2023.12.31

「オーディオの作法」麻倉怜士著

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読んでみた、日本人著者によるノンフィクション/指南書。2008年発表。

自宅で音楽を、本格的な音響で楽しむ為の装置が「オーディオ」。スピーカー、アンプ、プレーヤーの3点セットを軸に、よりよい音を探求・実現するべく、本書では「初心者以上マニア未満」の読者に向けて解説していく…という内容。

なのでごく軽い読み物なのだが、著者は雑誌で執筆する専門家でもあるので「オーディオマニア」の思考/嗜好を知るにもよい本かも。まあ少々古い本ではあるものの、自分の使っている機器も少々古いので(未だCDメインだし)、結構参考になる点も。…逆にマニアのこだわりすぎて、付いていけんわって点もまた。

いわゆる「オーディオオカルト」が堂々と開陳されてるのは、むしろ面白いんじゃないかな。装置や電源からのノイズ排除へのこだわりには感嘆したけれど…自分の機器は(米国製だからか)ハム音やホワイトノイズが常に出ていて、アンプ自体がノイズ発生源なのよね。どんなこだわっても、無駄だったりするという。
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2023.12.29

デヴィッド・ボウイ / ムーンエイジ・デイドリーム

観てみた、ブレット・モーゲン監督によるドキュメンタリー映画。2022年公開。

1947年、ロンドンのブリクストンで誕生した「David Bowie」。デビュー以来ロックシンガーあるいは俳優やファッションリーダーとして、斬新な存在感を放ち世界中で圧倒的に支持された。本作では秘蔵の未公開映像と共に、自身がメディアで語った言葉をガイドに、David Bowieの生涯を紐解いていく…という内容。

要するに作品全体がコラージュ的なので(Bowie自身がバロウズに倣って、カットアップをしていて興味深い)、偉人伝的な判りやすい説明が無いのは仕方ない。逆に言うとBowieという男がこの地球にいきなり落ちて来て、何も告げずトム少佐みたいに離れていったかの様な感じがあるのは、いいんじゃないかな?

個人的には「Let's Dance」世代なので、これまでも目にする事の多かったグラム時代以外の映像も見られて楽しかった。Tin Machineなんかどうするのかな…と思ったら、晩年はふんわり流してしまった辺り、まあそういうものか。
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2023.12.28

ロックフィールド / 伝説の音楽スタジオ

観てみた、ハンナ・ベリーマン監督によるドキュメンタリー映画。2020年公開。

イギリスはウェールズの片田舎。広大な農場の敷地を利用して、レコーディングスタジオが作られた。キングズリーとチャールズのウォード兄弟による「ロックフィールド」では、ブリティッシュロックの名盤が次々に録音される事となった。本作では関係者の証言に基づき、伝説的なスタジオの歴史を辿る…という内容。

Black SabbathやQueen、The Stone RosesからOasisまで。英国では初となる滞在型のスタジオだそうだが、牛も馬もいる牧場で雰囲気は呑気そのもの。だから荒んだ音楽性のバンドが、ここを利用した様子はないけれど…OasisのGallagher兄弟はそんな場所でも大喧嘩したそうで。ああ、やっぱり。

とは言え経営はやはり山あり谷あり。80年代にはここも一時寂れた様だが…90年代のブリットポップで復活。現在もロックの伝統を伝える場所であり、人気がある様でよかった。英国ロック史の一面として仲々ユニークな切り口だ。
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2023.12.26

白い暴動

観てみた、ルビカ・シャー監督によるドキュメンタリー映画。2019年公開。

1970年代末のイギリスでは、目に余る人種差別が蔓延っていた。白人至上主義議員のみならず極右組織・国民戦線=NFが台頭する状況に、レッド・ソーンダズを中心に「ロック・アゲインスト・レイシズム=RAR」が活動を始める。彼らは当時発生したパンクロックと共に、反対運動を進めるのだが…という内容。

The Clashの曲名がタイトルに掲げられているものの、RARの活動が中心。でもパンクとの関係は密接で、1978年に10万人を集めて開催されたカーニバルでの「白い暴動」の演奏風景は、ここまで難しい話ばかりだった映画の空気を吹き飛ばす様で爽快。この1曲で、音楽ドキュメンタリーと言ってもよいのでは。

イギリスのパンクにおける70年代当時の状況や思想的な背景は、まあ一応は知っておいた方がいいだろう。…とは言えThe Clashと、Sham 69のPurseyが共演する歴史的な映像は、そういうの抜きにしても興奮してしまったなあ。
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2023.12.25

