2022.10.31

トランス・ワールド

観てみた。スコット・イーストウッド主演、J・ヘラー監督映画。2011年公開。

自動車がガス欠になり、夫とはぐれて森の山小屋に逃げ込んだ妊婦・サマンサ。彼女はそこで同じく遭難した青年・トムと出逢う。更に恋人と2人組で各所を荒らし廻った女強盗・ジョディが加わるも、何故か彼らは一向に森から脱出出来ない。3人は各々の事情を話し合った末、この森の異状に気付き…という内容。

主演はクリント・イーストウッドの息子で、本作は彼の初初演作となる。ただかなりの低予算な事が窺える辺り、あまり親の七光りは授けてくれない父君なのかも? でもその代わりなのか、本作は巧みなアイデアが光る良脚本の逸品。

ホラーチックな演出で始まるものの、実は紛れもないSF映画。必要最小限な舞台設定ながら、あっと驚かせる展開で引っ張る辺りお見事(「LOST」っぽいなと思ったら実際影響を受けたらしい)。ただ根本的な原因が好みではないなあ…とは思ったけれど、「世にも奇妙な物語」を引き合いに出す人が多いことに納得。
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2022.10.30

囚われた国家

観てみた、ルパート・ワイアット監督映画。2019年公開。

2027年。地球全土が「統治者」と呼ばれる異星人に征服されてより、9年が過ぎていた。統治者の下で警察が市民生活を監視する一方、彼らを打倒するべくレジスタンス組織も活動していた。ところが組織の一員であるガブリエルは、シカゴ警察のマリガンに捕縛されてしまい、ある密命を余儀なくされ…という内容。

エイリアンによる侵略SFなのは間違いないものの、描かれるのは警察とレジスタンスによる暗闘という異色作。なので自分がポスター等のビジュアルで惹かれた、巨大人型兵器らしき機械も、作中ではちっとも動かなかったりする。…これネタバレではあるけれど、むしろ知らずに観る方が怒ってしまうかもしれないし。

だからエイリアン云々は舞台設定と割り切って、「影の軍隊」みたいなレジスタンス映画と思って観るべき。まあそれを知った上でも、結構退屈なのは確かだが…SF映画としては、なかなか意欲的で渋い。と言ってもいいんじゃないかな。
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2022.10.28

ヨーロッパ横断特急(原題:Trans-Europ-Express)

観てみた。アラン・ロブ=グリエ脚本、監督映画。1966年公開。

パリからアントワープへと「ヨーロッパ横断特急」に乗り、麻薬を運ぶ男。エリアスは犯罪組織の構成員となるべくそのテストを受けているのだが、彼の前には様々な障害や試練が、次々訪れる。という映画の構想を、客室で話し合う映画製作者達。ヨーロッパ横断特急の進行と共に、エリアスの身にも…という内容。

その映画製作者として登場するのが、監督のロブ=グリエ本人。要するに「メタフィクション」としての構造を採り入れた作品なのだが、そのお陰か同監督にしてはユーモラスな雰囲気があって、案外取つきやすい内容となっていいる。

加えて表面的には(一応)サスペンスフルなフィルムノワールとしても成立しているので、前衛的なばかりでないのもいい感じ。でも本作でもやっぱり、緊縛シーンやストリップを延々見せたりする辺り、いつものロブ=グリエ。…尚Kraftwerkのアルバム「ヨーロッパ特急」だと、「Trans-Europe Express」という表記。
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2022.10.27

快楽の漸進的横滑り

観てみた。アラン・ロブ=グリエ脚本、監督映画。1974年公開。

マネキンの様にベッドに縛り付けられ、ハサミに胸を貫かれたノラという女。その現場を刑事に目撃され、ルームメイトのアリスは殺人容疑で逮捕される。取り調べを受けるアリスの前には、判事や修道女といった人々が次々現れる。そしてノラそっくりな女性弁護士と共に、殺人現場の再現を行ったのだが…という内容。

ロブ=グリエによる監督第5作だが、エロティックな内容の為に各国で上映禁止になったとの事。それ以上に前衛的すぎで面食らってしまうのでは。象徴と隠喩に満ちた謎めいた演出に加えて、血の赤や靴の青といった鮮烈な色彩表現を採り入れている。まあ個人的には、白黒の方がいい気はしたけど…これはこれで。

性と死のイメージを執拗に反復させてるだけで、ストーリーは無いようなもの。…とも言い切れない辺り、個人的には結構楽しめたんだけど(特に結末での円環構造の提示)。タイトルのヘンテコさから、期待させるだけのものはあるはず。
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2022.10.25

