
読んでみた、イギリス人著者によるノンフィクション/論考集。1968年発表。
1925年、ロンドンで誕生した「ピーター・ブルック」。世界的な舞台演出家であり映画監督でもある彼が、自身の演劇論に関して「退廃演劇」「神聖演劇」「野生演劇」「直接演劇」といった、4章に渡って綴ったのが本書である…という内容。
「なにもない空間」とは「舞台」を言い表した言葉なので、内容は主に演劇に関するものだが、著者は「蠅の王」や「雨のしのび逢い」といった映画も手掛けている。本書でも幾つかの舞台劇を例に挙げて論を進めてはいるけれど、(勿論)観ていないから今一つピンとこない。上記映画の話をしてくれてもよかったかも。
だからか?60年代にして既に、演劇は衰退に向かう表現分野だとする前提にはドキッとさせられる。その上で自らの理想を説く本書は、現在でも示唆に満ちているだろう。まあ自分は素人なので、個人的には観念的な本書は理解が難しかったけど…単に悲観的でない姿勢は、色々な分野での支えになりそうだね。