2023.01.31

「オリジナルTVサウンドトラック / 宇宙船XL-5」バリー・グレイ

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聴いてみた、イギリスのTV人形劇のサントラ・アルバム。2020年発表。

「Fireball XL5」は1962年、「サンダーバード」等で知られるジェリー・アンダーソンにより制作されたSF人形劇。翌年には日本でも放映されたものの、途中から谷啓のナレーションを加え「谷啓の宇宙冒険」と改題された。…その後は幻の作品となっていたが、近年CS放送等で日本語字幕版が見られる様になった。

本作は元々、ファンクラブ用だったものを一般販売したサントラ。同作の音楽担当は勿論、アンダーソン作品には欠かせないBarry Gray。印象の強いホーン類のほか、電子楽器オンド・マルトノ等も加えて宇宙感覚を醸し出している。

筆者も近年のCS放送で、同作を初めて見たんだけど…正直これまで見たどのアンダーソン作品よりも好きになった。割と定番的なスぺオペ的題材ながら、サンダーバードの救助・キャプスカの侵略・UFOの迎撃・1999の惑星探訪という要素が早くも描かれていて驚愕。折角見られる様になったのだから、是非に。
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2023.01.29

「The very best of hero」THE SWANKY'S

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聴いてみた、日本のハードコア・パンクバンド。1985年発表。

「ザ・スワンキーズ」は1981年、九州福岡の博多で結成。一時期「Gai」とバンド名を改めて活動を行っていたのだが、名義を元に戻して制作したのが本作である1stアルバム。その際のラインナップはBeer(dr)、Loods(g)、TV(b)、Watch(vo)の4名だが、Gaiの時から(なぜか)メンバー名まで変わっている。

Dogma Recordsより発売された本作は、国内より海外で高く評価された。だが長年再発されず、2022年に漸くKing's World Recordsより、CDとして正規リリースされた。…筆者もずっと聴きたかっただけに、待っといてよかった。

内容はシャーシャーいうギターが暴れ狂うノイズコア。同郷のConfuseにも匹敵するノイズを背後に、ポップとも言える初期パンク的なメロディーを、酔っぱらったかの様なボーカルが歌っている。ジャケでパロディしたからか、PistolsにThanksが捧げられているけれど、当バンドのその後の音楽性を考えるとそれも納得。
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2023.01.28

「(same)」QUIET RIOT

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聴いてみた、アメリカのハードロック/ヘヴィメタル・バンド。1978年発表。

「クワイェット・ライェット」は1978年、Kevin Dubrow(vo)、Randy Rhoads(g)、Kelly Garni(b)、Drew Forsyth(dr)というラインナップで、1stアルバムを発表。CBSソニーから日本盤のみのリリースで、「静かなる暴動」という邦題が付けられた。なお本作は2ndと共に、本国アメリカでは未発売との事。

以前も書いた通り、リリースより40年以上もの間CD化されていなかった本作。2022年、ギリシアのNo Remorse Recordsより遂に再発された。まあ自分は一応レコードも持ってるけど(いや帯無しなのでそこまで高くはなかった)…シングルからの音源をボーナスとして3曲加えており、これは買っておかないと。

マスターテープの劣化により、レコードの盤起こしとの事だが、音質は上々。ただ肝心の内容は…すごくアマチュア臭いので、Rhoadsに興味がある人以外には薦められない。逆に言うと筆者は、長年の希望がようやく叶ったので満足。

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2023.01.26

「フラッツに捧ぐ」セミラミス

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聴いてみた、イタリアのプログレッシヴ・ロックバンド。1973年発表。

「Semiramis」は1970年、当時15歳のMaurizio Zarrillo(key)とMarcello Reddavide(b)らにより結成。その後Michele Zarrillo(g,vo)、Paolo Faenza(dr)、Giampiero Artegiani(g,syn)を加え、1stである本作をリリースした。バンド自体はアルバム1枚に終わったものの、傑作として評価されている。

内容としては、伊プログレによくある「あんな感じ」を想像したらいい。なので正直「またこんな感じか」…と思ってしまったのだが。でもリリースされた1973年は同国でまさに「こんな感じ」の音楽が最盛期だった頃なので、平均年齢17歳(!)という当バンドが、シーンの最先端にいたというのは、驚異としか言えん。

高校生バンドなんて、スモーク・オン・ザ・ウォーターとかふわふわ時間(青春コンプレックスでもよいが)を学園祭で演奏してる頃じゃん! とは言え個人的には、ちょっとばかりパンチに欠けるかなとも思ったけど…やはりすごい作品。
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2023.01.25

