2024.10.31

「藤子・F・不二雄のまんが技法」藤子・F・不二雄著

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読んでみた、日本人著者によるノンフィクション/指南書。2000年発表。

「ドラえもん」や「オバケのQ太郎」等の大ヒット作で知られる、漫画家「藤子・F・不二雄」。本書では彼が(比較的低年齢の)志望者に向けて、漫画を描くに当たって必要となる考え方や手順を、段階を追って説明していく…という内容。

本書は1988年刊行の「〜まんがゼミナール」に、「藤子不二雄のまんが大学」(1981年)の原稿を加えて再編集したもの。自身の代表作である「ドラえもん」の画稿を豊富に掲載して説明している(特に実技編として、短編版「のび太の恐竜」の全ページを解説している)辺り、楽しい上に流石の説得力がある。

興味深いのは「漫画執筆は映画撮影に似ている」という考えに基づき、映画制作の各段階を引き合いに出して解説していく辺り。まあこれに関しては、手塚治虫が先に提唱した事ではあるので著者独自見解とは言い難いが、かなり徹底されている。ただ映画を知らない人まで、これが理解しやすいかはわからんね。
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2024.10.30

「漫画描き方入門じゃありません」藤島康介著

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読んでみた、日本人著者によるノンフィクション。2009年発表。

「逮捕しちゃうぞ」や「ああっ女神さまっ」等で知られる、漫画家の「藤島康介」。本書は雑誌「アフタヌーン」を目指す志望者に向けて、彼自身の漫画家としての足跡や実体験談、更に自作を元に創作の秘訣を解説していく…という内容。

インタビュー記事を再編した本との事で、(タイトル通り)入門書と見たら少々ゆるい内容。なのでむしろ、著者本人に関して色々と知る事が多い感じ。ごく簡単ではあるけれど、ぱふ編集者時代(マルぱの洋子ちゃんですよ)や、兄であるカーモデラー「謎の東洋人」に関する記述があるのは、結構嬉しかったりする。

執筆の実践的解説として女神さまの第1話…それどころかデビュー作「MAKING BE FREE!」等、意外な漫画も収録しており色々な意味ですごい。まあ本書の内容が本当にアフタ志望者の参考になるかどうか疑問だが、著者本人のファンなら楽しめるんじゃないかな。著者本人…いやまあ、別にいいんですけど。
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2024.10.28

「白土三平野外手帳」白土三平著

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読んでみた、日本人作家によるエッセイ集。1993年発表。

漫画家の「白土三平」は農民や漁民達に交わり、自然から得られる食材を自身の手で採集・調理していた。本書は「野外」生活を春夏秋冬の4章として、山菜・茸類や海草・魚類等、自身の体験を踏まえつつ紹介していく…という内容。

本書はアウトドア雑誌「BE-PAL」にて、1983年から1988年まで連載された「フィールド・ノート」をまとめたもの。文庫サイズながら写真も多く掲載され、著者が送ったであろう千葉の海辺での生活を伝える一冊となっている。…面白いのはそうした文章の語り口が、自身の漫画での忍術解説の雰囲気と一緒な辺り。

ただでさえ地域性の高い食材が、方言交じりに紹介されるので、殆ど知らないものばかり。アウトドアなんて洒落た言い方とも違う、原初的な自然との触れ合いが、頁から感じられるのは素晴らしい。著者がフグに当たった体験談はじめ毒は怖いし、こういう暮らしをしたいかは微妙だが…料理は皆美味しそう。
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2024.10.27

「荒木飛呂彦の奇妙なホラー映画論」荒木飛呂彦著

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読んでみた、日本人著者によるノンフィクション/映画解説書。2011年発表。

「ジョジョの奇妙な冒険」シリーズで知られる漫画家である著者が、自身の鑑賞体験の中から「ホラー映画」について語る新書。ホラーを「ゾンビ」「田舎に行ったら襲われた」等、10種類のジャンルに分けて魅力を解説する…という内容。

