観てみた、タル・ベーラ監督映画。1994年公開。
ハンガリーの片田舎にある村。ある男は村人達で積み立てた共同貯金を持ち逃げする算段を女房に話し、村唯一の医者は深酒がたたって倒れる。そして村の中で猫を相手に孤独に過ごす少女が、突然命を落とす。そんな最中1年半前に死んだと思われた、イリミアーシュという男が帰って来るのだが…という内容。
438分、7時間以上という長さで有名な本作。何でそんなにも長いのかと言うと、1カットや1シーンが無闇に長いせいで、特段語るべきストーリーあるから長いという訳ではない。長くする為に長くしてるだけだろ、という作品だが…代わりに本作は「動く写真展」とでも言うべき、モノクロ・静止画的な映像美に満ちている。
人物が地平線・消失点に歩み去る姿、ゆったりした移動の後に静止する人々の姿。動く絵画と言われる映画(パラジャーノフとか)とも違い、本作の遅々として何事も進まない様は、紛れもなく異様なのだが…不思議にどこか美しい。
2024.02.29
2024.02.28
ウェンディ&ルーシー
観てみた。M・ウィリアムズ主演、K・ライカート監督映画。2008年公開。
乏しい所持金と愛犬・ルーシーを伴い、ウェンディはアラスカで仕事を得る為、自動車での旅を続けていた。しかし愛車は故障してしまい、ルーシーの餌を万引きした廉で彼女は警察に拘留されてしまう。その隙にルーシーは姿を消してしまい、ウェンディは愛犬の行方を捜すべく八方手を尽くしたのだが…という内容。
何だかイタリアのネオレアリズモ映画みたいと言うか、ビットリオ・デ・シーカ作品を米インディペンデント風にアレンジしたみたいと言うか。…別に貧困問題を声高に叫ぶような作品でもないし、むしろ小市民的な社会困難(動物に対する情愛も)を「無関心に描いている」という印象は、本作独特の肌合いがあるかも。
ネオレアリズモと言えば、個人的にはなんとなく「母をたずねて三千里」を連想したのだけれど…あっちこっち引き回されて、右往左往させられるせいかな。でも三千里のアメデオは原作にいないオリキャラなのに、すごく有能なんだよ。
乏しい所持金と愛犬・ルーシーを伴い、ウェンディはアラスカで仕事を得る為、自動車での旅を続けていた。しかし愛車は故障してしまい、ルーシーの餌を万引きした廉で彼女は警察に拘留されてしまう。その隙にルーシーは姿を消してしまい、ウェンディは愛犬の行方を捜すべく八方手を尽くしたのだが…という内容。
何だかイタリアのネオレアリズモ映画みたいと言うか、ビットリオ・デ・シーカ作品を米インディペンデント風にアレンジしたみたいと言うか。…別に貧困問題を声高に叫ぶような作品でもないし、むしろ小市民的な社会困難(動物に対する情愛も)を「無関心に描いている」という印象は、本作独特の肌合いがあるかも。
ネオレアリズモと言えば、個人的にはなんとなく「母をたずねて三千里」を連想したのだけれど…あっちこっち引き回されて、右往左往させられるせいかな。でも三千里のアメデオは原作にいないオリキャラなのに、すごく有能なんだよ。
2024.02.26
レネットとミラベル / 四つの冒険
観てみた。エリック・ロメール脚本、監督映画。1987年公開。
田舎道で自転車がパンクしたところを、レネットに救われたミラベル。対照的な2人だが直ぐに意気投合して、パリでの共同生活を始める。だがお互いの価値観の違いから、言い争いにもなって…という本作は「青い時間」「カフェのボーイ」「物乞い 窃盗常習犯 女詐欺師」「絵の売買」、4部構成での内容となっている。
本作は16oでの撮影との事で、かなりラフな映像と共に「小品」という印象のある映画。まあロメール作品で大作と感じた事はこれまで1度もないので、元々小品スケールの作家ではある訳だが。…とは言え毎度の通り2人の人物の対話を軸にしているものの、本作では特に「対立軸」が意識されている様にも感じる。
主人公2人の「田舎と都会」の対立はまだ判るとして、万引き女性を巡るミラベルの考え方は無理筋と言うか…これがフランス流なのか、コメディとして笑っておくところなのか。でも一種の脱力系「話芸」として、完成の域にあるよなあ。
田舎道で自転車がパンクしたところを、レネットに救われたミラベル。対照的な2人だが直ぐに意気投合して、パリでの共同生活を始める。だがお互いの価値観の違いから、言い争いにもなって…という本作は「青い時間」「カフェのボーイ」「物乞い 窃盗常習犯 女詐欺師」「絵の売買」、4部構成での内容となっている。
本作は16oでの撮影との事で、かなりラフな映像と共に「小品」という印象のある映画。まあロメール作品で大作と感じた事はこれまで1度もないので、元々小品スケールの作家ではある訳だが。…とは言え毎度の通り2人の人物の対話を軸にしているものの、本作では特に「対立軸」が意識されている様にも感じる。
