
読んでみた、ドイツ人作家による長編小説。1904年発表。
アルプス山中で農業を営む両親のもとに生まれたペーターは、学業を修める為に都会へと出る。母の死後は故郷と決別し、歴史研究の傍ら文筆業で身を立てる。彼は様々な人々と出逢い、様々な別れを体験するのだが…という内容。
著者の長編第2作で、ヘッセの名前を世に広めた出世作でもある。翌々年に執筆された代表作「車輪の下」と時期が近いだけあって、ヘッセの自伝的な要素が強いものとなっている様だが…(鬱小説として受験生にトラウマを植え付け続けている)車輪とは違って、本書は青春小説・教養小説として読後感は悪くない。
まあ自分も正直、ドキドキしつつ読んだのは確かだ。…別にずっと旅をしている訳でもないのに、本書には「旅小説」という印象があるのは興味深い。「放蕩息子の帰還」という聖書のモチーフを連想したけれど(主人公の父親の態度はちょっと違うが)、「車輪と比較したら」赦された放蕩息子そのものって気がするな。