不滅の女

観てみた。アラン・ロブ=グリエ脚本、監督映画。1963年公開。

旅行者としてトルコを訪れた、フランス人教師のアンドレ・ヴァレ。彼は偶然に出逢った現地の者ではないラーレと名乗る女性の案内で、イスタンブール各地を観て廻る事に。ところがラーレはある日突然に姿を消し、ヴァレは彼女を追い求める。関係者に問い質すも、彼女の実在は不確かになってゆき…という内容。

映画ファンにとってロブ=グリエは、主に「去年マリエンバートで」(1961年)の脚本を担当した事で知られるのでは。本来小説家だった彼が、映画の監督に乗り出したのも、恐らく同作がきっかけだったのだろう。監督デビューとなった本作は、やはりマリエンバートを連想させる、幻想的で謎めいた作品となっている。

「宿命の女」をモチーフにした本作、実はマリエンバート程不可解でも難解でもなかったりする。演出や編集こそかなり突飛で驚くものの、女の謎や正体自体は割と明快に示しているし。…まあ明快すぎとは思うものの、これはこれで。
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2022.10.24

木と市長と文化会館 / または七つの偶然

観てみた。エリック・ロメール脚本、監督映画。1993年公開。

フランスのある田舎。社会党の市長・ドゥショームが、広大な草原を利用して「文化会館」建設を計画していた。ところが小学校教師のマルクは、その土地にある大樹が失われると知って大反対。記者のブランディーヌは両者を取材したものの、刷り上がった雑誌はマルク有利な内容。更に偶然が重なって…という内容。

その取材の場面が「CBSドキュメント」みたいな(この例え通じるかなあ?)、バリバリの政治談議。映像自体はいつも通りのタッチで、あまり変わらない。でも普段なら人物が延々交わす会話の内容は、恋愛に関するものばかりだった筈なのに。ロメールもゴダールと同じく、30年ばかり遅れて政治に目覚めたのか…

と思ったら、市長が10歳の少女とガチ討論を始めて、これコメディだったのかよと。しまいにはミュージカルになってしまう辺り、完全にしてやられた。ロメールの普段の作風を知っていた方がより楽しめるので、何本か観た後に是非。
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2022.10.22

パリのランデブー

観てみた、エリック・ロメール監督映画。1995年公開。

浮気性の恋人に悩む女性が、スリの被害に遭って…(7時のランデブー)。恋人とは冷め切った関係ながら別れられない、そんな女性が男性と公園巡りのデートを重ね…(パリのベンチ)。画家の男性がピカソ展である女性を見初める。彼女をアトリエに呼んだのだが…(母と子 1907年)。という3話構成のオムニバス。

パリの街で出逢った人々の「ランデブー」をテーマにした本作。ロメール監督らしく浮遊感のある作風自体は一貫しているものの、お話としてはナンパ失敗や長年の関係の破局を描いた、ちょっとビターなもの。…だからと言って特別暗くも重くもならないし、1話が30分ほどなので、気軽に観ればいいんじゃないかな。

まあ殆どのシーンが人物2名で長々と会話を交わしているだけ…という例の感じなので、流石に万人が面白がれる様な映画じゃあないとは思う。とは言えパリの風景や、人物の佇まいを速描的に切り取った映像は、それだけで魅力的。
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2022.10.21

友だちの恋人

観てみた。E・ショーレ主演、エリック・ロメール監督映画。1987年公開。

市役所勤めの職員・ブランシュと大学生のレア、食堂で偶然出会った2人はすぐに気が合い交流を始める。レアには恋人のファビアンがいるも最近は上手くいかず、ブランシュも知り合ったアレクサンドルに惹かれつつも臆病なまま。だがいつしかブランシュとレアは、新たな恋に目覚めることとなって…という内容。

「海辺のポーリーヌ」(1983年)を始めとする、ロメール監督の代表的連作シリーズ「喜劇と格言劇」の第6作。…本作も「友達の友達は友達」という、(笑っていいともみたいな)フランスの格言をテーマとして踏まえた作品となっている。

略奪愛というかスワッピングというか、際どそうな展開になりそうなところを、サラリと微笑ましく着地させる辺りロメール作品は気分よく観られてよい。まあファッションやら雰囲気やらが、80年代トレンディドラマみたいなのは個人的には何だけど(フランスの俳優が、さんまと大竹しのぶに見えてきた)…でもよいね。
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2022.10.19

