2022.03.31

「電脳コイル企画書」徳間書店刊

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読んでみた、日本の出版社によるビジュアル・ムック。2008年発表。

磯光雄監督・マッドハウス制作で、2007年よりTV放映されたアニメーション作品「電脳コイル」。本書は2000年、同作の準備段階に磯監督の手で作成された「企画書」で、構想の変遷をイメージ画多数と共に追っている…という内容。

感じとしては同監督の最新作「地球外少年少女」でも構想段階に、アニメスタイル誌上で概要を連載していたけど、あれを思い浮かべればいい(…読んでないか)。自身の筆によるキャラクター等のデザイン画や各種設定、それに加えて初期のシノプシス等と、実際に完成した作品と結構異なっているのが興味深い。

逆に全26話での全体構成などは、早くもほぼ完成作通りのものを見据えていた事が判る。…要するにまあ、初期の楽し気な電脳わんぱく戦争から薄暗い都市伝説への移行は、当初から織り込み済みだった様で。じゃあ当初の雰囲気を惜しんでも、仕方なかったのかもなあと。とは言え大変興味深い本ではある。
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2022.03.30

「ザ・コクピット / 松本零士の世界」小学館刊

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読んでみた、日本の出版社によるビジュアル・ムック。1994年発表。

松本零士による戦争漫画連作シリーズ「ザ・コクピット」。本書は「成層圏気流」「音速雷撃隊」「鉄の竜騎兵」の3話構成で製作されたOVAと共に、「戦場まんがシリーズ」が織り成す松本作品世界の魅力を紹介していく…という内容。

本書ですごいのはBf109/アルカディア号を始めとする、作中機体再現用のプラモデカールが付属してるところ。それに限らずOVA各話を担当した川尻・今西・高橋各監督のコメントを始め、同シリーズ編集者や元アシの新谷かおる、映画999等を手掛けたりんたろう監督といった、関係人物が語る逸話が楽しい。

更に興味深いのが松本本人の対談だが、その相手が架空戦記で新進気鋭だった佐藤大輔。松本の発言自体面白いけれど(レビC12D入手の経緯は、新谷証言と併せて読むと面白い)、佐藤が他メディアでは見られない程自身について語っている辺りへえと。当時はピンと来なかったろうし、読むべきは今かも。
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2022.03.28

「タツノコ・ヒーローズ / ’70年代・タツノコ4大ヒーロー集合!!」DARTS編

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読んでみた、日本の出版社によるビジュアル・ムック。1994年発表。

1962年、吉田竜夫を始めとする三兄弟により設立されたのが、アニメ制作会社「タツノコプロ」。本書は同プロの代表的ヒーロー作品、「ガッチャマン」「キャシャーン」「ポリマー」「テッカマン」を、中心に採り上げたムック…という内容。

タツノコプロ創業30周年を記念して制作されたOVA、「キャシャーン」に合わせて刊行されたのが本書。その後も梅津泰臣キャラデザで「ガッチャマン」「ポリマー」もリリースされたのはご存知の通り。でも本書は主にオリジナル版のデザイン画や、企画書本文からの引用といった貴重な資料から構成されている。

それ以上に(夭折した長兄・竜夫は流石に除いて)当時健在だった、関係者のコメントが今となっては貴重。個人的には「SF考証」を担当した、小隅黎の証言が興味深い。…結局その後もリメイクばかりな一方、現在の代表作はプリティーシリーズとなった同プロ。なんかこう、またすごい作品を期待したいものだが。
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2022.03.27

「レッド・オクトーバーを追え」トム・クランシー著、井坂清訳

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読んでみた、アメリカ人作家による長編小説。1984年発表。

極めて静粛性の高い推進装置を搭載した、ソ連の最新型ミサイル原潜「レッド・オクトーバー」。ところがラミウス艦長率いる同艦は消息を絶ち、ソ連海軍は必死の捜索を行う。その動向を受けて、CIA所属のライアンは…という内容。

