2024.08.31

ブリティッシュ・ロック誕生の地下室

観てみた、G・グルニエ監督によるドキュメンタリー映画。2021年公開。

1960年代ロンドン。「イーリング・クラブ」には米国ブルースに影響を受けた若者達が集まり、戦争後の新しいロック音楽が花開いていた。The Rolling StonesやCream、The Whoをはじめ「ブリティッシュ・ロック」の中心地となったライブハウスを、関係者インタビューや当時の映像により振り返る…という内容。

この切り口で最大の大物は勿論ストーンズだが、(当時映像はともかく)流石に現在のミックやキースが出てくれる訳ではない。その代わり?に(Pretty Thingsでお馴染み)Dick Taylorが登場して、初期ストーンズについて語ってくれて驚き。…本作は英ロックのレジェンドが多数出演しており、一見の価値がある。

面白いのはインタビュー出演者にしばらく喋らせておいて、その人の名前紹介の字幕を後になって出す辺り。だれだよこのジイサン…と思ったら、〇〇かよ!というのが何度もあって、英ロック好きにとっては仲々に心憎い演出だと思う。
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2024.08.30

ZAPPA

観てみた、A・ウィンター監督によるドキュメンタリー映画。2022年公開。

ロックバンド「The Mothers of Invention」を始め、ギタリスト・作曲家としてアメリカの音楽界に巨大な足跡を残した「フランク・ザッパ」。本作ではザッパ自身が語ったインタビューを始め、周囲の人々の証言や貴重なライブ映像を手掛かりにして、革新的な演奏家・アーティストの生涯を紐解いていく…という内容。

ぶっちゃけた事を言うと、個人的にZappaは何枚聴いてもピンと来ない。でも流石にすごい存在という事は判るので、本作も興味深く観た。音楽ドキュメンタリーとしては定番の作りだが…変人という先入観のあるZappaでも、ある種悲劇の人物として感動的に描けてしまうもんなんだなと。いや、悪い事ではないけど。

とは言え自分はZappaの作品なら、現代曲の方が好きかもなって。本人がそのオーケストラ演奏に熱心だったのも、結構嬉しい。…それよりZappaが敬愛するVareseからの手紙を、額に入れて大切にしていた話も紹介しないと。
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2024.08.28

「名刀に挑む / 日本刀を知れば日本の美がわかる」松田次泰著

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読んでみた、日本人著者によるノンフィクション。2017年発表。

長い歴史の中「日本刀」で最高の名品は、正宗を始めとする鎌倉期が頂点とされる。長年同時代の名刀再現に取り組んで来た現代刀工の著者が、日本刀の魅力や自身の経験を踏まえた物作りに対する取り組みを語る…という内容。

鎌倉刀を再現したと言われる逸話に限らず、刀工である著者の視点から日本刀全般の魅力に関して解説してくれる辺り、初心者の自分でも大変楽しく読めた。ただ出版元(PHP研究所)の性格からか、話がいつの間にかビジネスマン向けの精神論になる辺り、思てたんと違うと言うか、いやそうだろうなと言うか…

流石に鎌倉刀再現はまだ現在進行形だからか、秘訣はこれこれなどと判りやすく書いてくれる訳ではない。そもそも鎌倉刀のどこがすごいのか、見ないとわからんというスタンスだし。…それでも著者ならではの(精神面に限らず、工学・材料学的側面からの)独自見解が窺えるのは、大変に刺激的な内容だと思う。
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2024.08.27

新宝島

見てみた、手塚治虫演出によるTVスペシャルアニメ。1965年放映。

ジム少年はある男の遺品から、「宝島」の地図を手に入れる。彼は大人の協力者と共に船を用立てて、その島へと出発する。その際一船員として乗り込んだのが、シルバーというコック。ジムは彼と友情に結ばれたものの、実はシルバーは海賊の首魁だった。そして船は遂に宝島に到着するのだが…という内容。

原作はスティーヴンソンの小説。つまり初期の手塚漫画として有名な「新宝島」という作品のアニメ化かと思ったら、全然関係なかった(まあ複雑な事情があった模様)。…とは言え本作は史上初の、単発TVスペシャルアニメだとの事。

本作ではキャラクターの外見を、全て動物に置き換えているのが特徴。つまりどうぶつ宝島。それより個人的には、出崎統監督のTVアニメを連想しながら見てしまったのだが。…そちらと比較してしまったら流石に、色々物足りないけれど(シルバーのキャラ始め)手塚らしい味わいは、決して悪くはないなと思えた。
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2024.08.25

