2017.06.30

ラビッド

観てみた。デヴィッド・クローネンバーグ脚本、監督映画。1977年公開。

ローズは恋人ハートと同乗中のバイク事故で瀕死の重傷を負うも、駆け付けたケロイド医師の施術で一命を取り留める。だがそれは実験段階の細胞移植手術で、彼女は脇腹の棘の付いた突起物で他人の精気を吸い取る怪物と化してしまった。しかも被害者は凶暴化し、その症状は次々感染していって…という内容。

同監督初期のホラー作品で、肉体と精神の変容というテーマが既に見られる。扇情的に過ぎる音楽こそ違和感バリバリだが、無常観漂う結末もその後の作風を想起させた。まあ本作の場合「女吸血鬼物」の変形で、被害者の拡大は飽く迄吸血鬼の特徴を踏まえたものながら、感染型ゾンビを先取ったと言えるかも?

先取ったと言えば個人的に驚いたのは、劇中語られる細胞移植手術の説明が「iPS細胞」の概要そのままだった事(!)。…山中教授以前の研究事情はよく知らないけれど、30年前に映画で描いていたというのは、これ凄い事だよな。
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2017.06.28

血の魔術師

観てみた、ハーシェル・ゴードン・ルイス監督映画。1972年公開。

ステージ上で女性を真っ二つにし、何事も無かったかの様に元に戻す魔術師・モンターグ。彼に興味を抱いたTVキャスター・シェリーが接触する一方、舞台で切断された女性が同じ傷の死体で発見される。実はモンターグは、死体を切断魔術の為に操っていたのだ。そして遂にモンターグがTVに出演し…という内容。

1970年製作なのに、本作の公開は2年後となった(日本公開は更にその40年後)。女性を切り刻んで内臓を抉り出すいつものルイス映画だが、現実とも幻想ともつかないステージ上の演出がユニーク。個人的には何だか「ミステリーゾーン」の一編みたいだな…と思うとともに、オチなんかまるで昔の押井守かよと。

だから結構面白い作品だったのも確かなんだけど、途中の展開が(舞台で切るか突くか、刺すかが違うだけで)殆ど同じ様な場面の繰り返しなのが結構つらい。…とは言え彼の最高傑作という呼び声も、意外に大袈裟ではないかもねえ。
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2017.06.27

UP! メガ・ヴィクセン

観てみた、ラス・メイヤー監督映画。1976年公開。

米山岳地帯の田舎町、ある地下室で第三帝国総統似の男がSMプレイに興じている。ところが何者かが浴槽にピラニアを放ち、殺されてしまった。疑わしいのは食堂を経営する夫婦を始め、保安官や木こりの男。更にはマーゴという謎の女が町へとやって来る。果たして男を殺害した犯人は誰なのか?…という内容。

てな粗筋だけ読むと推理物みたいだけど、メイヤー監督らしく巨乳美女達による酒池肉林エロ映画。探偵役こそ出ないものの語り手の女優がセクシーダンスをクネクネ踊りながら、「さあ犯人は誰?」とか語りかけて来るシュールな作品。

感じとしてはエロ&バイオレンス版「ツインピークス」とでも言うか…田舎町で起きた殺人から始まって、乳・尻や恥毛のアップを次々カットアップする、突拍子の無い編集なんか結構リンチっぽい。それでも一応犯人や衝撃?の真相なんてのも用意されているので、ヘンテコには違いないけど案外真っ当に楽しめる。
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2017.06.25

カリギュラ

観てみた、ティント・ブラス他監督映画。1980年公開。

カリギュラは、ローマ皇帝ティベリウスが自分の孫を後継者にするべく、彼を亡き者にせんと画策している事を知る。しかしカリギュラは先んじてティベリウスを殺害し、ローマ帝国皇帝の座に就く事に成功する。権力を手に入れた彼は、敵を殺し享楽に耽る暴君となった。ところが最愛の妹を病気で亡くし…という内容。

本作は実在のローマ皇帝を題材にした歴史大作だが、直接の性交描写を売り物にしたハードコアポルノでもある。名の通った出演者が顔を揃えているのは、実はポルノである事を伏せていたというとんでもない話も。とは言えそのお陰?で、日本から無修正版の海外鑑賞ツアーが組まれる程のヒットになったとの事。

そういう訳で内容はエログロまみれだけど、古代ローマの暴君を漠然と想像した際の、そのままを映像で観られるのは結構凄いのでは。…これ程のディオニュソス的(いやローマだからバッカスか)狂騒は、仲々他には無いかもしれんね。
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2017.06.24

