2022.08.31

「フォッケウルフ戦闘機 / ドイツ空軍の最強ファイター」鈴木五郎著

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読んでみた、日本人著者によるノンフィクション。2006年発表。

第二次大戦中のドイツ空軍で、Me109と並んで活躍したのが、名戦闘機「フォッケウルフ・Fw190」。本書ではフォッケウルフ社の誕生から、クルト・タンク博士による開発経緯等を、豊富なエピソードを元に紹介していく…という内容。

本書は1979年にサンケイ出版社から刊行された本の、増補改訂版。なので少々古いと言うか、内容に当時っぽい癖がある。独軍首脳部の会話とか妄想以外の何物でもないって気がしたし…でも同機の解説は勿論、フォッケとウルフの出逢いからタンク博士の最期までと、一応は同社の沿革を追った内容ではある。

でもそこから脱線する事甚だしい。まあ独軍のトップエースは殆どMe109乗りなので、搭乗員の話をしたら離れるのも仕方ないけれど…ヒトラー暗殺等に関しても延々書いてたりする。なのでWW2ドイツ空軍全般に関する、ライト層向けの読み物かもなと。まあ自分はまさしく「ライト層」だから、結構楽しく読めた。
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2022.08.30

ハッパGoGo / 大統領極秘指令

観てみた。D・ブレックナー、A・ゲレロ、M・ヘッチ監督映画。2019年公開。

密輸大麻を一掃するべく、世界で初めて完全に合法化したウルグアイ。ところが国内の自主的供給が滞り、国民の不満は爆発寸前。そこで訪米を控えたムヒカ大統領は、密輸で懲役を喰らっていた薬局経営のアルフレド親子をアメリカに派遣し、新たな大麻供給先を見つけるよう指令を出すのだが…という内容。

「世界一貧しい大統領」と呼ばれた、ホセ・ムヒカも登場する本作。任期は2015年で終わっているので、撮影時には大統領ではなかった様だけど…本作のセミドキュメンタリー的雰囲気と、ゆるいユーモア感はこの人あってこそだろう。

本作は勿論フィクションなのだろうが…アメリカの大麻合法化集会や様々な胡散臭い人物たちとの交流が、やけに自然に描かれる辺り相当上手くやっている。まあ言ってしまえば映画というよりは、TVの「リアリティショー」番組そのままの手法だけど、肩の凝らない内容もあって一見の価値はあるんじゃないかな。
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2022.08.28

「夜想音像版別冊2 / 上海星屑(しゃんはいすたーだすと)」ペヨトル工房刊

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聴いてみた、日本の出版社による雑誌別冊/カセットブック。1983年発表。

雑誌「夜想」、音像版別冊の第2弾である本書。ブックレットの趣旨としては、既に日本とは頻繁に行き来のあった戦前「上海」に関して特集したもの。丸尾末広のイラストや、当時を振り返ったエッセイ等が収録されている…という内容。

でカセットの方は上海のホテルで活動していた、2つのジャズバンドの音源を収録している。40年代ジャズをそのまま凍結保存した様な演奏は冊子によると、文革を経てもなぜか奇跡の様に命脈を保っていたとの事。演奏・存在そのものが持つノスタルジーの魅力から、本書刊行に至ったのではないかと想像する。

でも奇跡というのはそう長続きするものではなく、本書刊行の前には社会情勢の変化からバンドは活動終了を余儀なくされた様だ。内容的には「虹の彼方に」を始めとするスタンドナンバーを収録したものだが、ホテルでの録音がガレージパンクみたいに荒れた音質(この例え合ってるかなあ?)で雰囲気出ている。
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2022.08.27

「空の戦争史」田中利幸著

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読んでみた、日本人著者によるノンフィクション。2008年発表。

航空機の登場、特に空中から破壊兵器を投射する、いわゆる「爆撃」により、戦争の様相は一変された。ところが未熟な技術のために、民間人を巻き込む「無差別爆撃」が横行し、遂には積極的に是認される事となって…という内容。