フウムーン

見てみた、坂口尚監督によるTVスペシャルアニメ。1980年公開。

山田野博士が発見したのは、新種の知的生物だった。その事実を新人類誕生として発表するものの、2大国の軍事的緊張の高まる中で無視された。探偵の伯父が拉致された事で事態に関わったケン一青年は、新人類=フウムーンが宇宙的な危機を察知し、ある計画を推進していた事を知るのだが…という内容。

原作は手塚治虫の漫画「来るべき世界」。そちらを「石の花」等の漫画作品でも有名な、坂口尚が監督している。本作が放映された「24時間テレビ」のスペシャルアニメとしては、かなり面白い印象があったのだけれど、それも割と納得。

本作の暗黒ガスは、フレッド・ホイルの「暗黒星雲」を連想したのだが、実は原作発表はそちらの7年前。さすが神様(まあでもドイルの「毒ガス帯」辺りが着想元かも)。…原作の時代性からかやたらに説教くさいものの、フウムーン=ロココの自己犠牲にはやはりホロリと来る。坂口監督は、アニメの腕も確かだな。
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2024.08.24

らくだい魔女 / フウカと闇の魔女

観てみた、浜名孝行監督によるアニメーション映画。2023年公開。

かつて「闇の魔女」が倒され、封じられた魔法の世界。学校では「らくだい」生である銀の城の王女・フウカは、黒の城の王女・リリカの誘いで見慣れぬ腕輪を身に付けてしまった。それは闇の魔女を封印していた呪具で、緑の城の王女・カリン、青の城の王子・チトセと共に、異空間へ飛ばされてしまい…という内容。

原作は成田サトコの児童小説シリーズで、刊行15周年を記念して制作された劇場アニメが本作。…本作は一言でいってしまうと「プリキュア」。作画・演出にストーリー等、かなりプリキュア感があって、そこから変身・必殺技・マスコットに年替わりモチーフを引いた感じ。そのせいか、ちと物足りなく感じてしまった。

あと60分という中編尺な辺りからも、駆け足な印象(これは児童向けとしての配慮かも)。…と思って調べたら、監督の人って「オトナプリキュア」でシリーズディレクターもやっているので、ある意味本業?だった。成る程これはこれで。
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2024.08.22

神々の山嶺(かみがみのいただき)

観てみた、P・インバート監督によるアニメーション映画。2021年公開。

山岳カメラマンの深町は、かつてエベレストに挑戦し遭難したマロリーの遺品カメラと、消息を絶った日本人登山家・羽生の手掛かりを同時に得る。深町は羽生の過去を調査するうちに、彼が単独でのエベレスト登頂を狙っている事を確信する。そして頂上へ出発した彼の背中を追う様に、深町もまた…という内容。

原作は夢枕爆の小説。そして谷口ジローによる漫画版はフランスでも人気だとの事で、今回同国でアニメ映画化された。…自分は漫画版は読んでいないけど、ネットミーム化した有名な台詞等が綺麗にカットされているのにはあららと。その代わり登山場面の心理やディテールを、映像としてじっくり見せてくれる。

小説はぶっちゃけ、完全再現すりゃ面白くなるもんでもないって内容ではあるので、本作くらいシンプルに取捨選択してくれた方が個人的にはよい。…本作の羽生は狂気もなく優しい男って感じだけど、まあそれも悪くはないのでは。
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2024.08.21

「別冊歴史読本 歴史図鑑シリーズ / 日本名刀大図鑑」新人物往来社刊

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読んでみた、日本の出版社による歴史雑誌の別冊。1996年発表。

実戦的な武器として戦闘に用いるだけでなく、美術品としての価値からも愛好されて来た「日本刀」。本書では国宝や重要文化財から100口を、写真や解説により紹介し、加えて日本刀に関する様々な情報を紹介する…という内容。

本書は1963年、人物往来社より限定1500部で刊行された「日本名刀図鑑」の復刻縮刷版。戦後の日本刀研究の劈頭を飾る本として、研究者や愛好者に読まれたらしい。なので内容は当時のままで情報としては少々古い様だが…古代から現代刀工の作品まで、貴重な写真や解説等は、現在でも価値がある。

写真もすごいけれど、日本刀にまつわる解説ページがすこぶる面白い。歴史や製造技法、特に武将と名刀との関わりが興味深い。こういう辺りの話を、刀剣乱舞で採り上げてるのかな…いや、よく知らないんですけど。本書で様々な名刀の美しい刀身を眺めていると、イケメンに見えてくる…かどうかは知りませんが。
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2024.08.19

