2024.06.30

私の殺した男

観てみた。P・ホームズ主演、エルンスト・ルビッチ監督映画。1932年公開。

第一次世界大戦中。フランス軍兵士のポールは戦場で、あるドイツ兵を殺害した。終戦し数年経った後でもその悔恨に苦しむ彼は、遺族に詫びるべくドイツ兵の故郷を訪れる。ところが両親に対面しても、その事を言い出せなかったポール。彼の苦悩が続く中、やがてドイツ兵一家との交流が始まって…という内容。

ルビッチ監督と言えばソフィスティケイテッド・コメディの名手というイメージだけれど、本作は(メロドラマ調の内容ではあるものの)重い反戦的なテーマを採り上げている。…とは言えどう考えても悲惨な展開しか想像出来ないところを、フワリと見事に着地して紅涙を絞ってくれる辺り、やはり流石の名監督なのである。

元々はドイツ生まれのルビッチ監督。第一次大戦当時は既に映画業界人として活動しており、出征の経験はない。1922年に渡米し同地で作った本作は、そういう距離感の映画と言えばまあそうかも。…でもだからこそ、感動もできる。
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2024.06.29

激怒

観てみた、フリッツ・ラング監督映画。1936年公開。

ある田舎町を婚約者のキャサリンに逢う為、自動車を走らせていたジョー。だが彼は発生中の、誘拐事件の犯人と誤認されて投獄。しかも怒りに我を忘れた群衆が暴徒化して、留置場に火を放った。辛くも逃げ延び姿を隠したジョーだが、彼をリンチ殺害したものとして町の住民22人が裁判にかけられ…という内容。

本作はナチス政権を逃れて亡命した、ラング監督の渡米後第1作。テーマこそ違っているものの、ドイツ時代の代表作「M」と同じく法廷物なのは興味深い。タイトルが勇ましいから復讐物かと思ったんだけど…まあ、ある意味そうか。

一種のサスペンス要素が普遍的ではあるものの、群集心理や偏見が引き起こす冤罪という本作のモチーフは、いかにも(イージーライダー等を生み出した)アメリカっぽいものと感じられる。それでも最終的には社会正義を貫いた主人公像も、(フランク・キャプラ風人物として)アメリカ的と言うべきかもしれない。
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2024.06.28

ノートルダムのせむし男(公開時タイトル:ノートルダムの傴僂男)

観てみた、W・ワースリー監督によるサイレント映画。1923年公開。

15世紀のパリ。ノートルダム寺院では、せむし男・クアシモドが鐘楼守として働いていた。祭りの日彼は、寺院の前で踊る娘・エスメラルダの姿を見掛ける。クアシモドは誤解から鞭打ち刑を受け、そんな彼にエスメラルダは飲み水を与える。彼女に惹かれるクアシモド、しかし彼女には想い人がいて…という内容。

原作はユーゴーの小説で、これまでに何度も映像化されている。クアシモド役はロン・チェイニーが演じ、本作が彼の出世作となったとの事。せむし男と言えば個人的にはあしたのジョーで、丹下段平が演じてたな…というイメージ。

本作のノートルダム寺院はセットで再現されたものだが、実物の方は2019年火災に見舞われた。内容の方はぶっちゃけ知らなかったので、ふーんと思いながら観たのだけれど…調べてみると原作では、無茶苦茶バッドエンドでビックリ。複雑な気分になったものの、現実の火事では犠牲者が出ないでよかった。
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2024.06.26

狂える悪魔(公開時タイトル:狂へる悪魔)

観てみた、ジョン・S・ロバートソン監督によるサイレント映画。1920年公開。

理想主義的慈善家である医学博士の「ジキル」は、人間精神の2面性を分裂させ違う肉体に宿らせるという着想を得る。彼はその為の薬品を開発し、自らに投与実験する。そして誕生したのが「ハイド」という人格。恐ろしく堕落した精神を持ったハイド氏と、高潔なジキル博士の二重生活が始まるのだが…という内容。

原作は勿論ロバート・ルイス・スティーヴンソンの小説「ジキル博士とハイド氏」、本作はそちらの初期の映画となる(最初の映像化は1908年だが、現存していないとの事)。ストーリー的には大体そのままだけれど…原作が語り手の替わる2部形式で、前半ハイド氏の正体は(たしか)伏せられていたのが、本作ではアッサリ見せてしまっていた。まあそこは当時から、既に有名だったって事か。

主役を演じたジョン・バリモアの大仰なパントマイム演技は笑ってしまうけど、雰囲気自体は上々で今ではこの感覚は出せないな、という意味で大変見事。
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2024.06.25