アニエスによるヴァルダ

観てみた、A・ヴァルダ監督によるドキュメンタリー映画。2019年公開。

1928年のベルギーで、ギリシャ人の父親とフランス人の母親との間に生まれた「アニエス・ヴァルダ」。写真家を経て映画監督になった彼女は、2019年にこの世を去るまで数多くの作品を遺した。本作はヴァルダが手掛けた映画を始め、写真やインスタレーション等について、自らの口で解説していく…という内容。

なので非フィクションという意味でドキュメンタリーとしたけど、内容自体はエッセイや自叙伝…いや本作がヴァルダ最後の映画となった事もあり、「遺言」そのものかも。そう言ったら何やら重そうだが、ユーモラスで楽しい彼女自身を反映した、あくまでも軽やかな作品。彼女の映画を観ていなくても、それは伝わる筈。

意外に作中で多くは語られていないのだけれど、夫である同じく映画監督のジャック・ドゥミへの控えめな愛情表現(彼女がドゥミの写真を抱える仕草とか)が窺えるのも素晴らしい。…穏やかで、心にじんわりと来る映画ではなかろうか。
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2022.10.18

ダゲール街の人々

観てみた、A・ヴァルダ監督によるドキュメンタリー映画。1975年公開。

銀板写真の発明家から名前を採った、パリの14区・モンパルナスにある「ダゲール通り」。50年以上も同地で生活したというヴァルダが、その街の商店で働いている人々の姿を中心に、記録したドキュメンタリーが本作…という内容。

これ以上付け加えるものはないかなあ。でも一応説明すると…香水店や精肉店、雑貨店やパン屋、通りで経営する商店の日常風景。更にそうした人々にあれこれ質問をしたインタビューといった、まあ何でもない映像と言ってしまえばその通り。とは言え50年近く前のパリの商店なんて、見る機会がないのも確か。

また本作ではそうした商店活動と「手品師」の芸を、並行モンタージュさせているのが面白い。刃物の手品と肉屋の手際、催眠術と美容院の客さばき…こうして並置されると、どちらにも素朴な「驚き」が隠れている。これが何を訴えているのか…判らんけど、作り手からはその街の「一部」としての視線を感じるのでは。
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2022.10.16

ラ・ポワント・クールト

観てみた。アニエス・ヴァルダ脚本、監督映画。1955年公開。

水質が汚染された漁場。生活のため漁を続けたい村民と衛生局とで、確執が起きつつあるその地に、ある男が12年ぶりで帰郷してくる。彼を追ってパリ女の妻も現れ、2人は村を散策しながら会話を交わす。結婚4年目を迎えて倦怠期にあり、夫の浮気もあって妻は、関係を清算する積りだったのだが…という内容。

ヴァルダ監督の長編デビュー作であり、ゴダールやトリュフォーに数年先駆ける作品として、彼女は「ヌーベルバーグの祖母」とも呼ばれる。…と言うか本作はむしろ、漁民たちの生活感描写からネオレアリズモ。夫婦が交わす愛情に関する対話の気怠さからは、アントニオーニ監督的な「愛の不毛」を連想させられる。

要はフランスよりも、イタリア映画を思い出させられるのだけど…深い被写界深度の白黒映像で捉えた、はっとするくらいに斬新な構図・移動は、成程ヌーベルバーグの感性に先駆けたものかも。ただ退屈と言えば、退屈な映画かなあ。
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2022.10.15

レニ

観てみた、レイ・ミュラー監督によるドキュメンタリー映画。1993年公開。

1902年に誕生した「レニ・リーフェンシュタール」は、舞踏家・女優を経て映画監督になる。だがその才能を見出して、プロパガンダ映画の製作に起用したのが、ヒトラー率いるナチスドイツ。大変に優れた作品を手掛けながら、戦後はナチスの戦争犯罪と共に彼女も、協力者として長年月批判に晒されて…という内容。

ドイツではタブー的存在として扱われて来た、生前のレニ本人が登場するドキュメンタリー。3時間にも渡る大作だが、90歳当時の彼女が自作の撮影地であるオリンピック会場や雪山、更に海中に潜って元気溌剌な姿を見せている。謎めいたイメージとは逆で意外…でも流石に上記問題に関しては困惑を隠さない。

まあ技術と芸術にしか興味がなさそうなところを見ると、本人ばかりが悪いとは言い切れないし、悪いのは「運」だったとしか言い様がないな。…本作はそうしたレニの心情を、彼女の作品の映像と共に伝える貴重極まりない作品。必見。
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2022.10.13

「栄光加藤隼戦闘隊」安田義人著

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読んでみた、日本人著者によるノンフィクション/自伝。1986年発表。