ショーン・コネリーの主演で、1990年には映画も製作された。そちらの内容は多少簡略化してはいるけれど、だいたい同じ(だったと思う)。本書は冒険小説ならぬ、「軍事テクノスリラー」の嚆矢ともなる重要作だが…軍事関連用語の氾濫を抜きにしたら、2時間の映画に収まるだけあってプロット自体は案外単純。

本書の影響を強く受けたと思しき漫画、「沈黙の艦隊」(1988年)の複雑なストーリー展開に触れた後だと、拍子抜けしてしまうかもしれない(軍用語も沈黙を読んでいれば余裕だし)。…本書は「ジャック・ライアン」シリーズの第1作でもあるのだが、彼の内面描写は「ダイ・ハード」の主人公刑事にも先駆けてるかも。
posted by ぬきやまがいせい at 22:59 | Comment(0) | 読書

2022.03.25

素敵な歌と舟はゆく

観てみた。オタール・イオセリアーニ脚本、監督映画。1999年公開。

友人から借りた大型バイクに乗って、ガールハントする鉄道清掃員の青年。富豪の子息である事を隠す二コラは、皿洗いのバイトをしつつ不良と付き合っている。二コラの父は実業家として働く妻に頭が上がらず、酔っ払いながら猟銃を撃つ。更に彼らを取り巻く人々が織り成す、人生模様は続いて…という内容。

イオセリアーニ監督の作品は以前「月曜日に乾杯! 」(2002年)を紹介したけれど、こちらの映画はその前作に当たる。製作時期が近い事もあってか、まあ大体同じような内容。…なので正直、感想として特段書くような事もないや。

あえて書くならやっぱり、本作でもブニュエルやタチの作風を思い出さざるを得ない事か。でも本作ではなぜか、「ハゲコウ」という巨大な鳥が画面に頻繁に登場するのが気になる。監督はその鳥に「哲学者の視線」を担わせたそうだが…ブニュエル「黄金時代」の部屋を闊歩する象に較べたら、まあ確かに哲学的か。
posted by ぬきやまがいせい at 23:45 | Comment(0) | 映画

2022.03.24

「トップをねらえ大全!」バンダイビジュアル刊

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読んでみた、日本の出版社によるビジュアル・ムック。2012年発表。

庵野秀明監督・ガイナックス製作で、1988年より発売されたOVA「トップをねらえ!」。鶴巻和哉監督による続編OVA「トップをねらえ2!」に、外伝漫画「NeXT GENERATION」等を加え、同作の関連資料を網羅する…という内容。

網羅とはいうけど(自分が知る中だと)コミックノイズィ連載、大連作による漫画は洩れていた。まあ基本的には既存刊行物からまとめられた情報や資料が中心なので、そこまで目新しい記述はなかったと思う。故にやはり貞本・美樹本両キャラデザ担当による対談を始めとする、関係者証言が一番読み応えある。

設定資料と言っても、おそろしく小っちゃく掲載されているのが殆どで、頑張って見ようとしたら眼精疲労との戦いは必至。正直同じボリュームなら、初代だけでまとめてくれてたらなあ…とは思ってしまうのだが(まずは監督インタビューが欲しい)。とは言え2やNGはほぼ知らないので、逆にそっちの方が見所かも。
posted by ぬきやまがいせい at 19:34 | Comment(0) | 読書

2022.03.22

「エヴァンゲリオン・スタイル」森川嘉一郎編

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読んでみた、アニメ作品のビジュアル・ムック/評論本。1997年発表。

庵野秀明監督・ガイナックス製作で、1995年よりTV放映されたアニメーション作品「新世紀エヴァンゲリオン」。本書はブーム絶頂の中発売された研究本で、デザインや映像といったその優れた「スタイル」を解明していく…という内容。

当時山ほど刊行された、謎本みたいな便乗出版物だが…作品内の映像から無断使用した廉で、販売差し止めになってしまったとの事(でもまだ何故か新品が売ってる)。内容はそれこそ当時溢れていたエヴァを小難しく語るって趣旨の本で、関係者から冷笑的に否定されただろう、「考えすぎ」の論述で溢れている。