主人公2人の「田舎と都会」の対立はまだ判るとして、万引き女性を巡るミラベルの考え方は無理筋と言うか…これがフランス流なのか、コメディとして笑っておくところなのか。でも一種の脱力系「話芸」として、完成の域にあるよなあ。
2024.02.25
さらば、愛の言葉よ
観てみた、ジャン=リュック・ゴダール監督映画。2014年公開。
ある既婚女性とある独身男性が出逢う。2人は激しく愛し合い、1匹の犬は辺りを彷徨い歩く。だが愛情はいつしか不和を生み、移ろいゆく両者の関係は遂に破局を迎える。そして時は過ぎて、彼らは再び巡り合うのだが…という内容。
カンヌ映画祭で審査員賞を獲得した本作。当時84歳のゴダール監督にとって、初めて3D撮影を用いた映画だとの事。ただ演出面では、断片的なカットのコラージュや書物からの引用による朗読台詞、思わせぶりな字幕挿入等々と…実は「ジガ・ヴェルトフ集団」時代とやっている事が、ほぼ同じ。ただ本作の場合語っているのが政治的な主張ではなく、男女関係に関するものという違いはある。
難解そのものだけれど、自分は(上記の通り)それなりに「見方」自体は心得ていたつもりだったのに。まあジガ・ヴェルトフと較べると、今一つユーモアを感じない点は物足りないかな。寸止めスラブ行進曲は笑うべきだったのかも…
ある既婚女性とある独身男性が出逢う。2人は激しく愛し合い、1匹の犬は辺りを彷徨い歩く。だが愛情はいつしか不和を生み、移ろいゆく両者の関係は遂に破局を迎える。そして時は過ぎて、彼らは再び巡り合うのだが…という内容。
カンヌ映画祭で審査員賞を獲得した本作。当時84歳のゴダール監督にとって、初めて3D撮影を用いた映画だとの事。ただ演出面では、断片的なカットのコラージュや書物からの引用による朗読台詞、思わせぶりな字幕挿入等々と…実は「ジガ・ヴェルトフ集団」時代とやっている事が、ほぼ同じ。ただ本作の場合語っているのが政治的な主張ではなく、男女関係に関するものという違いはある。
難解そのものだけれど、自分は(上記の通り)それなりに「見方」自体は心得ていたつもりだったのに。まあジガ・ヴェルトフと較べると、今一つユーモアを感じない点は物足りないかな。寸止めスラブ行進曲は笑うべきだったのかも…
2024.02.23
セイント・フランシス
観てみた、アレックス・トンプソン監督映画。2019年公開。
34歳の独身女性・ブリジットはレストラン給仕の仕事を辞め、近く出産を迎える女性の同性カップルの娘、6歳の少女・フランシスのベビーシッターを引き受ける。生意気な所もあるフランシスとの生活は、山もあり谷もあり。しかもブリジットはパートナーとの間に子を授かったものの、中絶を選んだ事で…という内容。
ブリジット役を演じたケリー・オサリヴァンは、本作では脚本の方も担当している。そのお陰(?)か、実に濃密なジェンダー臭。臭どころか、女性の人生的な岐路を描いたという以上に、経血やら堕胎やら(おそらくは女性性を象徴する)「血」の描写が頻発しており、一介の男性である自分には苦手な事この上ない。
タイトルにもなっているから少女との交流がメインかと思えば、そうとも言い切れない感じが何とも。素朴な感動がありそうな、期待感だけはあったのだけれど…まあ現代ではこれくらいのLGBTQ要素があって、ようやく「素朴」なのかも。
34歳の独身女性・ブリジットはレストラン給仕の仕事を辞め、近く出産を迎える女性の同性カップルの娘、6歳の少女・フランシスのベビーシッターを引き受ける。生意気な所もあるフランシスとの生活は、山もあり谷もあり。しかもブリジットはパートナーとの間に子を授かったものの、中絶を選んだ事で…という内容。
ブリジット役を演じたケリー・オサリヴァンは、本作では脚本の方も担当している。そのお陰(?)か、実に濃密なジェンダー臭。臭どころか、女性の人生的な岐路を描いたという以上に、経血やら堕胎やら(おそらくは女性性を象徴する)「血」の描写が頻発しており、一介の男性である自分には苦手な事この上ない。
タイトルにもなっているから少女との交流がメインかと思えば、そうとも言い切れない感じが何とも。素朴な感動がありそうな、期待感だけはあったのだけれど…まあ現代ではこれくらいのLGBTQ要素があって、ようやく「素朴」なのかも。
2024.02.22
ロングデイズ・ジャーニー / この夜の涯てへ
観てみた。ホアン・ジエ主演、ビー・ガン脚本、監督映画。2018年公開。
12年振りに故郷の凱里に戻った、ルオ・ホンウ。彼は過去に出逢った、ワン・チーウェンという女性の記憶に囚われていた。父親の遺品から出て来た彼女の写真を頼りに、旁海という町を訪ねる事に。そこでは彼女にそっくりなカイチェンがおり、やがて現実と幻想が混然となった異空間へと踏み入って…という内容。
後半の60分は2Dから3Dへと切り替わり、そこから1シーン1カットの連続した長廻し映像となる事で話題となった作品。…ただ長いというだけではなく、空間を上下移動も駆使して立体的に浮遊する幻惑感ある本作の映像は、(何だかピタゴラスイッチを連想させるからか)ストーリーの方が頭から抜け落ちてしまった。