雨を告げる漂流団地

観てみた、石田祐康監督によるアニメーション映画。2022年公開。

家族の様に育った航祐と夏芽だが、最近2人の関係には隔たりが。そして夏休み、かつて2人が育った取り壊し予定の団地に、小学校の仲間6人が忍び込む。その瞬間団地棟は、広大な海の只中に移動していた。彼らは見知らぬ少年・のっぱを加え、食糧も救援も望めない中サバイバルを始めて…という内容。

小学生によるサバイバルや、題名から「漂流教室」を連想する訳で。本作では(何故か女の子ばかり)怪我で出血するのが痛々しく、上記漫画みたいに破傷風とかになったら嫌だな。と思いながら観てたら…別にそんな事はなかったぜ。まあ言い争いばかりのストレスアニメだけど、そこまで深刻な作品でもなかった。

登場人物や設定が多い割に扱いきれておらず、思いついただけ・出しただけ感がすごい。逆に言えば要素要素のイメージは良く、その集合体として見る分にはいい感じじゃないかな。…もっと楽しそうに、サバイバルしてくれてたらな。
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2024.08.18

金の国 水の国

観てみた、渡邉こと乃監督によるアニメーション映画。2023年公開。

隣り合いながら、永く対立する2国「アルハミド」と「バイカリ」。互いに結婚相手を送り合う取り決めがされたのだが、A国王女・サーラの許には犬、B国賢人・ナランバヤルには猫が寄こされる始末。だが偶然にも2人は互いを知らずに出逢い、惹かれ合う。彼らは両国が支え合う、国交を模索するのだが…という内容。

原作は岩本ナオの少女漫画。むしろおとぎ話といった印象の内容である一方、「アナと雪の女王」辺りとも共通するフェミニンなテイストを感じる。まあ今風にイヤな表現をすると、ポリコレ的って事になってしまうけれど…「王子と王女が結ばれて、めでたしめでたし」という、古典的な物語なのは何だかんだで悪くない。

逆に言うと、内容にパンチがないのも仕方ない(宮崎アニメだったら結構スレスレな毒が常にある訳で)。とは言え姫の容姿が展開上、無駄設定になっていないのには誠意を感じる。まあおとぎ話なんだから、これでいいんだよなって。
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2024.08.16

メシア・オブ・ザ・デッド

観てみた。ウィラード・ハイク、グロリア・カッツ監督映画。1974年公開。

著名な画家である父親から、謎めいた手紙を受け取ったアリエッティは、思い出の地のポイント・デューンへと向かった。父親の手掛かりを追う中、彼女はトムという男性と出逢う。ところが実はその街には呪いが掛けられており、人々は屍肉を喰らう亡者となり果てていた。アリエッティもまた襲撃されて…という内容。

ホラーともゾンビ映画とも言われる本作だけど…個人的には「ねじ式」かな?、と。画家の父親の作品が前衛的なので、本作の美術は眼医者だらけの街みたい。加えて腕に怪我した男が海岸を歩く様は、メメクラゲに刺されたかの様。

シュールな画面が連続する上、会話やストーリーの流れがギクシャクしていてずっとおかしい。一般人が襲ってくる怖さはゾンビ映画の持ち味だろうけれど、本作ではその能面的な無表情さから、映画館の場面は寺山修司のカルト映画みたいでもある。まあ「変わった映画」として、一見の価値はあるんじゃない。
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2024.08.15

たたり

観てみた。ジュリー・ハリス主演、ロバート・ワイズ監督映画。1963年公開。

これまでそこに住んだ者達が、次々と不幸な死を迎えた「丘の家」。幽霊屋敷の噂を聞き付けたマークウェイ博士は、霊感の強い人材を集めて調査をする事に。中でも孤独な生活を送る女性・エレナーは、特に丘の家に強く惹かれていた。やがて博士達一行は、奇妙で不可解な怪現象を目の当りにして…という内容。

ホラー映画の古典だが、肝心の幽霊は画面に登場しない。屋敷を映した映像の、構図や編集だけで怖がらせる手腕に驚いた。監督自身は「ウエストサイド物語」でカラーを手掛けた後なので、敢えての白黒撮影が効果を挙げている。

一方主人公のモノローグがしつこい、という指摘もあったりして。これに関しては「サイコ」が本作の2年前なので、その影響?にも見えるかも(まあ「ラストのナレーションは幽霊になった主人公の独白」だそうなので、そこへの前振りでもあるんだろうけど)。…ところで「ヘルハウス」って、「Hill House」から来てる?
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2024.08.13

