2025.02.28

「Accordion & voice」PAULINE OLIVEROS

61m5B90zwiL.__AC_SY300_SX300_QL70_ML2_.jpg

聴いてみた、アメリカの現代音楽作曲家。1982年発表。

「ポーリン・オリヴェロス」は1932年、テキサス州ヒューストンで誕生。大学等で音楽を学んだ後に、第二次世界大戦後の米国における電子音楽の中心人物となる。自身の音楽性を「ソニック・メディテーション」と称しており、瞑想的な響きを持った持続音によるドローン・ミュージックを中心に制作した。2016年没。

本作もそうしたドローン音楽の一つだが、演奏に用いられているのは機械ではなく、「アコーディオン」と彼女自身の「声」によるもの。…Tr1は一片のメロディーすら無い曲だが、Tr2の方には多少音階らしきものも採り入れられている。

という説明をしてしまうと如何にも難解そうだけど…電子機器の発する音ではなくアコーディオンと声という耳に馴染んだ、肉体的・有機的な音響なので、意外に結構気持ちよく聴ける筈。灰野敬二によるハーディガーディでの演奏曲の感じに近いかな。でもジャケットの自然風景と、一体化した空気も感じてみたい。
posted by ぬきやまがいせい at 21:21 | Comment(0) | TrackBack(0) | 音楽

2025.02.27

「Below the salt」STEELEYE SPAN

51kSwd3kK2L._UF1000,1000_QL80_.jpg

聴いてみた、イギリスのフォーク/ロック・バンド。1972年発表。

3rdアルバムの発表後、創設メンバーのAshley Hutchingsが脱退し、Maddy Prior(vo.)、Tim Hart(g他)を中心に再編された「スティーライ・スパン」。本作4thアルバム以降ロック色を強めて、現在まで続く活動の礎となった。

元々はFairport Conventionを脱退したHutchingsの意向により、(基本的にはドラムスを導入しない)硬派な伝統曲のフォーク演奏を行って来た当グループ。本作でも全曲トラッドを採り上げているものの、ヒット曲「Gaudete」も輩出した事もあって、よりダイナミックでポピュラリティあるスタイルを強めている。

まあ当グループは初期3枚の評価が高い、という認識で間違いないと思うが(筆者が先にYBO2のカバーで知った、Boys of Bedlamも2ndに収録)本作も…と言うか、本作以降もスティーライは全部いい。殆ど全ての作品に参加しているPriorの歌声が素晴らしいので、多少演奏の方が変わっても魅力は不変だな。

more reading
posted by ぬきやまがいせい at 03:08 | Comment(0) | TrackBack(0) | 音楽

2025.02.26

「The 5000 spirits or the layers of the onion」THE INCREDIBLE STRING BAND

51SCPND4JBL._UF1000,1000_QL80_.jpg

聴いてみた、スコットランドのサイケ/アシッドフォーク・バンド。1967年発表。

1966年に1stアルバムの発表をしたものの、一旦は解散した「ザ・インクレディブル・ストリング・バンド」。その後、Robin Williamson(g,p他)とMike Heron(vo他)のデュオとして再結成され、翌年リリースした2ndアルバムが本作。

前作での主に伝統的なフォーク音楽から、サイケデリック・フォークやアシッド・フォークへと音楽性を発展。同時代的なヒッピームーブメントとも呼応して、アメリカでも高く評価された。…当時流行っていたシタール等を採り入れており、英国のフォークという感覚で聴いていると、余りのスモーキーさにむせてしまう。

無国籍フォーク…と言うよりは、移動民族的な自由さと横断性が感じられるのではないかな。Paul McCartneyやDavid Bowieからも、高く評価されたそうだが…本作のサイケサイケしたジャケットを手掛けた「ザ・フール」という集団は、アップルブティックの建物にも壁画を描いたりしたそう。成程、当時っぽいねえ。

more reading
posted by ぬきやまがいせい at 02:24 | Comment(0) | TrackBack(0) | 音楽

2025.02.24

愛人ジュリエット

観てみた。G・フィリップ主演、マルセル・カルネ監督映画。1951年公開。

刑務所に囚人として収監されたミッシェルは、夢の世界へ旅立つ。彼がたどり着いたのは山の中腹にある小さな村で、そこの住人は皆記憶を失っていた。ミッシェルはそこで現実世界で恋人だった、ジュリエットの姿を求めて訪ね歩く。ジュリエットもまた記憶を失い、しかも青髭という男の虜となってしまい…という内容。

