グルニエ監督によるドキュメンタリー映画。2021年公開。
1960年代ロンドン。「イーリング・クラブ」には米国ブルースに影響を受けた若者達が集まり、戦争後の新しいロック音楽が花開いていた。The Rolling StonesやCream、The Whoをはじめ「ブリティッシュ・ロック」の中心地となったライブハウスを、関係者インタビューや当時の映像により振り返る…という内容。
この切り口で最大の大物は勿論ストーンズだが、(当時映像はともかく)流石に現在のミックやキースが出てくれる訳ではない。その代わり?に(Pretty Thingsでお馴染み)Dick Taylorが登場して、初期ストーンズについて語ってくれて驚き。…本作は英ロックのレジェンドが多数出演しており、一見の価値がある。
面白いのはインタビュー出演者にしばらく喋らせておいて、その人の名前紹介の字幕を後になって出す辺り。だれだよこのジイサン…と思ったら、〇〇かよ!というのが何度もあって、英ロック好きにとっては仲々に心憎い演出だと思う。
1960年代ロンドン。「イーリング・クラブ」には米国ブルースに影響を受けた若者達が集まり、戦争後の新しいロック音楽が花開いていた。The Rolling StonesやCream、The Whoをはじめ「ブリティッシュ・ロック」の中心地となったライブハウスを、関係者インタビューや当時の映像により振り返る…という内容。
この切り口で最大の大物は勿論ストーンズだが、(当時映像はともかく)流石に現在のミックやキースが出てくれる訳ではない。その代わり?に(Pretty Thingsでお馴染み)Dick Taylorが登場して、初期ストーンズについて語ってくれて驚き。…本作は英ロックのレジェンドが多数出演しており、一見の価値がある。
面白いのはインタビュー出演者にしばらく喋らせておいて、その人の名前紹介の字幕を後になって出す辺り。だれだよこのジイサン…と思ったら、〇〇かよ!というのが何度もあって、英ロック好きにとっては仲々に心憎い演出だと思う。
2024.08.30
ZAPPA
観てみた、A・ウィンター監督によるドキュメンタリー映画。2022年公開。
ロックバンド「The Mothers of Invention」を始め、ギタリスト・作曲家としてアメリカの音楽界に巨大な足跡を残した「フランク・ザッパ」。本作ではザッパ自身が語ったインタビューを始め、周囲の人々の証言や貴重なライブ映像を手掛かりにして、革新的な演奏家・アーティストの生涯を紐解いていく…という内容。
ぶっちゃけた事を言うと、個人的にZappaは何枚聴いてもピンと来ない。でも流石にすごい存在という事は判るので、本作も興味深く観た。音楽ドキュメンタリーとしては定番の作りだが…変人という先入観のあるZappaでも、ある種悲劇の人物として感動的に描けてしまうもんなんだなと。いや、悪い事ではないけど。
とは言え自分はZappaの作品なら、現代曲の方が好きかもなって。本人がそのオーケストラ演奏に熱心だったのも、結構嬉しい。…それよりZappaが敬愛するVareseからの手紙を、額に入れて大切にしていた話も紹介しないと。
ロックバンド「The Mothers of Invention」を始め、ギタリスト・作曲家としてアメリカの音楽界に巨大な足跡を残した「フランク・ザッパ」。本作ではザッパ自身が語ったインタビューを始め、周囲の人々の証言や貴重なライブ映像を手掛かりにして、革新的な演奏家・アーティストの生涯を紐解いていく…という内容。
ぶっちゃけた事を言うと、個人的にZappaは何枚聴いてもピンと来ない。でも流石にすごい存在という事は判るので、本作も興味深く観た。音楽ドキュメンタリーとしては定番の作りだが…変人という先入観のあるZappaでも、ある種悲劇の人物として感動的に描けてしまうもんなんだなと。いや、悪い事ではないけど。
とは言え自分はZappaの作品なら、現代曲の方が好きかもなって。本人がそのオーケストラ演奏に熱心だったのも、結構嬉しい。…それよりZappaが敬愛するVareseからの手紙を、額に入れて大切にしていた話も紹介しないと。
2024.08.28
「名刀に挑む / 日本刀を知れば日本の美がわかる」松田次泰著
読んでみた、日本人著者によるノンフィクション。2017年発表。
長い歴史の中「日本刀」で最高の名品は、正宗を始めとする鎌倉期が頂点とされる。長年同時代の名刀再現に取り組んで来た現代刀工の著者が、日本刀の魅力や自身の経験を踏まえた物作りに対する取り組みを語る…という内容。
鎌倉刀を再現したと言われる逸話に限らず、刀工である著者の視点から日本刀全般の魅力に関して解説してくれる辺り、初心者の自分でも大変楽しく読めた。ただ出版元(PHP研究所)の性格からか、話がいつの間にかビジネスマン向けの精神論になる辺り、思てたんと違うと言うか、いやそうだろうなと言うか…
流石に鎌倉刀再現はまだ現在進行形だからか、秘訣はこれこれなどと判りやすく書いてくれる訳ではない。そもそも鎌倉刀のどこがすごいのか、見ないとわからんというスタンスだし。…それでも著者ならではの(精神面に限らず、工学・材料学的側面からの)独自見解が窺えるのは、大変に刺激的な内容だと思う。
2024.08.27
新宝島
見てみた、手塚治虫演出によるTVスペシャルアニメ。1965年放映。
ジム少年はある男の遺品から、「宝島」の地図を手に入れる。彼は大人の協力者と共に船を用立てて、その島へと出発する。その際一船員として乗り込んだのが、シルバーというコック。ジムは彼と友情に結ばれたものの、実はシルバーは海賊の首魁だった。そして船は遂に宝島に到着するのだが…という内容。
