
読んでみた、ドイツ人作家による中編小説。1912年発表。
20世紀の初頭。高名な作家であるアッシェンバッハは、孤独な旅の中避暑地へと足を向け、「ヴェニス」に立ち寄る。そこで彼はポーランド人一家と滞在していた「タジオ」と呼ばれる、美貌の少年に魅入られてしまうのだが…という内容。
本書はマンの実体験に基づいており、その際に出逢った美少年が後に、自ら名乗り出ているというのだから驚き。それより何より本書は1971年、ヴィスコンティ監督により殆ど完璧とも言える映画化がされている事に、触れない訳にはいかないだろう。画面に出てくるタジオが美しすぎて、そら著者の気も迷うわと。
まあ実体験とは言っても実際だと、(題名通りには)著者は死んでいない訳だが。ただヴェニスでコレラが流行ったのは事実…かどうかはちょっと調べがつかなかったけれど、同じくマンの「マリオと魔術師」でも避暑地での伝染病蔓延に触れている。病気が好きな作家(ひどい言い様だ)も、美少年はお好きなんだな。