ドグラ・マグラ

観てみた。松田洋治主演、松本俊夫監督映画。1988年公開。

ある日、精神病棟で目覚めた記憶喪失の青年。彼に接見したのが若林教授と名乗る男で、前任者の正木教授が死亡したのだと言う。若林は青年の記憶を呼び覚ます為、結婚前日に婚約者を扼殺した呉一郎の話をする。自分が一郎と認められない青年は、彼に関する過去の記録を読み始めたのだが…という内容。

原作は夢野久作の探偵小説。奇書として知られる大部の同書を、本作では何と109分にまとめている。それだけで賞賛してよい程の手際だけど…祭文や架空の論文を挿入し迷宮と化す原作の魅力は、正直損なわれてしまったかなあ。

でもこうしてコンパクトな映画として観ると、記憶喪失の青年に周りが入れ替わり立ち替わり過去を思い出させようするって話は、大島渚監督の「絞死刑」と同じなんだな。まあやはり文章として圧倒的に構築された世界だけに、映画として見せられてもそう面白くは無い気がしたものの…よくぞ映像化したもんだなあと。
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2017.06.23

リアリティのダンス

観てみた、アレハンドロ・ホドロフスキー監督映画。2013年公開。

ソ連から移住し、チリのトコピージャで雑貨店を営むホドロフスキー一家。少年アレハンドロは、彼を歪んだ形で溺愛する母親と、厳格な父親との間で常に苛まれて育つ。しかも父は共産党員で、秘密裏の活動でイバニェス大統領の暗殺を画策していた。家族から離れて、大統領の馬屋番になった彼は…という内容。

原作は同監督の幼少期を綴った自伝で、自身で脚本化もしている。内容は流石に誇張もある様だが、結構赤裸々に描いているって印象を受けた。まあ映画自体はこれまでと同様、フリーク趣味やタブーに敢えて触れる扇情的な作品。

ただ「エル・トポ」や「ホーリー・マウンテン」がドラッグカルチャーからの影響を反映しているのと違って、本作はラテンアメリカ文学的な「マジックリアリズム」が感じ取れる。まあ南米の独裁者なんか出て来る辺りまんまだが…老いて尚盛んな同監督の身内から湧き出る表現が、そうした土着性へと到達したのかもね。
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2017.06.21

ホドロフスキーのDUNE

観てみた、F・パヴィッチ監督によるドキュメンタリー映画。2013年公開。

1975年、アレハンドロ・ホドロフスキー監督の手で進められていたのがSF小説「デューン」の映画化。だが有能な若手アーティストや、各界の大物出演者の快諾を得ながら企画は頓挫してしまった。本作はその顛末を追う…という内容。

本作はホドロフスキーを始めとする関係者の証言を中心に進行するものだが、時折挿入される絵コンテを用いた再現映像が興味深い。その絵を執筆したのが故メビウスで、残念ながら本作の撮影には間に合わなかった模様。僅か20部だけ製作されたという絵コンテ集が、いつの日か公になって欲しいものだなあ…

中止決定の段では悔しさを滲ませるホドロフスキーだが、穏やかに過去の日々を語る表情が印象深い。…しかし関係者が後に各界で残した作品が、本作を出発点としているのには改めて驚いた。個人的には特に、H・R・ギーガーがMagmaの「Attahk」のジャケ絵を描いた縁が、本作から続くものというのに成程と。
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2017.06.20

ロスト・イン・ラ・マンチャ

観てみた、キース・フルトン他監督によるドキュメンタリー映画。2002年公開。

テリー・ギリアム監督が長年の構想の下に着手した、「ドン・キホーテ」の映画化。2000年にスペインで撮影を開始したものの、数々の問題が重なりわずか7日間で製作が中止されてしまった。本作はその一部始終を追う…という内容。

当初から資金調達やスケジュールの問題を抱え、ロケ地では軍用機の騒音が邪魔をする。更に洪水による機材破損、止めに主演俳優の病気での離脱という数々のトラブルが襲う、さながらジェットコースター・ムービー。「完成しなかった映画」というのは浪漫をかき立てるが、大変貴重な記録でもあるのは間違いない。

と思っていたら、何とギリアム監督による「ドンキホーテを殺した男」の再撮影が今月完了したとの事(!)、そりゃスゴイ。…何だかBeach Boys「Smile」が正式リリースされた時みたいな気分だけど、同監督の執念というのを本作を観て改めて確認するのもいいかもしれない。本作が過去の笑い話になればいいね。
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2017.06.18