原作はスティーヴンソンの小説。つまり初期の手塚漫画として有名な「新宝島」という作品のアニメ化かと思ったら、全然関係なかった(まあ複雑な事情があった模様)。…とは言え本作は史上初の、単発TVスペシャルアニメだとの事。
本作ではキャラクターの外見を、全て動物に置き換えているのが特徴。つまりどうぶつ宝島。それより個人的には、出崎統監督のTVアニメを連想しながら見てしまったのだが。…そちらと比較してしまったら流石に、色々物足りないけれど(シルバーのキャラ始め)手塚らしい味わいは、決して悪くはないなと思えた。
ジム少年はある男の遺品から、「宝島」の地図を手に入れる。彼は大人の協力者と共に船を用立てて、その島へと出発する。その際一船員として乗り込んだのが、シルバーというコック。ジムは彼と友情に結ばれたものの、実はシルバーは海賊の首魁だった。そして船は遂に宝島に到着するのだが…という内容。
原作はスティーヴンソンの小説。つまり初期の手塚漫画として有名な「新宝島」という作品のアニメ化かと思ったら、全然関係なかった(まあ複雑な事情があった模様)。…とは言え本作は史上初の、単発TVスペシャルアニメだとの事。
本作ではキャラクターの外見を、全て動物に置き換えているのが特徴。つまりどうぶつ宝島。それより個人的には、出崎統監督のTVアニメを連想しながら見てしまったのだが。…そちらと比較してしまったら流石に、色々物足りないけれど(シルバーのキャラ始め)手塚らしい味わいは、決して悪くはないなと思えた。
2024.08.25
フウムーン
見てみた、坂口尚監督によるTVスペシャルアニメ。1980年公開。
山田野博士が発見したのは、新種の知的生物だった。その事実を新人類誕生として発表するものの、2大国の軍事的緊張の高まる中で無視された。探偵の伯父が拉致された事で事態に関わったケン一青年は、新人類=フウムーンが宇宙的な危機を察知し、ある計画を推進していた事を知るのだが…という内容。
原作は手塚治虫の漫画「来るべき世界」。そちらを「石の花」等の漫画作品でも有名な、坂口尚が監督している。本作が放映された「24時間テレビ」のスペシャルアニメとしては、かなり面白い印象があったのだけれど、それも割と納得。
本作の暗黒ガスは、フレッド・ホイルの「暗黒星雲」を連想したのだが、実は原作発表はそちらの7年前。さすが神様(まあでもドイルの「毒ガス帯」辺りが着想元かも)。…原作の時代性からかやたらに説教くさいものの、フウムーン=ロココの自己犠牲にはやはりホロリと来る。坂口監督は、アニメの腕も確かだな。
山田野博士が発見したのは、新種の知的生物だった。その事実を新人類誕生として発表するものの、2大国の軍事的緊張の高まる中で無視された。探偵の伯父が拉致された事で事態に関わったケン一青年は、新人類=フウムーンが宇宙的な危機を察知し、ある計画を推進していた事を知るのだが…という内容。
原作は手塚治虫の漫画「来るべき世界」。そちらを「石の花」等の漫画作品でも有名な、坂口尚が監督している。本作が放映された「24時間テレビ」のスペシャルアニメとしては、かなり面白い印象があったのだけれど、それも割と納得。
本作の暗黒ガスは、フレッド・ホイルの「暗黒星雲」を連想したのだが、実は原作発表はそちらの7年前。さすが神様(まあでもドイルの「毒ガス帯」辺りが着想元かも)。…原作の時代性からかやたらに説教くさいものの、フウムーン=ロココの自己犠牲にはやはりホロリと来る。坂口監督は、アニメの腕も確かだな。
2024.08.24
らくだい魔女 / フウカと闇の魔女
観てみた、浜名孝行監督によるアニメーション映画。2023年公開。
かつて「闇の魔女」が倒され、封じられた魔法の世界。学校では「らくだい」生である銀の城の王女・フウカは、黒の城の王女・リリカの誘いで見慣れぬ腕輪を身に付けてしまった。それは闇の魔女を封印していた呪具で、緑の城の王女・カリン、青の城の王子・チトセと共に、異空間へ飛ばされてしまい…という内容。
原作は成田サトコの児童小説シリーズで、刊行15周年を記念して制作された劇場アニメが本作。…本作は一言でいってしまうと「プリキュア」。作画・演出にストーリー等、かなりプリキュア感があって、そこから変身・必殺技・マスコットに年替わりモチーフを引いた感じ。そのせいか、ちと物足りなく感じてしまった。
あと60分という中編尺な辺りからも、駆け足な印象(これは児童向けとしての配慮かも)。…と思って調べたら、監督の人って「オトナプリキュア」でシリーズディレクターもやっているので、ある意味本業?だった。成る程これはこれで。
かつて「闇の魔女」が倒され、封じられた魔法の世界。学校では「らくだい」生である銀の城の王女・フウカは、黒の城の王女・リリカの誘いで見慣れぬ腕輪を身に付けてしまった。それは闇の魔女を封印していた呪具で、緑の城の王女・カリン、青の城の王子・チトセと共に、異空間へ飛ばされてしまい…という内容。
原作は成田サトコの児童小説シリーズで、刊行15周年を記念して制作された劇場アニメが本作。…本作は一言でいってしまうと「プリキュア」。作画・演出にストーリー等、かなりプリキュア感があって、そこから変身・必殺技・マスコットに年替わりモチーフを引いた感じ。そのせいか、ちと物足りなく感じてしまった。
あと60分という中編尺な辺りからも、駆け足な印象(これは児童向けとしての配慮かも)。…と思って調べたら、監督の人って「オトナプリキュア」でシリーズディレクターもやっているので、ある意味本業?だった。成る程これはこれで。