2025.03.31

河内カルメン

観てみた。野川由美子主演、鈴木清順監督映画。1966年公開。

河内で評判の娘・露子は、工場の息子のボンこと彰といい仲。ところが村の悪童から暴行され、母親の不貞を目撃した事で大阪に飛び出した。そこで彼女はバーで勤め、勘造という男と同居する流れに。更にファッションモデルに誘われたものの、騒動は続く。そんな時、久々にボンと再会したのだが…という内容。

原作は今東光の小説で、メリメの「カルメン」からは性に奔放な女性という、単なるイメージを借りているだけ。なのでむしろ本作は「女の一代記」映画の一種と言ってよいだろう。つらい目に色々と遭ったものの、したたかに生きていく女性像…という内容は清順と言うか、今村昌平の重喜劇っぽい印象かもしれない。

でも魚眼レンズを用いた画面や飛び道具みたいな展開、突飛な発想の数々はまさに清順作品。…ただ気になったのは同じカット中に、撮影スピードが変化する辺り。これが演出の内なのか、テレシネ?の不具合なのかよく判らない。
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2025.03.29

東京战争戦後秘話(とうきょうせんそうせんごひわ)

観てみた。後藤和夫主演、大島渚監督映画。1970年公開。

学生運動を主眼に置く大学映画研究会のメンバー・元木象一。彼は部で使うカメラを手にして投身自殺した「あいつ」の存在に執着する。あいつは風景ばかりのフィルムを遺言として残し、恋人だった泰子もいたもののその存在は不確かだった。象一はあいつのフィルムと、同じ風景を撮影するのだが…という内容。

日本ATG製作、佐々木守脚本で音楽は武満徹という興味深い布陣。で内容はと言うと、これがすごく押井守っぽい。投身する不在人物の追跡劇にして、東京の風景論的言及。円環構造。青臭い政治論争は…多分大真面目なんだろうけれど、これをパロディ的に描けばそのまま、うる星やパトレイバーになっちゃう。

なんて感じてしまうのは筆者が単なるアニオタだからだろう、お恥ずかしい。とは言えアヴァンギャルドで難解ながら、路上移動撮影で見られる疾走感や切迫感。時代の空気を切り取った感覚は、アニメに採り入れたくなるのも判るな。
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2025.03.27

楢山節考

観てみた。田中絹代主演、木下惠介監督映画。1958年公開。

山間のある貧しい村では、70歳となった老人は「楢山まいり」と称して、口減らしの為に捨てられる決まりとなっていた。近く70となりそれを待ちかねるかの様なおりんの一方、息子の辰平は新妻を迎えても気分は沈んだままだった。そして遂にその日が来て、辰平は母を背負って山へと向かうのだが…という内容。

原作は深沢七郎の短編小説、本作以外にも今村昌平監督で1983年に映画化された。筆者はそちらを先に観ているけれど…木下監督版はカンヌパルムドールの今村版と比較しても、かなり特異な内容。オールセットの撮影に加えて、常に三味線等の伴奏を用いており、歌舞伎の舞台を援用したものとなっている。

そうした違いからなのか、その時と今の自分の違いからかは判らないけど…本作を見て泣けて泣けて仕方なかった。まあ様式的な伝統を感じさせるセット空間と、残酷にして凛然たる物語の取り合わせには、超然とした美しさがある。
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2025.03.26

ジョン・レノン / 失われた週末

観てみた、R・コーフマン他監督によるドキュメンタリー映画。2022年公開。

1973年から1975年にかけてジョン・レノンとヨーコ・オノの夫妻には、「失われた週末」と呼ばれる別居の期間があった。その際にジョンと恋人の関係だったのが、「メイ・パン」という2人の個人秘書の女性。本作は彼女自身が語る当時のジョンの活動や人柄、そして2人の関係のドキュメンタリーである…という内容。

一時の迷いと言うには結構長い時間だけど、ヨーコと違って音楽面でパンは大した貢献をしていないので、あまり重視されないのは確か。なので本作もゴシップ的興味が無かったら「知らんがな」で終わってしまう。Beatles好きもこんな話知りたいもんかね? と思うので、ファン向けとは違う企図を感じてしまう様な。

いわゆるウーマンリブ的な…いや、そういうのむしろヨーコの得意分野だな。でも本作はパンが一方的に言いたい事を言うだけなので、ヨーコは悪役もいいところ。真実はどんなか、正直判らないけれど…そこまで興味もないもんなあ。
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2025.03.23

トータル・バラライカ・ショー

観てみた、A・カウリスマキ監督によるドキュメンタリー映画。1994年公開。

フィンランドのロックバンド「Leningrad Cowboys」は、ソ連崩壊後の1993年「アレクサンドロフ赤軍合唱・演奏団」とのコンサートを、ヘルシンキにて行った。本作はその際の模様を記録した、音楽ドキュメンタリーである…という内容。

元々同バンドはカウリスマキの映画に登場する為に誕生した架空の存在だったのが、その後本格的な活動を行うに当たっても、やはり同監督が映像面を担当している。本作は7万名の観衆を集めた歴史的な催しで、ステージの方にも赤軍合唱団側と合わせて170名もの人員が上がっているという、大規模なもの。

演奏面では両者の持ち曲を合奏する感じ。まあロックンロールと合唱のミスマッチがすごいけど、面白いのはカウボーイ側の「悲しき天使」。1991年にはカウリスマキの担当でPVも製作された同曲は、勿論Mary Hopkinの歌唱で知られる。…でも元々はロシア歌謡がオリジナルらしい。成程、上手くハマったもんだ。
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2025.03.22