アンジェリカの微笑み

観てみた。マノエル・ド・オリヴェイラ脚本、監督映画。2010年公開。

ある夜ユダヤ青年・イザクの元に、上流階級の邸宅から写真撮影の急な依頼が舞い込む。その際に彼が撮った被写体は、若くして天に召された美女・アンジェリカの亡骸。しかも驚く事にシャッターを切るイザクには、彼女がまるで微笑んで見えた。その後もアンジェリカの事が頭から離れないイザクは…という内容。

2015年に106歳でこの世を去った同監督による、101歳時の映画がこちら。彼が長年暖めていたという脚本を映像化した本作の内容は、エドガー・アラン・ポオ風の幻想譚だった。写真の中から死美人が微笑む…なんて書くと怪談みたいだけど、ゆったりした進行の中にユーモアを盛り込んだ浮遊感のある作品だな。

死に魅せられた主人公からは、高齢の監督自身が生と死の境界に向き合った視線が窺えるけれど…(いかに特異な存在だったとは言え)そこにばかり着目してもな。個人的には絵画的に美しい映像からは、一切の衰えを感じないなと。
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2017.06.17

ファウスト

観てみた、アレクサンドル・ソクーロフ監督映画。2011年公開。

魂の在処を研究中のファウスト博士。活動の資金繰りに難儀する彼は、街でミュラーなる高利貸と出逢う。何事も無いかの様に毒を呷るその奇妙な男に興味を持つ博士。ところが地化酒場での騒動から、ある兵士を刺し殺してしまった。しかも博士が思慕を抱いた女性マルガレーテは、その兵士の妹で…という内容。

「権力者4部作」の最終作である本作は、ゲーテの「ファウスト」を自由に翻案したとの事。筆者原作を読んだのは相当昔で、殆ど覚えてないけれど…内容こそ結構違うものの、重々しい映像やセット・衣裳等の雰囲気等、かなり見事に再現しているんじゃないかな(ソクーロフがこんなに予算を使えるようになったのか)。

ただ4部作の中では唯一実在しない事もあってか、今ひとつ人物の内面が迫って感じられない様な(そもそもファウスト博士って権力者か?)。まあ直にメフィストフェレスを出さないひねり具合や溶岩地帯でのロケ等、色々と見所もある。
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2017.06.16

イディオッツ

観てみた。ラース・フォン・トリアー脚本、監督映画。1998年公開。

カレンがレストランで出逢った若者達は、障害者の振りをして無銭飲食を繰り返す「イディオッツ」という集団だった。彼らは中心人物ストファーの叔父の持ち家にたむろして、放埒・放蕩三昧の生活を送っていた。当初は当惑したカレンも、彼らと行動を共にするうちに仲間として染まっていく。実は彼女は…という内容。

簡潔さを旨とする10箇条に基づいた映画運動「ドグマ95」。トリアーは提唱者なのに殆どこの形式では撮っておらず、本作は実は貴重な作品だったりする。…内容はニセ障害者を描いたもので、観ていてイライラする事甚だしい。本作と前後の「奇跡の海」、「ダンサーインザダーク」で三部作との事で、成程そうかと。

無垢なる人間性がどうたら本性を抉るがどうたら言われたら、そんな気にもなるけど…流石トリアー人を怒らせる映画を作らせたら、右に並ぶ者は仲々いないな。ラストなんか「まぼろしの市街戦」っぽいのに、大分意味が違うぞこれ(怒)。
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2017.06.14

アレクサンダー大王

観てた、テオ・アンゲロプロス監督映画。1980年公開。

ギリシャが20世紀の到来を迎えたその日、古代の衣装に身を包んだ馬上の男「アレクサンダー大王」が現れる。彼はアテネでパーティーを開いていた、英国貴族の賓客達を誘拐してしまう。その奇妙なカリスマ性で民衆を率いる大王。彼は立て籠もった村で共産制を敷き、国家軍と対立するのだが…という内容。

アンゲロプロスにしては珍しく歴史物か、と思ったら全然違った。まあ古代の話じゃないだけで、歴史を題材にしているのも確かだが…殆ど説明も無いまま展開するストーリーは、現実のギリシャ史が背景にあるそうで。まあ筆者も詳しくは知らないけれど「旅芸人の記録」からしてそうだから、観ていて見当は付いた。

とは言えアレクサンダー大王を名乗る狂人が現れて国家に反旗を翻す、なんて展開は(笑いの要素が一切無いだけで)まるでモンティパイソンだよな。…3時間半なんて長丁場の作品は、シュールコントとでも思わないと付き合いきれんわ。
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2017.06.13