まあストーリーを追う事中心な作品でないのも確かだから、主人公の視点に同一化しながら本作に没入するのがよいのではなかろうか。…個人的に連想したのはギャスパー・ノエの作品だけれど、ああいうバッドトリップ感もないしね。
12年振りに故郷の凱里に戻った、ルオ・ホンウ。彼は過去に出逢った、ワン・チーウェンという女性の記憶に囚われていた。父親の遺品から出て来た彼女の写真を頼りに、旁海という町を訪ねる事に。そこでは彼女にそっくりなカイチェンがおり、やがて現実と幻想が混然となった異空間へと踏み入って…という内容。
後半の60分は2Dから3Dへと切り替わり、そこから1シーン1カットの連続した長廻し映像となる事で話題となった作品。…ただ長いというだけではなく、空間を上下移動も駆使して立体的に浮遊する幻惑感ある本作の映像は、(何だかピタゴラスイッチを連想させるからか)ストーリーの方が頭から抜け落ちてしまった。
まあストーリーを追う事中心な作品でないのも確かだから、主人公の視点に同一化しながら本作に没入するのがよいのではなかろうか。…個人的に連想したのはギャスパー・ノエの作品だけれど、ああいうバッドトリップ感もないしね。
2024.02.20
エル プラネタ
観てみた。アマリア・ウルマン主演、脚本、監督映画。2021年公開。
ロンドンでの留学生活を終えたレオは、スペインのヒホンという町でスタイリストとして働いていた。一方彼女の母親は金策もままならぬ状態に陥り、アパートからは立ち退き勧告が出ていた。そんな苦境に見舞われても、ハイソサエティな生活を目指す母娘。そんなある日レオが雑貨店で出逢ったのが…という内容。
本作が初監督となるウルマンはアルゼンチン出身で、インスタレーションやメディア作品の発表を行うアーティスト。その彼女が実の母親であるアレと共演した本作は、アート…とも言い切れないけれど、ミニシアター系のコメディ?映画。
白黒映像で取り留めのない会話風景を切り取った内容は、初期のジャームッシュに喩えられると成程そんな感じ。でも本作には何故かスコセッシが(ニュース映像で)登場する。アート作品の方を知らないので、本作との共通点は判らないけれど…肩ひじ張らない自由な感覚は、現代のアートシーン的、なのかも。
ロンドンでの留学生活を終えたレオは、スペインのヒホンという町でスタイリストとして働いていた。一方彼女の母親は金策もままならぬ状態に陥り、アパートからは立ち退き勧告が出ていた。そんな苦境に見舞われても、ハイソサエティな生活を目指す母娘。そんなある日レオが雑貨店で出逢ったのが…という内容。
本作が初監督となるウルマンはアルゼンチン出身で、インスタレーションやメディア作品の発表を行うアーティスト。その彼女が実の母親であるアレと共演した本作は、アート…とも言い切れないけれど、ミニシアター系のコメディ?映画。
白黒映像で取り留めのない会話風景を切り取った内容は、初期のジャームッシュに喩えられると成程そんな感じ。でも本作には何故かスコセッシが(ニュース映像で)登場する。アート作品の方を知らないので、本作との共通点は判らないけれど…肩ひじ張らない自由な感覚は、現代のアートシーン的、なのかも。
2024.02.19
コロンバス
観てみた。コゴナダ脚本、監督映画。2017年公開。
モダニズム建築の名品が各所に点在する、インディアナ州の街「コロンバス」。講演でその地を訪れた建築学者の父親が倒れた為に、息子のジン・リーはコロンバスに留まる事に。そこで彼は図書館員の女性・ケイシーと出逢った。2人は同地の建築を巡ると共に、互いに問題を抱えた内面に触れ合って…という内容。
「コゴナダ」というのは耳馴染みのない響きだが、これはペンネーム。韓国出身でアメリカの監督である彼が、日本映画に敬意を捧げたものだとの事。特に小津安二郎から多大な影響を受けた様で…本作でも多くの場面を占める、2者の対話シーンにおける映像からは、成る程そうした息遣いが伝わって来る様だ。
とは言え個人的には本作で前景的/背景的に映される、モダニズム建築の数々に眼を惹かれる。むしろドラマは、そうした建築を「主役」として映像に捉える為のものだろうし…物言わぬ建築物が、そこに存在するだけで既に「映画」だ。
モダニズム建築の名品が各所に点在する、インディアナ州の街「コロンバス」。講演でその地を訪れた建築学者の父親が倒れた為に、息子のジン・リーはコロンバスに留まる事に。そこで彼は図書館員の女性・ケイシーと出逢った。2人は同地の建築を巡ると共に、互いに問題を抱えた内面に触れ合って…という内容。
「コゴナダ」というのは耳馴染みのない響きだが、これはペンネーム。韓国出身でアメリカの監督である彼が、日本映画に敬意を捧げたものだとの事。特に小津安二郎から多大な影響を受けた様で…本作でも多くの場面を占める、2者の対話シーンにおける映像からは、成る程そうした息遣いが伝わって来る様だ。
