
読んでみた、日本人作家による短編小説集。1981年発表。
古代の日本。不弥国の姫・卑弥呼は奴国の王子・長羅に国を滅ぼされた末、邪馬台国に行き着き…(日輪)。重い病で死の床に就いた妻。夫は彼女に対して…(春は馬車に乗って)。という表題作を含んだ、全10編が収録されている。
著者は川端康成らと共に「新感覚派」として活動した…そうだけれど、その新感覚派というのが正直よく判らない。本書は主に初期の短編を集めたもので、代表作と呼ばれるものは大体入っている様だが、案外文体や内容に幅があるし。
二作同時デビュー(1923年)の「日輪」「蠅」は、どちらも「映画的」という指摘があって成程とは思うものの、ドラマチックな古代戦争劇の前者と文章によるモンタージュ技法の実験作の後者とでは、だいぶ意味合いが違うし。実験的と言えば「機械」のリズミカルで、ざらついたユーモアを感じさせる肌触りは今読んでも斬新だ。「新感覚」として今なお通ずる、その「感触」を感じ取れればいのかも。