霊魂の不滅

観てみた、ヴィクトル・シェストレム監督によるサイレント映画。1921年公開。

臨終の床に就いた救世軍の少女・エディスは、ダヴィッド・ホルムという男を呼ぼうとする。ホルムとは妻子がありながら破滅的な放蕩生活を送り、遂には命を落として死神の馭者となっていた。生前そんなホルムと旧交を持ってくれていた、エディスの許にやって来た彼は、自身の人生を振り返るのだが…という内容。

スウェーデン映画初期の重要な作品で、ベルイマンにも影響を与えたという本作。全く予備知識も無しに観たので、オカルトとか怪奇映画のつもりだったのに違った。感じとしてはディケンズというか、フランク・キャプラの人情物を思わせる。…でも斧でドアをぶち破るシーンは、まるでシャイニングみたいなんだけど。

それより今回アマプラで観た本作は…字幕がひどい。機械翻訳らしきいい加減さで、内容がサッパリ判らない。しかも何でか、シリアスなシーンに顔文字まで出て来てフザケテる。貴重な作品だけに、こういうのは勘弁してほしいなあ。
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2024.06.23

「戊辰戦争から西南戦争へ / 明治維新を考える」小島慶三著

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読んでみた、日本人著者によるノンフィクション。1996年発表。

忍藩武士として幕末を送った先祖を持つ著者が、それを起因に「明治維新とは」を振り返る。本書では戊辰戦争と西南戦争という、大きな試練に向かった武士達の想いとは?、という近代日本への道程を再検証していく…という内容。

…という事の様だが、戦争自体を詳述する訳ではなく割と維新に関する総論的な内容。元々は講演として行った内容を書籍化したもので、先日紹介した「幕末史」と近い感じながら、エピソード集としてはそちらに軍配が上がる。本書は著者が意図する程には、内容の焦点も絞り切れていないので、致し方ないな。

期待したものとは違ったけれど、(執筆の発端になっただけあって)新時代を前に滅びゆく武士への共感があるためか、本書の端々から物悲しさが感じられるのはいい。上野公園の銅像こと、ラストサムライ西郷さんの最期を目の当りにしたら、そりゃ新政府軍の兵士も戦場で土下座するわと。…映画の話ですが。
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2024.06.21

昆虫怪獣の襲来

観てみた、ケネス・G・クレイン監督映画。1957年公開。

宇宙放射線被曝の動物実験の為に打ち上げられたロケットが、アフリカに墜落した。数ヶ月後、現地では住民が毒液を注入され死亡する事例が多発。それは事故ロケットに乗せられていたスズメバチが、放射線の影響で巨大化した怪物の仕業だった。現地に飛んだ、ブレイディ博士とモーガン博士は…という内容。

本作の怪物も、金星ガニや海獣の霊を呼ぶ女等で有名な、ポール・ブレイズデルがデザインを手掛けている。彼のモンスターらしく、なかなか愛嬌があってよいのだが…内容の方がどうも。怪獣退治(主人公は手榴弾を投げただけで、あとは火山が始末してしまった)よりも、アフリカ秘境探検記みたいな感じだし。

でも槍を構えた現地人が、丘一面の群衆で迫って来る映像とかすごい。まあアーカイブ映像だらけという話なので、そういうのも使い廻しかも。…それより日本の「獣人雪男」が米国公開された際、同時上映されたのが本作だって。
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2024.06.20

悪魔の呪い

観てみた、ラリー・ブキャナン監督によるTV映画。1967年放映。

舞台上で催眠術を披露するジョン・バッソ博士の実験は、助手のドリーナを遥かな過去へと退行させるというもの。そしてその催眠術の目的は、彼女を介して湖の底から醜い怪物を呼び出し、次々に殺人の犠牲者を増やす事だった。空軍心理学者・デル大尉も、博士の舞台に参加する事になるのだが…という内容。

本作もまた例によってブキャナン監督が手掛けた、AIP映画「海獣の霊を呼ぶ女」(1956年)のリメイク。本作こそまさにブキャナンだなあ…という出来の悪さだが(目玉の怪物はやはりまともだ)、それを如実に表しているのが怪物で「恐怖の洞窟」と同じ奴。まあ本作の方が先だからそっちが使い廻しなんだけど。

ピンポン玉の目玉に出っ歯という顔は、オリジナル版の足元にも及んでいない。でも冒頭から暴れて、それなりに出演シーンが多いのは褒めてもいいかな。…あとバットマンの曲とかの、バンドによる演奏シーンが入るのもよかった。
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2024.06.18

