2024.04.24
「故郷から10000光年」ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア著、伊藤典夫訳
読んでみた、アメリカ人作家によるSF短編小説集。1973年発表。
本書は著者が「ティプトリー・ジュニア」名義でSFを発表する様になった、初期の短編を集めた作品集である。ハリイ・ハリスンが「彼女」を見い出した経緯を、回想した序文を寄せている。本書タイトルの由来となった短編、「マザー・イン・ザ・スカイ・ウィズ・ダイアモンズ」を始めとする、全15編を収録…という内容。
本書の白眉は「故郷へ歩いた男」。異様な状況設定と抒情的で感傷的な作風が、見事な時間SFとして結晶している。ただその代わりに他は、「起」もなしに「承」が始まって「転」も「結」もなしに「承」だけで終わる印象の作品ばかり。これは未熟だからなのか?…まあ「たったひとつ〜」では、そんな印象なかったしな。
でも本書は著者自身の体験が反映しているという述懐を元に、「悲劇的な最期」から振り返ると、案外すんなりと納得できてしまう感じはある。…ただ常に追い詰められているかの様な切迫感は、作家本来の持ち味でもあるんだろうけど。
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