2023.08.31

「日本プラモデル50年史 1958-2008」日本プラモデル工業協同組合編

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読んでみた、日本の業界団体によるノンフィクション。2008年発表。

日本初となる「プラモデル」である、マルサン商会のノーチラス号が発売された1958年から、本書刊行の2008年まで。本書では、プラモデル大国・日本が歩んだ「50年」の歴史を、豊富なカラー図版と共に紹介する…という内容。

「日本プラモデル工業協同組合」とは、1962年に設立された業界団体。なので本書も同業界的な記念書籍という面が強いものの、一般読者が読んでも面白く、幅広く受け入れられた。…内容的には日本プラモの歴史を概観するものだが、勃興期の秘話から機器・設備に食玩ブームまでと幅広い話題を扱っている。

後半になるとキャラクターモデルが強く、ガンプラの話ばかりになってる感もあるけれど…日本のプラモ史では、要所要所で「田宮模型」が業界の行く先を示して来ており、本当に「持ってる」会社だなあと。日本プラモの歴史はタミヤの歴史…と言ったら流石に言いすぎながら、想像以上に神がかっている存在だった。
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2023.08.30

「ホセ・ルイスの戦車模型の作り方 Part 3 / 現用戦車」ホセ=ルイス・ロペス=ルイス著

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読んでみた、スペイン人著者による模型指南書。2023年発表。

1971年にマドリードで誕生し、現在はコロンビアで暮らす「ホセ=ルイス・ロペス=ルイス」。本業であるエンジニアの傍ら、フランスの模型雑誌を始めとする様々な媒体で作品を発表する世界的なプロモデラーの彼が、AFVモデルの制作法を詳細に解説していくシリーズの「現用戦車」編が本書である…という内容。

本書で採り上げているのは「M1」「レオ2」「メルカバMk2」「16式」の4車種。それぞれ異なる使用状況・環境に合わせたシチュの改造や塗装を紹介する感じ。自分はメルカバが参考になるかと思って買った訳だが…一向に作らんなあ。

本書でユニークなのは「16式機動戦闘車」で、自衛隊とは思えないハードなウェザリングが施されている。自衛隊車輛は「実戦」という使用状況になった事は無く、大抵は綺麗な状態なので(正直)えらい違和感を覚えた訳で。いかにも海外モデラーだわという印象だが…こういうのも模型ならではの楽しみ方だろう。
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2023.08.29

「知っておきたい戦車模型 ウェザリングのはじめかた」大日本絵画刊

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読んでみた、日本の模型雑誌の別冊/ムック。2019年発表。

戦車模型を製作する際に完成度を目覚ましく高めるのが、「ウェザリング」と呼ばれる各種の「汚し」テクニック。本書は雑誌「アーマーモデリング」に掲載された解説記事から、ウェザリングに絞って集成したムックである…という内容。

近年のプラモデルはパーツの再現度が(あと高額化も…)進んだ為に、殆ど改造やディテールアップの必要が無くなった。その代わりに重視されるのが「ウェザリング」で、これまではドライブラシ等しかなかった所へ、高石誠やミグ・ヒメネスといった天才モデラーにより、画期的な新テクニックが開発されていった。

本書はそうしたウェザリングの技法を、初級・中級・上級と段階に分けて解説しており、大変判りやすい内容。加えて多種多様のマテリアル類が発売され、どれを使ったらよいか困る層には手掛かりとして有難い。まあミグは例によって、自分のとこの商品をグイグイ押してくる訳だが…ティランは真似したいですな。
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2023.08.28

「35分の1スケールの迷宮物語」モリナガ・ヨウ著

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読んでみた、日本人著者によるイラスト・エッセイ集。2004年発表。

タミヤ模型が発売する「1/35スケール」の戦車プラモデル、「ミリタリーミニチュア」。本書は長い歴史を持つ同シリーズを始め、幼少期より戦車模型に親しんだ著者が、プラモデルを制作する楽しさを縦横に紹介する…という内容。