「オーヴァーローディング」アナクドタ

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聴いてみた、イスラエルのプログレッシヴ・ロックバンド。2016年発表。

「Anakdota」は2013年にテルアビブの郊外で、Erez Aviram(p,key)、Guy Bernfeld(b)、Yogev Gabay(dr)により結成。当初はYoutubeでの公開を目的としたものだったが、後にRay Livnat(vo)、Ayala Fossfeld(vo)を加えて、2016年に現在のところ唯一作である当1stアルバムをリリースした。

本作の内容は、Gentle GiantやNational Health等が譬えとして挙がるのから判る通り、テクニカルなジャズロック。加えて10tやカンタベリー的な親しみやすいメロディが魅力的だけれど…イスラエルのバンドは(以前紹介したのも含めて)、「その土地ならでは」という音楽性が無いのは共通している様に思う。

ただAnakdotaに関しては、どれもイギリスのグループが例に挙がる辺り興味深い。イスラエル建国の際、同地を統治していた英国を相手に戦った訳だが…彼らが立ち去る際、音楽に関しての「感性」を残していったのかもしれない。
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2023.01.23

「Edition zeitgenössische musik」PETER MICHAEL HAMEL

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聴いてみた、ドイツの現代音楽作曲家。1993年発表。

「ペーター・ミヒャエル・ハーメル」は1947年、ミュンヘンで誕生。保守派と前衛派という両極端な2人の恩師から音楽教育を受けた後、1970年には「Between」というクラウト・ロックバンドを結成した。その際ニューエイジと呼ばれる音楽への志向を見せた後、西洋とそれ以外の音楽を綜合する方面へと進んでいく。

本作は1970年代から1980年代にかけての作品を収録したもので、基本的にはバイオリンや管弦を中心とした西洋音楽的な編成ながら、東洋や中近東の非西洋的な音像を採り入れている。まあ現代音楽における周辺世界への志向はこれまでにも触れた通りだが、「クラウト・ロック」の文脈とも併せると成程なって。

Betweenでの活動が、Popol Vuhとも比較されたりしているのも面白い。(クラウト・ロックも幅があるけど)本作を聴くとドイツの現代音楽は、Stockhausen周辺やケルンスタジオやらの、電子音楽関連だけじゃないんだって判るな。
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2023.01.22

「Le grand macabre」GYÖRGY LIGETI

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聴いてみた、オーストリアの現代音楽作曲家。1991年発表。

「ジェルジュ・リゲティ」は1923年にルーマニアで、ユダヤ系ハンガリー人の家庭に生まれる。第二次大戦中はナチスにより強制収容所に送られ、戦後は音楽を学んだブダペストから動乱を逃れて、ウィーンへと亡命する。その後は同地やケルンで現代音楽に触れ、その分野での第一人者として活躍した。2006年没。

キューブリックの映画に(無断で?)使用された事が有名な作曲家。自分も伊藤計劃がネタにしたみたいに、前衛的な声楽曲のイメージだったけど…本作は彼が遺した唯一のオペラ。現代曲のオペラとしてはポピュラーな作品との事。

「大いなる死」を予言する死神が現れ、生と死の均衡が崩れ混乱する…といったシュールな内容で、聴いた印象では結構難解。でも単に独語で歌われているせいか、本作でも聴衆が端々で笑い声を上げており、難しいばかりではなさそう。…自分も粗筋を読んだ上なら、判ったような気になって聴けたのでお薦め。
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2023.01.20

「Works by Lou Harrison」KEITH JARRETT

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聴いてみた、アメリカの現代音楽作曲家。1988年発表。

「ルー・ハリスン」は1917年、オレゴン州ポートランドで誕生。サンフランシスコ州立大学で音楽を学んだ後、John Cageを始めとする多くの音楽家達と交流を持つ。同性愛者である彼は私生活で苦労する一方、音律の追求や非西洋音楽・民族音楽を積極的に採り入れる事で、作風を確立していく。2003年逝去。

本作でピアノを演奏しているのは、勿論ジャズ方面で有名な「キース・ジャレット」。加えて「Piano Concerto」では大友直人が、新日本フィルを指揮している。この手のにしては相当聴きやすいと思うけど…どうかな。躍動的なピアノ演奏が楽しいのに、ビックリする程の不協和音まみれ。でも難解さはあまりないかと。

バリ島のガムランに影響を受けたと言われると成る程、プリミティブなリズムと併せて非西洋音楽的な響きがユニークだ。Jarretに関しては個人的に、電化Miles Davisくらいしか知らなかったけれど…現代音楽でも、すごくいいい感じ。
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2023.01.19