仮に著者の名前(あと挿絵)を伏せた上で読んだとしたら、特段ひねりもない軽いホラーエッセイだとは思う。一応自作漫画との影響関係にも触れている辺り興味が湧くが、「チャイルドプレイ」や「トレマーズ」は挙げないのかよ! …とツッコミたくなるのは仕方ない。まあ著者が好きな人が、読む分にはよいのでは。

でも「スティーヴン・キング原作映画」に1章割いて紹介している辺り、この手の本としては案外独自で(著者の作風と併せて)ニヤリとするポイントかも。…ただホラーを「癒し」とするのは(健康面その他で)恵まれた人にしか言えない見解で、正直自分には首肯出来かねる。ものの…ホラー入門書として悪くないです。
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2024.10.25

「Caminantes… ayacucho」LUIGI NONO

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聴いてみた、イタリアの現代音楽作曲家。2007年発表。

「ルイジ・ノーノ」は1924年、ヴェネツィアにて誕生。ヴェネツィア音楽院で理論を学び、卒業した後に生涯行った作曲活動は大きく3期に分かれている。初期にはセリー音楽、中期の政治的主張を推しだしたテープ音楽、後期ではライブエレクトロニクスでの音楽制作を行った。1990年に生地ヴェネツィアで没した。

本作に収録された3曲は「後期」に属するもので、1986年〜1989年にかけての作品。でもライブエレクトロニクスではなく、管弦楽曲となっている。…いるのだけれど、かなり(現代音楽らしい)晦渋な内容。特にやたら音量の低い場面が延々続き(てっきり無音かと)、逆に突然大きな音を鳴らしたり。イヤガラセか。

特に興味深いのは代表作でもある、「進むべき道はない、だが進まなければならない…アンドレイ・タルコフスキー」(1987年)という曲。タルコフスキーとは勿論ソ連の映画監督の事で、制作時期を見るとその死(1986年)に触発された作品だろうと推測は出来る。ただ作曲家とのつながりは、よく判らないのだよな。
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2024.10.23

「秘密…マニの光 / 西村朗管弦楽作品集」西村朗

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聴いてみた、日本の現代音楽作曲家。2006年発表。

「西村朗(にしむらあきら)」は1953年、大阪市城東区で誕生。小学5年生でクラシックと出逢い、作曲家を志す。東京藝大大学院卒業までに多くの音楽家から教えを乞い、作曲家として独立する。作曲活動の一方、ラジオ・テレビの音楽番組で司会や解説を務めるなど、現代音楽の普及にも尽くした。2023年没。

本作は彼が2001年〜2006年にかけて制作した、管弦楽曲を4作集めたアルバム。表題作が仏教要素をモチーフとするのを始め、全体としてもスピリチュアルなイメージに基づいている。まあ作品リストの表題をざっと見ると、大体そんな感じではあるので…作曲家が生涯に渡って取り組んで来たテーマなのだろう。

曲調としてもハープや雅楽器ぽい音色が鳴っていたりすると、昔の大作仏教系映画のサントラ感(伊福部とか)があるかも。でもご本人は(TVへ出演はしても)映画音楽等を手掛ける事はなかったみたい。現代音楽家の活動も色々だ。
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2024.10.22

「Player piano 1」CONLON NANCARROW

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聴いてみた、メキシコの現代音楽作曲家。2006年発表。

「コンロン・ナンカロウ」は1912年、アーカンソー州テクサーカナにて誕生。ジャズ・トランペット奏者となった後、多くの音楽家に師事して作曲を学ぶ。その後スペイン内戦で人民戦線側に参戦した事から、アメリカへの帰還かなわずメキシコへ亡命。日本人女性を妻に迎え、音楽活動を続けるも1997年に逝去。

彼の代表作となるのが「自動ピアノの為の習作」シリーズで、本作はその第1番から第12番を収録している(全51曲だが、最終作は3750番という曲名)。…独自改造によるプリペアド・ピアノを用いた、人間技ではとても演奏できない複雑な曲調で、その上「五線譜上には記譜すらできない」リズムまで実現している。

