2025.04.30

野火

観てみた。塚本晋也主演、製作、脚本、監督映画。2014年公開。

第二次大戦中のレイテ島。肺を患った日本陸軍・田村一等兵は、野戦病院行きを命じられる。ところが軽病の為に治療も受けられず、原隊と病院を往復する事に。やがて食料は欠乏し、極限状態に陥った末に現地民を殺してしまう。そんな時別地点への移動が命じられ、味方の兵士と同道するのだが…という内容。

原作は大岡昇平の小説、1959年には市川崑監督で映画化もされている。本作である塚本版は、20年にも渡る構想の下に(資金難の中)自主製作したもの。各地の映画祭で評価され(塚本は演技者としても)受賞も果たしたのだが…

反戦映画かと思ったらサバイバル・スリラーだった。勿論本作を観て戦争って嫌だなって感じて、何らおかしくはないけれど…それが言いたいのなら、余計な描写が多すぎだ。グロ・残酷演出は戦争のリアル、というより「鉄男」での趣向とあんまり変わってない。その辺は同監督の、サービス精神の顕れかもしれん。
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2025.04.29

セデック・バレ

観てみた、ウェイ・ダーション監督映画。2011年公開。

台湾には長年森で暮らす、狩猟民のセデック族がいた。その後中国から割譲された台湾に、日本が進駐して来る。日本からは言葉や習俗の教育、不当な労働を強制され反感が強まっていく。そして1930年、ある事件を契機に、セデック族は武装蜂起。日本軍もそれに対抗、大規模な戦いへと発展し…という内容。

台湾で先住民が起こした抗日反乱、「霧社事件」を題材にした実話映画。…本作の完全版は第1部「太陽旗」、第2部「虹の橋」の2部構成で、合わせて4時間30分超えの大作。加えて血腥い要素も隠さず映像化した、力作でもある。

観て思ったのは、米先住民に対する西部劇と似たような構造なんだなと。でも西部劇みたいに、一方を悪とする描き方(アメリカ人の精神は太くてビビるわ)ではない。というか、セデック族がバーバリック過ぎて、同情しにくいと言うか。…アクションとしても見応えあるけれど、歴史を考える切っ掛けにしてもいいかも。
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2025.04.27

イメージの本

観てみた、ジャン=リュック・ゴダール監督映画。2018年公開。

映画・絵画・文章・音楽をモチーフに、様々な映像イメージを編み上げた実験的作品。「リメイク」「ペテルブルグ夜話」「線路の間の花々は旅の迷い風に揺れて」「法の精神」「中央地帯」という全5章で構成され、映画の歴史と共に、世界で行われる暴力行為への、批判的な眼差しで構成されるものである…という内容。

「映画史」や、ジガ・ヴェルトフ集団での手法を思い起こさせる内容。ただそれらの「全映画の綜合」や「政治的主張」といった明確なコンセプトには欠ける代わりに、(題名通り)多彩な映像を「本」のイメージで、まとめ上げたと思われる。

カンヌ映画祭では最高賞のパルムドールを超える、「スペシャル・パルムドール」を授与されたとの事。まあよく判らないけれど、多分名誉賞的なものでは。本作がゴダールの遺作となった様でもあり、受賞に相応しい。本作は88歳当時の作品との事なので、自身の生涯を総括するという意味でも、相応しい映画だろう。
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2025.04.26

夢の涯てまでも

観てみた。ヴィム・ヴェンダース脚本、監督映画。1991年公開。

1999年、核衛星の落下が懸念され世界は恐怖に怯えていた。そんな中クレアは自動車旅の道中、トレヴァーという謎めいた男を同乗させる。パリで別れた後も彼の存在が気になったクレアは、トレヴァーを世界中追いかける。遂に彼に追いついて共に旅を続けたものの、突然に起きた核爆発の影響で…という内容。

今回観たのは2019年の「ディレクターズカット版」で、公開時より100分長い288分。…世界各国での大々的なロケやNHKによるハイビジョン撮影の協力、日本編での笠智衆の登場等で話題になった大作。…ところが結果は大酷評。

前半のロードムービー的な感覚は結構いいのに、後半は三文SFっぽい描写になって成程唖然。ラストの宇宙船とか「幻の湖」を連想した。…とは言えレトロチックなSFガジェット(バブルカーとか)は嫌いじゃない。野外でのプリミティブな演奏シーンとか、後に多く手掛ける音楽ドキュメンタリーを連想させ興味深い。
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2025.04.24