本書は著者が大日本絵画の雑誌に関わる切っ掛けから、初連載となった表題作を収録する記念すべき一冊。自分は模型誌でイラストを描く様になる、それ以前というのは知らなかったな。本書は元々前年に通販限定で販売されたものを、一般流通させた新装版。著者の評価を定着させただけあって、大変面白い。

現在の供給過剰気味な戦車模型界隈と違って、足りなかったり面倒だったりしたあの頃を、素朴な視点から回顧する語り口に共感する。業界当事者への取材や発見も興味深いけれど、タミヤ模型のPR誌「タミヤニュース」を介しての回想などは、自分もまさしく同時代人としてと膝を打つ事ばかり。楽しい本だね。
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2023.08.25

「友情」武者小路実篤

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読んでみた、日本人作家による中編小説。1920年発表。

劇作家志望の青年・野島は、友人である仲田の妹・杉子に恋愛感情を抱く。思い悩む野島はその事を親友の大宮に打ち明け、彼もその恋を応援すると請け合った。しかし大宮は海外へ旅立ち、野島と杉子との関係も…という内容。

NTR…じゃなくてBSSか。本書は三角関係の恋愛を描いて、夏目漱石の「こゝろ」(1914年刊)との共通点が指摘されるものの、そうした(ネットミーム的な)近年の恋愛概念に合致してる、って意味では面白いかも。まあ主人公・野島の傲慢な人物像で、この恋愛が上手くいくと思って読む人はいないだろうけれど…

立派な人間性ならしい大宮が、最後にするのが雑誌上での「公開処刑」だというのは、どうなんだこれ。上編は恋愛感情の痛々しさがこれでもかと繰り出されて、今読んでもキッツいけど…下編の方が少々度を越してる。ある意味ネット時代の、暴露スキャンダルに通じるかもしれない(最近も不倫報道であったよな)。
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2023.08.23

遠い雲

観てみた。高峰秀子主演、木下恵介監督映画。1955年公開。

寺田冬子は、金策の為に望まぬ結婚をする。そして夫を亡くした今は、一人娘と暮していた。そんな時、彼女と恋仲だった石津圭三が帰郷し、冬子と再会する。一方彼女の義弟である俊介も、冬子との結婚の意思があって…という内容。

ザックリ言うと三角関係メロドラマではあるものの、旧弊な社会で抑圧される日本女性像を、ジィドの「狭き門」の台詞を引用しつつ、援用している辺り興味深い。勿論ジィドの方は基督信仰と愛情との相克を描いたものだが、「三角関係」を描いているという意味では、自分の狭き門解釈に沿っているかもしれない?

それに加えて本作では高山祭やお座敷での踊りに、その際の小唄や伴奏がじっくり描写されるのが目を引く。逆にジャズコンサートやラテンダンスと言った、モダンでハイカラな世界の存在が描かれる。主人公女性の自己が引き裂かれる感情表現として、それらが活用される辺りは…さすが名匠・木下監督だなと。
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2023.08.22

「出家とその弟子」倉田百三著

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読んでみた、日本人作家による戯曲/演劇台本。1916年発表。

弟子達と共に雪の山小屋に宿を借りるべく立ち寄った親鸞は、その後唯円として出家する少年と出逢う。親鸞は一人息子・善鸞と、彼の不行跡で絶縁状態。そして唯円は遊女・かえでとの関係で、周囲から反感を買い…という内容。

本書は実在の僧侶・親鸞をモデルにした戯曲で、著者の処女作でもある。刊行当時ベストセラーとなって、親鸞や宗教の一大ブームを巻き起こしたとの事。特徴としては仏教一辺倒の内容ではなく、キリスト教の要素を大胆に採り入れている辺り。そのお陰で英仏始め、各国語に翻訳され広く読まれる事となった。