第二次大戦中の南方戦線で、加藤建夫日本陸軍中佐の下に活躍したのが、飛行第64戦隊こと「加藤隼戦闘隊」。本書は一式戦闘機・隼パイロットとして戦った著者が、激戦を乗り越え最終的に本土に帰還するまでを描く…という内容。

本書は「今日の話題 ビルマ隼戦記」(1956年)を、全面的に改稿した本の文庫版。…1942年に加藤は戦死し、翌年には安田は部隊を離れた。同隊は終戦まで存続したものの、「加藤隼戦闘隊」ではなくなっていたという。そのため本書は隊の通史的な内容ではなく、実際に隊員だった著者の体験記となっている。

そのお陰か空戦だけでなく、撃墜とそこからの生還等と、波乱万丈なエピソードが満載の本。…因みに映画化までされた同部隊が当時日本中で有名になったのは、(これまた有名な)部隊歌が人気を博した事から。そちらの歌詞にある「隼」が、一式戦闘機の公式名称として採用されたという順番らしい。へえ。
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2022.10.12

ヘルムート・ニュートンと12人の女たち

観てみた、G・V・べーム監督によるドキュメンタリー映画。2020年公開。

1920年、ベルリンのユダヤ人家庭に生まれた「ヘルムート・ニュートン」。ナチス台頭を逃れ国外脱出した彼は、写真家として身を立てる事に。戦後ヴォーグ誌と契約し、ファッション写真の分野で世界的な注目を集める。本作は彼と関わった女性の証言を中心に、ニュートンの作品と生涯を紹介する…という内容。

自分はニュートンの写真集は1冊持っているきりだが、そちらに収録されている作品も本作に登場する。…彼の写真は主に、白黒で捉えた女性のヌードで知られるけれど、その作風の確立過程を本人自らが語っているのが興味深い。

ユダヤ人としてナチスの迫害を体験しながら、レニ・リーフェンシュタールが描いた、ヌードとしての肉体美に惹かれたという。実にもって屈折した美意識を感じる訳で。その一方で彼のヌードをマネキンの様にも感じるのだが…実際彼自身マネキンを撮影しているのが面白い。それがなんか「Ohマイキー!」みたい。
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2022.10.10

「海軍航空隊始末記」源田實著

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読んでみた、日本人著者によるノンフィクション/自伝。1996年発表。

第二次大戦中。日本海軍参謀として、大鑑巨砲主義に代わる「航空主兵論」を推し進めたのが、著者こと「源田實」。本書は真珠湾奇襲から終戦まで、彼が見つめた戦争の趨勢、航空部隊の部下達への想いを綴ったもの…という内容。

本書は1962年に「〜戦闘篇」として刊行された本の文庫版。つまり前編となる「〜発進篇」(1961年)もあるので、著者が航空主兵論を自己のものとするまでの前史が欠けている(一応解説で概要は判る)。要は本書は戦史的な議論の俎上に乗る事が多いのは当然として、個人史的な側面は承知して読むべきかと。

特に自身が司令官となった「343空」こと剣部隊の部下達を語る筆致は、それまでの戦局・作戦分析とは全く異なりひどく感傷的。本書も身内褒めやら自己保身やらと評されるし、著者が激しい毀誉褒貶に晒されるのは当たり前とは思うけれど…そういう辺りを読んでしまうと、悪く言う気はなくなるなあ。個人的には。
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2022.10.09

エッシャー / 視覚の魔術師

観てみた、ロビン・ルッツ監督によるドキュメンタリー映画。2018年公開。

1898年にオランダで誕生した「M・C・エッシャー」は、正則分割と呼ばれる数学的・工学的技法を採り入れた、画期的な版画作品で注目をあびた。本作は彼の生涯と作品の数々を紹介する、ドキュメンタリー映画である…という内容。

ドキュメンタリーと言っても、エッシャー本人が語っているかの様なナレーションを用いた、一人称的な進行が採られている。それが彼の著書を読んだ上だとどうも違和感があって、(学者然とした印象と違い)頑固親父みたいな感じになっている。まあバラエティ的アプローチな映画の様なので、仕方ないのかもなあ。

そういう意味ではエッシャーのご子息達の他に、Graham Nashが登場してコメントしているのは興味深い。どうやらサイケ・ムーブメント当時、まだ存命だったエッシャーにそうしたミュージシャンがコンタクトを取ったらしい。でもそういう辺りを深掘りするでもないので、正直あんまり面白みは感じない作品ではあった。
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2022.10.07