「In our name」ANNEA LOCKWOOD

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聴いてみた、アメリカの現代音楽作曲家。2012年発表。

「アニア・ロックウッド」は1939年に、ニュージーランドで誕生。同地の他にヨーロッパ各国の大学で音楽を学んだ後に、作品発表を始める。70年代のピアノを燃やすといったパフォーマンス・アート的な作品を経て、ニューヨークに転居した後に「環境音」を採り入れる手法を見い出す。現在も活動中の女性音楽家。

本作は2000年代の楽曲を、3曲収録した内容だが…音楽かそうでないかの境界を攻めるかの様で、相当に実験的。アンビエントノイズみたいだったり、環境音を背景に喋ってるだけだったり。慣れない人には訳わからんよなあ、これ。

とは言え「環境音」というテーマを踏まえた上だと、まるで(ジャケットの水紋の如く)水辺の環境自体をコンポジションしているかの様な音で、構成しているのが判って興味深い。ミュジーク・コンクレートともフィールドレコーディングとも少々違った、これはこれで豊かな自然を再現した「音楽」という気がする。…かも?
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2023.01.17

「Aura, Marea, Related rocks」MAGNUS LINDBERG

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聴いてみた、フィンランドの現代音楽作曲家。2021年発表。

1958年、ヘルシンキで誕生した「マグヌス・リンドベルイ」。シベリウス音楽院で学んだ際、恩師より前衛音楽の制作を薦められた事から、グループ「Korvat auki!(=耳を開け!)」を結成した。その後も精力的に、活動を行っている。

本作は90年代に作られた楽曲をHannu Lintuの指揮で、2019年から2020年にかけて3曲収録したもの。特に「Marea」は、「サントリーホール国際作曲委嘱シリーズ」として制作された(初演も同ホール)。Lindberg自身も2004年度「武満徹作曲賞」に審査員として参加している辺り、日本とは関り深い様だ。

内容としては管弦主体の「現代音楽」だが、過度に難解ではなく(それでも慣れない人にはつらいか)、いわゆるクラシック系。でも打楽器や電子楽器を採り入れているので、Varèse等を思い浮かべたらいいかも。…ピアノ2台に打楽器2台、それに電子楽器を加えた「Related Rocks」がパーカッシヴでかっこいい。
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2023.01.16

毒薬と老嬢

観てみた。ケーリー・グラント主演、F・キャプラ監督映画。1944年公開。

劇評論家モーティマー・ブルースターが、エレインと結婚。意気揚々とアビーとマーサの叔母姉妹宅へ報告に行くと、そこで男性の死体を発見する。彼女達に問い質すと、既に10人以上もの人々を手に掛けて、地下室に埋めているというのだ。更にそこへ連続殺人犯の兄弟・ジョナサンまでが現れて…という内容。

原作はジョセフ・ケッセルリングによる、ブロードウェイで大ヒットした戯曲。舞台版ではフランケンシュタイン(の怪物)役で知られるボリス・カーロフがジョナサンを演じており、本作でその名がやたら連呼されるのはそれを踏まえたネタ。

内容的には頭のおかしい人ばかりが登場するブラックコメディで、「アメリカの良心」とも呼ばれるキャプラらしからぬ作品。いかにも舞台劇を映画化した感じのドタバタだが、特にビックリした時にグラントがカメラ目線で決める変顔がアメリカ人に受けそう。まあ今観ると流石にかったるいけれど、仲々の珍品感はある。
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2023.01.14

異国の出来事

観てみた。J・アーサー主演、ビリー・ワイルダー監督映画。1948年公開。

第二次大戦後。米軍占領下のベルリンに、兵士達の風紀状態を視察するべく本国より調査団が訪れた。その際女性議員・フロストは、過去にナチス高官と懇意だったナイトクラブの歌姫・シュルートウが、何者かと只ならぬ関係にあると知る。その当人・プリングル大尉は、議員の調査に協力するのだが…という内容。

基本的には同監督お得意のラブコメだが、戦後間もない頃(「ドイツ零年」ならぬドイツ3年)のベルリンを舞台にしている。未だに一面の瓦礫と廃墟が広がっている光景が衝撃的なのに加えて、ヒトラーの台頭や戦争を生き抜いて、なお試練の続く人々の心情を垣間見せる…社会派的な要素も含まれるのが興味深い。

と言ってしまうと堅苦しいけれど(アメリカ軍のプロパガンダ的な要請で作られたものらしい)、巧みな構成で描かれる恋愛模様にニヤニヤできる、ロマンチックな作品でもある。歌姫役を演じる、マレーネ・ディートリヒもやっぱり素敵だし。
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2023.01.13