一応夢の話となってはいるけど、仙境・桃源郷に迷い込むといった類の異界譚。ファンタジーと呼んでもいいけど「美女と野獣」等の、上級生向け童話に近い。本作では「忘却」というのをどう捉えるかで、解釈が変わりそうだが…(最後に行くのが現実でなくそっちという事は)理想郷的なものと見ていいんじゃないか。

正直なところ「現実を忘れる=幸福」と言われたら、その方が納得しやすいもんなあ。…日本でなら泉鏡花的な幽玄物語か、あっけらかんななろう展開にでもなりそうだけど、本作における「逃避」の感覚は現実への心残りと痛みが伴う。
posted by ぬきやまがいせい at 23:41 | Comment(0) | TrackBack(0) | 映画

2025.02.22

しのび逢い / ムッシュ・リポアの恋愛修行(公開時タイトル:しのび逢い)

観てみた。G・フィリップ主演、ルネ・クレマン監督映画。1954年公開。

資産家の妻を持ちながらも恋多き男、アンドレ・リポワ。彼は妻・キャサリンの不在中、彼女の友人であるパトリシアを自宅に招く。これまでの人生をプレイボーイとして生きて来たリポワは、パトリシアを物にするべく過去の女性遍歴を語って聞かせる。教養も金も何も無い彼が、ロンドンで送った生活とは…という内容。

公開時にはフランス映画らしい、しっとりとした邦題が付けられたけれど、内容を踏まえてしまうといかにも不似合いなので…日本再公開の際に、上記の副題が付けられた模様。と言うのも頭カラッポの見掛けだけいい色男が、しまいにゃホームレスにまで堕ち、無茶苦茶なカサノバ生活を送るというコメディなので。

ただ人々との交流の並列構成と、主人公の独白で内面を語る趣向が、「田舎司祭の日記」にちょっと近い。要はいわゆる「ビルドゥングスロマン」(小説じゃないけど)と同種の作品。まああれで、主人公が成長できたかどうかは疑問だが。
posted by ぬきやまがいせい at 23:17 | Comment(0) | TrackBack(0) | 映画

2025.02.21

田舎司祭の日記

観てみた。ロベール・ブレッソン脚本、監督映画。1950年公開。

アンブリクールという田舎の村に赴任して来た、若き「司祭」。彼は村人との交流で起きた出来事や、胃痛に悩まされる自身の健康状態等について、日々「日記」を付ける。だが伯爵家庭での夫人やその娘との交流をはじめ、人々からの視線は厳しかった。結局彼は医者から、末期の胃癌と診断され…という内容。

ブレッソン監督らしく、宗教を題材にした作品。しかも「バルタザールどこへ行く」でのロバみたいに、寓意的手法も採ってはいないので…多分本作で語られるのは、若き司祭が受ける受難と試練という、観たそのままなんじゃないかな。

無理に普遍的な見方をすると、田舎とのディスコミュニケーションで…余所者がアメリカのテキサス辺りで地元民から迫害?され、結局死んでしまうという、ちょっとH・G・ルイスのホラーみたいな話になる。流石に無理があるけれど、まあ信仰心の是非云々は仲々理解が難しいので、そういう風に曲解してみました。
posted by ぬきやまがいせい at 23:27 | Comment(0) | TrackBack(0) | 映画

2025.02.19

はなればなれに

観てみた。ジャン=リュック・ゴダール脚本、監督映画。1964年公開。

フランツとアルチュールは、英語学校でオディルという娘と出逢い、2人ともが恋に落ちてしまった。彼女の話では同居している叔母の家には、大金が隠されているという。彼らは札束を手に入れるべく、計画を進めるのだが…という内容。

傑作コメディ/犯罪映画ながら日本では長らく公開されず、正式に上映されたのは2001年になってからという本作。また傑作なのにアマプラで妙に点数が低いのは、同名日本映画と評価が混同されてしまっている為みたい。…内容はポップな青春描写を、ゴダールお得意の脱臼的な演出で見せる、いつもの感じ。