書名を見るともっと広い話題を扱っていそうだが、本書は初の爆撃から原爆投下までに行われた「無差別爆撃」の歴史を解説している。更に要約すると、「民間人への非人道行為を糾弾する」内容なので、それ自体は自分も何ら反論する余地はない。ただ結論ありきで論を進めるかの様な、違和感はあるかなあ。

とは言え着眼点自体は鋭く、加えて初期の航空戦力発展史的な辺り(B-25のネーミング元になったミッチェル少将を始め、米軍兵器名の元の人物が続々登場する)を読むと、仲々はっとさせられるのも確か。…現在では当然そうした思想にも変化はあるので、それを踏まえた歴史の一側面として読みたいところだ。
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2022.08.25

「テロリストのパラソル」藤原伊織著

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読んでみた、日本人作家による長編推理小説。1995年発表。

アル中のバーテンダー・島村は、ある日爆弾テロに巻き込まれる。その際彼が学生活動家時代交際していた女性が犠牲になり、また島村も犯行を疑われて警察から追われる。島村は独自に、事件の真相を追うのだが…という内容。

史上初めて、乱歩賞と直木賞を同時受賞した本作。内容としては所謂「ハードボイルド」で、燻ぶった現状でも矜持を失わない中年主人公を始め、周囲の魅力ある人物描写などからは「古き良き」という形容をしたくなる。ただいい人ばかり揃ってる辺り都合よく感じるのは、既に馳星周「不夜城」を知っているからかも。

同じ新宿を舞台に悪党同士の抗争を描き、新時代のノワールとして「不夜城」が登場したのが、本作刊行の翌年(1996年)というのは、改めて考えると出来すぎているな。…まあこの2作をあえて比較する必要もないので、純粋に本作ではチャンドラー直系の「ハードボイルド」としての雰囲気を楽しむのがいいだろう。
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2022.08.24

「リッチー・ブラックモア・アンソロジーVOL.1」リッチー・ブラックモア

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聴いてみた、英国人ギタリストのアンソロジー・アルバム。1995年発表。

「Ritchie Blackmore」は1945年にサマセット州で誕生し、ミドルセックス州ヘストンで育つ。11歳時にギターを手にしてより、様々なグループに所属した。1967年にはDeep Purpleを結成、ハードロック・ギタリストとして世界的存在となる。その後もRainbowやNightといった、自身のバンドで演奏を行っている。

本作はその「様々なグループ」で残した、貴重な録音を集大成したシリーズ。恐らく日本盤のみのリリースで、リッチーの日本での人気の高さが窺える。Glenda Collins、Heinz、The Outlawsといったバンドでの音源が中心だが…パープルやレインボーのライブも入っている辺り、親切仕様と言うべきだろうか。

というのもやっぱりパープル以前はジャンル傾向がだいぶ違うので、HRを期待したら面食らってしまうかも。…筆者は逆にそうした時代にやっていたのが、「ガレージパンク」だと聞いて興味を持ったからいいんだけど。Heinzなんかは成る程尖った演奏で結構イケる。ただ曲自体としては今一つなのは致し方ないか。

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2022.08.22

「半落ち(はんおち)」横山秀夫著

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読んでみた、日本人作家による長編推理小説。2002年発表。

現職警部・梶聡一郎が、アルツハイマー病の妻を手に掛けたと自首して来た。早速取り調べが行われて自供を得たものの、梶は犯行後の「2日間」の行動に関しては頑として口を噤んだまま。果たして事件の真相とは?…という内容。

映画・ドラマ化もされたベストセラーの本書。ところが直木賞選考の段階で「致命的欠陥」を指摘され、激しい議論を呼んだ。要するに法制面での考証不備といったところだが、作者は真っ向から対立し遂に決裂するという事態に陥った。