そんな本を今更読む価値って? …まあ新劇って結局、良かったのいくと要素だけだよね(※個人の感想です)となった今なら、むしろ改めて読む意義もあろう。現代美術や都市論との関連を探る本書で「やっぱり旧エヴァって刺激的だったよね」、いやさ「やっぱりあの頃って楽しかったよね」、と懐かしむのも悪くない。
posted by ぬきやまがいせい at 23:26 | Comment(0) | 読書

2022.03.21

「ゼーガペイン / ファイル サルベージ」新紀元社刊

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読んでみた、日本の出版社によるビジュアル・ムック。2010年発表。

下田正美監督・サンライズによる製作で、2006年よりTV放映されたアニメーション作品「ゼーガペイン」。今なお根強い人気に支えられる同作が放映4年後にもなって、投票によりBD-BOX化されたのに併せて刊行されたのが本書。

その後も外伝小説等の派生作品が、展開されているのはご存知の通り。ただ本書はムックとは言ってもA5サイズの版型で、少々小さいのはネック。各キャラクターやメカの初期から決定までのデザインを収録しているのが、目を引くだけに勿体ない。とは言え4年後だけあって、同窓会的な雰囲気に和んでしまう。

本書では特に企画からデザイン全般を手掛けた、(老師こと)幡池裕行デザインディレクターの仕事がクローズアップされているのが最注目点。当初表舞台からは一歩引いたスタンスに感じられただけに、本書での下田監督との対談は興味深い。まあ本当に画稿が小さくてつらいが、虫眼鏡を駆使しても読むべき。
posted by ぬきやまがいせい at 20:53 | Comment(0) | 読書

2022.03.19

「機動戦士ガンダム公式設定集 / アナハイム・ジャーナル U.C.0083-0099」エンターブレイン刊

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読んでみた、日本の出版社によるビジュアル・ムック。2003年発表。

宇宙世紀0100年と共に創刊100号を迎えた、アナハイム・エレクトロニクスの雑誌「アナハイム・ジャーナル」。本書はそれを記念して、カーバイン現名誉会長インタビューを始め、様々な方面から同社の活動を紹介する…という内容。

AE社というのはご存じ、ガンダム世界の架空企業。本書では藤岡建機を筆頭とするイラストに賀東招二らの文章を加え、尤もらしい体裁で架空の雑誌を作り上げている。まあ0100になってGPシリーズの情報が開示されたのはいいけど、何でラプラス事件には一切触れてないのさ?…とか思ったり(無茶言うな)。

08小隊を劇中映画とするかの様な記述ばかり注目されるが…読んだ印象だと未来の雑誌というか、「スタジオボイス」(休刊)や建築誌「スペースデザイン」(休刊)を連想したりして。まあ「G20」なんて雑誌でサブカル的切り口が試みられた、その流れだろうな。個人的にはさり気ないセンチネルへの言及にニヤリ。
posted by ぬきやまがいせい at 21:58 | Comment(0) | 読書

2022.03.18

シークレット・ウォー / ナチス極秘計画

観てみた、アンダシュ・バンケ監督映画。2020年公開。

第二次大戦中の1943年。ポーランド国内でドイツ軍は、同地の物理学者・ファビアン博士に新兵器の開発を強要していた。英米の連合国軍は、カミンスキーを中心とする救出部隊を極秘裏に派遣。極寒の中博士と一人娘を助け出したものの、彼の妻が犠牲になってしまう。そこへ更にソ連軍が現れ…という内容。

その博士のモデルになったのが、ジョセフ・ロートブラットという実在の科学者。こんな作戦があった訳ではない様だが、彼が新兵器=原爆の開発に携わったのは事実らしい。まあフィクションとしてなら、悪くない着想だとは思うけど…

邦題や最強兵器なんて惹句に引かれて見たら、実際は地味で辛気臭い映画。まあ今の世界情勢の中、戦争映画で楽しもうって気にもならないけれど。…とは言え個人的には、独軍戦車として「38(t)」が登場していたのにはおっと。どうやら改造車輛の様だが、映画での登場は珍しい上にかなり雰囲気が出ていた。
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2022.03.16