とは言え個人的には本作で前景的/背景的に映される、モダニズム建築の数々に眼を惹かれる。むしろドラマは、そうした建築を「主役」として映像に捉える為のものだろうし…物言わぬ建築物が、そこに存在するだけで既に「映画」だ。
2024.02.17
リバー・オブ・グラス
観てみた。ケリー・ライカート脚本、監督映画。1994年公開。
フロリダ州を流れる「草の川」近くで暮らす、30代の主婦・コージー。家族との繋がりの意識が薄いまま漠然と日々を送る彼女は、ある日リーという男の車に轢かれそうになる。リーは警官が紛失した拳銃を所持しており、コージーはその拳銃をプールサイドで発射。てっきり誰かを射殺したと思い込み…という内容。
ライカートは米インディペンデント映画における、女性監督として世界的に有名。本作は彼女の初監督作だが、自主映画世界でも女性監督の活動は難しく、その後10年ほど長編を作れなかったらしい。本作もコージーの独白に女性監督らしい感性があるけど、印象としてはデビッド・リンチ作品を思わせる雰囲気。
米田舎の天然狂気みたいな辺りが共通するのかなと思うけれど、流石にリンチ程はイカレてはいない。何にも起きなさそうで、ボニー&クライドな展開(ワイルド・アット・ハートと言うべきだが)だったりするし、充分まともな感性だよなと。
フロリダ州を流れる「草の川」近くで暮らす、30代の主婦・コージー。家族との繋がりの意識が薄いまま漠然と日々を送る彼女は、ある日リーという男の車に轢かれそうになる。リーは警官が紛失した拳銃を所持しており、コージーはその拳銃をプールサイドで発射。てっきり誰かを射殺したと思い込み…という内容。
ライカートは米インディペンデント映画における、女性監督として世界的に有名。本作は彼女の初監督作だが、自主映画世界でも女性監督の活動は難しく、その後10年ほど長編を作れなかったらしい。本作もコージーの独白に女性監督らしい感性があるけど、印象としてはデビッド・リンチ作品を思わせる雰囲気。
米田舎の天然狂気みたいな辺りが共通するのかなと思うけれど、流石にリンチ程はイカレてはいない。何にも起きなさそうで、ボニー&クライドな展開(ワイルド・アット・ハートと言うべきだが)だったりするし、充分まともな感性だよなと。
2024.02.16
瞳をとじて
観てみた。マノロ・ソロ主演、ビクトル・エリセ監督映画。2023年公開。
元映画監督のミゲル・ガライは22年前、彼の映画の撮影中に失踪した俳優、フリオのドキュメンタリー番組に出演する事に。ミゲルは警察から自殺と判定された彼の足取りを、娘のアナや当時の関係者と共に追っていく。だが結局フリオの生死は掴めぬまま、海辺での変わりない生活に戻ったのだが…という内容。
「映画の奇跡」を描いた映画であり、「奇跡の映画」でもある本作。エリセ監督としては31年ぶりの長編、というだけで奇跡としか言い様がないのに加え…本作の映画としての佇まい、そして同監督が「映画」に向けた眼差しに感動する。
アナ・トレントの再起用やフィルムへの郷愁、劇中劇や映画館/観客席との多重構造等、本作が映画である事は端々で意識させられる。特に時間芸術である映画にとって、本作における31年という「時間」は(俳優の変貌にとどまらず)大きな変転だろう。ないと言われても、そこに暖かな「奇跡」を見てもいいじゃない。
元映画監督のミゲル・ガライは22年前、彼の映画の撮影中に失踪した俳優、フリオのドキュメンタリー番組に出演する事に。ミゲルは警察から自殺と判定された彼の足取りを、娘のアナや当時の関係者と共に追っていく。だが結局フリオの生死は掴めぬまま、海辺での変わりない生活に戻ったのだが…という内容。
「映画の奇跡」を描いた映画であり、「奇跡の映画」でもある本作。エリセ監督としては31年ぶりの長編、というだけで奇跡としか言い様がないのに加え…本作の映画としての佇まい、そして同監督が「映画」に向けた眼差しに感動する。
アナ・トレントの再起用やフィルムへの郷愁、劇中劇や映画館/観客席との多重構造等、本作が映画である事は端々で意識させられる。特に時間芸術である映画にとって、本作における31年という「時間」は(俳優の変貌にとどまらず)大きな変転だろう。ないと言われても、そこに暖かな「奇跡」を見てもいいじゃない。
2024.02.14
エルミタージュ幻想
観てみた、アレクサンドル・ソクーロフ監督映画。2002年公開。
ロシアのサンクトペテルブルクに建つ、広壮な美術館「エルミタージュ」。現代の男性がなぜか時間を飛び越え、エルミタージュの歴史的現場や美術品に遭遇する。彼と歩みを共にするのは仏の外交官、キュスティーヌで…という内容。