黒猫・白猫

観てみた、エミール・クストリッツァ監督映画。1998年公開。

ユーゴスラビアを流れる、ドナウ川沿いのある町。自堕落に暮らすマトゥコは列車を襲って石油を奪う計画を立て、不仲な父親・ザーリェの友人である町の大立者・グルガからの協力も得る。ところが結局失敗に終わり、その為マトゥコは息子のザーレを、新興ヤクザ・ダダンの妹と結婚させる事になって…という内容。

クストリッツァと言えば勿論ユーゴスラビアの監督だけど、本作の泥臭い笑いの数々は東欧と言うより南米っぽい。コメディと言うよりマジックリアリズムっぽい。前作「アンダーグラウンド」が同国史を俯瞰する内容だったのに対して、本作では同国の人々のエネルギッシュな生き様を、デフォルメして描いている感じ。

ストーリーらしいストーリーも無く、人々がガチャガチャ騒ぐ様子を眺める作品。ただ軽く流して観られる様なものでもないので(少々不快要素があるもんで)、130分という尺はちと長いかも。…とは言え、パワフルな映画ではあるなあ。
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2025.04.23

英国式庭園殺人事件

観てみた、ピーター・グリーナウェイ監督映画。1982年公開。

17世紀末の英国。南部にあるハーバート家の豪邸に招かれた画家のネヴィルは、不在だという主人が戻るまでに12枚の絵を描く約束を夫人とする。ところが彼が庭園をスケッチするその都度、シャツや梯子といったハーバート氏を思わせる物が入り込む。やがて、その主人本人が見つかるのだが…という内容。

同監督による長編デビュー作だが、Michael Nymanの音楽に加えて「奇矯」な作風が既に顕れている。なので題名から推理物かと思った人が、皆揃って困惑したという…まあ自分もか。グリーナウェイは知っている積りだったのに。

(「数に溺れて」等に先駆ける)パズル的要素は一応あるものの、衣装や調度等、当時の貴族生活を再現した映像の方が目を惹く。それ以上に連続性のない会話の輻輳とかハナ肇みたいな銅像のオッサン等、正直意味不明で訳がわからなくなってしまう。まあ変な映画と判って観れば…やっぱりすごく変な映画だ。
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2025.04.21

トラック

観てみた、マルグリット・デュラス監督映画。1977年公開。

マルグリット・デュラスは未実現に終わった映画の為に書かれた脚本を、ジェラール・ドパルデューに語って聞かせる。その内容はある年配の婦人が、若い運転手のトラックに同乗して旅をする事になるというもの。映画は2組・2人の会話によって進み、やがて婦人の過去が明らかになっていくのだが…という内容。

作者自身がその企画内容を語る体裁で進む、という映画はロブ=グリエやウディ・アレン作品にもあった。でも本作は「作られざる場面」をメタ的に描いている辺り、ズラウスキーの「シルバー・グローブ」に近い印象だったかもしれない。

まあ風景にナレーション風の語りが乗った映像が延々続くので、同監督としては前年の「ヴェネツィア時代の彼女の名前」に呼応した着想ではあるのだろう。直截的な政治的メッセージがあるとゴダール感というか、なんと言うかも感じてしまうけれど…「構想としての映画」という、一種の想念を垣間見る想いがする。
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2025.04.20

「アビシニアン」ジューン・テイバー

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聴いてみた、イギリスのフォーク・シンガー。1983年発表。

「June Tabor」は1947年、ウォリックで誕生。独学でフォークの歌唱を学んだ後、様々なレコーディングに参加する様になる。ソロでの活動の他にも、Maddy Priorとのデュオとなる「The Silly Sisters」で作品を発表している。一時期音楽からは身を引いていたのだが、1990年代に復帰して現在も活動中。

本作は彼女の4枚目のソロアルバム。バッキング演奏もあるものの、本作の殆どは彼女の独唱によるアカペラが中心。聴いた感じはと言うと、昔ティッシュのCMで流れる曲が呪いの歌だ、って噂があったじゃない?…あんな感じ。まあTaborの歌は、もっとドスが効いた感じなのだけれど(しかし古すぎる例えだなあ)。

それより個人的にはNicoを連想した、と言った方がいいか。本作で採り上げた曲の多くはトラッドながら、かなり印象が違って聴こえる筈。深い残響を伴った歌声が、英国の霧の立ち籠める森の情景を思い起こさせる…かもしれない。

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2025.04.18

「(same)」ラウルプー

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聴いてみた、フィンランドのトラッド/フォーク・バンド。1981年発表。