すばらしき映画音楽たち

観てみた、M・シュレーダー監督によるドキュメンタリー映画。2017年公開。

映画には音のないサイレントの時代から既に、「音楽」と共にあった。本作はハリウッド映画を中心に、映像上での効果や作曲・録音風景。映画音楽がたどった歴史等を、活動中の作曲家達の証言を中心に紹介していく…という内容。

何せハリウッド大作で流れる様な映画音楽の話なので、実に華々しい世界。その中でイタリアでの活動がメインの、Ennio Morriconeが採り上げられたのは嬉しいものの…やはりと言うか、John WilliamsやHans Zimmer無双という感じになるのは、まあそうだろうなと。特にWilliamsは、神格化すらしている。

映像と共に見せてくれる、演出としての音楽の役割などは、本で読んでも多分ピンとこない話なのでお薦めできると思う。ただなんかこう…趣味に合わない感じがしてしまうのは、致し方ない。現存の音楽でオーケストラを日常的に扱うのは映画音楽が唯一だ、と言われると、是非残ってほしいジャンルではあるけど。
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2023.12.23

ブライアン・ウィルソン / 約束の旅路

観てみた、B・ウィルソン監督によるドキュメンタリー映画。2021年公開。

アメリカを代表するロックバンド「The Beach Boys」の中心人物であり、画期的な音楽を世に問うてきた伝説的なミュージシャン「Brian Wilson」。本作では長年親密な友人関係にある雑誌編集者ジェイソン・ファインを聴き手に、彼の数奇にして困難に満ちた音楽家人生を、自身の口により語っていく…という内容。

筆者Beach Boysは…「Smile」前後の数作しか聴いていない辺り、決していいリスナーではない。とは言えWilsonの歩みを俯瞰してくれる本作は、興味深く観られた。ただ「狂気」のイメージ(実際現在でも幻聴に悩まされているとの事)が先入観としてあるからか、本作でのWilsonには見ていて正直不安になる。

逆にそうした赤裸々な姿が(近しい人々の死に対する反応とか)、彼を身近に感じさせてくれて大変に感動的。…と共に、本作では主に自動車での移動車内の映像が多いのだが、まるで一緒にドライブしているかの様で、楽しくなれる。
posted by ぬきやまがいせい at 23:06 | Comment(0) | TrackBack(0) | 映画

2023.12.21

サイドマン / スターを輝かせた男たち

観てみた、S・ローゼンバウム監督によるドキュメンタリー映画。2016年公開。

ブルースのスターの影には、彼らを支える「サイドマン」の姿があった。Pinetop Perkins(p)、Willie 'Big Eyes' Smith(dr)、Hubert Sumlin(g)といった演奏家3人の生涯を介し、ブルース音楽の栄枯盛衰を語る…という内容。

個人的にはブルース、いや黒人音楽自体が苦手なので、サイドマンどころか「フロントマン」の話も知らなかった。だからか本作はストーンズやクラプトンといった、ロックのすごい人達に影響を与えたすごい人達、という切り口で説明してくれる感じ。そういう意味では成る程確かに、飲み込みやすかったのだけれど…

そうした白人史観みたいなのには正直、「?」となってしまう。黒人の社会的立場の変遷や、音楽の流行り廃りにミュージシャンの人生が翻弄される事からして、白人本位なものだしなあ。…という事を自分が言ってもあまり説得力がないので、素直にブルース入門のドキュメンタリーとして見たらいいんじゃないかな。
posted by ぬきやまがいせい at 22:42 | Comment(0) | TrackBack(0) | 映画

2023.12.20

What Drives Us

観てみた、デイヴ・グロール監督によるドキュメンタリー映画。2021年配信。

すべては「バン」から始まった。現在ビッグになったロックバンドも、当初はちっぽけなバンに機材を積んで地道なツアーを続けたのだ。本作ではそうしたロックミュージシャンが多数集まり、若き日のバンの旅を語っていく…という内容。

監督は勿論Foo Fightersの人。そのGrohlが友人からRingo Starrまで、バン旅の経験談を聴くという趣旨の作品だが…それだけじゃ間が持たないからか、音楽事始めから今後の抱負も。バンの話は大してしてないよなって気が。もっと他愛なくても面白エピソード満載かと思いきや、結局自慢ばかりで、うへえ。

よく考えたらもう興味失って聴かなくなってる人ばかりだ。そのくせ90年代以降、ビッグなロックバンドなんてもう出て来てないだろ?って…そりゃもう、ロックって音楽自体が終わっちまってるんだし。久々に見たミュージシャンが皆ジジイになっててショックだったけど、昔の貴重な映像は見る価値あるんじゃないかな。
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2023.12.18