タルトゥの呪い

観てみた。F・ピネロ主演、ウィリアム・グレフェ監督映画。1966年公開。

フロリダ州の湿地帯、そこには「タルトゥ」という古代インドの呪術師が埋葬されていた。調査に訪れた考古学グループの男女は、彼の埋葬地を荒らしてしまった為、動物に変化したタルトゥの呪いを受ける事に。ヘビやワニ、淡水には生息しない筈のサメ。そして遂には、タルトゥまでもが実体を現し…という内容。

道具立て自体はホラーなんだけど、殆ど動物に追いかけまわされているだけの映画。しかも女の子がキャーキャー騒ぐのがうるさいのなんの。ある意味大変な熱演なのだが、こんな映画でそんなに頑張られてもな…という気がしてしまう。

あと劇伴音楽はストリングスを使っており、意外と豪華。本作の内容には分不相応…と言うか、場面にそぐわない感じがあるのは、何かしらアーカイブ的な音源が使えたからかも。まあ音楽ならしつこく流れるドンドコに洗脳されそうだけれど、これインド音楽ではないな。ヒッピームーブメント前の認識じゃ仕方ないか。
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2024.06.17

「新撰組顛末記」永倉新八著

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読んでみた、日本人著者による回想録/ノンフィクション。1971年発表。

1839年に江戸で誕生した「永倉新八」は、幕末の激動の中「新選組」の二番隊組長として結成から崩壊まで見届け、その後も生存者として人生を全うした。本書は彼が1913年、小樽新聞の記者を相手に口述した回想録…という内容。

本書は連載記事「新撰組 永倉新八」を改題し、「同志連名記」等を加えて刊行されたものの文庫版。新聞記者が実際の執筆をしたからか案外客観的な記述が多く、当事者としての心情・感懐は省かれている様な印象がある。それでも内戦時代の殺伐とした状況が、簡潔な文章からも伝わって来て恐ろしくなった。

自分は永倉なら、池波正太郎「幕末新選組」で先に知ってはいたものの、やはり読んだ感覚は違っているな。有名な池田屋襲撃等でも、当事者ならではの凄惨な記述など他では得難いものだろう。…因みに池波の本は、「行殺新選組」(永倉が追加されたふれっしゅ)の事前勉強として読んだ。士道不覚悟で切腹。
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2024.06.15

血まみれの吸血鬼

観てみた、ミゲル・モライタ監督映画。1962年公開。

音もなく疾駆する馬車に乗るのは、フランケンハウゼン伯爵。彼の近隣に住まい、遥か過去から代々「吸血鬼」との闘いを繰り広げて来た家系に生まれたカリオストロ伯爵は、その男を倒すべき宿敵だと見做す。そこで彼は娘のイネスを、メイドとしてフランケンハウゼン邸に潜入させ、内情を探るのだが…という内容。

陰鬱でゴシック調の美術が重厚な本作だが、なんとメキシコ映画。しかも白黒映像でフィルムのダメージ具合がどう見ても1930年代位の作品を彷彿させるのに、実は1960年代の映画だという。時代と国を間違えた感がすごいけれど、それがむしろいい方向に雰囲気作りしており、一見の価値ある内容と言える。

ただ全編それで通せた訳ではなく、いい部分もあればチャチな部分も。吸血鬼の齧歯類みたいに長い付け歯やコウモリの造詣等、ガックリと力が抜けてしまうのは仕方ない。それより古典吸血鬼作品を彷彿させる、質感に注目しよう。
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2024.06.14

復讐の不死者

観てみた、ジャック・ポレックスフェン監督映画。1956年公開。

仲間の裏切りに遭い、ブッチャーは強盗殺人犯として捕縛された後、死刑執行された。彼の死体は密かに闇へと流され、ある科学者の実験に供された。その際受けた強力な電流で復活、怪力と不死身の肉体を得たブッチャー。彼は隠し置いた60万ドルの奪還と、裏切者への復讐を開始するのだが…という内容。

主演はロン・チェイニー・Jr,。つまりサイレント映画時代の「オペラの怪人」等で名高い、ロン・チェイニーの息子。元々俳優志望だったところを父親から反対され、彼の死後にようやく役者になったとの事。なのに大抵「父親には及ばない」という枕詞が付くのは気の毒だが、本作を観た上だとまあそうかもなあ…としか。

本作でブッチャーがほぼ無言だったり、地下水道での立ち回り(バズーカぶっ放してる)があったりと、父の「怪人」を連想させるのが興味深い。この内容だから起用したのか、単に小ネタとして入れたのか。…まあ正直どっちでもいいな。
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2024.06.12