と聞くと難しそうだけど、「映像の世紀」のBGM(前にもこの喩え使ったな)とかサティみたいな感じ。ヴォードヴィル風だったりして案外親しみやすい…気はするものの、複雑すぎる曲がおっそろしいスピードで演奏されて実に楽しい。
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2024.10.20

「Basket of light」THE PENTANGLE

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聴いてみた、イギリスのフォーク/ロック・バンド。1969年発表。

1967年にBert Jansch(g)、John Renbourn(g)、Jacqui McShee(vo.)らによって結成された「ペンタングル」。トラッドにジャズやブルースの要素を採り入れた、斬新な音楽性により英フォークシーンの中心的存在となった。

本作は彼らの3作目のアルバムで、最高傑作との呼び声も高い。自分も最初に聴いた事もあって、最も愛着を覚える。当時現地ドラマの主題歌にもなったという1曲目「Light Flight」は、何故かやけに脳内リピート率が高いし。…何故かと言うか、アップテンポで高度な演奏はいわゆる「トラッドロック」の白眉でしょう。

でこのアルバムを無性に「レコード」で聴きたくなったので、手軽にオクで入手してみた。一応Transatlanticの英国盤だけれど、1stプレスではなく(例のイラストレーベルなので)多分2nd以降。初回が欲しいという気持ちもあるものの、「手軽」にならこんなものでしょう。でも…うむ、やっぱりレコードはよいですなぁ。
posted by ぬきやまがいせい at 21:17 | Comment(0) | TrackBack(0) | 音楽

2024.10.19

「In the round」PENTANGLE

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聴いてみた、イギリスのフォーク/ロックバンド。1986年発表。

1973年に解散した「ペンタングル」は1982年に再結成するも、John Renbournが間もなく脱退。Bert Jansch(g)、Jacqui McShee(vo.)を始めとする、残されたメンバーで作品発表を続けた。Jansch離脱(2011年逝去)以降は、McSheeを中心とする「Jacqui McShee's Pentangle」として現在でも活動中。

本作は彼らの通算8枚目、再結成後としては2枚目のアルバム。再編Pentangleは電気楽器の要素がより増えて、フォークロック・バンドと呼んでも差し支えない感じ。そのせいか全6枚のアルバムは、だいたい似通った印象がある。

まあ勿論JanschとRenbournのコンビが、至高なのは言うまでもないけど…再結成後も案外悪くない。特に2ndの本作は曲調が、ちょっとAll About Eveを思わせて気に入った。そちらの1stは1988年なので、実際影響を与えたのかも? 他のアルバムだとそうでもないので、もっとこの路線で聴きたかったな。

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2024.10.17

「At the BBC」BERT JANSCH

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聴いてみた、スコットランド人ギタリストのスタジオライブ集。2022年発表。

「バート・ヤンシュ」は1943年、グラスゴーで誕生。10代の頃にギターを手にし、やがてロンドンに出てフォーク音楽シーンの中心的存在となる。1965年にはソロアルバム「Bert Jansch」でデビューを飾り、「英国のBob Dyran」とも評された。ソロ活動の一方グループ「Pentangle」で活動するも、2011年逝去。

本作は彼が1966年から2009年にかけて、ラジオ局のBBCで放送用に収録したライブ音源等を集成した、8枚組のCDセット(LPだと4枚組)。BOXではなく、LPサイズのブックレット仕様のジャケットに、CDを収める装丁となっている。

貴重な音源ばかりではあるが、物量的にも大変な内容なので。全体の印象を言おうにも、聴いているうちに段々ぼやけてしまい…あれどんなだっけ?、と。まあ音質のせいか、Janschの各アルバムと較べ「鋭さ」には欠ける気はするものの、すごい作品なのは間違いない。Johnny Marrと共演なんかしてたんすね。
posted by ぬきやまがいせい at 23:27 | Comment(0) | TrackBack(0) | 音楽

2024.10.16

「Another monday」JOHN RENBOURN

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聴いてみた、イギリスのフォーク・ギタリストのソロアルバム。1967年発表。

