
読んでみた、日本人作家による長編ホラー小説。1988年発表。
加納哲平と美沙緒夫妻は、1人娘の玉緒と共に格安のマンションを購入して移り住む。だがその物件は墓地や火葬場の近くで、初日より怪奇現象が頻発していた。堪り兼ねた夫妻は結局、再度移転を決めたのだが…という内容。
日本における「モダンホラー」小説初期の作品として、評価の高い本書。日本を舞台にしたホラーならではの感覚としては、身近な物件を題材にした「実話怪談」風の雰囲気に加え、因縁話を脱した小中理論的「J・ホラー」に先駆ける、脱構築性が挙げられるだろう。単なるキングの物真似とは最初からかなり違う。
まあ段々話の規模が大きくなるに従って、描写がシュールコント(ブニュエルの「皆殺しの天使」を連想したり…?)みたいになっていくのは、好みから外れるという人がいても正直仕方ないな。とは言え「J・ホラー」的な映像感覚面で先駆ける演出(新耳袋かな?)などは、これは今読んでも大したものであるなあ。