2023.02.28

サイダーのように言葉が湧き上がる

観てみた、イシグロキョウヘイ監督によるアニメーション映画。2021年公開。

内向的な性格から耳にヘッドホンを着用する俳句少年・チェリーと、コンプレックスを抱く前歯をマスクで隠す少女・スマイル。スマホを取り違えた事から偶然知り合った2人は、老人福祉施設で働く事に。そちらの利用者の老人・フジヤマが常に探しているある「レコード」を、彼らも見つけようとするのだが…という内容。

ヒロイン少女が「マスク」を着用しているのが、チャーミングな本作。でも例によって新型コロナ蔓延の為に公開が延期…世間中がマスクだらけになるとは、作り手も思わなかっただろうな。まあ内容自体は他愛ない恋愛ものだが、個人的にはそれで充分。加えて「幻のレコード」の探索、という辺りにもぐっと来た訳で。

劇中で使われるのは大貫妙子の楽曲だけど、ネット検索にもヒットしないなんてアシッドフォークの激レア盤みたい。まあピクチャーレコードは、あんなSP盤みたいな割れ方しないだろ…というツッコみどころもあるものの、これはこれで。
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2023.02.27

サマーゴースト

観てみた、loundraw監督による中編アニメーション映画。2021年公開。

ネットを通じて知り合った高校生の友也、あおい、涼。3人は噂の「サマーゴースト」に出逢う為に、廃飛行場へと出掛ける。果たしてそこに出現したのは少女の幽霊で、絢音と自ら名乗った。彼女に逢えるのは「死」を近しくする者だけ。そして絢音は心残りを叶えるべく、友也にある頼み事をするのだが…という内容。

幽霊に頼まれてその当人の死体を探す、というプロットからは「Another エピソードS」を思い出した。ちなみに本作で脚本を担当したのは、安達寛高こと乙一。…だからどうしたと訊かれても口を濁すけれど、いやどういう事なんだろう?

ま、どうでもいい事だろう。…で本作はZ会からの依頼で制作されただけあって、死や別れというモチーフが採られながらも、若者へのエールとなる作品が目指されている。しかし夏に花火と共に出てくる幽霊だし、まさに「夏と花火と彼女の死体」だな。若い子達の間ではこういうのが応援になるのかい?、みたいな。
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2023.02.26

鹿の王 / ユナと約束の旅

観てみた。安藤雅司、宮地昌幸共同監督によるアニメ映画。2022年公開。

山犬が媒介する、黒狼熱という死病が蔓延する森。大鹿を巧みに乗りこなし、孤児のユナと共に旅するヴァンは、山犬に噛まれても何故か命を取り留めていた。その事を知った医師のホッサルは病気に打ち勝つ抗体を得る為に、ヴァンの行方を追う。その背景には長年に渡る、2国間の争いがあって…という内容。

原作は上橋菜穂子の小説。今回初監督の安藤、宮地も共にジブリとは関りが深いので、本作は相当宮崎作品を連想させる。でも上橋と言えば「精霊の守り人」だし、同じくProduction I.Gで制作された同作を思い出してもいいよな。

本作は例によって新型コロナ蔓延により、数度の延期を経て公開された。内容が病気を扱うものなので、ある意味タイムリー?(そんなタイムリー要らん)。病との闘いという観点では正直、描写が超常現象じみてて「?」となってしまうけれど…それこそが本作での、凄腕アニメーター監督ならではの見せ場だしなあ。
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2023.02.24

ブルーサーマル

観てみた、橘正紀監督によるアニメーション映画。2022年公開。

都留たまきは親元の長崎を離れ、埼玉の青凪大学に入学する。だが意図せず空知大介が運搬中だった、体育会航空部のグライダーを破損してしまった。弁償の為に同部に雑用として入部するたまきだが、部長である倉持潤が彼女をグライダーの飛行に同乗させた事で、空を飛ぶ楽しさに目覚めて…という内容。

原作は小沢かなの漫画。…自分も割と航空関係は好きだったつもりだけど、「グライダー競技」に関しては初めて知る事ばかりで興味深かった。ゆったりと飛ぶのが信条かと思ったら、実はスピード競技なのね(まずそこからかよという)。なので本作にしても、どこがどうすごいのか?、伝わりにくい面は正直あると思う。

でも機体運用や飛行に関するディテール、競技を支える人々の描写だけでも充分見応えがある。逆に言うとスポーツものとしては定番の展開に収まっており、グライダーならではの感動は?…という気もしたけれど。まあこれはこれで。
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2023.02.23