そういうややこしいのを抜きにしたら本書は、アルツハイマー殺人という題材を採り上げた社会派ミステリだが…1つの事件を刑事・検事・記者・弁護士・裁判官・刑務官という、立場の違う人々の視線から描いた辺りに構成の妙が光る。ただ「泣ける小説」的な受け方をしたという節もあるので、揚げ足取り(失礼)の標的になってしまったのかも。とは言え、上記を踏まえた上でも面白いのも確かだな。
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2022.08.20

「ハサミ男」殊能将之著

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読んでみた、日本人作家による長編推理小説。1999年発表。

女子高生2人を手に掛けた連続殺人犯、通称「ハサミ男」。ハサミ男が次なる標的を狙っていたところ、何者かが先んじてその少女を殺害していたのを発見する。濡れ衣を着せられたハサミ男は、その模倣犯を追ったのだが…という内容。

著者のデビュー作にして、今なお読み継がれる名作。…と言ったのも覆面作家として活動した殊能は、既にこの世の人ではないから(2013年没)。今回初めて同著者の本を読んで得た情報がこれで、帆場暎一の後でも追っていた様な気分になった。「ハサミ男」なる人を食った名称や存在感も、著者自身に重なる。

色々書こうにも、ネタバレになってしまうのがつらい。まあ個人的にはその「ハサミ男」というのが、XTCからの引用というのは興味深かった。内容は屈折した状況設定とユーモアを感じる手際に、巧みなトリックが仕込まれた構成は成る程見事なものだが…やはり、上記した現実世界でのサプライズが衝撃的だったわ。
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2022.08.19

「イニシエーション・ラブ」乾くるみ著

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読んでみた、日本人作家による長編恋愛/推理小説。2004年発表。

大学生の鈴木は、合コンで出逢った繭子と交際を始める。「たっくん」「マユ」と互いに呼び合う2人は、遂に結ばれ…(side-A)。地元企業から東京に派遣された鈴木、遠距離恋愛の関係となったマユとは…(side-B)、という2部構成。

推理要素のある恋愛小説として話題になった本書。自分もあらかじめそれを知って、構えて読んだのだが。いきなり怪しいムーブ全開で、ぶっちゃけその疑惑は当たったんだけど…後半に行くに従い恋愛小説として修羅場モードに入ってしまい、うへえとなって正直すっかり忘れてた。結局まんまと驚かされた訳で。

驚かされたと言うか正直釈然としない。本書を恋愛小説と捉えたら、こんな仕掛けする意味がないし…やはり新本格の飛び道具系推理小説として、楽しんだ方がいいな。とは言え80年代を舞台に、当時のTV番組や流行を採り入れた「風俗小説」の側面もあるので、しみじみと懐かしんでもいい(いや自分は別に…)。
posted by ぬきやまがいせい at 03:04 | Comment(0) | TrackBack(0) | 読書

2022.08.17

「X - X section」V.A.

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聴いてみた、オーストラリアの音楽レーベルのオムニバス。1991年発表。

「Extreme」レーベルは1985年、Ülex Xaneにより設立。当初は地元豪州のミュージシャンをカセットでリリースしていたものの、1987年にはRoger Richardsにレーベルは譲渡された。その後もエレクトロ系中心に、アンビエントやノイズのアーティストを、国際的に広く登用した。2000年代まで活動していた模様。

まあ今聴いてる人もあまりいなさそうだけれど…筆者は長年積んでたユリイカの、1993年4月「ロック」号を最近読んだもんで。その特集で同レーベルに関する記事があって、久し振りに思い出していた(当時でも同レーベルに着目してるのはすごい)。で本作は、同レーベル関連アーティストを集めたオムニバス盤。

内容は大まかにエレクトロ系だが、Shinjuku ThiefやMuslimgauzeがエスニック要素を採り入れており、その印象が強かった。まあこのアルバム自体は散漫で、正直そこまでお薦め出来ないけど…日本から参加のMerzbowを始めとして、名前を挙げたアーティストの作品は、聴いておいていいんじゃないかな。
posted by ぬきやまがいせい at 21:54 | Comment(0) | TrackBack(0) | 音楽

2022.08.16

「屍人荘の殺人(しじんそうのさつじん)」今村昌弘著

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読んでみた、日本人作家による長編推理小説。2017年発表。