会話中急に無音になったり、3人が急に振り付けを合わせたダンスを始めたり。更にルーブル美術館内を大疾走した後、急にノワール調の破滅を迎えるという…自由過ぎる空気が楽しい。実験的と言うほどかしこまった感じではないし、今観ても斬新で意表を突いたこの感覚は、「永遠の青春」と言いたくなるのだな。
posted by ぬきやまがいせい at 23:09 | Comment(0) | TrackBack(0) | 映画

2025.02.18

5時から7時までのクレオ

観てみた。アニエス・ヴァルダ脚本、監督映画。1962年公開。

タロット占いで出た不吉な予言におびえる、女性歌手のクレオ。彼女は2時間後の7時に医者から聞かされる検査結果で、癌だという告知を恐れているのだ。クレオはパリ市内を移動し、様々な知人たちと顔を合わせるも、不安は消えない。そんな時公園で、休暇中の兵士・アントワーヌと出逢ったのだが…という内容。

作中の経過時間と上映時間を大体一致させて、若い女性の行動と内面とを描いた作品。癌うんぬんはそれなりに重い題材だが、過度にシリアスに展開する訳でなく、ポップでキュートな当時のパリ文化を切り取っている辺りが見所。

加えて街中の人々の会話や兵士の存在が、リアルタイムの(アルジェリア等)社会問題もさりげなく織り込む辺りは巧み。それでも自分が知る中では、ヴァルダ作品としてはストーリーがちゃんとある劇映画なので観やすい方だと思う。…因みに劇中のサイレント映画に出演しているのは、ゴダールなのだそうです。
posted by ぬきやまがいせい at 23:22 | Comment(0) | TrackBack(0) | 映画

2025.02.16

スターリングラード攻防戦(原題:The Battle of Russia)

観てみた。F・キャプラ他監督によるドキュメンタリー映画。1943年公開。

第二次世界大戦。周辺諸国に次々と侵攻していたナチス・ドイツは、遂にソビエト連邦との戦端を開いた。本作は2部構成でロシアのこれまでの歴史と国際状況の推移、そしてスターリングラードを舞台に行われた実際の戦闘を撮影した映像から、独ソ戦の実情をアメリカ国民向けに伝えるものである…という内容。

本作も「我々はなぜ戦うのか」第5作。ロシア史(エイゼンシュテイン作品の映像が使われてた)から、スターリングラードの解放までが描かれる。ソ連が題材だからか、ダイナミックな映像や音楽で、勇ましいイメージが強調されている。

敵の敵は味方理論で、国民に好意的な印象を与える褒め殺し感の為か、プロパガンダ映画らしいプロパガンダ映画だが…戦況の解説が判りやすい辺りは、仲々よいかも。ロシア文化を紹介する場面で、チャイコフスキーも採り上げているのだが…楽譜が風でめくれる演出は、ああ何かキャプラっぽいわとなった。
posted by ぬきやまがいせい at 22:44 | Comment(0) | TrackBack(0) | 映画

2025.02.15

死闘!南太平洋(原題:Attack! The Battle of New Britain)

観てみた。米国戦時情報局制作によるドキュメンタリー映画。1944年公開。

第二次世界大戦中。アメリカ軍はニューギニア・ソロモン諸島の一つ、「ニューブリテン島」を占領した日本軍を排除するべく、海よりの上陸を敢行する事に。本作はその際の状況を記録した映像を元に、作戦準備から船舶での移動、更に舟艇を用いた上陸や援護の空爆。そして死者の埋葬までを描く…という内容。

本作も米国で製作された戦時中のプロパガンダ映画で、例によってフランク・キャプラがプロデューサーとして名を連ねている。とは言え前回紹介した映画程には思想的偏りはなく(まあジャップジャップと連呼はしてるけど)、終戦まで続いたという「ニューブリテン島の戦い」を詳細に記録した内容と言えるだろう。

ジャングルという環境での戦闘は米軍にとっても大きな負担で、そうした辺りは興味深いけど…やっぱり物量や装備の凄さには圧倒される。加えて厭戦感や悲劇的なムードなどは案外格調高く、結構キャプラの手際が感じられるかも?
posted by ぬきやまがいせい at 23:12 | Comment(0) | TrackBack(0) | 映画