ツリー・オブ・ライフ

観てみた。ブラッド・ピット主演、テレンス・マリック監督映画。2011年公開。

1950年代テキサス州。3人兄弟の長男として生まれたジャック・オブライエンは、理不尽と言ってよいほど厳しく当たる父親へ、次第に反感が募っていく。そして40年後、実業家として成功したジャックはその頃を回想して…という内容。

一言でいうとホームドラマだけど、同監督らしい凝った映像・演出でデコレートし、カンヌ映画祭ではパルムドールを獲得した。急に2001年のスターゲイト場面の様に宇宙が開闢したと思ったら、どこかのご家庭のプライベートビデオを延々見せられたりする。突飛すぎる着想で、流石に賛否両論なのも当たり前だな。

とは言え巨視から微視への極端すぎる振幅は、成る程興味深い。難解と言えば難解なのだが、巻頭言として掲げられているのが聖書の「ヨブ記」な辺り、手掛かりになるだろう。気宇壮大と感じるか、誇大妄想と感じるかも観る人次第だし。でも個人的には結局、あんな親父イヤだわという感想で終わってしまった…
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2023.01.11

アメリカの影

観てみた。ジョン・カサヴェテス脚本、監督映画。1959年公開。

マンハッタンで暮らす、黒人と白人の混血である3兄妹。長男のヒューは歌手として人気を博したものの、現在では落ち目。次男・ベンもトランペット奏者だが、不良仲間と遊び歩く。妹のレリアは白人男性と交際したのだが…という内容。

俳優出身のカサヴェテスによる、監督デビュー作。米インディー系映画の草分け的存在だけに、まさに記念すべき作品だが…仏ヌーヴェルヴァーグとは、同時発生的な共振を見せているのが興味深い。とは言えCharles Mingusのジャズに、ビートニク的に奔放なライフスタイル等は、当時のアメリカならではか。

特に本作で「即興的な演出」を採り入れているという辺りは、映画よりもジャズからの応用って感じがする。黒人歌手の主人公や彼らが被る人種的差別を描いているのも、恐らくは実際からの反映なのだろうし。…だからと言って深刻になりすぎないところも、ニューヨークの風景と「ジャズ」あってのもの、じゃないかな。
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2023.01.10

コレクター

観てみた、ウィリアム・ワイラー監督映画。1965年公開。

蝶の採集を趣味にするフレディは、人里離れた古い屋敷を購入する。それは美大生のミランダを地下室に監禁する為。貧しい生まれの彼が一獲千金を得て、上流階級のミランダを我がものとしたのだ。だが彼女はあくまでも抵抗し、フレディには打ち解けなかった。そして解放を約束した日が来たのだが…という内容。

原作はジョン・ファウルズの小説だが、江戸川乱歩で言えば「盲獣」みたいな話(この例え要る?)。…サイコサスペンスの古典と言ってもよい映画ながら、個人的には怖いというより主人公の孤独がグサグサと刺さる、何とも哀しい作品。

こんな犯罪をしでかしたら、相手からの赦しもストックホルム症候群もないのも当たり前。とは言え主人公が「蝶の標本」という「物体」しか愛せないのに、それでも触れ合いと交流を求めるのが切ない。まあ一番気の毒なのは、拉致された女性なのだから…この映画を他人事として怖がれる方がいいんだと思う。多分。
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2023.01.08

赤い河

観てみた。J・ウェイン主演、ハワード・ホークス監督映画。1948年公開。

テキサス州「レッド・リバー」の近くで、1万頭もの牛の牧畜を行うダンソン。ところが南北戦争の影響で事業が立ち行かなくなり、遥か遠隔の地ミズーリへ群れを引き連れ売りに行く事に。道中逃亡した人員に対する処置を巡り、彼と元孤児の養子・マシュウが対立。追放されたダンソンは復讐を宣言し…という内容。

そういう話なので、画面全体をずっと「牛」が埋め尽くしている映画。西部開拓時代の史実に基づく内容の様だが…旅の苦難と雄大な西部の光景に加えて、山盛りの牛が堪能できた(「グレンとグレンダ」みたいな、暴走シーンもあるし)。

最終的には何やらいい話風にまとまって、気持ちよく観終える事のできる映画だけれど…ウェイン演じるオッサンが大人気なくてビックリ。こういう辺り、ジョン・フォード作品に出演した時とは一味違う(…のかな? フォードでも「捜索者」のウェインは似た様なもんか)。とは言え西部劇の古典として、やはり見逃せない。
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2023.01.07

