


読んでみた、日本人作家による長編伝奇/SF小説。1998年発表。
歴史の裏面で暗躍して来た異能集団「鬼道衆」。江戸時代となって、彼らは長年待ち侘びた「外道皇帝」の誕生を察知する。ところがその謎めいた存在は同時に複数出現、しかもどうやらそれらは異星からの来訪者で…という内容。
1973年に連載が始まり、長い中断を経て1993年に完結した大長編伝奇小説。純粋な伝奇と言うより、伝奇的傾向の強い日本SF小説に先鞭を付けたという意義は大きい。「神州纐纈城」からの影響を出発点に、自由奔放に想像力を広げた上(前掲書とは違って)見事に完結させた点からして、実に大変な作品だ。
当初の活劇的内容もよいけれど…最終章で律義に伏線をまとめ上げ、仏教思想と宇宙論と生命観を独自の見解で綜合させた上、更にに突き抜けたスケールは実にもって法外。ここはやはり「SF」として、孤高の境地に達していると言うべきだろう。しかし長い…「完本」は文庫3冊だけど、流石に分厚過ぎるだろこれ。