不良少女モニカ

観てみた、イングマール・ベルイマン監督映画。1953年公開。

陶器店で働くハリイは「不良少女」モニカと付き合っている。お互い家庭環境に恵まれなかった2人は、モニカの家出とハリイの解雇を機にモーターボートで船出した。夏の海で気ままに戯れる彼らだったが、そんな暮らしもやがて行き詰まる。結局街に戻った2人は、モニカの妊娠もあって結婚するのだが…という内容。

ヌーベルバーグの監督達に絶賛されたという、同監督の出世作。ただ内容自体は後の観念的作風と違い、当時の若者像を鮮烈に切り取った青春物となっている。とは言うもののその一方で、最近の若い夫婦の育児放棄による悲惨な事件等を想起させられ、普遍的な社会的問題を描いた作品でもあるのかもなあと。

「少女」という言葉の持つ儚げなイメージからは正直、モニカの存在感はかけ離れている気が(Dave Mustaine似だけどもっと貫禄ある…)。それでも破滅的な恋愛映画として、後の作品に色々影響を与えているだろう事が窺え興味深い。
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2017.06.11

ベニーズ・ビデオ

観てみた。ミヒャエル・ハネケ脚本、監督映画。1992年公開。

ビデオ映像に囲まれた生活を送る少年ベニー、彼を最も魅了するのは豚の屠殺場面だった。ある日ビデオショップの店先で知り合った少女を自分の部屋に上げるのだが、弾みで彼女を殺害してしまう。殺人にも特に動揺を見せない彼は、その際の録画を両親に見せる。父と母はこの異常な事態に際し…という内容。

本作はハネケ監督の劇場映画第2作。前作「セブンス・コンチネント」に近い暴力と空虚が支配する日常の危機を描くと共に、後の作品でも多く見られるニュースや自家撮り場面を挿入した、入れ子構造の映像表現が採り入れられている。

ただ作品としては(表層上)「キレやすい若者」だの「理由無き殺人」だのの、結構手垢の付いた社会派的題材とそこまで差異を感じないので、他作ほどには衝撃も無いかなあ。…とは言え繰り返し流される屠殺シーンや全く理解不能な主人公像等、観ていて不愉快な気分になれる事請け合いな辺り、流石のハネケ印。
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2017.06.10

ベトナムから遠く離れて

観てみた、J・L・ゴダール監督他によるドキュメンタリー映画。1967年公開。

社会主義国家・北ベトナムの誕生に際して、アメリカが仕掛けた所謂「ベトナム戦争」。米の圧倒的武力投入にも関わらず泥沼化した同戦争は、市民による反戦運動も引き起こした。その高まりを受け、ゴダールやアラン・レネを始めとする仏の映画監督が中心となって、取り組んだオムニバス映画が本作…という内容。

本作公開時には戦争の終わりはまだまだ見えず(1975年終結)、今総括的に同戦争に触れるドキュメンタリー等とは違って、当時における速報性の高い内容となっている。また街頭での激しい討論と共にカストロ議長へのインタビューや、ゴダール自身の独白といった様々な「声」が記録されているのも興味深い。

特に題名の元になったベトナムからの「距離」に対するもどかしさなどは成程という感じ(…元は仏が植民地化していたせいなんだしなあ)。勿論今となっては意味を失った主張もあるが、本作から普遍的な意義を汲み取るのも悪くない。
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2017.06.08

抵抗 死刑囚は逃げた(公開時タイトル:抵抗 死刑囚の手記より)

観てみた。ロベール・ブレッソン脚本、監督映画。1956年公開。

1943年ドイツ占領下のリヨン。対独抵抗活動により逮捕されたフォンテーヌは、モントリュック監獄に収監されてしまう。次々に仲間が銃殺される中で、誰一人試みない脱獄を彼だけが日々周到な準備の下進めていた。だが遂に彼に死刑宣告が下され、しかも彼の独房に素性の判らぬ少年が送り込まれ…という内容。

カンヌ映画祭で監督賞を獲得した本作の原作は、アンリ・ドヴィニ大佐による戦中体験の手記。監督が巻頭言で語る通り本作は、事実をありのまま再現したと思しき映像の隅々までに見応えがある。…内容としては要するに脱獄物だけど、扉の板を削り布を裂いて綱を作るといった描写一つ一つが持つ説得力に唸る。

神は細部に云々というまさに実例だが…ドラマ性を極限まで省いたところに卒然と立ち昇る「ドラマ」は、まさに同監督ならではのスタイル。この後作られる名作に先立つ(「スリ」における詳細描写とかな)作品としても観ておいて損は無い。
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2017.06.07

