2023.03.05

UFO学園の秘密

観てみた、今掛勇監督によるアニメーション映画。2015年公開。

レイを始めとする5名の「ナスカ学園」生徒は、課題としてUFO・宇宙人研究をテーマに選ぶ。ところが発表直前に何者かの妨害を受け、しかも突然UFOの機内にアブダクションされてしまう。そこで宇宙人がレイに語るには地球では善悪二大勢力が争っており、彼らの学園にも悪の手先が潜伏していて…という内容。

大川隆法製作総指揮による、「幸福の科学」劇場アニメ第7作。今掛監督としては3作目に当たり、その後の作品でもキャラデザ・総作監を兼ねる力の入れ様。その教祖様がいなくなってしまって、今後アニメ製作はどうなるのだろう…

別にいいけど。本作はUFOをネタに採り上げ、案外普通のアニメっぽいのだが…チャネリングして宇宙に飛んでからは胡散臭さ全開。大川先生の教えを延々聞かされて眠いのなんの。でも主人公が超サイヤ人4みたいに変身したりと、デタラメ…いやサービス満点。監督のキャラは地味可愛いくて結構好きだな。
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2023.03.03

空の青さを知る人よ

観てみた、長井龍雪監督によるアニメーション映画。2019年公開。

両親を事故で亡くして以来、姉・あかねと2人秩父で暮らす妹のあおい。あかねは高校時代同級生の慎之介から上京を誘われたものの、それを断った為に2人の関係も終わっていた。そして13年経ったあおいの前に、高校生の慎之介が時を超えて現れる。しかも現在の慎之介まで久々に帰郷してきて…という内容。

「あの花」制作チームによる第3作。シリーズと銘打つ程でもないけれど、秩父を舞台にしている事とファンタジー描写、ヒロイン少女にとって恋愛がビターに終わる点などは共通している。ただ前2作にあった、屈折した要素(女装だのラブホだの)が見られない辺り、取っつきやすい代わりに少々フックが足りない気が。

どちらかと言うと「焼けぼっくいに火が付いた」姉の恋愛の方が主軸なので、(結局バンド演奏云々は脇道だったりと)あおいはあくまでもそのストーリーの語り手にすぎない。…そういう意味では「妹の存在自体が」屈折しているのかも。
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2023.03.02

青春ブタ野郎はゆめみる少女の夢を見ない

観てみた、増井壮一監督によるアニメーション映画。2019年公開。

「思春期症候群」と呼ばれる奇妙な現象が、周囲で起こる高校生・咲太。ある日彼の知り合いである中学生・翔子が、突然大学生の姿になって現れた。それは病弱で先行きを不安に思う彼女の内心が、願望として叶ったものと推測された。だが咲太の恋人である麻衣と、ひと悶着を引き起こす事になって…という内容。

原作は鴨志田一の小説「青春ブタ野郎」シリーズ。本作は先立って放送されたTVシリーズの続編となる映画。(麻衣先輩という決まった相手がありながら)各巻でメインとなる少女が交代するスタイルで、本作では牧之原翔子がヒロイン。

一言でいえば「化物語」を連想させる本作。そちらがドライな作風のお陰で、ガハラさんがいても大して気にならないのに対して、本作ではウェットな表現を採る為に、麻衣の存在が甚だしくノイズ(=恋愛関係としての圧)になっているのは大分違うな。…まあ要するに、泣かせたいかどうかの違いって事なのかも。
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2023.02.28

サイダーのように言葉が湧き上がる

観てみた、イシグロキョウヘイ監督によるアニメーション映画。2021年公開。

内向的な性格から耳にヘッドホンを着用する俳句少年・チェリーと、コンプレックスを抱く前歯をマスクで隠す少女・スマイル。スマホを取り違えた事から偶然知り合った2人は、老人福祉施設で働く事に。そちらの利用者の老人・フジヤマが常に探しているある「レコード」を、彼らも見つけようとするのだが…という内容。