メイキング・オブ・モータウン

観てみた。B・ターナー他監督によるドキュメンタリー映画。2019年公開。

1960年代のデトロイトで、ベリー・ゴーディにより創業されたレーベル「Motown Records」。Marvin GayeやStevie Wonderを始めとする重要なミュージシャンを擁し、アメリカにおけるソウル〜ブラックミュージックの中心的存在となった。本作は関係者インタビューから、その輝かしい歴史を綴る…という内容。

まあ筆者はそんなに聴くジャンルではないのだけど、そのお陰かむしろ知らない話ばかりで為になった。…ゴーディ氏が有能な上に大変に愉快な人物で、本作でも(苦難の時代であっても)愉快なエピソードとして聴くことが出来る。特にエンディングでの社歌の披露は、他の関係者と空気が違い過ぎて大笑いした。

筆者が元々知っていた事は少ないものの…Jackson Fiveとしてのオーディション映像で見られるマイケルは、後に成長した姿をそのまま思わせて衝撃的。スティーヴィーも早熟すぎて衝撃だし、すごい人は最初からすごいのだなあ。
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2025.03.20

ストップ・メイキング・センス

観てみた、ジョナサン・デミ監督によるドキュメンタリー映画。1984年公開。

1974年、David Byrne(vo,g)を中心に結成された「Talking Heads」。本作は彼らが1983年12月に、ハリウッドのパンテージ・シアターで行ったライブを収録した音楽ドキュメンタリーである。1991年のバンド解散後、本作フィルムも埋もれた状態にあったものの、2023年には4Kリマスターの後に再上映された。

本作は幕が上がってから下りるまでの間のライブをそのままお出しして、何も付け加えない素材重視の内容。でも最初にギター1本だけ携えて登場したByrneに、曲目が進むに従って楽器やメンバーが徐々に加わっていくという趣向となっている。純然たる音楽映画ながら、演劇的なハプニング志向も感じられた。

黒人ゲストプレイヤーやコーラス…この頃(80年代)のロックって、ボウイもストーンズもこんなステージだったな。という、多分先駆け的な存在だった筈。でもぬりかべみたいなByrneのすごい横幅のスーツは、誰も真似できないわ。
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2025.03.19

ナイトクラビング / マクシズ・カンザス・シティ

観てみた、ダニー・ガルシア監督によるドキュメンタリー映画。2022年公開。

1960〜80年代にかけてニューヨークで営業した、伝説的なクラブ/ライブハウス「マクシズ・カンザス・シティ」。有名なCBGBと共にNYにおけるパンクロック発展に寄与しながらも、知名度で一歩及ばない同店の歴史を、当時実際にステージに立った関係者や、客として訪れた人々の証言から紹介する…という内容。

要するにヴェルヴェッツの、ライブアルバムのジャケットに写っているのがそのお店(実は自分も知らなくて、てっきりカンザスでの演奏かと思っていた)。…ウォーホルを始めとする、同地を根城にしたアート〜ロックの有名人が集う場所だったそうで、当時の知られざるエピソードが色々と聞けるのは仲々に面白い。

経営者が偽札犯罪を行ってたり、そこにいた全員ドラッグやってた…なんて無茶苦茶な場所の割には、CBGBと違ってトイレは綺麗だったらしい。日本で言うと吉祥寺マイナーみたいな感じ?…かは判らないけれど、憧れてしまうなあ。
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2025.03.17

「ゴジラ オリジナル・サウンドトラック」伊福部昭

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聴いてみた、映画のサウンドトラック・アルバム。2014年発表。

日本の作曲家「伊福部昭」が手掛けた、「ゴジラ」(1954年公開)の映画音楽。本アルバムはその際に使用された楽曲を、全て集めるというコンセプトのもので、公開当時にはそうした形態ではリリースされていなかった。…伊福部昭生誕100年、ゴジラ誕生60周年の記念企画として、アナログレコードが発売された。

で昨年が伊福部昭生誕110年ゴジラ誕生70周年で、同アルバムがCDでリイシューされるついでにレコードの方も再発された。今回購入したのもその再発レコード、元のは「完全初回プレス限定盤」と謳っていた筈だが…まあいいか。

内容の方はお馴染みの楽曲がまとめて聴けるので、よいものなのに決まっている。ただモノラル録音なのに加えて、音源にほぼ手を加える事なくそのままお出ししたそうなので、何というか音楽と言うより記録音源みたいな感覚がある。…とは言え「平和への祈り」等は、やはりレコードで聴くと格別の味わいがあるな。
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2025.03.16

「Nordheim」CIKADA DUO

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聴いてみた、ノルウェーの現代音楽作曲家。2007年発表。

「アルネ・ノールヘイム」は1931年に誕生し、オスロ音楽院でオルガンそして作曲を学んだ。後にコペンハーゲンやパリで、電子音楽への道へと進む事となる。同国を代表する現代作曲家として知られるようになるも、2010年に逝去。

本作は彼の電子音楽作品「Electric」(1974年)を、Kenneth Karlsson(per)とBjørn Rabben(syn)の「シカダ・デュオ」が演奏したもの。そちらにエレクトロニクスや女性ソプラノを加え、Nordheimの世界をモダンに再現している。

まあ自分はNordheimを聴くのは初めてなので、比較した訳でもないが。感じとしては声楽が多めでその印象が強い。現代声楽曲は、すぐOpus Avantraと挙げたくなる辺り、例えの幅が狭くてお恥ずかしい。でもギリシャの詩人アルキロコスを歌詞に採り入れているそうで、意外と近いかも。演奏の方は2001年の、スターゲート場面で流れる曲みたいな印象があったり。…その例えもどうだろう。
posted by ぬきやまがいせい at 21:42 | Comment(0) | TrackBack(0) | 音楽