本書には仏訳版に収録された、ロマン・ロランによる序文も収録されている。まあ個人的には知らずに読んだので、結構面食らってしまった。実際当時の仏教界からは懸念が表明された。文学作品として優れている事は間違いないけど、その都合のいい混ぜ方は(オウム後の自分には)、危うく感じられたのも確か。
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2023.08.20

「暗夜行路」志賀直哉著

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読んでみた、日本人作家による長編小説。2004年発表。

小説家の時任謙作は、祖父の妾だったお栄との結婚を望んだものの反対され、しかも自らの意外な出生の秘密を知る事となる。その後彼は東京から京都へと居を移し、直子を妻に迎える。そして長男も、誕生したのだが…という内容。

本書は著者唯一の長編小説で、原形となる「時任謙作」という作品の執筆開始から、26年を経た1937年に完結した。内容はと言うと…何だか「女の一代記」の主人公を、男にした感じとでも言うか。主人公は作家だけれど殆ど執筆には触れず、大体は生活人・家庭人としての面が語られる為、そういう印象かなと。

その一方で「旅行記」的な側面が大変魅力的で、特に大山での情景描写は名文として知られる。そうした辺りの「解放感」は格別で、人生に思い悩む主人公の「鬱屈感」とは、かなりな対照を見せている。もしかしたら後者が「暗夜」、前者が「行路」に対応し、タイトルは対立概念(暗夜↔︎行路)として表されているのかも。
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2023.08.19

人生劇場 / 飛車角と吉良常

観てみた。鶴田浩二主演、内田吐夢監督映画。1968年公開。

大正時代。吉良常は、亡き親分の息子・瓢吉と再会する。そんな時小金一家の飛車角が商売女のおとよを匿った事で、大横田との間で刃傷沙汰が起きていた。そんな彼は吉良常に自首を薦められ、飛車角は収監される事に。4年が過ぎて特赦で出所した飛車角だが、彼はいまだにおとよを捜しており…という内容。

尾崎士郎の小説「人生劇場」を原作に、1963年の「人生劇場 飛車角」のリメイクとして製作された本作。…前作でもやはり鶴田浩二と高倉健が出演していたものの、本作では内田吐夢が唯一任侠映画の監督をしている辺りが見所。

なので集団での田圃の斬り合いは、「宮本武蔵 一乗寺の決斗」を思わせる。と言うかクライマックスの殴り込み場面は、本作でもモノクロ映像になるのだからそのまんま。ただ本作は主役2人の友情もの…と言うより、恋愛中心という感じ。しかも抒情的演出と言うより、すごい愁嘆場として描かれているのは面白い。
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2023.08.17

日本戦歿学生の手記 / きけ、わだつみの声

観てみた、関川秀雄監督映画。1950年公開。

第二次大戦中のビルマ。元大学教員の大木二等兵は、戦線壊滅後の敗走先で教え子だった牧見習士官と再会する。だがその隊も、食糧不足の上に多くの傷病兵を抱えて、既に立ち行かなくなっていた。その時部隊に退却命令が伝達され、自力では動けない傷病兵を置き去りにする決定が下され…という内容。

戦没学徒兵の手記集を原作とする本作は、日本初の反戦映画。製作に当たった東横映画は現在の東映の前身だそうで、本作が同社の原点になったと言われる。本作は戦争における(例のインパール作戦後の)惨状をこれでもかと描き、手加減一切なしで悲惨に悲惨を重ねた内容は、あまりの重量級さにおののく。

でもそれじゃあとても耐えられなくなってしまうので、宗教音楽を思わせる伊福部昭の楽曲が天上的な崇高さを作品に与えている。加えてドレ画の「神曲」のような戦場描写は、本作の映画的な豊かさとして見逃すべきではないだろう。
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2023.08.16