「Laulupuu」はフィンランドで、同地のトラッドを演奏するグループ。メンバーはLiisa Lääveri(vo)、Eeva-Leena Sariola(vo, kantele)、Matti Kontio(vo, kantele, guitar他)、Hannu Syrjälahti(vo, kantele)、Tapio Salo(contrabass)。本作「Suomalaisia Kansanlauluja」が唯一作。

フィンランドでも1960年代末にフォークリバイバルが起きたそうで、同国ではカウスティネンという村が発祥地となる。…Laulupuuもそれ以降のグループだが、フィンランド独自の弦楽器「カンテレ」がフィーチャーされているのが特徴。

本作ではギターも用いられてはいるものの、脇役としての使い方の様だ。でもライナーだと(ギターではなく)「フィドル」を使わない事を、特記していたのが興味深い。フィンランドならでは…かは判らないけど、かなり独特な素朴さがある。その代わり(?)に、60年代のフレンチポップスみたいな曲もあるのは面白い。

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2025.04.17

「ブルターニュの調べ」ソアジグ

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聴いてみた、フランスのハーピスト。1980年発表。

「Soazig」は、フランスのブルターニュ地方で活動するハープ奏者。ブルターニュは仏におけるフォークリバイバルの勃興地だとの事で、彼女もトラッド曲の演奏に際して、復元された「ケルティック・ハープ」を用いている。本作はそのハープ独奏によるSoazigの1stアルバム、他にも2枚程アルバムを制作している。

Soazigに関しては殆ど情報が無いのだけれど…本作でもケルトのトラッドを、多く採り上げている。音楽的な特徴はやはりケルティック・ハープで、多少小型なところもあってか、トラッドらしい軽快な印象がある。でも本作に収録されているダンス曲のメドレーを聴くと、流石にギター等とは違ってスピード感が無いな。

小型とはいえ弦と弦の間が離れているし、指先の動きだけでは演奏できないからかも(あとギターで言う「スウィープ奏法」みたいなのが頻繁に入るのが、ハープらしくて面白い)。でもこうした独特な響きも、楽しく聴けるんじゃないかな。

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2025.04.15

「(same)」アベルジャベル

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聴いてみた、ウェールズのトラッド/フォーク・バンド。1985年発表。

「Aberjaber」は、同地のトラッドを採り上げた初期のグループ「Cromlech」メンバーにより結成。Peter Stacey(fl,bagpipes他)、Stevie Wishart(vl,hurdy gurdy他)の2名に、ハープ奏者のDelyth Evansを加えて1985年にリリースしたのが、本作1stアルバム。その後も2枚アルバムを制作している模様。

当グループは「ケルト」のトラッドを中心に採り上げており、バグパイプの音を聴くとああとなる感じ。…で本作でもギターは、演奏で用いられていないのが興味深い。代わりにハープの音色が中心だと、古代の音楽ってイメージになるな。

ライナーによると同地方で、ケルトのトラッドが見直される用になったのは実は結構最近。英フォークリバイバルから更に遅れてのものだが、80年代頃からケルト音楽が世界的ブームになった印象なのは、そのままリアルタイムの現象だったみたい。…本作もそうした伝統の復活と、新鮮さが感じられる好盤でしょう。

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2025.04.14

「ウェールズの雪」カレンニグ

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聴いてみた、ウェールズのトラッド/フォーク・バンド。1985年発表。

「Calennig」は1978年、Mick Tems(accordion,p,syn,vo.他)とPat Smith(vo.他)の2人組で結成。南ウェールズのスウォーンジーを拠点に活動、1980年には1stアルバムをリリースした。本作「Dyddiau Gwynion Ionawr」は彼らの3rdで、Mike Kennedy(b,dr)を迎えて、レコーディングが行われた。

本作はほぼ全曲でトラッドナンバーを採り上げており、エレキベースも導入している辺りからして、英国フォークリバイバル以降の表現と見てよいと思う。でも本作では「ギター」を用いず、アコーディオンがメインのリード楽器という点は独特…かな?(後述すると思うけど、トラッド演奏で案外ギターは使われない)。

電化トラッドの先入観があると、素朴な響き(有名バンドはやはり洗練されている)に感じるかもしれないが…これはこれでよい。歌詞の方も炭鉱労働者のスト等を採り上げており、その辺からもウェールズ独自の味わいがあるのかも。

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2025.04.12

「フィーリング・ザ・シーリング」ルイージ・アナ・ダ・ボーイズ

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聴いてみた、イギリスのハードロック・バンド。2024年発表。