スローガン

観てみた、ピエール・グランブラ監督映画。1969年公開。

ベニスで開催されたCM映画祭で、グランプリを獲得した40代のセルジュ。彼はホテルのエレベーター内で、23歳の英国女性・エヴリンと偶然に出逢う。セルジュは彼女を激しく愛してしまうのだが、彼には身重の妻があって…という内容。

後にパートナーとなる(入籍はしなかったらしい)セルジュ・ゲンスブールとジェーン・バーキンが初共演し、2人の馴れ初めとなった事でも知られる。当時ゲンスブールは不倫関係にあったブリジット・バルドーと清算した直後との事で、本作の内容はそうした状況…以上に、内面が窺えるかの様な作品となっている。

そう書くと(ストーリーに描かれる以上の事を読み取ってしまって)生々しいけれど…本作は特殊技術が無かった頃の「アメリ」と言うか、何だか大林宜彦作品みたいにポップでキッチュなラブコメ。個人的にも割とどうでもいいわ、という感想なのだが、60年代風俗やファッションを楽しむ分にはいいんじゃないかな。
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2023.02.21

トリュフォーの思春期

観てみた、フランソワ・トリュフォー監督映画。1976年公開。

フランスのある町の小学校に、粗末な身なりをした少年・ジュリアンが転校して来る。彼はあちこちで非行行為をしでかす一方で、クラスメート達とはすぐに打ち解けるのだった。しかし彼は、家庭事情に問題を抱えていて…という内容。

トリュフォーと子供の組み合わせと言えば、長編デビュー作の「大人は判ってくれない」を思い出す筈(まあ「野生の少年」というのもあるけれど)。でも本作はドワネルと違って、明確な主人公のいない群像劇スタイル…と言うか、ショートコント/エピソード集となっている。なので、気軽に観られる作品という感じかな。

だからと言って10階から落下してもピンピンしてる子供の話とか、荒唐無稽すぎるだろと思ったら…なんと実話らしい。その一方でちょっとした社会派的メッセージも込められているので、無邪気なばかりの作品ではない。まあ気軽に眺めて、トリュフォーが子供へと向ける眼差しや、観察眼に感心できたらよいのでは。
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2023.02.20

生きるべきか死ぬべきか

観てみた、エルンスト・ルビッチ監督映画。1942年公開。

1939年のポーランド。ヒトラーを戯画化した演劇の上演準備をするトゥーラ一座だが、ナチスの圧力を受けて演目はハムレットに変更。しかもドイツ軍の侵攻により、国は廃墟と化してしまった。そんな中ドイツのスパイがポーランドに入国、その為に多くの人命に危機が迫った事から、一座の役者陣は…という内容。

題名は勿論ハムレットの有名な台詞だが、これが二重に役者である主人公を打ちのめしてしまうという凝った趣向。基本的には喜劇として描かれたものながら、本作の脚本は戦争により当時苦境の只中にあったポーランドを応援する意図を込めたものの様で…そういう意味でも二重の構造を持った作品と言えるかも。

一座の役者がナチスを演じるのも二重であり、三角関係の妻が2人の男性に挟まれるのも二重。大変緻密に構成された作品だが…コメディとして笑えるかと言うと、笑おうにも笑えない状況すぎるのがな。まあそれも一種の二重状態か。
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2023.02.18

ステイン・アライブ

観てみた、シルヴェスター・スタローン監督映画。1983年公開。

あれから6年。元ディスコキングのトニーは、現在ではプロダンサーを目指してオーディションの日々。そんな彼は英国人ダンサーのローラと親密になる一方、恋人・ジャッキーとの仲も続いていた。そして新作ミュージカル出演に選抜されたトニーだったが、プロとしてのダンスと恋愛関係に翻弄されて…という内容。

1977年公開「サタデー・ナイト・フィーバー」の続編。前作とは主演のジョン・トラボルタこそ一緒だが、監督・脚本にスタローンを起用した事で雰囲気はがらっと変わっている。その為に「史上最悪の続編」とまで酷評されてしまい、トラボルタのキャリアを半分終わらせかける程の、惨状を引き起こしてしまったという…

簡単に言うとダンス版ロッキーそのままの脳筋映画になってしまった事に加え、主人公の好感度が急落しているのだから救えない。だから全然違う作品を観てる気になっていたのに、ラストで急に前作を思い出させるのはズルいだろ…
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2023.02.17

