2017.06.25

カリギュラ

観てみた、ティント・ブラス他監督映画。1980年公開。

カリギュラは、ローマ皇帝ティベリウスが自分の孫を後継者にするべく、彼を亡き者にせんと画策している事を知る。しかしカリギュラは先んじてティベリウスを殺害し、ローマ帝国皇帝の座に就く事に成功する。権力を手に入れた彼は、敵を殺し享楽に耽る暴君となった。ところが最愛の妹を病気で亡くし…という内容。

本作は実在のローマ皇帝を題材にした歴史大作だが、直接の性交描写を売り物にしたハードコアポルノでもある。名の通った出演者が顔を揃えているのは、実はポルノである事を伏せていたというとんでもない話も。とは言えそのお陰?で、日本から無修正版の海外鑑賞ツアーが組まれる程のヒットになったとの事。

そういう訳で内容はエログロまみれだけど、古代ローマの暴君を漠然と想像した際の、そのままを映像で観られるのは結構凄いのでは。…これ程のディオニュソス的(いやローマだからバッカスか)狂騒は、仲々他には無いかもしれんね。
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2017.06.24

ドグラ・マグラ

観てみた。松田洋治主演、松本俊夫監督映画。1988年公開。

ある日、精神病棟で目覚めた記憶喪失の青年。彼に接見したのが若林教授と名乗る男で、前任者の正木教授が死亡したのだと言う。若林は青年の記憶を呼び覚ます為、結婚前日に婚約者を扼殺した呉一郎の話をする。自分が一郎と認められない青年は、彼に関する過去の記録を読み始めたのだが…という内容。

原作は夢野久作の探偵小説。奇書として知られる大部の同書を、本作では何と109分にまとめている。それだけで賞賛してよい程の手際だけど…祭文や架空の論文を挿入し迷宮と化す原作の魅力は、正直損なわれてしまったかなあ。

でもこうしてコンパクトな映画として観ると、記憶喪失の青年に周りが入れ替わり立ち替わり過去を思い出させようするって話は、大島渚監督の「絞死刑」と同じなんだな。まあやはり文章として圧倒的に構築された世界だけに、映画として見せられてもそう面白くは無い気がしたものの…よくぞ映像化したもんだなあと。
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2017.06.23

リアリティのダンス

観てみた、アレハンドロ・ホドロフスキー監督映画。2013年公開。

ソ連から移住し、チリのトコピージャで雑貨店を営むホドロフスキー一家。少年アレハンドロは、彼を歪んだ形で溺愛する母親と、厳格な父親との間で常に苛まれて育つ。しかも父は共産党員で、秘密裏の活動でイバニェス大統領の暗殺を画策していた。家族から離れて、大統領の馬屋番になった彼は…という内容。

原作は同監督の幼少期を綴った自伝で、自身で脚本化もしている。内容は流石に誇張もある様だが、結構赤裸々に描いているって印象を受けた。まあ映画自体はこれまでと同様、フリーク趣味やタブーに敢えて触れる扇情的な作品。

ただ「エル・トポ」や「ホーリー・マウンテン」がドラッグカルチャーからの影響を反映しているのと違って、本作はラテンアメリカ文学的な「マジックリアリズム」が感じ取れる。まあ南米の独裁者なんか出て来る辺りまんまだが…老いて尚盛んな同監督の身内から湧き出る表現が、そうした土着性へと到達したのかもね。
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2017.06.21

ホドロフスキーのDUNE

観てみた、F・パヴィッチ監督によるドキュメンタリー映画。2013年公開。

1975年、アレハンドロ・ホドロフスキー監督の手で進められていたのがSF小説「デューン」の映画化。だが有能な若手アーティストや、各界の大物出演者の快諾を得ながら企画は頓挫してしまった。本作はその顛末を追う…という内容。

本作はホドロフスキーを始めとする関係者の証言を中心に進行するものだが、時折挿入される絵コンテを用いた再現映像が興味深い。その絵を執筆したのが故メビウスで、残念ながら本作の撮影には間に合わなかった模様。僅か20部だけ製作されたという絵コンテ集が、いつの日か公になって欲しいものだなあ…

中止決定の段では悔しさを滲ませるホドロフスキーだが、穏やかに過去の日々を語る表情が印象深い。…しかし関係者が後に各界で残した作品が、本作を出発点としているのには改めて驚いた。個人的には特に、H・R・ギーガーがMagmaの「Attahk」のジャケ絵を描いた縁が、本作から続くものというのに成程と。
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2017.06.20

ロスト・イン・ラ・マンチャ

観てみた、キース・フルトン他監督によるドキュメンタリー映画。2002年公開。

テリー・ギリアム監督が長年の構想の下に着手した、「ドン・キホーテ」の映画化。2000年にスペインで撮影を開始したものの、数々の問題が重なりわずか7日間で製作が中止されてしまった。本作はその一部始終を追う…という内容。

当初から資金調達やスケジュールの問題を抱え、ロケ地では軍用機の騒音が邪魔をする。更に洪水による機材破損、止めに主演俳優の病気での離脱という数々のトラブルが襲う、さながらジェットコースター・ムービー。「完成しなかった映画」というのは浪漫をかき立てるが、大変貴重な記録でもあるのは間違いない。

と思っていたら、何とギリアム監督による「ドンキホーテを殺した男」の再撮影が今月完了したとの事(!)、そりゃスゴイ。…何だかBeach Boys「Smile」が正式リリースされた時みたいな気分だけど、同監督の執念というのを本作を観て改めて確認するのもいいかもしれない。本作が過去の笑い話になればいいね。
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2017.06.18