2025.02.13

栄光の空戦(原題:The Fight for the Sky)

観てみた。米国戦時情報局制作によるドキュメンタリー映画。1945年公開。

第二次大戦中。イギリス基地よりドイツ国内へと飛び立った爆撃機を援護するべく、アメリカ軍では新型戦闘機の配備を随時進めていた。その機体に乗る若き操縦士達の日常風景から始まり、作戦の準備や編隊飛行。そして敵戦闘機との激しい空中戦や、地上目標への銃撃といった映像を紹介する…という内容。

これも米軍により製作されたプロパガンダ映画。ドイツ国内への爆撃行は特に英雄視される印象があるが、本作で紹介されるP-47やP-51といった長距離飛行可能な護衛戦闘機登場により、その状況にも変化のあった事が伺える。

ガンカメラ撮影による空戦映像は見応えがあり、独軍撮影によるものも交えて連続で目を見張らせる。一方地上掃射シーンもやたら豊富で、(すごいと言えば勿論すごいものの)41分程の中編なのに単調で飽きてしまうかも。…因みに20分の短縮版の方では、ロナルド・レーガンがナレーションを担当したとの事。
posted by ぬきやまがいせい at 21:38 | Comment(0) | TrackBack(0) | 映画

2025.02.12

中国侵攻作戦(原題:The Battle of China)

観てみた。F・キャプラ他監督によるドキュメンタリー映画。1944年公開。

4千年の歴史を持つ「中国」は、日本軍からの侵攻に晒されていた。日中戦争と呼ばれるその戦いをアメリカ国民に伝えるべく企画されたのが本作で、当時撮影された記録映像(等)を元に、編集を用いて製作されたもの…という内容。

アメリカの良心とも呼ばれたキャプラだが、戦時中は米陸軍で宣伝映画に携わっていた。中でも全7本のシリーズとして製作されたのが「我々はなぜ戦うのか」で、中国編の本作はその第6作。…興味深いのは撮影に、ロバート・フラハティの名前もある事。この2人が組んだのが、よりによってこんな映画なのかよと。

あからさますぎる内容のプロパガンダ映画で、現在の視点からは問題だらけだが…まあ(最近見た映画を考えると)バランス的な意味で、アメリカ側のも観ておくかって。色々すごいけれど、「田中覚書」というのは全く知らなくて何だそれ。実は当時流布した「偽書」で…そりゃ、普通の歴史を学ぶだけじゃ知らんわ。
posted by ぬきやまがいせい at 22:31 | Comment(0) | TrackBack(0) | 映画

2025.02.11

マライの虎

観てみた。中田弘二主演、古賀聖人監督映画。1943年公開。

戦前イギリス領当時のマレー。谷理髪店の長男・豊は、英国人長官の手先となった華僑共産党員の男に、幼い妹を殺されてしまう。復讐を誓う彼は、地元民を引き連れて反英活動を行い「ハリマオ」と呼ばれる様に。やがて世界中が戦争へと向かう中、彼も日本軍の指令を受けてある作戦に赴くのだが…という内容。

戦後に放映された人気ドラマ「快傑ハリマオ」の元となったのが、実在の人物である「谷豊」。ハリマオを主人公とする映画は、1989年に和田勉監督でも製作されたけど…本作は戦中に公開されただけあって、あからさまな国策映画。

とは言え当時のマレーで撮影された映像自体は貴重で、街中の追跡でのモンタージュなどは風景ともども興味深い。とは言えハリマオ役の人の喋りが、やけにガラ悪かったり(善玉っぽくないのだ)、そのくせ無茶苦茶綺麗事でプロパガンダな説教したり。そこを覆せる程の良さも無いけれど…これはこれで面白いか。
posted by ぬきやまがいせい at 22:34 | Comment(0) | TrackBack(0) | 映画

2025.02.09

五人の斥候兵

観てみた。小杉勇主演、田坂具隆監督映画。1938年公開。

日中戦争初期。岡田隊長率いる部隊は拠点攻略を終えるも、激しい戦いで人員は半数以下になっていた。負傷兵の後送や食糧事情に難はあっても、束の間の穏やかな時間を過ごす彼ら。そんな時藤本軍曹以下4名が、斥候として敵情視察に向かう。ところが彼らは敵陣深く入り込み過ぎてしまい…という内容。