J : ビヨンド・フラメンコ

観てみた、カルロス・サウラ監督によるドキュメンタリー映画。2016年公開。

スペイン国内で演奏・舞踊が行われている音楽ジャンルの一つに、「ホタ」がある。アラゴン州で発生したと言われ、フラメンコの源流とも目されている。本作ではそのパフォーマンスの模様を収録し、世界に広く紹介した…という内容。

タイトルを見てフラメンコの映画かと思ったら、フラメンコの映画ではなかった(JはJotaの頭文字)。とは言え演奏もダンスも歌詞の内容も、やはりフラメンコを連想させるもので、フラメンコ映画でお馴染みのサウラ監督が採り上げるのも判る。…多少洗練されておらず、近隣他国の民族音楽を思わせる要素を持つ。

映画としてはステージをそのまま撮影しているだけと言って差し支えないが、簡素な様でセットや照明が「演出」として結構雄弁。特に戦争の悲劇が歌詞の曲などでスペイン内戦の映像を流す辺り、何かしらを感じ取ってもよいだろう。…しかしこんな複雑なリズムの曲でよく踊れるもんだ。変拍子好きは要注目ですな。
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2023.12.17

サラダデイズ / SALAD DAYS

観てみた、S・クロフォード監督によるドキュメンタリー映画。2014年公開。

アメリカの首都ワシントンDCには、パンクロック/ハードコアの一大潮流が存在する。世界的に大きな影響を与えた音楽性のみならず、メジャーに頼らない自主独立性、そして「ストレート・エッジ」を始めとする思想面の特色を持つ。本作では中心人物の証言を始め、貴重な映像と共にその歴史を追う…という内容。

代表を一人だけ挙げるなら、バンド「Minor Threat」「Fugazi」のメンバーにして、レーベル「Dischord Records」を設立したIan MacKayeという事になるだろう。でもMacKayeだけ追えば済む訳でない、多様さがあり興味深かった。

個人的にはThe FaithとのスプリットLPを唯一作(?)とする、Voidを結構大きく採り上げているのに驚く。音楽性自体は同地でも、特異な存在なんだろうけどなあ。それにしても本作には、Thurston Mooreが出演しているんだけど…この人Sparksの映画にも出てきてコメントしてた。どんだけ音楽マニアなの。
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2023.12.15

スパークス・ブラザーズ

観てみた、エドガー・ライト監督によるドキュメンタリー映画。2022年公開。

1970年のLAで、ロン(key)とラッセル(vo.)のメイル兄弟によって結成されたのが、ロックバンド「スパークス」。50年もの活動歴を誇り、その間音楽性の変遷や人気の浮沈を経て、今もなお活動中。同バンドを本人達の証言は勿論、音楽界の有名人コメントや、貴重な映像を織り交ぜて紹介していく…という内容。

本作を観て、筆者はSparksを初期の数枚しか聴いてなかったのが判った。つうか25枚もアルバムリリースしていたとはな。…本作はよくある、ロックドキュメンタリー映画の範疇には違いないけど(Sparks本人か、それとも監督であるライトの持ち味か)人を食った様な、通り一辺倒でない感触があるのは面白い。

実在しているハズなのに、架空のインチキ・バンドを採り上げたフェイク・ドキュメンタリーみたい。ジャック・タチ、ベルイマン、カラックス…Sparksとは、映画との関りも深い(関りというか因縁だなあ)のが知れて興味深い。あと池上遼一。
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2023.12.14

「戦後写真史ノート / 写真は何を表現してきたか」飯沢耕太郎著

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読んでみた、日本人著者によるノンフィクション。1993年発表。

海外から日本へともたらされた「写真」という表現/文化は、二次大戦により分断される事となる。本書では「戦後」の日本で、どういった写真家達の手により、どういった写真が模索・発展して来たかを検証し、紹介していく…という内容。

土門拳、森山大道、午膓茂雄、荒木経惟、篠山紀信。自分が知っていたのはそうした名前だが、あくまでも「点」としての認識でしかなかったので…本書での包括的にして時系列を追った解説には、目を開かれる思い。当初は戦前も含める構想だった様だけど、新書の範疇としてコンパクトにまとまっているのも良い。

とは言え本書は90年代までの内容なので(2008年にその後も含めた、増補版が刊行された)、アラーキーが時代の寵児的な紹介をされているのには、ああと。自分が雑誌「噂の眞相」を購読していた時に、丁度連載で奥さんの葬儀の模様だったんだよな…なんて事を思い出したり。刺激的で、大変面白い本です。
posted by ぬきやまがいせい at 22:59 | Comment(0) | TrackBack(0) | 読書