「ボトムズ・アライヴ」岡島正晃、あさのまさひこ、中島紳介著

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読んでみた、アニメ作品のバラエティ書籍/インタビュー集。2000年発表。

高橋良輔監督・日本サンライズによる製作で、1983年よりTV放映されたアニメーション作品「装甲騎兵ボトムズ」。ロボットアニメの到達点にして今なお人気が衰えない同作を、関係者証言を始め様々な角度から検証する…という内容。

本書刊行時は「赫奕たる異端」発表後だが、その後も続編製作が行われたので情報として少々古いのは仕方ない。とは言え既に故人となった塩山紀生氏をはじめ、高橋監督の長文インタビューが読めるのは現在でも貴重。AT開発史を書いたのは同人サークル・ATVPの人か。そういう辺りも大変ユニークな本。

加えて本書で特異なのは、当時発売されたタカラ製プラモデル「1/24スコープドッグ」開発者へのインタビュー。名作プラモとして強烈なインパクトを与えた同作だが(多分クラタスの人の実物大も影響下にありそう)、アニメと模型との深い関係に切込んだ視点は本当に鋭い。少々の古さなどは気にせずに読むべき。
posted by ぬきやまがいせい at 23:35 | Comment(0) | 読書

2022.03.15

「Uボート」ロータル=ギュンター・ブーフハイム著、松谷健二訳

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読んでみた、西ドイツ人著者による長編小説。1973年発表。

第二次大戦中の1941年、フランスの港湾基地から出撃したドイツ潜水艦・UA。彼らは果てしなく長い艦内生活の末、大西洋で華々しい戦果を挙げる。ところが帰投に際し、地中海への進出という無謀な命令を受け…という内容。

1981年にウォルフガング・ペーターゼン監督で製作された、西ドイツ映画の原作が本書。1984年には映画の3倍程もの尺を用いた、TVドラマとしても再編集されているけれど…そのどちらも原作と比較すると、大きく取りこぼしているものがあるのは確か。それはまあ言ってしまえば、「文学」的な含蓄じゃないかな。

本書で海洋要素や語り手の存在から、メルヴィル「白鯨」を想起するのは勿論、乗組員の無頼な描写からは下層民を描いた、自然主義文学を連想する。加えて危機的状況で語り手が追想に逃避する辺りなどは、「意識の流れ」そのもの。本書は単なる戦争冒険小説ではなく、まさしく堂々たる「戦争文学」だろう。
posted by ぬきやまがいせい at 23:12 | Comment(0) | 読書

2022.03.13

シング・ストリート / 未来へのうた

観てみた、ジョン・カーニー監督映画。2015年公開。

1985年アイルランド。高校生・コナーは、父親の失業で公立校「シング・ストリート」へ転校する事に。そんな時出逢ったのがモデルのラフィーナで、コナーは彼女の気を惹くためにバンドを結成する。2人の仲は進展したものの、彼女には交際中の相手が。更に両親別居で、彼の家庭は遂に破局し…という内容。

でバンドの方の名前も同じく「シング・ストリート」なんだけど、その演奏が当時全盛だったニューウェーブそのままといった感じ。当初垢抜けなかった主人公も次第に、まるでDuran Duranみたいなファッションに変貌するのが面白い。

まあ内容は青春/恋愛映画といった感じで、正直そこまででも(バンド描写自体は薄い)。でもThe JamやThe Cureといった既存曲に加えて、オリジナル曲が魅力的。当時っぽさに思わずニヤリとしてしまうが、高校生が作ったにしてはクオリティ高すぎだな。MuteやRough Trade辺りに持ってったら契約できそう。
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2022.03.11

「暗殺者」ロバート・ラドラム著、山本光伸訳

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読んでみた、アメリカ人作家による長編冒険小説。1980年発表。