サテリコン

観てみた、フェデリコ・フェリーニ監督映画。1969年公開。

皇帝ネロ時代の古代ローマ。学生のエンコルピオは同性愛関係にあった少年奴隷・ジトーネを、親友のアシルトに奪われてしまう。更に地震にまで見舞われた彼は誘われて、裕福な解放奴隷・トリマルチョーネが催す宴へと出掛ける。そこでエンコルピオが見たのは、この世のものとも思えぬ狂乱で…という内容。

原作は1世紀頃書かれたペトロニウスの小説。だが欠落が多く、本作ではそれを補う形で描いているのだが…その為か観た印象だと、ストーリーらしいストーリーが無い。完全な形で現存している「トリマルキオの饗宴」は念入りに映像化している様だけれど、その部分からしてストーリーは無い様だから仕方ない。

代わりにプリミティブでドロドロとした異様な空間を作り上げる力業は、流石フェリーニと言ったところか。まあ土俗的な神話世界は同国だと、パゾリーニの方が先の様だが…同年には「王女メディア」も公開されているのは興味深い。
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2023.02.15

フェイシズ

観てみた。ジョン・カサヴェテス脚本、監督映画。1968年公開。

長年連れ添って来た、リチャードとマリアのフォースト夫妻。だが最近ではその関係にも陰りが見え、ある日口論の果て、遂にリチャードは妻に離婚を告げる。夫は娼婦と、妻は若い男性とそれぞれの夜を過ごしたのだが…という内容。

カサヴェテス自身が自宅を抵当に入れて作り上げた自主映画だが、米アカデミー賞では3部門でノミネートという成功を収めた。劇映画と言うより殆どプライベート・フィルムといった感覚。人物の表情をアップで捉えた映像(タイトルはそこから)と共に、ハリウッド的な表現からはかなり遠い、斬新な「距離感」を持つ。

ほぼ会話劇だというのに、誰の話をしてるのか何の話をしてるのか、何で笑ってるのか何で怒ってるのか…(難解というのとも違うんだろうけど)正直よくわからん。通常の劇映画みたいに親切な説明を欠く代わりに、まるでその場に居合わせたかのような「距離感」で、役者達の実在感を伴う演技とともに圧倒される。
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2023.02.14

続・黄金の七人 / レインボー作戦

観てみた。マルコ・ヴィカリオ脚本、監督映画。1966年公開。

再び銀行を襲撃した、教授を始めとする「七人」の男達。だが成功もつかの間、何者かに捕縛されてしまう。その正体は米国政府で、彼らは教授に南米某国の革命派リーダーである、将軍の誘拐を依頼して来たのだ。多額の報酬と引き換えに任務を請け負った七人、実は教授には更なる思惑があって…という内容。

1965年公開の「黄金の七人」の続編が本作。前作のラストシーンで「つづく」とした通りに話は続くのだが…本作では少しばかり趣向を変えて、キューバと思しき南米の国の、カストロ議長と思しき人物を誘拐する作戦が描かれる。キューバ危機が1962年なので、当時でもホットな題材として採り上げたのだろうな。

ただ黄金奪取に集中させた前作と違って、正直退屈な場面が多く散漫になってしまっているのが残念。でも円環構造というか反復構造というか…橙色の服で作業する彼らを、Armando Trovajoliの音楽と共にずっと見ていたくなる。
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2023.02.13

仁義(原題:Le Cercle Rouge)

観てみた。ジャン=ピエール・メルヴィル脚本、監督映画。1970年公開。

刑務所を仮出所したコレーは、昔の仲間を脅して札束を手に入れる。だが刑事による護送中に逃げおおせたヴォーゲルが現れ、その金を台無しにしてしまった。コレーは収監中に看守から聞いた、パリの高級宝石店を襲撃する計画を思い出す。2人は更に仲間を加え、遂に宝石強奪は成功したのだが…という内容。

同じくメルヴィル監督で、アラン・ドロンが主演の「サムライ」(1967年)とは近い印象のフィルム・ノワール。原題は「赤い輪」という意味で、(ラーマクリシュナの巻頭言に準えて)5人の男が巻き込まれる、ギリシャ悲劇的な「運命」を意図したものの様だ。…でもヤクザ映画みたいな邦題とは違って、宝石泥棒をする話。

泥棒してる最中は台詞も音楽も一切なく、恐ろしく物静かな作品。泥棒映画という事で「黄金の七人」を連想したのだけれど、正反対と言えそう。結末もまさしく悲劇なのだが、逮捕する気なしで発砲する警察に驚いた。フランスこわい…
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2023.02.11