本作は「ジョン・レンボーン」のソロとしての第2作だが、後にフォーク・グループ「Pentangle」を共に結成し、そのボーカリストとなる女性シンガーの「Jacqui McShee」が参加している辺り、Pentangle前史として聴きどころ。

クラブでトラッドを歌っていたMcSheeとRenbournがデュオ活動を始め、そこに他のメンバーが加わりPentangleが結成されたという経緯らしい。でもその前にRenbournとBert Jansch(g)は1966年、「Bert and John(邦題:華麗なる出会い)」を制作しているので、成るべくして成った流れではなかろうか。

本作では勿論、Renbournは1stソロからトラッド曲を採り上げてはいるものの、Pentangleでの斬新な表現の域にはまだ至っていない印象。当然中世音楽の要素もまだ見られないが…その代わりに、大変に高度なテクニックによるギター演奏には驚嘆してしまう。発展途上と言えばそうだろうけど、これはこれで。
posted by ぬきやまがいせい at 23:27 | Comment(0) | TrackBack(0) | 音楽

2024.10.14

「Solid air」JOHN MARTYN

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聴いてみた、イギリスのシンガーソングライター。1973年発表。

「ジョン・マーティン」は1948年、サリー州ニュー・モールデンで誕生。17歳で早くもプロミュージシャンとしての活動を始めた彼は、2009年に大英帝国勲章を叙勲した数日後に亡くなるまでに、23枚のアルバムをリリースした。私生活では薬物依存や家庭問題があったものの、批評家からは常に高く評価された。

本作は彼の代表的なアルバムで、1曲目に収録された「Solid Air」は友人であるNick Drakeに捧げられた作品。…という話を聞いて少々センチになったのだが、実はDrakeの死は1974年なので、同曲は生前にリリースされている(!)。言われてみると別に感傷的な曲調ではないのも、そういう事だったのかと。

フォーク、ロック、ブルース等が混在し、少々掴み所がない印象。日本で殆ど知名度がないのはそういう辺りのせいか、という気もしたけれど…本作にはFairport Conventionメンバーも参加しており、聴き込むほど味わいが出そう。
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2024.10.13

「増補新版 スラヴ吸血鬼伝説考」栗原成郎著

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読んでみた、日本人著者によるノンフィクション/民俗学解説書。1991年発表。

現在世界的な知名度を持つ怪物である吸血鬼だが、スラヴ地方では古い伝承の形で残っている。本書では「説話」の代表的な事例を紹介し、そこから派生する夢魔や人狼等と共に、同地における吸血鬼伝説を解説する…という内容。

本書は1979年に河出書房より刊行したものに、数章程加えた増補版。吸血鬼と言えば今やドラキュラ…すら忘れられて、何かよく判らん美形・貴族趣味と能力バトルの融合みたいになってしまったけれど(日本だけか…)、本書では野蛮にして原初的な説話事例を豊富に紹介してくれており、すこぶる面白い内容。

何だか「世界怪奇小説傑作集」ロシア編でも読んでいる様な気分になった(…実際本書でも、ゴーゴリ「妖女(ヴィイ)」を紹介している)。勿論ブラム・ストーカーは偉大なので、吸血鬼描写の様相がドラキュラ以後で固定された事に、特段反対はしないものの…こういうイメージも存在するのは、知っていてよいのでは。
posted by ぬきやまがいせい at 19:04 | Comment(0) | TrackBack(0) | 読書

2024.10.11

「ムー特別編集 / 暗黒の邪神世界 クトゥルー神話大全」学習研究社刊

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読んでみた、日本の出版社によるビジュアル・ムック。1990年発表。

アメリカの怪奇作家、H・P・ラヴクラフトが創始した「クトゥルー神話」。邪神が跋扈する独自の創作神話世界は、ラヴクラフトのみならず彼の周辺の作家の協力を得て、更なる発展を見せた。本書では代表的な作品紹介と共に日本の関連作家インタビュー、更にジオラマ等により神話世界を紹介する…という内容。