「J・ボーン」という名前と断片的に甦る記憶が、頭部の負傷から記憶を失った男に残された、僅かな手掛かり。協力者の女性マリーと共に、彼は正体不明の殺し屋が率いる組織、そして自身の正体へと迫って行くのだが…という内容。

マット・デイモンの主演で映画化された、「ボーン・アイデンティティー」(2002年)の原作が本書。原作と言うか…「ジャッカルの日」に対する「ジャッカル」(1997年)みたいな関係じゃないかと。そちらよりはまだ共通点があるものの、ほぼ別物。残念ながら本書の重層的で緊密な構成は、再現出来なかったと見える。

やはり媒体の違いとして、主人公が自身の身の処し方を考えに考え、自身の過去に隠された謎を悩みに悩む、強迫的内面描写は映像には出来ないよなあと。…まあ代わりにアクション描写を見所に、大ヒットシリーズになったのはご存じの通り。でもやっぱり本書の面白さは圧倒的なので、こっちも読んでほしいな。
posted by ぬきやまがいせい at 23:46 | Comment(0) | 読書

2022.03.09

「ブラジルから来た少年」アイラ・レヴィン著、小倉多加志訳

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読んでみた、アメリカ人作家による長編小説。1976年発表。

メンゲレ医師を始めとするナチス残党が、ブラジルで秘密会合を開いた。そこで話合われたのは65歳で公務員という共通点のある男性を、90人以上も殺害するというもの。情報を掴んだ反ナチの有力者、リーベルマンは…という内容。

自分の世代だとグレゴリー・ペックがメンゲレ役を演じた、1978年公開の同名映画が有名。なので本書の謎も、相当知れ渡っているのだけど…サスペンス、冒険小説という以上に「ホワイダニット」のミステリとしての内容を尊重して、ネタバレは控えておく。実に優れた着想の名作なので、本当は知らずに読むべき。

Slayerの歌詞でもお馴染み「死の天使」ことメンゲレは、映画公開の翌年にまんまと逃げおおせた末に死んでいる。出来れば本書みたいに、悲惨な最期だったらよかったのだけれど。まあ本書のメンゲレは、リーベルマンを待ち受けている間の一人芝居というか、一人コントみたいなのが可笑しくて憎めないのよな。
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2022.03.08

ラスト・ワルツ

観てみた、M・スコセッシ監督によるドキュメンタリー映画。1978年公開。

1976年11月25日に、サンフランシスコのウィンターランドで行われたロック・バンド、「The Band」の解散コンサート。ライブ活動の休止を決めた彼らは、多数のゲスト・ミュージシャンと共に演奏を行った。本作は公演当日の模様に、活動を振り返るメンバーのインタビューを織り交ぜて構成されている…という内容。

自分はThe Bandだと1stアルバムを聴いた位で、正直そんなには。なので本作を観るにも、思い入れというのは無かった訳だけど…映像も込みだと思ったより楽しめた。スコセッシ監督も初の音楽映画ながら、最初から仲々の手腕。

まあ音楽自体はバンド自身のより、ゲストの持ち曲を演奏してる時の方が盛り上がった、というのも確か。親分?格のBob Dylanは勿論、Ringo StarrやEric Clapton、(コカインでラリった)Neil Youngと盛り沢山。…どうも内情は色々あったようだが、ロック映画の名作と言う評価自体は揺るがないのでは?
posted by ぬきやまがいせい at 22:46 | Comment(0) | 映画

2022.03.06

イエスタデイ

観てみた。ヒメーシュ・パテル主演、ダニー・ボイル監督映画。2019年公開。

しがない店員のジャックは、幼馴染のエリーをマネージャーに、売れない歌手活動を続けていた。だが地球全体が一瞬停電したある夜、彼はこれまでとは違う世界に迷い込んでしまう。それは「ビートルズ」が存在しない世界。ジャックは彼らの楽曲を演奏し、やがてそれが世界的な注目を浴びてしまい…という内容。