ノクターナル・アニマルズ / 夜の獣たち

観てみた。エイミー・アダムス主演、トム・フォード監督映画。2016年公開。

裕福な生活を送りながらも、夫との関係に倦怠感の漂うスーザン。そんな彼女宛てに、20年前に別れた元夫・エドワードから、小説の校正刷りが届く。ある男性がならず者に襲われ、妻と娘を殺されるというその物語に、彼女は引き込まれる。そしてスーザンは、エドワードと過ごした若き日々を回想し…という内容。

原作はオースティン・ライトの小説「ミステリ原稿」。ヴェネツィア映画祭で審査員大賞を獲得しただけあって、ファッションデザイナー出身監督だから映像だけ…とは言えない、内容や構成力の確かさに驚いた。特に小説を映像化している場面のサスペンスは上々で、意外とエンタメ系でもやってけるんじゃないかと。

興味深いのは「色彩」設計に関してで、綿密な構想に基づく辺りファッション業界の人らしい。ただそれを特典映像であけすけに語っていたのに、ちと驚いてしまったけれど…そういうのも同業界の、プレスリリースでの自作解説っぽいか。
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2023.02.10

アニエスv. によるジェーンb.

観てみた、アニエス・ヴァルダ監督映画。1987年公開。

1946年、イギリスのロンドンで誕生した「ジェーン・バーキン」。女優としてデビューした後、活動拠点をフランスに移す。本作では仏の女性監督である「アニエス・ヴァルダ」が、40歳を迎える直前の彼女を掘り下げていく…という内容。

本作はバーキンが、ヴァルダに出した手紙がきっかけだとの事。内容としては2人の対話により、バーキンが自身の出生や思い出、現在の趣味嗜好といった様々な想いを語るというもの。でも単なるドキュメンタリーではなく、合間にバーキンが演じる名画を再現した「活人画」や、寸劇が挿入される趣向となっている。

バーキン好きならこの上なく楽しい作品…そこまででもない自分でも(雑誌WAVEの特集号は読んでたか)、結構面白く観られた。この人はPatti Smith系というか(似てるよなぁ)ユニセックスな感じだけれど、貧乳コンプレックスを洩らしているのが面白い。でも別れた旦那のゲンスブールは、貧乳好きなんだってさ。
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2023.02.08

善き人のためのソナタ(原題:Das Leben der Anderen)

観てみた、フロリアン・H・V・ドナースマルク監督映画。2006年公開。

1984年。社会主義政権下の東ドイツでは、国家保安省=シュタージが反体制的な人々を弾圧していた。組織の一員であるヴィースラー大尉は、劇作家・ドライマンと恋人の舞台女優・クリスタの盗聴を命じられる。彼は2人の生活に接するうち、いつしか共感を覚える様に。だが遂に捜査の手が伸びて…という内容。

33歳当時の同監督が手掛けた初の長編映画ながら、アカデミー外国語映画賞を獲得した名作。盗聴や密告がはびこる、東独時代の警察国家を描いた、社会派サスペンスといった内容だが…それだけに収まらない人間性が感動的。

相互監視社会の恐怖と息苦しさが描かれる重い作品ながら、ラストの一言として集約される展開が巧みで、映画的な高揚感にまで飛躍させているのが見事。…ただ原題の「他人の生活」は何とも素っ気ない。日本配給のアルバトロスが付けたと思しき、邦題の方がいいよな(普段は何でもアルマゲドンにするくせに)。
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2023.02.07

ダルバール / 復讐人

観てみた、A・R・ムルガダース監督映画。2020年公開。

凶悪犯罪が罷り通るムンバイ市で、警察長官の任に当たるアーディティヤ・アルナーチャラム。州副首相の娘までもが誘拐される状況の中、彼は断固とした態度で犯罪と対峙していた。ところがその為に恨みを買って、襲撃を受けてしまう。最愛の娘・リリーを喪った彼は、「復讐人」として立ち上がり…という内容。

スーパースターこと、ラジニカーントの主演最新作。作中だと変わらず若々しい姿だが、オフの彼は70代相応にお年を召された様で。…そのせいかは判らないけれど、本作はランボー最終作「ラスト・ブラッド」をちょっと思い起こさせる。

冒頭から暫くは例によって、歌と踊りのインド映画。やがて始まる犯罪組織との血腥い抗争は、社会派アクションとでも言えそうな展開を見せる。娘の復讐という動機付けがランボーと重なった訳だが…(印映画には復讐譚自体は案外多い)、まだまだ終わりはせんよと思わせてくれる辺り、さすがスーパースター。
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2023.02.06