三人の女

観てみた。ロバート・アルトマン脚本、監督映画。1976年公開。

カリフォルニア州の老人リハビリ施設で、テキサス出身のピンキーが働く事に。彼女の指導担当だったミリーがルームメイトを探しており、ピンキーは同居生活を始める。ところがミリーの激昂を買って、彼女は自殺未遂をしてしまう。昏睡が続いた末に漸く目覚めたピンキーは、人格が変わった様になって…という内容。

「三人」なのでもう1人登場する訳だが、そちらはネイティブアメリカン・アート?を思わせる象徴的な絵を描く女性。本作では女性の不安定な内面描写を幻想的な多重合成で表現しており、上記絵画もその意図に含まれると思われる。

敢えてジャンルを言えば「心理サスペンス」って感じか。ピンキー役のシシー・スペイセクは「キャリー」出演の翌年なので、ホラー的な不穏さが最後まで続くのは意図的なものだろう(この場合「ローズマリーの赤ちゃん」を思い浮かべればいいのかなあ?)。侵入者としての異物感は、ピンキーって甚だ頼りないけど。
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2023.01.05

偉大なるアンバーソン家の人々

観てみた。オーソン・ウェルズ脚本、監督映画。1942年公開。

19世紀末。ある米中西部の町では大富豪の「アンバーソン」家が長らく栄華を誇り、若き当主のジョージもまた傲慢に育った。そんな時、かつて母・イザベルの恋人だったユージンが帰郷して、2人の仲が再燃する。ジョージは激しく反対したものの、彼もまたユージンの娘であるルーシーに惹かれて…という内容。

原作はブース・ターキントンの小説だが、同監督は悲劇として改変する構想だった。ところが製作会社の意向で大幅に短縮の上に、勝手にハッピーエンドのラストを加えられて完成した。…まあ結末自体は原作通りだというのがややこしいけれど、富豪一族の没落を描いていた作品が急に無難に終わって変な感じ。

今の感覚だと、勝手にバッド化なんて原作レイプも甚だしいのだが…映画史的な価値を考えると、忘れられた原作を重視するより、ウェルズの構想が実現してた方がいいって事なんだろう。まあ映画史上の一騒動として興味深いのでは。
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2023.01.04

インテリア

観てみた。ウディ・アレン脚本、監督映画。1978年公開。

完璧主義者とも言える「インテリア」デザイナーのイヴを母親に持つ、レナータ、ジョーイ、フリンの三人姉妹。彼女と長年連れ添った夫のアーサーは、イヴのそうした点に耐えられなくなり、ある日別居を宣言する。ところがイヴはその為に精神面に変調を来たし、娘達にも心痛を与える一方で、遂には…という内容。

アレン監督は自身が出演しない映画では、シリアスで「苦い」作品を作るというのは(多分)前にも触れたけど…本作がその代表例。アレンがベルイマンを敬愛しているのは他作での扱いを見ればよく判るので、本作でストレートに作風を踏襲したのだろう。ベルイマンの神学を、家庭争議や創作論に置き換えた感じ。

冬季の冷たそうな風景や荒れた海の映像に加え音楽を極力排したストイックな表現等と、これやりすぎでは?…という気も。とは言え常に斜に構えた印象からしたら真逆なピュアさなので、アレンの違った一面を知る事が出来るはず。
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2023.01.02

静かなる男

観てみた。ジョン・ウェイン主演、ジョン・フォード監督映画。1952年公開。

米国から故郷アイルランドに帰国したショーンは、出生地のイニスフリーで家を購入する。だがその際にレッド・ウィルと対立してしまい、ショーンが一目で惹かれた彼の妹、メアリー・ケイトとの仲にも大きな障害となってしまう。どうにか結婚した2人だが、ショーンの過去にまつわる事で彼は常に苦悩し…という内容。

移民の子である同監督が自身のルーツに向き合い、米アカデミー賞では監督賞を獲得した名作。いや名作なんだろうけれど、当時としては画期的なアイルランドロケによる風景を米の荒野に置き換えたら、そのまま西部劇になりそう。

まあ拳銃での撃ち合いはないものの、代わりに馬上競走や(宮崎アニメっぽい)殴り合いはあるし。アイルランドの閉鎖的で旧弊な村が、アメリカ的なボクシングで風穴を開けられる…という辺り、ははーんと察する部分であり痛快な部分でもある。とは言え荒野の褐色とは違う、緑一面の景観だけでも観る価値がある。
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