本作はHDカメラを用いる事で99分の本編を何と、1シーン1カット中断される事なく(バードマンや1917等のなんちゃってとは違い)全編連続して撮影された。それだけで驚嘆する様な作品だが…エルミタージュ内部や群舞シーン、ロシア史上の情景を再現した映像の豪華さは呆れる程。全く以て圧倒されてしまう。
カメラは主人公の視線と一致させた一人称表現、加えてストーリーらしいストーリーが無い。要するに本作は映画というより「バーチャル映像体験」に近いので、そういう辺りで賛否はあるだろう。ただロシア史や美術の知識があるとまた違う様だし…逆に言うならば、それらが無くても楽しめる作りなんじゃないかな。
ロシアのサンクトペテルブルクに建つ、広壮な美術館「エルミタージュ」。現代の男性がなぜか時間を飛び越え、エルミタージュの歴史的現場や美術品に遭遇する。彼と歩みを共にするのは仏の外交官、キュスティーヌで…という内容。
本作はHDカメラを用いる事で99分の本編を何と、1シーン1カット中断される事なく(バードマンや1917等のなんちゃってとは違い)全編連続して撮影された。それだけで驚嘆する様な作品だが…エルミタージュ内部や群舞シーン、ロシア史上の情景を再現した映像の豪華さは呆れる程。全く以て圧倒されてしまう。
カメラは主人公の視線と一致させた一人称表現、加えてストーリーらしいストーリーが無い。要するに本作は映画というより「バーチャル映像体験」に近いので、そういう辺りで賛否はあるだろう。ただロシア史や美術の知識があるとまた違う様だし…逆に言うならば、それらが無くても楽しめる作りなんじゃないかな。
2024.02.13
アンダーグラウンド
観てみた、エミール・クストリッツァ監督映画。1995年公開。
第二次大戦下のユーゴスラビアで、抗独戦レジスタンスの英雄となったマルコ。彼は戦後チトー大統領の側近となる一方、友人のクロをまだ戦争が続いていると騙して、地下世界で武器の密造をさせて売買していた。だがクロの息子・ヨヴァンの結婚式の騒動の中、彼らは外の世界へ出る事になって…という内容。
「ユーゴスラビア」解体に伴い、同国出身のクストリッツァがその歴史を俯瞰した大作。ある国の近現代史をカリカチュアするアンゲロプロス的着想を、フェリーニ的な狂騒で演出したという感のある作品だけれど…今回観た通常版が170分、本来はTVドラマのミニシリーズなので、320分あるというのだから長すぎる。
とは言えハチャメチャだが構想に見合う映像的スケールもあって、見応えあるのも確か。特にソ連解体に伴うユーゴ内戦辺りの、黙示録的展開には(ニュース越しだけど一応当時を知っているし)圧倒された。成る程これは大変な作品。
第二次大戦下のユーゴスラビアで、抗独戦レジスタンスの英雄となったマルコ。彼は戦後チトー大統領の側近となる一方、友人のクロをまだ戦争が続いていると騙して、地下世界で武器の密造をさせて売買していた。だがクロの息子・ヨヴァンの結婚式の騒動の中、彼らは外の世界へ出る事になって…という内容。
「ユーゴスラビア」解体に伴い、同国出身のクストリッツァがその歴史を俯瞰した大作。ある国の近現代史をカリカチュアするアンゲロプロス的着想を、フェリーニ的な狂騒で演出したという感のある作品だけれど…今回観た通常版が170分、本来はTVドラマのミニシリーズなので、320分あるというのだから長すぎる。
とは言えハチャメチャだが構想に見合う映像的スケールもあって、見応えあるのも確か。特にソ連解体に伴うユーゴ内戦辺りの、黙示録的展開には(ニュース越しだけど一応当時を知っているし)圧倒された。成る程これは大変な作品。
2024.02.11
クラム
観てみた、T・ツワイゴフ監督によるドキュメンタリー映画。1994年公開。
「ロバート・クラム」は1943年、フィラデルフィアで誕生したアメリカのコミック・アーティスト。人物をコミカルにデフォルメした画風で世界的に有名なクラム、そして彼の家族を、友人である同監督が密着取材したのが本作…という内容。
Janis Joplinのアルバム「Cheap Thrills」のジャケット画を描いた人。クラムは画風のユーモラスさに反し、複雑な人物像なのが徐々に明らかになる。本人どころか彼の家族、皆が闇を抱えていて戦慄してしまう。本作を一種のカルト作品にしているのはそういう辺り…加えて一種のアールブリュット映画でもある。
彼の兄弟もまた絵を描いているんだけど、天然ものの狂気がどんどん溢れてくるのが本作の見所。クラムは間違いなく成功者だろうけれど、紙一重のギリギリなのが判ってしまう。…本作ではプロデューサーにデヴィッド・リンチが名を連ねており、(単なる名義貸しという話を聞いた上でも)妙に納得してしまうという。
「ロバート・クラム」は1943年、フィラデルフィアで誕生したアメリカのコミック・アーティスト。人物をコミカルにデフォルメした画風で世界的に有名なクラム、そして彼の家族を、友人である同監督が密着取材したのが本作…という内容。