ガッジョ・ディーロ

観てみた。トニー・ガトリフ脚本、監督映画。1998年公開。

父親の形見のカセットテープに残された、ジプシー女性の歌声。「ノラ・ルカ」というその歌手に逢うべく、仏人青年・ステファンは欧州の片田舎を訪ね歩く。そんな時イシドル老人と出逢い、彼はロマの村に住み着く事に。村の女・サビーナと共にステファンは、彼らの演奏する音楽を録音して回ったのだが…という内容。

監督自身ロマの血を引いており、出演者も主役級2名を除き、全員が現地で暮らす本物だとの事。そういう意味で映画とは言え、ロマの実情に基づいている辺り大変に興味深い。特に音楽は全編に渡って豊富で、聴き応えあるのでは。

個人的に結婚式での演奏は、バルカン半島のダンス音楽(自分の場合こちらを先に知った)と共通点があって成る程。まあジプシー=ロマが移動の際に広めたのか、逆に影響を受けたのか、その辺は正直判らない。とは言えロマの躍動感と共に描かれる侘しさは、これもまた彼らの音楽の語るところではあるなあ。
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2022.10.06

「零戦撃墜王 / 空戦八年の記録」岩本徹三著

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読んでみた、日本人著者によるノンフィクション/自伝。1970年発表。

日本海軍の戦闘機パイロットとして、支那事変から太平洋戦争終戦までの8年間を戦い抜いた「岩本徹三」。本書は彼が大学ノート3冊に書き残した、戦時体験の回想録「空戦ノート」を、著者の没後に刊行したものである…という内容。

200機以上とも言われる撃墜数を誇る日本のトップエース。「零戦虎徹」という異名を持つ著者だが、実際本書を読んでみると意外な事に、零戦についての記述は殆ど見られない。初搭乗した際の印象も書かれてないし、すぐ米新型機が性能的に優勢になったからか、そうした点に軽く不満を述べるに留まっている。

なのにF6F等の新型機相手に、アッサリ撃墜する描写が最後まで続くので、あれ零戦って強いままだったんじゃ?…って気がしてしまう。実際はそんな事もなかったんだろうし、著者ならではな空戦の勝利哲学には圧倒される思いが。とは言え著者の終戦からその後を知ると、「人生」とはやはり簡単ではないなと。
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2022.10.04

ロケットマン

観てみた、デクスター・フレッチャー監督映画。2019年公開。

厳格な父と愛情に欠ける母、だが少年はピアノそしてロックンロールと出会って、豊かな才能を開花させる。やがて彼は「エルトン・ジョン」という名で、イギリスを超えて世界的なミュージシャンとなった。ところが長年彼の曲に歌詞を提供したバーニーやマネージャーのリード等、彼は周囲と軋轢を起こし…という内容。

同性愛に苦しむ英ロックの大物を題材にした、実話系音楽映画。近い傾向の「ボヘミアン・ラプソディ」が前年に公開されているので、正直比較しないのも難しいのだが…まあ流石に時期が近すぎるから、たぶん偶然じゃないのかなあ。

個人的にエルトンは一生懸命聴いた訳じゃないので、あまりピンとは来なかったけれど…本作で彼が芸名を付ける元になった友人が、「Elton Dean」と知って驚いた。Soft Machineのサックスの人じゃん!(映画だとジョンはJohn Lennonからとしてたけど、こっちは創作)。えっ、この人カンタベリー人脈だったの?
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2022.10.03

グッド・ヴァイブレーションズ

観てみた。L・B・ディーサ、G・レイバーン監督映画。2013年公開。

1970年代、紛争が吹き荒れる北アイルランド。ベルファストの危険地帯でレコード店「グッド・ヴァイブレーションズ」を経営するテリー・フーリーは、ある夜パンクロックと衝撃的な出逢いをする。地元バンドを次々レコードデビューさせ、彼は同地パンクのゴッドファーザーとまで呼ばれる様になるのだが…という内容。

実在の伝説的レコード店主を題材にした伝記映画。レコード店の方は何度も閉店と復活を繰り返したものの、2011年には経営終了したようだ。正直アイリッシュ・パンクに関しては殆ど知らなかったけれど、本作には本当に感動する。

伝説と言えば本作には重要人物として「ジョン・ピール」が登場しているのが興味深い。日本人にとっては多分、彼の番組でバンドが演奏した際の音源をレコードとして聴く事がせいぜいだけれど、実際のラジオ番組としてどう聴かれてたからちょっと判った。伝説的ヒゲ面2人の2ショットは、これダブルで伝説ですわ。
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