メサ・オブ・ロスト・ウーマン

観てみた。ロン・オーモンド、ハーバート・テボス監督映画。1953年公開。

グラントとドリーンという男女2人が、死の砂漠から生還を果たす。彼らは誰も近づく事の出来ないザルパ・メサに飛行機で不時着し、山頂の台地で恐ろしい体験をしたと言うのだ。そこではアランヤ博士という科学者が、巨大蜘蛛や小人、そして蜘蛛の能力を持ったタランテラという女性を作り上げており…という内容。

本作はしつこい位状況説明のナレーションが入っており、それがギターの反復的な演奏と共にラテンアメリカの、マジックリアリズム的な「語り部」を連想させ興味深い。…とか言ったら褒め過ぎだよな。音楽は耳障りで騒々しく、ある評論家からは「気が狂う」とまで言われてるし、ストーリーも退屈な事この上ない。

蜘蛛女のキス…じゃなく踊りが延々続くのを無理やり見せられるのは、死霊の盆踊りと大差ない。また本作の音楽はエド・ウッド作品に流用された上、出演者もプラン9等に参加しているそう。最底辺映画にも地下交流があって怖い。
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2024.06.11

目玉の怪物

観てみた、ラリー・ブキャナン監督によるTV映画。1967年放映。

森の中に車を停め、愛を交わすカップル達。その中の1組スタンとスーザンは、自動車で奇妙な生物を轢き殺してしまった。その怪物は地球へ円盤でやって来た宇宙人だったのだが、2人は人間を轢いたものと思われ警察に拘束される。軍が調査中の宇宙船が爆発する一方、怪物の脅威も広まって…という内容。

本作は大頭人で有名な「暗闇の悪魔」(1957年)のリメイクで、ブキャナン監督がAIPの下で制作したTV映画としては最初の作品。…まあ例によってヒドイ内容なのだが、最後までブキャナンと気付かなかった程度にはまともな出来だと思う。多分ユーモアというか、ギャグを各所に織り交ぜているお陰じゃないかな。

ただタイトルには「目玉」とあるけれど、そんなの出て来ない気がするな…(退屈すぎて寝たので確証はない)。出て来るのは大口を開けたシュガロンみたいなの。でも3,4体同時に画面に映っているので、後の作品よりは力が入ってる。
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2024.06.09

ブードゥーマン

観てみた。ベラ・ルゴシ主演、W・ボーディン監督映画。1944年公開。

ある田舎道で女性の一人乗りによる自動車の失踪事件が、連続して発生する。結婚を間近に控える映画脚本家、トビーの知り合いの女性もまた被害者となっていた。それは亡き妻の復活を目指す科学者・マーロウ博士が手下を使って、ブードゥーの邪悪な儀式の為、若い女性ばかりを集めていたのだ…という内容。

またベラ・ルゴシ主演による初期のゾンビ映画だが、これもやはり現在のイメージとは大分違う。違うと言えば近いネタの映画である「恐怖城」から大分格が落ちており…「幽霊の館」と同じくルゴシ人気も既に陰りが出て来たせいなのか、戦時中の為(本作みたいな映画にも、戦時国債の宣伝が出る)かは判らない。

まあチャチいと言ってしまえばそれまでだが、本作にはそこはかとないユーモアがあるのでまだ救われている。ルゴシに頼り切りという事もない分、まだ工夫が感じられるし。ラストのメタ発言なんか、ヤケクソ気味という気もするけど。
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2024.06.08

恐怖城

観てみた。ベラ・ルゴシ主演、V・ハルペリン監督映画。1932年公開。

ニールとマデリーンは結婚式を挙げる為、ボーマンの薦めでハイチを訪れる。その地にはブードゥー教の奇妙な風習を司るルジャンドルがおり、ボーマンは彼の手を借りて横恋慕するマデリーンを手に入れようとしていたのだ。彼女は「ゾンビ」にされてしまい、ルジャンドルの意のままとなったのだが…という内容。

本作は主演のルゴシにとって「魔人ドラキュラ」の翌年に当たり、まさに絶頂期と言える、存在感のある演技を見せている。またゴシック調のホラーとしてセットや背景(グラスワーク?)も秀逸で、見所や風格のある映像なのだが…本作は「ゾンビ映画」の始祖的存在として、映画史的に重要な作品でもあるとの事。

勿論現在の定番である「ロメロ・ゾンビ」とはだいぶ違っており、どちらかと言うと催眠術や洗脳みたいだけれど…闇の中無表情で迫って来る集団の描写などは、「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」を割と直接的に連想させる。すごいなあ。
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2024.06.06