大学生の葉村と明智は少女探偵・比留子と共に、映画研究部夏合宿に参加する。脅迫状が届いた曰くつきの催しの一方、近隣フェス会場では観客を巻き込む異常事態が発生。更に投宿先では殺人事件まで起きて…という内容。

国内のミステリ賞を総ナメにした本作、「意表を突いた趣向」で話題に。まあ本項では一応伏せておくけれど…本作の映画版では、その辺のネタバレに気を遣った事で、逆にジャンル詐欺と受け取られて、酷評されたのだから難しいな。

あと個人的には驚いたし楽しんだだけに、「ラノベ的」という批判はどうなの。まず「新本格」ってジャンルが、既にホラー要素を採り入れた先例がある上、飛び道具的な描写でとっくにラノベ的な訳で。そういう意味で本書は、(ラノベどうこう以前に)新本格の正常進化と言ってよいと思う。まあ首を傾げる点が無いでもないが、Bruce Springsteenの曲が流れる、某映画に触れてるだけでアリ。
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2022.08.14

「痛みの文化史」デイヴィド・B・モリス著、渡邉勉、鈴木牧彦訳

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読んでみた、アメリカ人著者によるノンフィクション。1991年発表。

医学による解明・撲滅の努力は勿論、人間にとって根源的な関りを持つのが「痛み」。本書では歴史上、文学や芸術作品として表現されてきた「痛み」を紹介すると共に、長らく見誤られてきたその本質へと迫る論考集…という内容。

「痛み」をキーワードに、古今東西それらに関する話題を総合したという大変な労作。ヒステリーや幻肢痛といった医学の話題から、古代演劇にキリスト磔刑像といった芸術表現まで。特に「痛み」と言えばこの人という、サディズムの創始者…マルキ・ド・サドに関しては、一章を割いて解説している辺りが興味深い。

至って真面目な文化論の本で、大変読み応えあったのだが…そういやこの本の出た90年代って、「おなら大全」とか「でぶ大全」みたいな、奇矯なテーマによる逸話を集めた本が色々出てたなって。本書をそういうのと一緒くたにしていいものかどうかは判らんけれど、内容の多彩さ自体でサブカルっぽい印象を抱く。
posted by ぬきやまがいせい at 06:04 | Comment(0) | TrackBack(0) | 読書

2022.08.12

「輪廻交響楽」芸能山城組

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聴いてみた、日本の音楽グループ。1986年発表。

科学者としての本業を持つ傍ら、別名義で音楽活動もする「山城祥二」。「芸能山城組」は山城を中心に1974年、日本でのケチャ上演をきっかけに結成。多分野・大人数のメンバーで演奏される楽曲は、バリ島のケチャやガムランを始めとする、世界中の民族音楽要素を採り入れたもの。現在も不定期的に活動中。

で代表作は言わずと知れた、アニメ映画「AKIRA」での音楽。実は製作前に大友監督から、本作の曲を使いたいという打診があったとの事。結局は新曲が作られた訳だけど、もし本作から使われていたら…という興味があって聴いた。

実際AKIRAを思わせる曲も多く、成る程という感じだが…実は本作中にはアクション場面に合いそうな音楽がないので、映画の印象も変わっていたかも。メロディが弱い浮遊感のあるエレクトロ系の楽曲は、MuslimgauzeやShinjuku Thief等を輩出した、Extremeレーベルを連想した(…知ってる人いなさそう)。
posted by ぬきやまがいせい at 22:19 | Comment(0) | TrackBack(0) | 音楽

2022.08.11

「The sinking of the Titanic」GAVIN BRYARS

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聴いてみた、イギリスの現代音楽作曲家。2014年発表。

「ギャヴィン・ブライアーズ」は1943年、ヨークシャーのグールで誕生。シェフィールド大学で哲学と音楽を学んだ後に、ジャズ・ベーシストとして活動を始めた。その後は主に作曲家として作品発表を続け、特に「タイタニック号の沈没」は彼のライフワークとも言える題材で、数度に渡って録音を行っているとの事。

特に有名なのは、1975年にBrian EnoのObscure Recordsよりリリースした最初の録音で、この作品でBryarsは世界的に知られる。タイタニックが沈没する際、同船の楽団が演奏を続けたというエピソードを元にした作品で、大変優れたコンセプトだが…同じ題材で他にも誰か曲を作ってた気がする。誰だっけ?