悪魔の追跡

観てみた、ジャック・スターレット監督映画。1975年公開。

ロジャーとケリー、フランクとアリスという2組の夫婦は、新たに購入したキャンピングカーに乗って、休暇を過ごすべくコロラドへと向かった。ところがその道中の夜、彼らは謎の集団が悪魔的な儀式で殺人を行う現場を目撃してしまう。追跡者からの襲撃を逃げて、命からがら警察へと駆け込んだものの…という内容。

「エクソシスト」(1973年)で起きた、オカルトブームを受けて製作されたホラー映画。とは言えホラーと言うにはサスペンスやアクションの要素が強く、むしろ「イージー・ライダー」みたいなアメリカの田舎怖い映画という感じ。キャプテンアメリカこと、P・フォンダが主演してるし。まあこっちは散弾銃で逆襲するけど。

でも田舎の普通人っぽい連中が襲ってくるのは、「2000人の狂人」っぽい感覚もあって結構怖いかもしれない。…ただ折角オフロードバイクを車載していたのに、肝心のチェイスでは乗らずに、落としてぶつけるだけなのは何かなあ。
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2024.08.11

「歴史群像シリーズ5 / 武田信玄 風林火山の大戦略」学研刊

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読んでみた、日本の出版社による歴史ビジュアルムック。1988年発表。

戦国時代。甲斐国の守護大名であり、武将として存在感を示した「武田信玄」。本書は現在も人気の高い信玄を、上杉謙信との対決が戦国でも特に名高い川中島を始め、彼の出生から死まで様々な角度から解説する…という内容。

本書刊行の1988年には、大河ドラマで中井貴一主演の「武田信玄」が放映されており、それに合わせたものと思われる。まあお世辞にも最新情報とは言い難いものの…個人的には(大して詳しくないので)興味深く読めた。流石に「山本勘助」が架空の存在のままだったら古すぎだけど、そういう事もなかったし。

本書はイラストや写真も豊富なので、一般の歴史好き読者向けとしてなら充分以上の情報量がある。個人的に興味深かったのは、信玄の重要な資料として参照されて来た「甲陽軍鑑」。山本勘助と同様、甲陽軍鑑の方も歴史家の上げ下げに揉まれてきたのだな…という事を力説した記事が、仲々読み応えあった。
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2024.08.10

死体と遊ぶな子供たち

観てみた、ボブ・クラーク監督映画。1972年公開。

現在では無人になったある島に、アランを始めとする6人の若者達がやって来る。彼らの目的はその島の墓地に埋葬された死体を用いて、黒魔術の儀式を行うというもの。アランは呪文を唱えるも魔術は不発、不謹慎にも彼らは死体を空き家に運んでパーティーを始める。ところがやがて島の死体が…という内容。

毒のあるネーミングセンス(何故か「ハンター×ハンター」では、念の名前として引用)のお陰か、タイトルだけは結構有名と思われる初期のゾンビ映画。実は「人間ミンチ」等の監督、テッド・V・マイクルズが製作総指揮だとの事。なのでまあ出来自体は見当が付くけど、おふざけに留まらず意外と本気で作ってる。

前半のダラダラ感が評判悪いものの、徐々にシリアスになる空気感が悪くないし、Michael Jackson「Thriller」MVを先取ったかの様なコミカルなゾンビ描写は、単なる「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」の模倣、とばかりも言えない。
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2024.08.09

ドッグ・ソルジャー

観てみた。ニール・マーシャル脚本、監督映画。2002年公開。

スコットランドの森林地帯。クーパー二等兵の所属する英陸軍小隊は演習中、何者かに襲われ壊滅した特殊部隊の隊長・ライアンを救助する。小隊は安全地帯への脱出を試みたのだが、凶暴な「人狼」の集団に襲われ逃げ場を失う。彼らはメーガンという女性の導きで、近隣の農家に立て籠ったのだが…という内容。

汝は人狼というかプレデター?、みたいな映画。歩兵部隊が謎のモンスターに襲われるという辺りそんな感じだけど、山小屋に立て籠ったら「死霊のはらわた」や「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」…いやむしろ「要塞警察」みたいになるという。なのでホラーと言うより、グロ描写ありの閉鎖環境アクション物って感じ。

低予算なりに工夫されており仲々楽しめる作品なので、当時高く評価されたのも納得。ただ今観ると着ぐるみの狼男は、流石に低予算がネックになってしまっている部分。個人的にはもっと、ミリタリーアクション推しだとよかったかな。
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2024.08.07