日本でも近いアイデアの漫画が連載されたけど、そちらと違うのは舞台が公開時の2019年な辺り。その設定を踏まえて登場したある人物のシーンが、作中でも特に感動的なものとなっている(ここまで書いたら、ほぼネタバレだな…)。

ただビートルズ好きの立場から言えば本作は、どうもかゆい所に手が届かない。まあそれより個人的には、Ed Sheeranが本人役で登場しているのが興味深かった。…いやそんな詳しい訳じゃないけれど、ホビット2主題歌の「I See Fire」はすごい好き。これならThe Long And〜ともいい勝負になったのに。
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2022.03.05

「ご冗談でしょう、ファインマンさん / ノーベル賞物理学者の自伝」R・P・ファインマン著、大貫昌子訳

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読んでみた、アメリカ人著者による自伝/エッセイ集。1985年発表。

量子電磁力学への多大な功績で、ノーベル物理学賞を獲得した科学者「リチャード・フィリップス・ファインマン」。本書は彼が友人と対話した際の録音を元に、自身の人生で体験したユニークな出来事を縦横に語っていく…という内容。

おそらく著者の研究内容以上に知られているだろうベストセラー。本書でも自身の口で説明はしているけれど…よく判らないので、まあそんなもんかと流してもよいのでは。少年時代の実験精神から始まり、絵画や音楽さらには金庫破りと、様々な分野に果ての無い好奇心を向ける様子を、ユーモラスに綴っている。

特に「アルタード・ステーツ」みたいな装置に嬉々として入って、幻覚の実験をしているのは色々な意味ですごいわ。ただ原爆製造に携わった際の挿話も、他のイタズラ武勇伝と全く変らない調子なのには正直複雑な気分。…まあその後来日して日本を絶賛しているのを見ると、純粋に無邪気な人なんだろうなって。
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2022.03.03

ウィンチェスター銃'73

観てみた。J・スチュワート主演、アンソニー・マン監督映画。1950年公開。

稀に見る出来栄えで、ある町の射撃大会で賞品になった名銃「ウィンチェスター・ライフル」。だが優勝したリン・マカダムは、その際勝負を争ったダッチ・ヘンリーに、手に入れた銃を奪われてしまう。リンが彼を追う一方でそのライフルは、賭博で負けたダッチが手放してから、持ち主を次々に変えて…という内容。

そのライフルが「西部を征服した銃」とも呼ばれた「M1873」で、拳銃における「コルト・シングル・アクション・アーミー」と共に、西部劇を象徴する様な存在だ。10発もの装弾数に、レバーアクションによる手動連発式。センターファイア実包の採用という先進性は、拳銃弾を使用した低威力すら補っていたのだろうな。

とは思うものの現在の感覚では、そんなありがたがるような銃?、なんて思ってしまったり。まあ実在銃がテーマな事自体珍しいし、数奇な運命の銃に翻弄される人々を描いた、異色の西部劇…という着想からして、実際良いと思う。
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2022.03.02

8日で死んだ怪獣の12日の物語 / 劇場版

観てみた。斎藤工主演、岩井俊二監督映画。2020年公開。

コロナ・ウィルスが全世界に蔓延、誰もが外出を自粛して自宅に引き籠った2020年。サトウタクミはネットで話題になっている、「カプセル怪獣」の飼育を始める。友人たちとビデオ通話で情報を交換する一方、怪獣は姿を変え、数を増して進化を遂げていた。それはまるで、コロナ・ウィルスを思わせて…という内容。

樋口真嗣らの原案によるWeb動画作品、「カプセル怪獣計画」を再構成した劇場版である本作。…昨今の深刻な世界情勢を受けて、リモート環境によるビデオ通話を作品化するという、まさにコロナ時代を象徴した映画となっている。

でもむしろ小洒落たオサレ感・サブカル感、みたいなものの方が前に出ているのは、監督のせいなのか。とは言え元ネタである、ウルトラシリーズからの(出演もしている樋口による)小ネタで進む話ではあるので、結構大笑いしてしまったな。そういや怪獣は、監督自身の造形だそうだけど…グドン、好きなのかな?
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