アド・アストラ

観てみた。ブラッド・ピット主演、ジェームズ・グレイ監督映画。2019年公開。

近未来の地球全体を覆う、サージ電流被害が発生する。原因は海王星周辺で、16年前消息を絶った宇宙船「リマ」による影響と推定された。探査隊隊長・マクブライドの息子であるロイは、彼にメッセージを送るべく火星へと出発する。ロイは既に死亡したと思っていた父と、長年のわだかまりがあって…という内容。

ブラピが製作に名を連ねた超大作SF映画…なのだが、評判はすこぶる良くない。映像こそ成る程ゴージャズ感あるものの、内容は辛気臭い上に退屈で眠くなるのに加えて、支離滅裂だという。正直上記したような評判も、致し方ないな。

要は「父と子」の家族を描いた映画で、宇宙やSFは単なるデコレート。そう考えると頻繁にカウンセリングを受けるブラピは、W・アレン映画みたいなもんか。この映画が単に米国内で起きたと見ると…月面強襲はコンビニ強盗、猿の襲撃はペットが暴れてるだけ。ちょっと田舎に旅して、父親とお別れしたって話かと。
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2023.02.04

スターダスト

観てみた。J・フリン主演、ガブリエル・レンジ監督映画。2020年公開。

1971年。ロック・シンガー「デヴィッド・ボウイ」は、本国イギリスで最新アルバムが低調の為、アメリカでのプロモーションを敢行する。レコード会社のロン・オバーマンと共に各地を廻るものの、米国で無名の彼にとっては何とも侘しいものとなってしまった。だがボウイはやがて、自身の方向性に気付き…という内容。

翌年の「ジギー・スターダスト」誕生へとつながる実話を(やや)踏まえた映画だが、大人の事情でDavid Bowieの楽曲は使用できなかったとの事。なんかボウイ関係はそんな話ばかりだけど…内容の方も、やけに陰鬱でしんどい。

後に大成功する人なんだから、若い頃の苦労なんて笑い話にしかなりそうにないのに。とは言えウォーホルや、ヴェルヴェッツとのエピソードなんか(本当?って思ってしまった)面白い。Lou Reedとは逢えなかったそうなのだが、何故かボウイの兄役の人が彼にそっくりで、ルー出て来た!とか思ってしまったわ。
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2023.02.03

ベルベット・ゴールドマイン

観てみた。トッド・ヘインズ脚本、監督映画。1998年公開。

1970年代。ステージ上で狂言暗殺事件を起こし人気急落、その後消息を絶ったグラム・ロック歌手のブライアン・スレイド。その10年後、当時グラムに夢中だった新聞記者・アーサーは、スレイドの行方を調べ始める。彼は同じくロック歌手で関係の深かった、カート・ワイルドともコンタクトを図るのだが…という内容。

スレイドはDavid Bowie、ワイルドもIggy Popがモデルだと言われるロック映画。でも楽曲の使用をボウイに申し込んだら、にべもなく断られてしまったとの事。理由の方は憶測の域を出ないけれど…映画としての出来も正直ちと。

本作はロック映画なのにステージ場面でも漫然と映し続けている事が多く、カット割りが悠長でスピード感に欠ける。しかも「過去の出来事を関係者証言として新聞記者が取材する」という恐ろしく回りくどい語り口の為、モタモタ感に輪をかけている。イギー役ユアン・マクレガーの熱演なんか、笑ってしまうのだがなあ。
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2023.02.01

ジョージ・ハリスン / リヴィング・イン・ザ・マテリアル・ワールド

観てみた、M・スコセッシ監督によるドキュメンタリー映画。2011年公開。

The Beatlesの偉大なるギタリスト「George Harrison」。本作では1943年リヴァプールで誕生し、2001年にこの世を去った彼の生涯を、生前親しかった人々の証言や映像、そして彼の作り出した音楽と共に語っていく…という内容。

本作は2部構成で、第1部は誕生からWhite Album、第2部が逝去まで。スコセッシ監督は音楽ドキュメンタリーを、多数手掛けているだけあって流石の内容だが…逆に言えばよくある手堅い作り。でも本作で登場する証言者が、ポールやリンゴを始めとするBeatles関係者となると、もはや神話・伝説の語り部だ。

でも中心となるのはジョージなので、インド宗教・思想が重要な要素として絡んでくるのは興味深い。強盗に襲われた際もマントラを唱えていたというのだから、想像以上に筋金入りだった。とは言え個人的にあれ?と思ったのは、「電子音楽の世界」に一切触れられていないところ。まあ当然と言われたら当然だが…
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