悪魔の墓場

観てみた、ホルヘ・グロウ監督映画。1974年公開。

ロンドンで骨董屋を営むジョージは、バイクを交通事故で壊されエドナの自動車に同乗する事に。彼女の姉の住む村では、死んだ筈の男が何故か姉の夫を殺害していた。どうやら原因は超音波発生機の実験にある様で、次々に墓場から死体が蘇って人々を襲い始めた。だが警察はジョージを疑って…という内容。

「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」(1968年)の模倣作ながら、日本で最初に公開されたゾンビ映画は本作だとの事。今観るとこじんまりした内容だけど、カラー映像で臓物をモリモリ食べたりして当時はかなり画期的だったのでは。

個人的には主演のレイ・ラヴロック(マクロスに出て来そうな名前)が、レザーのコートでバイクに乗る姿がカッコよくて好き。旧ミニで英国の田舎を走る映像も素敵で、むしろゾンビよりも注目点かも。…とは言え極初期のゾンビ映画ながら、描写的にはかなりな気持ち悪さがあって、仲々よいのではないでしょうか。
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2024.08.06

TITANE / チタン

観てみた。ジュリア・デュクルノー脚本、監督映画。2021年公開。

アレクシアは幼時の自動車事故で、頭部に「チタン」を埋め込む手術をして以来、心身に異常を示す様になる。モーターショーのダンサーとして有名になる一方、凶悪な連続殺人犯として両親まで手にかけ、追われる身に。彼女は失踪した少年に成りすまし、少年の父親の許で暮らす事となったのだが…という内容。

本作でデュクルノーはカンヌ映画祭のパルムドールを、女性監督として初めて単独受賞した。内容はホラーと言うかグロテスクなカルト映画という感じだが…N・W・レフンみたいな感覚でもあるので、カンヌ受けが良かったのも成る程。

チタンや黒い血液(オイル)等から、これは〜の象徴でみたいな解釈は出来ると思うけれど、自分は別にいいや。過剰な暴力や出産、醜悪な肉体描写を女性監督が描いたという辺り、評論家が好きそうではあるかな。…とここまで書いて、本作に欠けているのは「ユーモア」だと気付いた。せめて笑わせてくれてたらな。
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2024.08.03

帰って来たドラキュラ

観てみた、フレディ・フランシス監督映画。1968年公開。

吸血鬼は滅びていなかった。闘いの果て氷の中に没し、眠りに就いていたドラキュラ伯爵。崖から落下した際負傷した司祭の血を受けて、遂に復活を果たす。司祭を配下として操る彼は、夜毎近隣の村に現れ人々を襲って血を吸う。彼が次に狙いを定めたのは、悪魔祓いの高僧の姪であるマリアで…という内容。

ハマープロ製作、クリストファー・リー主演による「ドラキュラ」シリーズ。第4作である本作は前作「凶人ドラキュラ」から続いている話だが、同プロ看板監督の名匠、テレンス・フィッシャーの降板を受けて、フランシスが監督をしている。

言うても第1作「吸血鬼ドラキュラ」と、やってる事自体は大体同じな訳だけれど…人間との攻防やドラキュラ伯爵の最期等、きちんと工夫が窺えるので、(ブラム・ストーカーを読め!、という原典主義者でも)思ったより楽しめると思う。…やはりクリストファー・リーの存在感のお陰で、筋が一本通っているのは大きい。
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2024.08.02

血ぬられた墓標

観てみた、マリオ・バーヴァ監督映画。1960年公開。

かつて魔女と呼ばれた王女・アーサは、民衆の手にかかって処刑された。その2世紀後にクルヴァヤン教授は、古代の墓地で不気味な仮面を付けた女の死体を発見。やがて死体は血液を得て、アーサとして復活する。魔女は自身に瓜二つの女性・カティアになりすまし、復讐を果たそうとするのだが…という内容。

ゴーゴリの小説「妖女(ヴィイ)」を原案とした、バーヴァ監督のデビュー作がこちら。イタリアのホラー映画史で嚆矢となる存在であり、重要作として名前が挙がる事が多い。…実際観てみると原色バリバリなカラー撮影でのバーヴァ演出とは違って、本作の重厚で陰鬱な白黒映像は、まさに「怪奇映画」という趣き。

流石に古い映画なので直接的な怖さは求めようがないものの、闇と影を強調するゴシック的な美意識に支えられたアトモスフィアで、現在でも名作と呼ばれるに値する。つまり、本作の良さはムード…「怪奇ムード」の良さなんだろうな。
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