ヴェネツィア映画祭イタリア民衆文化大臣賞獲得という、日本映画として初めて海外映画祭で受賞された名作戦争映画。終戦後アメリカに接収されてしまい、1968年になってようやく返却されたとの事だが…実は戦意高揚意図はそこまででもなく、むしろ厭世観や悲壮感の方が強調されているのは意外だったかも。

まあ戦争や死を美化している、と言われたら否定出来ないのも確かだが。…それより煙草の配給で真っ先に(ゴールデン)バットを喫ったり、欲しい食べ物を話したりといった、兵士達の他愛ない日常・青春描写を見るべきではないか。
posted by ぬきやまがいせい at 21:47 | Comment(0) | TrackBack(0) | 映画

2025.02.08

陸軍士官学校(公開時タイトル:陸軍士官學校󠄁)

観てみた。山本弘之,他監督によるドキュメンタリー映画。1937年公開。

旧帝国陸軍の士官育成の為、設立された教育機関が「陸軍士官学校」。本作は1937年に日活文化映画部により、第4回作品として製作されたドキュメンタリー映画。同校の沿革や教育課程等の解説、加えて士官候補生達の訓練の模様を、4か月に渡る取材を元に映像として記録したものである…という内容。

感じとしては映画「ハワイ・マレー沖海戦」(1942年)の前半、訓練風景を描いたその陸軍版(順番が逆だけど)。今回観たのは戦後の1974年に再編集されたものだったのだが…多分公開当時は、新入生に見せる様な映画だったのかも。同校校歌の伴奏だけが流れて、歌詞が字幕として画面に出たりするので。

再編集版だけあって国策映画臭は抑え気味だったけれど、上記理由もあったら元々プロパガンダ的ではなかったのかも。勿論映像的には大変に貴重なもので、そういうのにアレルギーが無い限り、一見の価値があるのではないか。
posted by ぬきやまがいせい at 22:58 | Comment(0) | TrackBack(0) | 映画

2025.02.07

轟沈 / 印度洋潜水艦作戦記録

観てみた。渡辺義美他監督によるドキュメンタリー映画。1944年公開。

第二次大戦中。日本海軍の潜水艦がインド洋での通商破壊任務を受けて、出発準備から艦内での訓練や日常の風景。更に輸送船の破壊成功や、敵艦からの爆雷攻撃を辛くもしのぎ、母港へと帰投するまでが描かれる…という内容。

戦時中に製作された記録映画というかプロパガンダ映画で、ナレーションの仰々しい国威発揚感がなんとも。ただ記録された映像自体は大変に貴重で、一見の価値がある。…本作で取材されたのは「伊10」潜水艦だが、艦名は機密保持の為に伏せられている。尚同艦は、公開と同じ1944年7月に沈没したとの事。

何だか映画「Uボート」を連想させるのは、同時代の潜水艦での航海なんだから当たり前か。でも爆雷の衝撃で照明が消えてしまったので、そこは(カメラを廻しても仕方ないし)字幕で説明しているだけなのが、逆に本物ならではの説得力がある。ナレーションはともかく、意外と作為というのも感じない。ある意味名作。
posted by ぬきやまがいせい at 23:03 | Comment(0) | TrackBack(0) | 映画

2025.02.05

堂堂たる人生

観てみた。石原裕次郎主演、牛原陽一監督映画。1961年公開。

中部周平の勤める老田玩具は、今や倒産寸前の有様。そんな時偶然知り合った入社志望の娘・いさみと同僚とで金策に出向く。道中彼は旧友の科学者が開発中である、新発明の情報を手に入れた。それが新たな玩具のアイデアになり得るとひらめいた周平は、現状打破の為各方面に奔走を始めて…という内容。

黄金期を過ぎて翳りの見え始めた頃だが、主演である裕次郎を始めまだ勢いのある日活による、明朗なコメディ快作。本作の内容は企業を舞台にしたビジネス物だが、何やかんや植木等の映画みたいに調子よく上手くいくので、直前に観た末期作との空気感の違いに、唖然としたかもしれない(だがそれがいい)。