「Luigi Ana Da Boys」は1976年頃、西ヨークシャー州の高校で、Duncan McFarlane(g,vo.)を中心に結成。翌年に録音されたのが本作「Feeling The Ceiling」。1000枚がプレスされプロモーション用に各所へ配布されたものの、レコード会社等からの反応は無かった。その後バンドは解散するも散発的ながら活動を継続し、本作は幻のアルバムとして高いプレミアが付く様になった。

オリジナル盤は資金的な都合から白い無印刷のジャケットだったのが、2024年の再発の際に現行の物となった(筆者が購入したのはP-Vineよりの日本盤)。…で音楽的には、これはもう「Wishbone Ashみたい」の一言に尽きる。

何せ他に語り様がないというのも正直な所。幾らでも伝説になってそうな存在なのに、(バンド名や白ジャケ始め)素っ気無さすぎ。有名バンドはやはり、そういう自己プロデュースに長けてるというのが判る。個人的には好きだけどね。
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2025.04.11

PONY METAL U-GAIM PROMOTION FILM

観てみた、毛利和昭作画監督によるアニメーションビデオ。1997年公開。

「ポニーメタル ユーガイム」とは1980年代、サークル「Project-U」主催で展開された同人誌のシリーズ。「重戦機エルガイム」「ぴえろ魔法少女シリーズ」のパロディながら、メカ+美少女という内容で話題になった。本作はその勢いに乗って製作された短編アニメ。ゼネラルプロダクツよりビデオとして販売された。

今作品の内容的な情報を探しても、Web上では殆ど判らないな。自分は当の同人誌を所有しておらず、当時も雑誌記事で見ただけなので。多分園田健一の、ラムロイド辺りがルーツなんだろうけど…今見ても、結構よさげではある。

本作は2分程の短編で、TVアニメOP風という趣向。メカ描写に力が入っており、結構すごい…のも当然、現在でも活躍中のプロクリエイターが多数参加している(後述)。特に本作で演出も手掛けた毛利は、サンライズロボアニメとぴえろ魔法少女の両方に参加しているので、成る程適任として起用される訳だ。

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2025.04.09

PROJECT-WIVERN

観てみた、青山敏之監督によるアニメーション映画。1997年公開。

未来の宇宙戦争。敵ゼカリア軍は惑星軌道強制変更ユニットによる、大規模攻撃を敢行しようとしていた。対するアスフォデル軍は、新型宇宙戦闘機「ワイバーン」を開発。同機を用いた迎撃作戦「プロジェクト・ワイバーン」を発動し、目覚ましい戦果を挙げる。ところが敵軍の動きは、想定以上に早く…という内容。

現在はCGクリエイターとして活動中の同監督が、学生時代に手掛けた自主製作CGアニメ。筆者も当時大変話題になった事を知っていたのだが…そういや見ていなかったなと。現在完成版の15分全編が、Web上で公開されている。

感じとしてはシューティングのムービーパートみたい。流石に30年前の作品なので、技術レベル的に今見てどうのこうのは言っても仕方ないでしょ。とは言え当時一介のアマチュアが、これ程のものを作り上げたのは、矢張り凄かった筈。トップをねらえっぽいな…と思ったら、影響元に挙げられているのもご愛敬。
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2025.04.08

Two Balloons

観てみた、マーク・C・スミス監督によるアニメーション映画。2017年公開。

小さな飛行船に乗って、大空の旅をするのはキツネザル。彼はかつて出逢ったもう1匹のキツネザルと、互いの飛行船同士逆方向から地球を一周した先で再会する事を誓ったのだ。そして彼らは長い旅路の果て、遂に巡り合った。ところがお互いの飛行船にロープを渡して、再会を祝おうとしたその時…という内容。

僅か9分程の短編ながら、全編ストップモーションによるアニメ作品。各地の映画祭で受賞している様だけれど…監督のWikipediaでのリンク先が、同姓同名の無関係なレーサーかと思ったら、監督本人だった。ユニークな人物だな。

「つみきのいえ」が気に入ったので、アマプラで似たような短編アニメを探してみた感じ。まあそちらと違って本作の内容は、何かしらの隠喩がある様でもなし、多分観たままなんじゃないかな。ただ本作での「墜落」は破滅じゃなく、空でフワフワ浮かれ暮らしていた2人が、地上で身を固めた…という寓意かもしれんね。
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2025.04.06