2023.12.12

金星怪獣の襲撃 / 新・原始惑星への旅

観てみた、ロジャー・コーマンプロデュースによるSF映画。1968年公開。

金星探査に地球を飛び立ったロケットが遭難し、 ロックハートをリーダーとする救助隊が送り出される事態となった。金星の大地には爬虫類を思わせる怪獣だけでなく、神であるテラを信仰する美女達がいた。彼女達は地球からの探査を侵略と見做し、火山の噴火を始め次々に妨害を仕掛けるのだが…という内容。

コーマンがソ連映画「Планета бурь」(1962年)の権利を手に入れ、デレク・トーマス監督に指示して改変した作品。でも本作だけではなく、先行して「原始惑星への旅」(1965)というのもでっち上げているので、今回は「新」って事。

内容は違和感バリバリのヘンテコな代物だが…元々のソ連映画の映像自体はかなり出来がよく、登場する「ジョン」という名前のロボットや、流星号みたいなエアカー。ソ連らしい宇宙服等の質実剛健なデザインなんか、やはり見所。…まあ「ロボテック」みたいなのもあるし、コーマンが特別って訳ではないんだよな。
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2023.12.11

大蜥蜴の怪

観てみた。ドン・サリヴァン主演、レイ・ケロッグ監督映画。1959年公開。

ニューメキシコの田舎町で、カップルの乗った自動車が何者かに破壊された。それは巨大な蜥蜴・ギラモンスターの仕業。2人は駆け落ちしたと思われ捜索は続くが、怪物による被害は更に広がる。2人の仲間である歌手志望の自動車修理工・チェイスもまた、有名なラジオDJを呼んだパーティーで…という内容。

本作で大暴れするのは、本物のアメリカドクトカゲ。ヒラ川の流域に生息するので、通称を「ヒラモンスター(Gila Monster)」というのだけれど…アマプラの紹介文ではローマ字読みをして、「ギラモンスター」と書いてしまった模様。

内容はチープそのもので、唯一の見せ場の列車破壊もチャチこの上ないのだが…田舎の青春ものとしては、案外興味深い。主人公が歌手志望なので歌を披露する場面が多く、当時のロックンロール文化に加え、若者達の乗る自動車が皆「ホットロッド」なのもカッコいい。まあ怪獣目当てなら、ヒドイ映画だが。
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2023.12.09

呪いの沼

観てみた、ラリー・ブキャナン監督によるTV映画。1968年放映。

テキサスの沼地地帯で狂気の天才科学者、サイモンド・トレント博士が日々人体実験を繰り返していた。彼は進化を逆転させた怪物を作り出す事を目指していたものの、実験は失敗続き。被害者をワニの群れの中に投げ入れ、餌として食わせていた。彼は地元の原住民や、石油調査員一行を次々に…という内容。

「恐怖のワニ人間」(1959年)のリメイクという事だが、「女黄金鬼」(1957年)との共通点が指摘されているらしい。まあそんな詳細よりも、例によってブキャナン監督の作品なので、「ヒドイ」の一言に尽きる訳だけれど…こんなに何本も観ている自分は、ひょっとしたら相当なファンなんじゃないかって気がしてきた。

相変わらずのやる気の無い演出に、相変わらずやる気のない造形のモンスター。加えて本作では、「ドンドコドンドコ」という原住民の太鼓のリズムのせいで、意識が遠くなって来る。いや本当に強烈なので、逆に人に薦めたくなるなあ…
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2023.12.08

人類最終兵器 / ドゥームズデイ・マシーン

観てみた。ボビー・ヴァン主演、リー・ショレム他監督映画。1972年公開。

7人の男女を乗せた金星有人探査ロケット・アストラ号が、スケジュールを前倒しされ発進した。中国が最終兵器を使用する危機を受けての措置だが、結局乗員達は宇宙から地球が滅びゆく様を目撃する事態に。しかも地球から届く放射能の影響で彼らもまた、僅か3人のみ生存を許されると判明し…という内容。

1967年から製作が始まりながら一時中断、その後撮影を再開し1972年に公開の運びとなった。でもそのせいで監督は3人。後半は出演者が参加出来ない事を受けて、真っ暗闇でヘルメットを被った別人を代役に立てて完成させた。

なのでヒドイ映画というのは、まったくその通りなのだが(既存のフィルムを継ぎ接ぎしたせいで、宇宙船の形が次々変わる)大筋としては規模が小さいだけで「アニアーラ」と殆ど一緒。追い詰められた乗員の心理描写や、稚拙ながら減圧描写とか結構攻めてる。ここまで褒めても…ヒドイとしか言い様がないけど。
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2023.12.06