本作は2012年に行ったツアーで収録したライブ…実は1975年版と、間違えて買ったんだけど。本作もBryars自身のベースによるドローンを中心とした演奏で、物悲しい中に抒情的なメロディーを織り込んだ楽曲は、大変素晴らしい。
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2022.08.09

「Sweeter than the day」WAYNE HORVITZ

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聴いてみた、アメリカのピアニスト/現代作曲家。2001年発表。

「ウェイン・ホーヴィッツ」は1955年、シアトルにて誕生。1980年代にJohn ZornのNaked Cityに参加した事で注目を集める。その後も演奏者としてだけでなく、オーケストラや演劇用の作曲といった幅広い分野で活動を行っている。

本作はピアニストとしてのリーダーズアルバムで、Timothy Young(g)、Keith Lowe(b)、Andy Roth(dr)というメンバーと共に…まあジャズをやっている。ただ編成を見れば判る様に「管」が入っていないので、いわゆる暑苦しい感じのジャズではなく、彼の作品らしいノンジャンル・境界的な作風となっている。

中でもアヴァンギャルドに振れた演奏は、フリージャズと言うより現代音楽、あるいは前衛ロック的な即興と言えるかも(Naked Cityの同僚Fred Frithの、Henry Cowでの感覚に近いというか)。まあ個人的にはそういう方が取っ付きやすいのだが、その他の曲での演奏はもっと(一般的な意味で)聴きやすいと思う。
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2022.08.08

「明日への対話 / 病気の哲学のために 」フランソワ・ダゴニェ著、金森修訳

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読んでみた、フランス人著者によるインタビュー集。1996年発表。

哲学を学んだ後に、医者としての経歴も積んだ「フランソワ・ダゴニェ」。フランスの代表的「科学認識論者」であるダゴニェが、インタビュアーのフィリップ・プティを相手に、現代「医学」に関して自身の見解を縦横に語っていく…という内容。

(自らは明言を避けたけど)プティの言によると著者は、「社会主義的」な医学を指向しているとの事。顕著なのは臓器移植に対する考えで、遺族の意向に関わらず社会貢献の移植は行うべきとするもの。これには流石に日本版訳者も懸念を示しており、向精神薬使用の肯定と共に成る程随分と即物的に感じられた。

でもその反対に、人間にとってはそれぞれなるべくしてなる病気がある…という運命論的な発言もしている辺り、正直素直に頷けない内容の本でもある。とは言え読みやすい対話篇形式なので、医学に関する多様な問題提議(仏ローカルの話もあるけれど)を扱った本書は、仲々興味深く読めるのではないかと。
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2022.08.06

「看護必携シリーズ17 / ナース・看護学生のための 図解 医療機器と看護用具」藤田昌雄、相羽満佐江、安藤昭子監修、学研刊

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読んでみた、日本の出版社による医学・看護学解説書。1990年発表。

新たな技術開発により、日進月歩での進歩を見せる「医療機器」「看護用具」。本書では看護師や看護学生に向けて、実際の現場で必要となるそれらの取り扱いを、写真やイラストを用いて具体的に解説するものである…という内容。

人工呼吸器や透析器等、具体的な機種を挙げて操作法を解説している辺り、成る程実用的。でも30年以上前の刊行なので、それらの機器が現在の現場でも使われているのかどうか。流石に使われてない機械の使い方を知っても仕方ない気がするが…その前に自分は素人だから、どっちみち使う機会はないわな。