Janis Joplinのアルバム「Cheap Thrills」のジャケット画を描いた人。クラムは画風のユーモラスさに反し、複雑な人物像なのが徐々に明らかになる。本人どころか彼の家族、皆が闇を抱えていて戦慄してしまう。本作を一種のカルト作品にしているのはそういう辺り…加えて一種のアールブリュット映画でもある。
彼の兄弟もまた絵を描いているんだけど、天然ものの狂気がどんどん溢れてくるのが本作の見所。クラムは間違いなく成功者だろうけれど、紙一重のギリギリなのが判ってしまう。…本作ではプロデューサーにデヴィッド・リンチが名を連ねており、(単なる名義貸しという話を聞いた上でも)妙に納得してしまうという。
2024.02.10
M3GAN / ミーガン
観てみた、ジェラルド・ジョンストン監督映画。2022年公開。
交通事故で両親を亡くした少女・ケイディは、玩具メーカーでAI製品開発を担当する伯母のジェマに引き取られる。喪失感で苦しむ彼女にジェマは、新たに開発した少女型ロボット・ミーガンを与える。ミーガンはケイディの心に寄り添って彼女を立ち直らせるのだが、その庇護的行動がやがて暴走して…という内容。
「ロボ子が愛してる」だな。ただあらかじめ「ホラー」という事前知識があると、前半のええ話風の展開にはいつまでモタモタしてんだ、という感がしてどうも。…ある意味丁寧にやってはいるんだけど、今度はホラー展開の為のご都合主義が気になるし(ロボット三原則どうなってんの)。だというのに怖くないのはなあ。
でも美?少女殺人ロボの大暴れなんて題材からして「オタクくん、こういうの好きっしょ?」という狙いが丸出しなので、好きな人が多いのもそらそうでしょうなと。そういう意味では、落ち武者ヘアーになったミーガンを愛して一人前だぞ。
交通事故で両親を亡くした少女・ケイディは、玩具メーカーでAI製品開発を担当する伯母のジェマに引き取られる。喪失感で苦しむ彼女にジェマは、新たに開発した少女型ロボット・ミーガンを与える。ミーガンはケイディの心に寄り添って彼女を立ち直らせるのだが、その庇護的行動がやがて暴走して…という内容。
「ロボ子が愛してる」だな。ただあらかじめ「ホラー」という事前知識があると、前半のええ話風の展開にはいつまでモタモタしてんだ、という感がしてどうも。…ある意味丁寧にやってはいるんだけど、今度はホラー展開の為のご都合主義が気になるし(ロボット三原則どうなってんの)。だというのに怖くないのはなあ。
でも美?少女殺人ロボの大暴れなんて題材からして「オタクくん、こういうの好きっしょ?」という狙いが丸出しなので、好きな人が多いのもそらそうでしょうなと。そういう意味では、落ち武者ヘアーになったミーガンを愛して一人前だぞ。
2024.02.08
サイコ・ゴアマン
観てみた。スティーヴン・コスタンスキ脚本、監督映画。2021年公開。
かつて大宇宙で暴虐の限りを尽くした名もなき怪人は、地球で眠りに就いていた。ルークとミミ兄妹の手で復活した怪人は、再び災厄を地上に撒き散らさんとする。だが彼を自由に制圧する事の出来る宝石を、ミミに握られてしまった。しかも彼女に「サイコ・ゴアマン」という、奇妙な名前まで付けられて…という内容。
名前通りにグロい残酷描写が頻出するものの、作風を言うならホラー・コメディ。感じとしては「悪魔の毒々モンスター」等で知られる、(懐かしの)トロマ・エンターテインメント作品でも、連想すればよいのではないか。…監督の所属している「アストロン6」というカナダの映像団体が、要するにそういう作品の専門らしい。
そこに加えて着ぐるみモンスターが大挙登場して(CGも混じってるんだろうけど)、パチモン・スターウォーズみたいな感じになったり。戦闘はどう見ても、ご当地ヒーロー番組並だったりと…変な意味でツボを突いてくる辺り嫌いじゃない。
かつて大宇宙で暴虐の限りを尽くした名もなき怪人は、地球で眠りに就いていた。ルークとミミ兄妹の手で復活した怪人は、再び災厄を地上に撒き散らさんとする。だが彼を自由に制圧する事の出来る宝石を、ミミに握られてしまった。しかも彼女に「サイコ・ゴアマン」という、奇妙な名前まで付けられて…という内容。
名前通りにグロい残酷描写が頻出するものの、作風を言うならホラー・コメディ。感じとしては「悪魔の毒々モンスター」等で知られる、(懐かしの)トロマ・エンターテインメント作品でも、連想すればよいのではないか。…監督の所属している「アストロン6」というカナダの映像団体が、要するにそういう作品の専門らしい。
そこに加えて着ぐるみモンスターが大挙登場して(CGも混じってるんだろうけど)、パチモン・スターウォーズみたいな感じになったり。戦闘はどう見ても、ご当地ヒーロー番組並だったりと…変な意味でツボを突いてくる辺り嫌いじゃない。
2024.02.07
デッド・ドント・ダイ
観てみた。B・マーレイ主演、J・ジャームッシュ監督映画。2019年公開。