アンジェリカの微笑み

観てみた。マノエル・ド・オリヴェイラ脚本、監督映画。2010年公開。

ある夜ユダヤ青年・イザクの元に、上流階級の邸宅から写真撮影の急な依頼が舞い込む。その際に彼が撮った被写体は、若くして天に召された美女・アンジェリカの亡骸。しかも驚く事にシャッターを切るイザクには、彼女がまるで微笑んで見えた。その後もアンジェリカの事が頭から離れないイザクは…という内容。

2015年に106歳でこの世を去った同監督による、101歳時の映画がこちら。彼が長年暖めていたという脚本を映像化した本作の内容は、エドガー・アラン・ポオ風の幻想譚だった。写真の中から死美人が微笑む…なんて書くと怪談みたいだけど、ゆったりした進行の中にユーモアを盛り込んだ浮遊感のある作品だな。

死に魅せられた主人公からは、高齢の監督自身が生と死の境界に向き合った視線が窺えるけれど…(いかに特異な存在だったとは言え)そこにばかり着目してもな。個人的には絵画的に美しい映像からは、一切の衰えを感じないなと。
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2017.06.17

ファウスト

観てみた、アレクサンドル・ソクーロフ監督映画。2011年公開。

魂の在処を研究中のファウスト博士。活動の資金繰りに難儀する彼は、街でミュラーなる高利貸と出逢う。何事も無いかの様に毒を呷るその奇妙な男に興味を持つ博士。ところが地化酒場での騒動から、ある兵士を刺し殺してしまった。しかも博士が思慕を抱いた女性マルガレーテは、その兵士の妹で…という内容。

「権力者4部作」の最終作である本作は、ゲーテの「ファウスト」を自由に翻案したとの事。筆者原作を読んだのは相当昔で、殆ど覚えてないけれど…内容こそ結構違うものの、重々しい映像やセット・衣裳等の雰囲気等、かなり見事に再現しているんじゃないかな(ソクーロフがこんなに予算を使えるようになったのか)。

ただ4部作の中では唯一実在しない事もあってか、今ひとつ人物の内面が迫って感じられない様な(そもそもファウスト博士って権力者か?)。まあ直にメフィストフェレスを出さないひねり具合や溶岩地帯でのロケ等、色々と見所もある。
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2017.06.16

イディオッツ

観てみた。ラース・フォン・トリアー脚本、監督映画。1998年公開。

カレンがレストランで出逢った若者達は、障害者の振りをして無銭飲食を繰り返す「イディオッツ」という集団だった。彼らは中心人物ストファーの叔父の持ち家にたむろして、放埒・放蕩三昧の生活を送っていた。当初は当惑したカレンも、彼らと行動を共にするうちに仲間として染まっていく。実は彼女は…という内容。

簡潔さを旨とする10箇条に基づいた映画運動「ドグマ95」。トリアーは提唱者なのに殆どこの形式では撮っておらず、本作は実は貴重な作品だったりする。…内容はニセ障害者を描いたもので、観ていてイライラする事甚だしい。本作と前後の「奇跡の海」、「ダンサーインザダーク」で三部作との事で、成程そうかと。

無垢なる人間性がどうたら本性を抉るがどうたら言われたら、そんな気にもなるけど…流石トリアー人を怒らせる映画を作らせたら、右に並ぶ者は仲々いないな。ラストなんか「まぼろしの市街戦」っぽいのに、大分意味が違うぞこれ(怒)。
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2017.06.14

アレクサンダー大王

観てた、テオ・アンゲロプロス監督映画。1980年公開。

ギリシャが20世紀の到来を迎えたその日、古代の衣装に身を包んだ馬上の男「アレクサンダー大王」が現れる。彼はアテネでパーティーを開いていた、英国貴族の賓客達を誘拐してしまう。その奇妙なカリスマ性で民衆を率いる大王。彼は立て籠もった村で共産制を敷き、国家軍と対立するのだが…という内容。

アンゲロプロスにしては珍しく歴史物か、と思ったら全然違った。まあ古代の話じゃないだけで、歴史を題材にしているのも確かだが…殆ど説明も無いまま展開するストーリーは、現実のギリシャ史が背景にあるそうで。まあ筆者も詳しくは知らないけれど「旅芸人の記録」からしてそうだから、観ていて見当は付いた。

とは言えアレクサンダー大王を名乗る狂人が現れて国家に反旗を翻す、なんて展開は(笑いの要素が一切無いだけで)まるでモンティパイソンだよな。…3時間半なんて長丁場の作品は、シュールコントとでも思わないと付き合いきれんわ。
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2017.06.13

不良少女モニカ

観てみた、イングマール・ベルイマン監督映画。1953年公開。

陶器店で働くハリイは「不良少女」モニカと付き合っている。お互い家庭環境に恵まれなかった2人は、モニカの家出とハリイの解雇を機にモーターボートで船出した。夏の海で気ままに戯れる彼らだったが、そんな暮らしもやがて行き詰まる。結局街に戻った2人は、モニカの妊娠もあって結婚するのだが…という内容。

ヌーベルバーグの監督達に絶賛されたという、同監督の出世作。ただ内容自体は後の観念的作風と違い、当時の若者像を鮮烈に切り取った青春物となっている。とは言うもののその一方で、最近の若い夫婦の育児放棄による悲惨な事件等を想起させられ、普遍的な社会的問題を描いた作品でもあるのかもなあと。

「少女」という言葉の持つ儚げなイメージからは正直、モニカの存在感はかけ離れている気が(Dave Mustaine似だけどもっと貫禄ある…)。それでも破滅的な恋愛映画として、後の作品に色々影響を与えているだろう事が窺え興味深い。
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