トスカーナの贋作

観てみた、アッバス・キアロスタミ監督映画。2010年公開。

伊トスカーナ地方の町で、英人作家が「贋作」に関する講演を行った。聴講に訪れていた女性が作家を案内する事になり、彼らは真作と贋作との関係について対話を繰り広げる。そしてあるカフェで夫婦と間違われた事をきっかけに、2人はまるで長年連れ添った夫と妻であるかの様に振る舞いだすのだが…という内容。

作家の著書「本物より美しき贋作」の題名がそのまま本作のテーマだとすると、それは勿論出逢ったばかりの男女による仮初めの恋愛の事だろうけど…作り話である筈の映画に心打たれる事もあるという、メタ的な含みもあるんじゃないかな。実際観ていて筆者、いつの間にこの人ら結婚したんだ?と混乱したのだわ。

とは言え上記の要素を気にせず観たら、ユーモアやスノッブ感等をオミットしたウディ・アレンの映画みたいな作品だったけど。…表現の自由を求めてイラン外で制作した本作もまた、同監督の映画に対する相克を反映しているのだろう。
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2017.06.06

倫敦から来た男

観てみた、タル・ベーラ監督映画。2007年公開。

港湾内の管理施設で働く鉄道員のマロワン。彼がいつもの様に夜勤の間に港や船を眺めていた時、ロンドンから来た男ブラウンが、口論の末その相手を海に投げ込んで殺害する現場を目撃してしまう。海に落ちた鞄を拾ったマロワンがその中に見つけたものは、海水に濡れた大量のポンド紙幣で…という内容。

原作はジョルジュ・シムノンの小説。本作も内容自体はフィルムノワールと言っていい犯罪物だが…138分もかけた恐ろしくスローな進行の上に、極端に少ない台詞や白黒での撮影という、文芸映画的手法が用いられているのが特徴。

この監督には7時間以上の作品もあるそうなので、本作はまだ取っつきやすい方だけど…(長さどうこうの話ではなく)手法と内容がミスマッチするよりは、次作の「ニーチェの馬」みたいにもう少し寄り添ってくれていた方が色々納得出来るとは思ったかな。とは言え美しいモノクロ映像を眺めるだけで充分楽しめる。
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2017.06.03

「Two」THREE MAN ARMY

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聴いてみた、イギリスのハードロック・バンド。1974年発表。

「スリー・マン・アーミー」はGun解散後、Gurvitz兄弟により結成されたグループ。1971年に1st、1973年には2nd。翌年本作である3rdアルバムをリリースした後解散した。メンバーはドラマーのみ一定しておらず、3rd制作時の布陣は、Paul Gurvitz(b,vo)、Adrian Gurvitz(g,vo)、及びTony Newman(ds)。

個人的に1stはずっと愛聴していたのに、そういや他のは聴いてなかったなと。本作3rdでも基本的な路線は一緒ながら、演奏に関しては相当にヘヴィ。Gurvitz兄弟のバンドは活動当時、残念ながら余りセールスには恵まれなかった模様だが…本作などは(ZEPやパープルみたいなS級とは言えずとも)どこに出しても恥ずかしくない、一線級の英ハードロックと言える内容なのは間違いない。

…「Gurvitz兄弟」とここまで書いて来たけれど、そう言えば今回買ったCDのライナーだと、弟Adrianの名字は「Curtis」となっていた。えっ、どういうこと?

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2017.06.02

「ブラボージョニーは今夜もハッピーエンド」KENZI

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聴いてみた、日本のパンクロック・バンド。1986年発表。

「ケンヂ」(vo.)は1964年に札幌市で生まれ、高校時代にはスマロ子というバンドで活動を開始する。上京し知名度を上げた後に、インディーズレーベルのシティロッカーよりリリースしたのが、1stアルバムである本作。その後「Kenzi & The Trips」と改名し、メジャー会社・クラウンよりデビューを飾る事となった。

当時発売されたレコードは即完売して入手困難になったそうで。今回購入したCDはインディーズ時代の音源を全て収録した「Deluxe Edition」。内容的にはビート・パンクと呼ばれるものだが、当時先端だったスターリンや…特にINUからの影響が感じられる(どの曲を聴いてても「インロウタキン♪」って言いそうな気が)。

でもそれに加えて、更に50'sテイストが採り入れられているのが面白い。80年代当時はリバイバル真っ盛りの中チェッカーズなんか流行っていた訳で…パンク以外のそうした同時代状況的な反映が、今となっては興味深いかもしれん。

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