何の変哲もない米国の田舎町、センタービル。だが地球の地軸移動や動物の異常行動を始め、何事かの到来を予告するかの様な現象が起きていた。そしてある夜遂に墓場から死者が蘇って、町の住民を襲い始めた。警察署のロバートソン署長を始めとする警官達は、ゾンビの群れの出現に際して…という内容。
ジャームッシュが作ったゾンビ映画…と聞くと冗談みたいだけど、実際冗談みたいな映画。ゾンビ物と言ってもノリはいつも通りなので、オフビートで脱力系。でもアダム・ドライバーやイギー・ポップ等の出演陣に、コーヒーや日本刀といった過去作を思わせる小ネタ。まるで同監督の、集大成的な内容となっている。
集大成と言ったら大袈裟なので、要はセルフパロディなんだろう。なのでゾンビ映画好きからは、大ブーイングを貰いそうな代物なのだけれど…ジャームッシュ作品に昔から付き合っている身としては、案外嫌いにはなれないんだよな。
何の変哲もない米国の田舎町、センタービル。だが地球の地軸移動や動物の異常行動を始め、何事かの到来を予告するかの様な現象が起きていた。そしてある夜遂に墓場から死者が蘇って、町の住民を襲い始めた。警察署のロバートソン署長を始めとする警官達は、ゾンビの群れの出現に際して…という内容。
ジャームッシュが作ったゾンビ映画…と聞くと冗談みたいだけど、実際冗談みたいな映画。ゾンビ物と言ってもノリはいつも通りなので、オフビートで脱力系。でもアダム・ドライバーやイギー・ポップ等の出演陣に、コーヒーや日本刀といった過去作を思わせる小ネタ。まるで同監督の、集大成的な内容となっている。
集大成と言ったら大袈裟なので、要はセルフパロディなんだろう。なのでゾンビ映画好きからは、大ブーイングを貰いそうな代物なのだけれど…ジャームッシュ作品に昔から付き合っている身としては、案外嫌いにはなれないんだよな。
2024.02.06
来る
観てみた。岡田准一主演、中島哲也監督映画。2018年公開。
周囲の祝福を受けて妻・香奈と結ばれた田原秀樹は、その後は愛娘・知紗との生活をブログに綴る子煩悩パパとなった。だがそんな一家の周囲に奇怪な現象が頻発する事となり、秀樹は友人のオカルトライター・野崎和浩に調査を依頼する。どうやら彼の家庭へと侵入しようとする、異界の存在がいて…という内容。
原作は澤村伊智の小説「ぼぎわんが、来る」。日本ホラー小説大賞を最高評価で獲得した作品だそう(原作未読)だけど…映画版である本作は、全然怖くない。語り手が交代する3部構成や脅威の不分明さ(ぼぎわんの名も強調されない)等原作を踏まえているものの、ホラーと言うよりいかにも毎度同じの中島映画。
特に退魔儀式…と言うより、盆踊り大会のおふざけ感が。前半も親戚顔合わせ・結婚式・ホームパーティの居心地悪さ。逆にその後の家庭・職場問題のイヤな感じと、気の休まる暇がない。せめて怖がらせてくれと祈りながら観てたわ。
周囲の祝福を受けて妻・香奈と結ばれた田原秀樹は、その後は愛娘・知紗との生活をブログに綴る子煩悩パパとなった。だがそんな一家の周囲に奇怪な現象が頻発する事となり、秀樹は友人のオカルトライター・野崎和浩に調査を依頼する。どうやら彼の家庭へと侵入しようとする、異界の存在がいて…という内容。
原作は澤村伊智の小説「ぼぎわんが、来る」。日本ホラー小説大賞を最高評価で獲得した作品だそう(原作未読)だけど…映画版である本作は、全然怖くない。語り手が交代する3部構成や脅威の不分明さ(ぼぎわんの名も強調されない)等原作を踏まえているものの、ホラーと言うよりいかにも毎度同じの中島映画。
特に退魔儀式…と言うより、盆踊り大会のおふざけ感が。前半も親戚顔合わせ・結婚式・ホームパーティの居心地悪さ。逆にその後の家庭・職場問題のイヤな感じと、気の休まる暇がない。せめて怖がらせてくれと祈りながら観てたわ。
2024.02.05
サスペリア
観てみた。D・ジョンソン主演、ルカ・グァダニーノ監督映画。2018年公開。
ハイジャック等の事件が続き、きな臭い政治状況にある1977年のベルリン。アメリカからやって来た少女・スージーは、その実力から憧れのマルコス舞踊団で大抜擢される。だがその実情は夜な夜な忌まわしい儀式を行っている危険な団体と知り、心理療法士クレンペラーが調査に乗り出したのだが…という内容。
バレエ団かと思ったら、土方巽や山海塾みたいな暗黒舞踏集団だった。としか言いようのない作品。本作は勿論アルジェント監督による1977年公開映画のリメイクだが…評価としては賛否両論(公式サイトにまでそう書いてあった)。
オリジナル版は薄ぼんやりな記憶しかないものの、個人的にはやっぱり音楽がGoblinじゃないと何かなあ。それより何より152分もの長さでダラダラやられては、悪魔ならぬ睡魔の儀式だろこれと。加えてちっとも怖くないし…と思ったら、尼の紹介だと「ファンタジー・サスペンス」で「ホラー」ではなかったという。
