観てみた、ミゲル・モライタ監督映画。1962年公開。
音もなく疾駆する馬車に乗るのは、フランケンハウゼン伯爵。彼の近隣に住まい、遥か過去から代々「吸血鬼」との闘いを繰り広げて来た家系に生まれたカリオストロ伯爵は、その男を倒すべき宿敵だと見做す。そこで彼は娘のイネスを、メイドとしてフランケンハウゼン邸に潜入させ、内情を探るのだが…という内容。
陰鬱でゴシック調の美術が重厚な本作だが、なんとメキシコ映画。しかも白黒映像でフィルムのダメージ具合がどう見ても1930年代位の作品を彷彿させるのに、実は1960年代の映画だという。時代と国を間違えた感がすごいけれど、それがむしろいい方向に雰囲気作りしており、一見の価値ある内容と言える。
ただ全編それで通せた訳ではなく、いい部分もあればチャチな部分も。吸血鬼の齧歯類みたいに長い付け歯やコウモリの造詣等、ガックリと力が抜けてしまうのは仕方ない。それより古典吸血鬼作品を彷彿させる、質感に注目しよう。