加藤隼戦闘隊

観てみた。藤田進主演、山本嘉次郎監督映画。1944年公開。

第二次大戦中の南方戦線。「加藤隼戦闘隊」こと加藤大尉率いる陸軍飛行第64戦隊は、日夜激しい戦闘に明け暮れていた。豪放な指揮官である加藤だが、戦況が進むに連れて彼を慕う部下を喪い、遂には彼自身が…という内容。

部隊歌と共に戦中は特に有名だった、「加藤隼戦闘隊」を題材にした戦争映画。戦時下という事もあって、内容は戦意高揚色が強いのだが…実は戦後の「今日もわれ大空にあり」(1964年)と、雰囲気自体は意外と近い。長距離飛行での困難とか青春群像的な本作の要素は、結構参考にされたんじゃないかな。

また陸軍監修だけあって実機の一式戦闘機「隼」を始め、敵鹵獲機まで用いた空中戦がすごい(大丈夫?空中分解しない?…と心配になったけど)。加えて特撮描写の演出を担当したのが円谷英二で、丁寧な合成を用いた爆撃シーンに目を見張る。まあアレルギーを感じても仕方ないけど、観るべきものはある。
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2023.08.14

「ヴィヨンの妻・桜桃 他八篇」太宰治著

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読んでみた、日本人作家による短編小説集。1957年発表。

借金のみならず、酒乱の末に飲み屋で泥棒まで働いた夫。それを聞いた妻は…(ヴィヨンの妻)。妻子がありながら遊んでばかりの亭主。彼が「桜桃」を前に思ったのは…(桜桃)。という表題作を含んだ、全10編が収録されている。

本書は太宰の戦後の短編を集めたもので、晩年の作と言ってよいだろう。収録作の多くは自身を題材にした私小説〜エッセイ風の内容だが、代表作「人間失格」辺りの深刻さとは違って、自虐的なユーモアで通底している。ただ表題作の「桜桃」などには、自殺を示唆する様な記述があってギョッとしたけれど…

まあ太宰の場合は、何度も狂言自殺を繰り返していたのだしな。同じく自死して果てた文学者、芥川龍之介の晩年作「歯車」等の病的さからしたら全然まとも(こっちは完全にSOSサインなのが、読んでてこわい)。自らも語る津軽人ならではの、小市民的な図太い笑いを汲み取った方が、むしろ太宰らしいのかも。
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2023.08.12

「大つごもり・十三夜 他五篇」樋口一葉著

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読んでみた、日本人作家による短編小説集。1979年発表。

やむにやまれぬ事情から、奉公先の金に手を付けてしまったお峰。ところが…(大つごもり)。お関は嫁ぎ先で受けた仕打ちから、実家へと戻る。その後、ある人物と出会って…(十三夜)。という表題作を含んだ、全7編が収録されている。

任侠映画における「抒情的」な演出からは、同著者の「たけくらべ」を連想させられる事が多い。まあそんな風に言う人、見た事もないんだけど…鼻緒や水仙の描写は、(逆に)任侠映画っぽくないかな。でここで「たけくらべ」と限定したのは、本作収録の短編を読んでも、あまりそういう情緒的な描写はないんだなと。

悲恋を日本情緒豊かに描いたたけくらべとは違い、日本的な封建家庭で屈従に耐える女性を描いた、フェミニズム小説って印象が強かったりする。…まあこの話をし出したら、むしろ自分は何も言えなくなってしまう訳で。個人的にはやはり、「雪の上に転がる蜜柑」(緋牡丹博徒ね)辺りの影響元と位置付けたい所。
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2023.08.11

昭和残侠伝

観てみた。高倉健主演、佐伯清監督映画。1965年公開。

終戦直後の浅草では、新誠会の求める上納金に露天商が苦しめられていた。しかもそれに従わない昔気質のやくざ、神津組・四代目組長が射殺されるという事態に。そんな時復員した寺島清次が五代目として組を継いだものの、新誠会との対立は益々エスカレート。遂には組員に、死亡者が出て…という内容。