なので見所としては裕次郎に芦川いづみ、更に長門裕之や当時の定番キャストによる軽妙なやり取り。近年の作品からしたら、こんな事で問題解決してええんか、となりそうだけれど…いややっぱり裕次郎はこうでなくちゃ、と思わせる。
posted by ぬきやまがいせい at 23:03 | Comment(0) | TrackBack(0) | 映画

2025.02.04

関東流れ者

観てみた。渡哲也主演、小澤啓一監督映画。1971年公開。

弟の洋に隠し狭友連盟傘下・立花組の組員となった滝村周次は、組長を助ける為に坂下組の刺客を殺した事で4年の懲役を受ける。ところが服役中その立花組長、坂下組長が共に殺害されてしまい、出所した彼も殺し屋から命を狙われる。狭友連盟の策謀を兄貴分の大川から、身をもって知らされ…という内容。

鈴木清順監督で「東京流れ者」(1966年)という映画もあるけれど、本作は渡主演の「関東シリーズ」第1作。71年は日活がロマンポルノ路線に舵を切る直前という低迷期の更に末期で、その重苦しい空気が反映した為か陰惨な内容。

日活アクションの明朗な空気感が懐かしいものの、渡哲也はむしろこういうシリアスな雰囲気が似合う。個人的には(ムード歌謡主題歌と共に)、「大都会U」を連想させられたのが注目点。まあ重苦しいばかりで、正直あまり楽しいとも言えない作品なのだが…共演する沖雅也や原田芳雄の、若き日の姿も好ましい。
posted by ぬきやまがいせい at 23:03 | Comment(0) | TrackBack(0) | 映画

2025.02.03

価値ある男

観てみた。三船敏郎主演、イスマエル・ロドリゲス監督映画。1961年公開。

メキシコの小村で暮らすアニマスは、酒浸りで怠け者。酒工場で働いても、盗み呑みして馘になる始末。ところが彼の娘に手を出した工場長の息子にカッとなり、殺人未遂で捕縛されてしまう。妻子がありながら娼婦に熱を上げるアニマスだが、村の祭を取り仕切る「マヨルドーモ」になるのが彼の夢で…という内容。

世界のミフネが、なぜか主演したメキシコ作品。彼以外はすべて現地人という配役なのに案外違和感がなく、完全にメキシコ人になりきった熱演が拝める珍品映画。スターウォーズを蹴ったのに、こっちに出たというのも不思議だが…内容自体は意外やしっかりしたもので、各国で授賞されたのにも納得する出来。

人々から疎外される男の苦悩が、彼ひとり日本人であるという三船の存在とシンクロして心を揺さぶられる。…成程そういう辺りが、本作の起用の狙いどころだったのかも?と。殆ど知られていない作品だけど、馬鹿にしたもんじゃない。
posted by ぬきやまがいせい at 23:51 | Comment(0) | TrackBack(0) | 映画

2025.02.01

座頭市と用心棒

観てみた。勝新太郎主演、岡本喜八監督映画。1970年公開。

座頭の市が3年ぶりに訪れた村は、小仏一家というヤクザ者により荒れ放題の有様となっていた。小仏に「用心棒」として雇われていた佐々という男は、市を斬るようけしかけられたものの、やがて2人には奇妙な友情が生まれる事となる。彼らの間に梅乃という女性、そして隠された金塊の行方が絡んで…という内容。

用心棒役を演じるのは勿論、三船敏郎。夢の対決を実現した本作は、座頭市のシリーズでも最大のヒットとなったとの事。ただ対決と言っても、どちらかが斬られる訳にもいかないのだが…まあ両者を共に立てた、悪くない決着だと思う。

岡本監督としても本作が同シリーズへ初の参加だが、西部劇風の立ち回り(砂金の扱いなどは、映画「黄金」を連想させる)や猥雑なユーモア感覚などは、同監督らしい持ち味。ただ拳銃使いの岸田森なんか出してしまうと、黒澤の「用心棒」そのままじゃという気がしてしまうけど…それもファンサービスの一環か。
posted by ぬきやまがいせい at 23:26 | Comment(0) | TrackBack(0) | 映画