
読んでみた、日本人著者によるノンフィクション。2020年発表。
人々が惹かれてやまない「怖い映画」。その背景にあるのは歴史的事件や、作り手の個人的事情。本書では「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」「カリガリ博士」「アメリカン・サイコ」「ヘレディタリー」「ポゼッション」「テナント」「血を吸うカメラ」「たたり」「狩人の夜」という、9本の映画を採り上げ徹底解説する…という内容。
まあだいたい聖書からの引用の話になる辺り、いつもの著者のアプローチ。でも本書は「トーク」というコンセプトからか、ですます調で綴られており…それが蓮實重彦の映画講義をまとめた本と、案外印象が似ているのが成る程と。
他作からの引用・影響関係を、横断的に指摘する辺りがそれっぽく、納得するものがある。本書で採り上げた映画を全部観た訳ではないけど、(自分の感想と)近い解説・解釈をしているのを読むとホッとする辺り、やはり自分は凡人。「怖さ」自体の論証ではないものの…それは観た人個々の皮膚感覚だろうしな。