悲鳴を上げる頭蓋骨

観てみた。ジョン・ハドソン主演、アレックス・ニコル監督映画。1958年公開。

新婚のジェニーは、夫・エリックの実家である広壮な邸宅に引っ越す。その屋敷ではエリックの前妻が、頭蓋骨の損傷事故で命を落としていた。それ以来ジェニーは恐ろし気な頭蓋骨の影と、甲高い謎の悲鳴におびえる事となるのだが、夫はそんなものは存在しないと言う。実はそうした彼女の背後で…という内容。

つまんない映画が無性に観たくなる事ってない?(ないか…)。そう思って本作を観たはいいけど、もうちょっと手加減してくれという気分になった。冒頭観客の恐怖を煽る仕掛けがあるのだが、噴飯物の出オチ。ある意味見所ではあるか。

二転三転する構成は案外凝っていて感心したものの、面白いかと言われると。で本作には胡散臭い使用人が登場するのだが、その風貌がグランジ系というか40年早いSub Pop系というか。妙に気になったのだけど、実はその人本作の監督。本職は俳優で、この映画が初の監督だった様で…俳優の方がいいね。
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2023.12.05

「ロシア皇帝の密約」ジェフリー・アーチャー著、永井淳訳

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読んでみた、イギリス人作家による長編冒険小説。1986年発表。

1966年。ナチス戦犯との関係を疑われたまま、この世を去った父を持つアダム・スコット。彼が遺産として受け取った手紙から、辿り着いたのが「皇帝のイコン」。その頃ソ連中枢でも、イコンを手に入れるべく密命が下り…という内容。

国政の重要ポストに就いた政治家であり、作家としても有名なアーチャーには多数の著作がある中、本書は比較的初期の作品。「皇帝のイコン」とその中に隠された秘密という、優れた着想に基づくKGBとの争奪戦は、冷戦期のスパイ小説としては割と定番的ではあるものの…読んでいて連想したのは「39階段」。

巻き込まれサスペンスに徒歩中心の逃避行、加えて主人公が善意の協力者に恵まれるラッキー展開は、まさにそんな感じ。という様な事を後書で訳者も指摘したら、実際著者がそれを認めていたらしい。…要するに冷戦スパイ物という前に普遍的な冒険要素があるので、今読んでも手に汗握れるんじゃないかな。
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2023.12.03

かくも長き不在

観てみた。アリダ・ヴァリ主演、アンリ・コルピ監督映画。1961年公開。

パリの一角でカフェを営む女性・テレーズ。彼女はオペラを口ずさみながら通りを歩く、浮浪者に対して奇妙な感情を抱く。浮浪者は記憶を失い、自分自身素性が判らなかった。テレーズには戦時中、ゲシュタポに連行され行方不明となった夫がおり、彼女はその浮浪者が夫であると確信するのだが…という内容。

カンヌ映画祭では、最高賞のパルム・ドールを獲得した名作。戦争に引き裂かれた夫婦のすれ違う想いを描いた本作は、「ひまわり」や「シェルブールの雨傘」辺りとも共通した題材だと言えるけれど…気怠い雰囲気とやりきれない感情を催す内容からは、脚本の担当がマルグリット・デュラスと聞いて納得する感じ。

なので当時的な切迫感や悲劇的な共感が伴わないと(おそらく)、何とも悠長でぼんやりした映画に感じられるかもしれないけれど…普遍的な意味で愛情の「献身」や「一途さ」という観点からなら、胸に迫るものがあるのではないかな。
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2023.12.02

天国は待ってくれる

観てみた、エルンスト・ルビッチ監督映画。1943年公開。

この世での生を終えたヘンリー・ヴァン・クリーヴ。自分自身では地獄へ堕ちるものと思い込んでいるが、閻魔大王は彼にこれまでの生涯を語らせる。裕福な家庭で甘やかされて育ったヘンリーは、妻となったマーサも従弟の婚約者を略奪婚で手に入れたのだ。その後も彼は気の多いまま人生を歩み…という内容。

死者が天国行きか地獄行きか、現実的な空間で裁かれる…というのは、「デス・パレード」を思い起こさせる。まあ本作では思い出語りをするだけなので、元ネタかどうかは判らないけれど(つかそんなアニメ知ってる人あまりいないだろ)。

本作はルビッチ監督だと、晩年の作に当たる。サイレント作品の印象が強いだけに、カラーのトーキー映画なのには、そんなの撮ってたのかと。ソフィスティケイテッド・コメディを創始した初期と比較したら、本作はごく普通としか言い様がないものの…この程度で地獄行きを審議されるのは、キリスト教きびしいな。
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