ハイジャック等の事件が続き、きな臭い政治状況にある1977年のベルリン。アメリカからやって来た少女・スージーは、その実力から憧れのマルコス舞踊団で大抜擢される。だがその実情は夜な夜な忌まわしい儀式を行っている危険な団体と知り、心理療法士クレンペラーが調査に乗り出したのだが…という内容。
バレエ団かと思ったら、土方巽や山海塾みたいな暗黒舞踏集団だった。としか言いようのない作品。本作は勿論アルジェント監督による1977年公開映画のリメイクだが…評価としては賛否両論(公式サイトにまでそう書いてあった)。
オリジナル版は薄ぼんやりな記憶しかないものの、個人的にはやっぱり音楽がGoblinじゃないと何かなあ。それより何より152分もの長さでダラダラやられては、悪魔ならぬ睡魔の儀式だろこれと。加えてちっとも怖くないし…と思ったら、尼の紹介だと「ファンタジー・サスペンス」で「ホラー」ではなかったという。
2024.02.03
死霊館
観てみた。V・ファーミガ主演、ジェームズ・ワン監督映画。2013年公開。
1971年、ハリスヴィルの古い屋敷に一家7人で引っ越したペロン夫妻。板で塞がれた地下室のあるその家で、彼らは度々奇妙な現象に遭遇する。事態はどうやら悪霊が関係しているらしく、一家は超常現象研究家のウォーレン夫妻に救けを求める。だがその屋敷は、研究家ですらひるむ霊の巣窟で…という内容。
「ウォーレン夫妻」というのは実在の人物で、彼らが最も恐れ秘密にしていた事件というのが本作の売り文句。観ていて何だか「悪魔の棲む家」(1979年)みたいだなあ、と思ったら…実際そのアミティビル事件にも関係しているとの事。
フリードキンのエクソシストと小野不由美のゴーストハントを合体させた様な内容で、悪霊祓いをかなり真面目にやっている。ただ(上記した通り)どこかで見た感じなので。人気シリーズになってその後何作も作られているというのは、そうなの?って。まあ本作では思わせぶりなだけの、アナベルは気になるけれど。
1971年、ハリスヴィルの古い屋敷に一家7人で引っ越したペロン夫妻。板で塞がれた地下室のあるその家で、彼らは度々奇妙な現象に遭遇する。事態はどうやら悪霊が関係しているらしく、一家は超常現象研究家のウォーレン夫妻に救けを求める。だがその屋敷は、研究家ですらひるむ霊の巣窟で…という内容。
「ウォーレン夫妻」というのは実在の人物で、彼らが最も恐れ秘密にしていた事件というのが本作の売り文句。観ていて何だか「悪魔の棲む家」(1979年)みたいだなあ、と思ったら…実際そのアミティビル事件にも関係しているとの事。
フリードキンのエクソシストと小野不由美のゴーストハントを合体させた様な内容で、悪霊祓いをかなり真面目にやっている。ただ(上記した通り)どこかで見た感じなので。人気シリーズになってその後何作も作られているというのは、そうなの?って。まあ本作では思わせぶりなだけの、アナベルは気になるけれど。
2024.02.02
拳銃残酷物語
観てみた。宍戸錠主演、古川卓己監督映画。1964年公開。
妹を交通事故で半身不随にした運転手に復讐し、服役していた登川という男。裏で手を廻し彼の刑期を短縮させた松本が提示した犯罪計画は、競馬場を出発した現金輸送車の、走行ルートを変えて襲撃するというものだった。一癖も二癖もある仲間達を集め、登川は遂に現金の奪取に成功するのだが…という内容。
原作は大藪春彦の小説「ウィンチェスターM70」。概要を見ると大体同じストーリーの様だが、ただそちらの銀行襲撃から競馬場の現金輸送車へとプロットが変更されている。観ながら「現金に体を張れ」(1956年)を連想していたら、日活公式サイトの紹介ページでも同作に言及しており…どうやらそういう事らしい。
日活アクションの陽性なイメージとは違う、ハードで陰惨な展開は成る程大藪的か。ただ逆に言えばすごく息苦しい作品(同じ破滅エンドでも、「現金に体を張れ」でのある種爽快な結末とは真逆だし)なので、そこは人を選ぶかなあ。
妹を交通事故で半身不随にした運転手に復讐し、服役していた登川という男。裏で手を廻し彼の刑期を短縮させた松本が提示した犯罪計画は、競馬場を出発した現金輸送車の、走行ルートを変えて襲撃するというものだった。一癖も二癖もある仲間達を集め、登川は遂に現金の奪取に成功するのだが…という内容。
原作は大藪春彦の小説「ウィンチェスターM70」。概要を見ると大体同じストーリーの様だが、ただそちらの銀行襲撃から競馬場の現金輸送車へとプロットが変更されている。観ながら「現金に体を張れ」(1956年)を連想していたら、日活公式サイトの紹介ページでも同作に言及しており…どうやらそういう事らしい。
日活アクションの陽性なイメージとは違う、ハードで陰惨な展開は成る程大藪的か。ただ逆に言えばすごく息苦しい作品(同じ破滅エンドでも、「現金に体を張れ」でのある種爽快な結末とは真逆だし)なので、そこは人を選ぶかなあ。