でその日本の作家というのが荒俣宏、菊地秀行、栗本薫。まさしく日本における、C神話の知名度拡大に貢献した面々だが…今現在のグチャグチャに通俗化した同神話を取り巻く状況と違い、それら大家がピュアな事言ってるのが新鮮。

結局のところ(どんなに作品数が増えようと)初期作家による活動、いわゆる「ラヴクラフト・サークル」以外、大して気にしなくていいというのも実際だろうな。本書では同サークルの活動を、エピソード的に紹介してくれており判りやすい。…ムーっぽい胡散臭い記事もあるけど、今読んでも充実した内容のムックだ。
posted by ぬきやまがいせい at 14:21 | Comment(0) | TrackBack(0) | 読書

2024.10.10

「クトゥルー神話事典」東雅夫編

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読んでみた、日本人著者による文芸事典/解説書。1995年発表。

米国人作家のH・P・ラヴクラフトを開祖とし、後に世界的な広がりを見せた創作神話大系「クトゥルー神話」。本書では同神話の用語事典を始め、主要作品や関連作家の紹介等と、クトゥルー神話の概要を解説していく…という内容。

読んでおやと思ったら、本書の内容は雑誌「幻想文学」のラヴクラフト特集や、別冊「クトゥルー倶楽部」に掲載された記事を改訂したものだった。著者が元々同誌の編集長だったのだから、それも当然か。とは言え本書から更に何度も改訂・増補が繰り返され、現在も同神話の手引きとして愛読されている模様。

情報量的には流石に最新版(自分は未読だが)には及ばないだろうけれど、刊行当時のありったけの情報が詰め込まれており、同神話に興味がある人ならば読んで楽しめる筈。…その後ある種のクリシェと化した同神話だけど、この頃はまだ作家も読者も皆なピュアだった。とか思うのは、余計なお世話だろうな。
posted by ぬきやまがいせい at 17:24 | Comment(0) | TrackBack(0) | 読書

2024.10.08

「恐怖の哲学 / ホラーで人間を読む」戸田山和久著

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読んでみた、日本人著者によるノンフィクション。2016年発表。

人間は現実の脅威に限らず、架空と判っているホラー映画でも怖がる。かくも多彩な対象に「恐怖」を抱き、そしてそれを楽しむ事すら出来るのは何故か。本書はホラー映画を手掛かりに、人間の「恐怖」を解明していく…という内容。

本書はかなり分量があるものの、あくまで一般向けの新書。とは言え専門的な知見も盛り込んでいる為、かなり難解な内容を含むのも確か。だからなのか文章はかなりフランク…というか軽薄で、そこで読者を選ぶかもと。ただ判らないなりにも平易な語り口で書かれると、判った気になるという効果はある気がする。

内容はホラー映画の実例や著者の体験談等を交えつつ、哲学的ゾンビをはじめ、精神分析や哲学分野等でのユニークな研究を紹介するという、一種のエピソード集として読めば結構楽しめる(感じ)。結局何を論じて一体何が結論なのか、箇条書きにされてるのにフワッとしてるけれど…個々の話題自体は面白い。
posted by ぬきやまがいせい at 12:26 | Comment(0) | TrackBack(0) | 読書

2024.10.07

「黒沢清の恐怖の映画史」黒沢清、篠崎誠著

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読んでみた、日本人著者による対談集/映画解説書。2003年発表。

「Jホラー」を代表する映画監督である「黒沢清」。本書は同じく監督・評論家の篠崎誠を聴き手に、自身が影響を受けて来た「恐怖」を題材とする映画に関して、その歴史や表現、関係者エピソード等を縦横に語っていく…という内容。

本書は黒沢作品の企画上映の際に行われた、対談を書籍化したもの(抜粋前の内容はCD−ROM、電子書籍として販売)。黒沢は元々執筆にも熱心で、ホラー映画に関して一家言ある人物だが…実作家としての視点というのはやはり興味深い。本書でもトビー・フーパーやハマープロに関して熱弁を揮っている。