幽霊の館

観てみた。ベラ・ルゴシ主演、ジョセフ・H・ルイス監督映画。1941年公開。

高名な医師であるチャールズ・ケスラーは、妻から別れられた後は、娘や使用人達と暮していた。そんな彼の屋敷で、連続して殺人事件が発生する。凶行はなんとケスラー自身によるもので、既にこの世に亡いと思い込んでいた妻の姿を目撃する度に、別の人格による殺人衝動が生じてしまうのだ…という内容。

主演のルゴシは「魔人ドラキュラ」(1931年)等、怪奇映画で有名な俳優…という知識はあっても、実際には観た事がなかった。なので自分のイメージではやはり、エド・ウッドの最低映画に出演してひどい目にあってた人。本作は魔人ドラキュラの10年後で、ウッド作品の10数年前という中間の時期に当たる映画。

ホラーと言っても特別なギミックがある訳ではなく、ルゴシの表情や演技に頼りっきりな辺りで絶大な信頼が窺えるのだが…今観るとそれも、大時代がかった滑稽さを感じるのは仕方ない。とは言え、ルゴシを見る分にはよいのでは。
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2024.06.05

悪夢の家

観てみた、ロバート・ベリー主演、監督映画。1963年公開。

ある作家の男はこのところ毎夜、同じ様な「悪夢」が続いていた。廃墟となった不気味な屋敷に足を踏み入れ、そこで予言とも取れる不吉なビジョンを見るのだ。その事で妻との関係が、ギクシャクする事に。だが悪夢が実現するかの様に知人、そして妻までが無残な死を迎えた。遂には作家本人もが…という内容。

悪夢の場面には不協和音まみれのオルガンによる即興曲が流れ、ドイツ表現主義ばりに前衛、実験的とも言える映像が繰り広げられる。…と言うと多分褒め過ぎ、恐ろしく低予算で恐ろしく未熟な素人が作った駄作と言うべきか。

でも個人的には好きなんだよな、こういうの。(恐らくは)企まずして初期のアヴァンギャルド映画みたいになった映像面の質感があり、こんな作品があったんだなという、掘り出し物にも感じる。ピーヒョロ ヒョロリピーという耳障りで単調な音楽も、素人くさいくせして結構カッコイイ。物好き度合いを測るにはいい映画かも?
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2024.06.03

性の復讐

観てみた。R・バウリョ主演、エミリオ・ヴィエイラ監督映画。1969年公開。

巷では若者の男女が誘拐される事件が相次いで、警察が捜査に当たっていた。事件では霊柩車と異貌の怪物が目撃され、事件記者・ジョージも犯人のアジトに囚われてしまう。それは人間の持つセックスの力により、人類に永遠の生命を与える事を目的とした狂気の科学者・ハンプ博士の仕業で…という内容。

本作はなんとアルゼンチンの製作。マルコが旅したあの国に、ホラー映画なんかあったんだな…と思ったら、同地の評論家からは「幼稚でアルゼンチン映画を代表する作品ではない」と酷評されたとの事。同国の他の映画は観た事ないけれど、まあ気持ちは判る。ツッコミどころ満載で、デタラメな出来なのは確か。

でも性をモチーフにした際どさや、逆光を採り入れたドラマチックな画面等、ヒドイ部分(オガワゴムのマスクみたいな顔で薬局に行くなよ)と同じ位、ハッとさせられる場面もある。…なので単に悪く言うだけで、済ませたくもないかなあ。
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2024.06.02

美しき生首の禍

観てみた、ジョゼフ・グリーン監督映画。1962年公開。

野心的な医師であるビル・コートナーは、人体移植の危険な研究に打ち込んでいた。ある日交通事故で同乗者の恋人、ジャン・コンプトンを死亡させてしまう。コートナーは彼女の頭部を研究室に持ち帰り、生命の維持に成功。そして彼はジャンの首を移植するべく、若い女性の身体を物色するのだが…という内容。

プロット的には「顔のない眼」(1960年)を連想させるのだが、画面の構図や編集のセンスもフランス映画風で期待させる…最初のうちは。身体を物色し始めてからのダラダラ感というか、しょうもないエロ推しに、ああ駄目な奴だこれと。

案外元気な生首女の毒舌にノックで答えるクローゼットの怪物、助手の大袈裟なパントマイム演技での死に様(しかも長い)等。ある意味シュールなんだけど、どんどん映画の格が落ちていくのには参った。でも「シナセテ…シナセテ…」という鬱になりそうな前振りを、苦笑させて終わるアイロニーは結構アリじゃないかな。
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