つみきのいえ

観てみた、加藤久仁生監督によるアニメーション映画。2008年公開。

水没した都市の真上。その水面に突き出た小さな一室で、老人は暮らしていた。その空間にあるのは亡き妻の写真と、少しの生活道具だけ。ある日更に水面が上昇。その場所が使えなくなった為、老人はその屋根上に増築して新たな部屋を作る。ところが愛用のパイプを水中に落としてしまった彼は…という内容。

各地の映画祭で高く評価された本作。特にアカデミー賞短編アニメ部門で、日本作品としては初の受賞を果たした。…わずか12分程の短編の上、音響面では台詞を用いず、音楽と効果音だけというサイレント的な表現を採っている。

老人が過去を回想するというストーリー、すなわち水面下=深層への遡行。更に過ぎ去った想い出の積み重ねられた住居の姿を、「積み木」に見立てたイメージが美しく、僅かな時間に凝縮された秘跡がある。…(偶然だろうけど)この翌年に公開された、「カールじいさんの空飛ぶ家」との違いを考えると興味深い。
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2025.04.05

陽なたのアオシグレ

観てみた、石田祐康監督によるアニメーション映画。2013年公開。

小学4年生の陽向は、絵を描くのが好きな少年。そんな彼が密かに想いを寄せるのが、クラスメートの少女・時雨だった。飼育小屋で小鳥の世話をする彼女を見て、一緒に白鳥の背に乗って空を飛ぶ絵を描いて妄想を膨らませていた。やがて2人の距離は縮まるのだが、突然時雨の転校が決まって…という内容。

後に「ペンギン・ハイウェイ」「雨を告げる漂流団地」を制作する石田監督が、最初に「スタジオコロリド」と共に手掛けたのが短編アニメの本作。内容は自主製作での過去作、「フミコの告白」の姉妹編と言うか…男女を入れ替えた感じ。

本作では「告白」とも言えない淡い感情ながら…疾走=移動シーンがクライマックスとなっている辺り、要するにフミコと同じ。商業監督となるに当たり、手始めに受けた作品を踏まえてパイロット的な短編を作ったという感じか。とは言えここから上記2作へとジャンプする(鳥!雨!)のだから、これはこれで意義深い。
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2025.04.03

果てしなき情熱

観てみた。堀雄二主演、市川崑監督映画。1949年公開。

天涯孤独の作曲家・三木竜太郎。彼にはかつて出逢った想い人、優子があった。偶然竜太郎は彼女が暴漢に襲われた所を救ったものの、自分自身は殺人で投獄される事態に。ところが彼が出所するのを迎えたのは、女給のしんだけだった。竜太郎はしんの想いに応える為に、彼女と結婚したのだが…という内容。

「蘇州夜曲」「ブギウギ娘」等といった服部良一作曲のヒット曲の数々が流れる、いわゆる歌謡映画。でもストーリーは服部と無関係という、但し書きが冒頭に掲げられる。なにせ主人公が暗く、妻に対しても不人情な辺り本当に印象が悪いので…(服部にとっても)こういう人と思われたら困る、って事かもしれないな。

市川崑の監督昇進間もない頃の初期作品だが、当時も酷評されたらしい。陽気な歌謡映画というより、「モンパルナスの灯」みたいな芸術家映画という感じで、それも宜なるかな。とは言え奥さんは可愛いのに…やっぱひどい旦那だわ。
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2025.04.02

月曜日のユカ

観てみた。加賀まりこ主演、中平康監督映画。1964年公開。

横浜のナイトクラブで、一際目を引くのが18歳のユカ。彼女は誰でも体を許し、男を喜ばせるのが生き甲斐と言いつつ、キスだけは頑なに許さない。ユカのパトロンは会社社長の「パパ」。日曜はパパが家族と過ごす日なので、月曜はユカの日。彼女はパパを喜ばせる為、人形が欲しいとねだるのだが…という内容。

原作は安川実の小説。「狂った果実」(1956年)で知られる中平監督の、もう一方の代表作。同作がヌーベルバーグの作家から高く評価された事を知ってか知らずか、本作はかなりヌーベルバーグっぽい。ストップモーションや無声映画風演出、自堕落な青春模様などまさにそのままなのだが…実際はどうなのかな。

とは言え本作で目を引くのは、何と言っても主演の加賀まりこ。小悪魔…むしろ「ニンフェット」と呼ぶべきだろうか(ナボコフの定義とは違うけど)。ただまあ本家ヌーベルバーグより湿っぽいのは、日本ならではの質感で仕方ないか。
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