加えて自作との関連や、経験談をフランクに語っており(スウィートホームでのプロデューサーとの対立とか)、それだけでもファンには楽しく読める。まあ作品的には「降霊」の頃なので、まだ大監督という風情ではない辺り(ある意味)微笑ましい。勿論独特の視点からの作品チョイスは、鑑賞の手引きにもなる筈。
posted by ぬきやまがいせい at 14:24 | Comment(0) | TrackBack(0) | 読書

2024.10.05

「ゾンビ映画年代記」オジー・イングアンソ著、マックス・ランディス序文、高橋ヨシキ監訳

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読んでみた、アメリカ人著者によるノンフィクション。2014年発表。

カリブ海の、ブードゥー教伝説をルーツに持つ「ゾンビ」。動く死者を題材にした映画は1932年の「恐怖城」より始まり、革新的な「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」(1968年)から、世界的に爆発的な広がりを見せる様になった。本書はそうしたゾンビ映画の歴史を、豊富なビジュアル資料と共に紹介する…という内容。

アメリカ人の著者なので、「米国から見たゾンビ映画史」である本。アングラ映画として始まったロメロ監督作から、ハリウッドの大予算作「ワールド・ウォーZ」まで、どんどん浸透・メジャー化していく過程が辿れるのは仲々に面白い。…まあ個人的には「ここまで」かなぁ、という区切りも明確に意識させられた感も。

やっぱり、いかがわしかった頃の方が面白いかなって。とは言え本書は殆ど写真集と言う感じなので、パラパラと眺めつつ軽く楽しむのがよい気はする。正直あんまり考え込む様なジャンルじゃないでしょ…ロメロ御大には悪いけど。
posted by ぬきやまがいせい at 15:38 | Comment(0) | TrackBack(0) | 読書

2024.10.03

「ホラー映画クロニクル」扶桑社刊

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読んでみた、日本の出版社によるビジュアル・ムック。2008年発表。

サイレントから現代まで、英米日本から周辺各国状況まで。本書では「ホラー映画」について、作品や関連人物、その歴史や影響を広範かつ綜合的に紹介していく。加えてカラー写真等、ビジュアル面も充実したムック…という内容。

16年前の本なので流石に最新作まではフォロー出来ないものの、本書が1冊あればホラー映画に関して相当幅広く知見が得られる筈。そんなに分厚い本でもないのに、小っちゃい文字を用いたコラムでギュウギュウに情報を詰め込んでいる。ホラー鑑賞は駄作との闘いだけど、作品チョイスの方も適切だと思う。

特に各国に分けて、それぞれの土地での特徴や歴史を整理して解説してくれているのは、大変に事情が理解しやすい。「点」としてしか知らなかった作品同士が、関連を持った動的なムーブメントとして認識できた様にも思う。…自称「中級者」の自分だけじゃなく、初心者にも上級者にも、よいのではないでしょうか。
posted by ぬきやまがいせい at 23:49 | Comment(0) | TrackBack(0) | 読書

2024.10.02

「図説ホラー・シネマ / 銀幕の怪奇と幻想」石田一著

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読んでみた、日本人著者によるビジュアル解説書。2002年発表。

「ホラー映画」とは恐怖だけに留まらず、人間のイマジネーションを強く喚起する映像表現である。本書では著者がコレクションしたビジュアル資料を中心に、ホラー映画草創期の作品や歴史、主要な人物等を紹介していく…という内容。

なので本書は無声映画から始まりユニバーサル、AIP、そしてハマープロの隆盛から没落までという、いわゆる「ゴシックホラー」紹介が中心。同著者による本書の姉妹編が「モンスター映画」なので、単に趣味という印象ではあるけど…カラーページ中心で薄めのビジュアル本だけに、内容を絞り込むのは悪くない。

とは言えあれもこれもと欲張っていない分、上記時代に関する解説としてはかなり踏み込んだ内容なので、文章面でもかなり読み応えがある。…個人的にはアマプラのお陰で、初期のホラー映画に手軽に触れられる様になったから、鑑賞の助けとして重宝する。それでも本数が多すぎて、どれを見たらいいか迷うね。
posted by ぬきやまがいせい at 20:57 | Comment(0) | TrackBack(0) | 読書