高倉健主演による代表的任侠映画シリーズ、「昭和残侠伝」の第1作。高倉自身が歌う主題歌も本作映画と同じタイトルだが、後に歌詞だけを改めて(お馴染みの)「唐獅子牡丹」としてシングル・レコードが発売された。本作の内容は、苦しめられて苦しめられて最後に殴り込み…という、実に以て定番的なもの。

同シリーズでも後の傑作と比較したら、少々抒情味に乏しい感はあるかも。それより俳優陣の若き日の姿は、やはり見所。健さんや池部良は言うに及ばず、八名信夫も皆な若い。キャプテンウルトラとキリヤマ隊長は…大体同じ頃か。
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2023.08.09

「無神論」アンリ・アルヴォン著、竹内良知、垣田宏治訳

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読んでみた、フランス人著者によるノンフィクション。1967年発表。

世界に神は存在しない、或いは不要だとするのが「無神論」。本書ではそうした考え方の潮流を、古代ギリシャのエピクロスから、現代の実存主義哲学まで辿る事で、西洋思想史において重要な「無神論」を解説していく…という内容。

「無神論」に絞った解説書というのは、多分そんなには存在しない筈。と言うのも日本で「神なんていないよ」と口にしたところで、特段奇妙に思われる事はないだろうし。…流石に西洋だとまた違っており、本書では歴史上の思想家達が要所で論及してきた神の在・不在、要・不要論について、コンパクトにまとめている。

とは言え内容的にはやはりマルクス主義における唯物論や、「神は死んだ」の言葉で知られるニーチェ哲学がやはり中心となる感じ。ニーチェの思想が西洋社会に大きな衝撃を与えた…というのは、形としては知っていても仲々実感として理解するのは難しいし。本書でさらっと概要を追えるのはいいかもしれない。
posted by ぬきやまがいせい at 23:47 | Comment(0) | TrackBack(0) | 読書

2023.08.08

「胎児の世界 / 人類の生命記憶」三木成夫著

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読んでみた、日本人著者によるノンフィクション。1983年発表。

個体発生は系統発生を繰り返す。即ち胎児が見せる成長は、地峡上に誕生した生命の進化そのものである。本書では発生学者の著者が「胎児の世界」の観察から見い出した、「いのちの波」と言うべきものを解説する…という内容。

なので書名から想像する以上に、遠大な世界が展開する本。科学の解説書と言うよりも実はエッセイ集なのだけれど、(著者自身が認める通り)だいぶ妄想の気があって、該博な知識から「生命進化」のアナロジーを矢継ぎ早に重ねていく。特異な思想書と見る向きもある様だが、むしろ一種の「奇書」ではないかと。

中盤こそ「胎児」観察のための具体的な手順や、結構生々しい描写などがあるものの…知らぬ間に一転、夢野久作や中国思想の話が延々と続くのだから、困惑しないでいるのも正直難しいな。でもそのお陰(?)で知る人ぞ知る一冊となっており、大変スリリングな知的ジェットコースターとして読むのもいいかも。
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2023.08.06

「交通事故賠償 / 被害者の心理、加害者の論理 増補改訂版」加茂隆康著

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読んでみた、日本人著者によるノンフィクション。1992年発表。

「交通事故」の当事者として、その「賠償」に関わるという状況は、誰にもあり得る事である。本書ではそうした事態において、被害者・加害者・保険会社間で発生する実際的・心理的な関係を、幅広い視野から解説していく…という内容。

実は自分はこれまでに3度、交通事故に遭っている。と書くと大袈裟に聞こえるけど、幸いどれも大事には至らずに済んだ。その最初のは何と、警官と自転車同士でぶつかった正面衝突事故。…自分の一方通行逆走が原因なので、念書を書いて終わったものの、ちゃんと警官数名を呼んで現場検証もしたんだよ。