とは言え血圧計のモニタの読み方や、除細動器の使い方(パドル!チャージ!…ERでやってたあれだわとか)の解説などを読むと、ぼんやりしたイメージしか持ってなかった色々が判って興味深い。そういう次第でこの本も専門的すぎる上に古いものの、素人が概要を知ろうとする分には現在でも悪くないのでは?
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2022.08.05

「看護がみえる vol.1 / 基礎看護技術」医療情報科学研究所編、メディックメディア刊

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読んでみた、日本の出版社による看護学解説書。2018年発表。

看護を学ぶ者に向けた書籍として、「ビジュアル化」を重視して刊行されたのが、同出版社による「看護がみえる」シリーズ。vol.1となる本書では、衛生面や患者への援助といった、「基礎看護技術」について解説する…という内容。

売り文句の通りイラストや写真が豊富なお陰で、素人が読んでも大変判りやすいと思える内容。ただ逆に言えばあくまで実践的な本なので、素人が知っても意味ないなという程に、微に入り細を穿っての解説が並んでいる訳だが(あと何でこの手の本は、難しい漢字に読み仮名を振ってくれないの…冷罨法とか)。

しかし徹底した衛生管理の項目を読むと、ナイチンゲールも感動しそうな位厳重なので、隔世の感を覚えたりして。…ただ本書はコロナ禍以前の本のため、また新たなガイドラインが看護の現場でも必要になっているのではないかと。そう考えると割と最近刊行の本書が、隔世の感を以て読まれる時代であるのかも。
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2022.08.03

「Chorbuch Les inventions d'adolphe sax」MAURICIO KAGEL

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聴いてみた、アルゼンチンの現代音楽作曲家。2012年発表。

「マウリシオ・カーゲル」(現地語表記: mauˈɾisjo ˈkaɣel)は1931年、ブエノスアイレスで誕生。1957年に西ドイツのケルンに移住し、Herbert Eimertが設立した(世界初の電子音楽スタジオとして知られる)「ケルン電子音楽スタジオ」で音楽の制作を行った。その後もドイツで活動し、2008年にこの世を去った。

本作は彼が2007年、ネーデルランド室内合唱団とラッシャー・サクソフォン四重奏団の演奏で録音したもの。内容としては、いかにも現代音楽の声楽曲といった感じを想像すればいい。自分はプログレ者なので、Opus Avantraみたいかな…と思ったけれど、取っ付き悪い「Strata」よりもっと取っ付き悪かった。

Kagelは実は「ハプニング」系の作品で有名。楽譜上「指揮者が倒れる」とか「楽器に飛び込む」という指示があったり。本作は晩年の作だけに純音楽的だが…写真を見ると演奏者が変な帽子をかぶってる辺り、やっぱり変ではある。
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2022.08.02

「看護覚え書 / 看護であること看護でないこと 改訳第7版」フロレンス・ナイチンゲール著、湯槇ます、薄井坦子、小玉香津子、田村眞、小南吉彦訳

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読んでみた、イギリス人著者による看護学指南書。1860年発表。

クリミア戦争に看護師として従軍した後、看護学校の設立等で現代看護学の礎を築いた「フロレンス・ナイチンゲール」。本書は当時の看護師に向けて書かれた「ノート(覚え書)」だが、現在でも看護を学ぶ者の古典になっている名著。

本書では患者への配慮は勿論、病院建築における換気の必要といった衛生面を特に強調している。まあ今では当たり前な事なのだが…それが当たり前でなかった当時、信念をもって広めた業績を踏まえて読むと感動的。でも「天使」のイメージとは反対に、語調は怒りに満ちているのは知ってた方がいいかも。

時代的な変化に加えて実践的な提言が中心なので、看護・医療従事者ならともかく素人には流石にピンと来ないところも。でも19世紀における、歴史的な資料としても興味深い。例えばディケンズは同時代の作家なので、彼の作品で描かれた都会=ロンドンが、いかに無茶苦茶な環境だったか改めて判って怖い。
posted by ぬきやまがいせい at 21:30 | Comment(0) | TrackBack(0) | 読書