今回読んだのは1995年に刊行された、PL法の日本導入等を踏まえた増補改訂版。本書は国内だけでなく、海外で起きた事故に関する問題まで触れており、大変に興味深いのだが…その一方、もう本当に気が重くなる。あんまりにも大変なので、もう交通事故は起こさないようにしようと、固く心に誓ったのだった。
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2023.08.05

「Virgin steeleT」VIRGIN STEELE

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聴いてみた、アメリカのヘヴィメタル・バンド。1982年発表。

「ヴァージン・スティール」は1981年のNYで、David DeFeis(vo,key)、Jack Starr(g)らにより結成。翌年に1stアルバムである、本作でデビューした。ところがStarrが脱退、権利関係を争った後にDeFeisがバンドを継続した。解散を挟みつつ、「エピック・メタル」の代表的存在として現在も活動を続けている。

「エピック・メタル」と言うのは古代や神話を題材にした、ドラマチックなスタイルが特徴。本作でも鍵盤楽器の導入や、DeFeisの高音での奇声?を交えた、特徴的な歌唱(Michael Jacksonのポゥ!みたい)がそんな雰囲気なのだが…

個人的にはこれ、まるで「ジャパメタ」だなと(ただB級もいいところだから、日本勢への影響は皆無の筈)。無理してノリノリな感じを出そうとしてると言うか、そういうぎこちなさからネイティブの人の筈なのに、何だか日本語英語で歌っているみたい。でもインスト展開になると、演奏の大仰さが結構いい感じで聴ける。
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2023.08.03

「This means war」TANK

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聴いてみた、イギリスのヘヴィメタル・バンド。1983年発表。

「タンク」は1980年、Algy Ward(vo, b)、Peter Brabbs(g)、Mark Brabbs(dr)により結成。「Motörheadの弟分」という売り文句で、NWOBHMの代表的バンドとして活動した。ところが同じTankを名乗る2つのバンドが、同時に存在するという異常事態に。2023年、Wardの逝去によりその状況も終息した。

本作は彼らの3rdアルバムで、Mick Tucker(g)を新たに迎えた4人編成で録音された。本作はNWOBHM的に粗野な演奏から、メロディアスな要素を採り入れたと説明されるが…実は本作とまさしく同時期(同年同月発売)に、兄貴分であるMotörheadも「Another Perfect Day」で、メロディアス化している。

単なる偶然かもしれないけれど、仲々興味深い。まあ本作は最高作と言われる「Honour & Blood」に至る、途中段階という印象なのも確か。…個人的にはボーナスで収録された、12’’音源の方が好きかな(当時よく聴いたもんで)。
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2023.08.02

「Obscure N.W.O.B.H.M. demos vol.3」V.A.

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聴いてみた、ヘヴィメタル・バンドのオムニバス・アルバム。2021年発表。

「N.W.O.B.H.M.(=New Wave Of British Heavy Metal)」とは、1970年代末のイギリスで起こった音楽ムーブメント。自主制作による作品発表から、Iron MaidenやDef Leppardといった新しい音楽性を持ったグループを輩出した。本作は当時制作された無名バンドの、「デモテープ」を集めたオムニバス。

ギリシャの「Obscure Nwobhm Releases」(名前通りNWOBHM専門)レーベルで、年1枚位で発売しているシリーズの第3作。収録されているのは「Savage」「Axe Victims」「Zenith」という3グループで、いずれ劣らぬ無名揃い。

どのバンドもメイデン等からの影響が窺える辺り微笑ましいけれど、NWOBHMらしい粗野な演奏と共に、いかにもデモテープといった感じの音質の悪さにむしろグッと来る。ボーカルは音程を外すし、演奏はモタついてずれたりするものの…こういう初期衝動溢れるガレージ感は、やはりロックを聴く醍醐味でしょう。
posted by ぬきやまがいせい at 22:58 | Comment(0) | TrackBack(0) | 音楽