ヒロイン少女が「マスク」を着用しているのが、チャーミングな本作。でも例によって新型コロナ蔓延の為に公開が延期…世間中がマスクだらけになるとは、作り手も思わなかっただろうな。まあ内容自体は他愛ない恋愛ものだが、個人的にはそれで充分。加えて「幻のレコード」の探索、という辺りにもぐっと来た訳で。

劇中で使われるのは大貫妙子の楽曲だけど、ネット検索にもヒットしないなんてアシッドフォークの激レア盤みたい。まあピクチャーレコードは、あんなSP盤みたいな割れ方しないだろ…というツッコみどころもあるものの、これはこれで。
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2023.02.27

サマーゴースト

観てみた、loundraw監督による中編アニメーション映画。2021年公開。

ネットを通じて知り合った高校生の友也、あおい、涼。3人は噂の「サマーゴースト」に出逢う為に、廃飛行場へと出掛ける。果たしてそこに出現したのは少女の幽霊で、絢音と自ら名乗った。彼女に逢えるのは「死」を近しくする者だけ。そして絢音は心残りを叶えるべく、友也にある頼み事をするのだが…という内容。

幽霊に頼まれてその当人の死体を探す、というプロットからは「Another エピソードS」を思い出した。ちなみに本作で脚本を担当したのは、安達寛高こと乙一。…だからどうしたと訊かれても口を濁すけれど、いやどういう事なんだろう?

ま、どうでもいい事だろう。…で本作はZ会からの依頼で制作されただけあって、死や別れというモチーフが採られながらも、若者へのエールとなる作品が目指されている。しかし夏に花火と共に出てくる幽霊だし、まさに「夏と花火と彼女の死体」だな。若い子達の間ではこういうのが応援になるのかい?、みたいな。
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2023.02.26

鹿の王 / ユナと約束の旅

観てみた。安藤雅司、宮地昌幸共同監督によるアニメ映画。2022年公開。

山犬が媒介する、黒狼熱という死病が蔓延する森。大鹿を巧みに乗りこなし、孤児のユナと共に旅するヴァンは、山犬に噛まれても何故か命を取り留めていた。その事を知った医師のホッサルは病気に打ち勝つ抗体を得る為に、ヴァンの行方を追う。その背景には長年に渡る、2国間の争いがあって…という内容。

原作は上橋菜穂子の小説。今回初監督の安藤、宮地も共にジブリとは関りが深いので、本作は相当宮崎作品を連想させる。でも上橋と言えば「精霊の守り人」だし、同じくProduction I.Gで制作された同作を思い出してもいいよな。

本作は例によって新型コロナ蔓延により、数度の延期を経て公開された。内容が病気を扱うものなので、ある意味タイムリー?(そんなタイムリー要らん)。病との闘いという観点では正直、描写が超常現象じみてて「?」となってしまうけれど…それこそが本作での、凄腕アニメーター監督ならではの見せ場だしなあ。
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2023.02.24

ブルーサーマル

観てみた、橘正紀監督によるアニメーション映画。2022年公開。

都留たまきは親元の長崎を離れ、埼玉の青凪大学に入学する。だが意図せず空知大介が運搬中だった、体育会航空部のグライダーを破損してしまった。弁償の為に同部に雑用として入部するたまきだが、部長である倉持潤が彼女をグライダーの飛行に同乗させた事で、空を飛ぶ楽しさに目覚めて…という内容。

原作は小沢かなの漫画。…自分も割と航空関係は好きだったつもりだけど、「グライダー競技」に関しては初めて知る事ばかりで興味深かった。ゆったりと飛ぶのが信条かと思ったら、実はスピード競技なのね(まずそこからかよという)。なので本作にしても、どこがどうすごいのか?、伝わりにくい面は正直あると思う。

でも機体運用や飛行に関するディテール、競技を支える人々の描写だけでも充分見応えがある。逆に言うとスポーツものとしては定番の展開に収まっており、グライダーならではの感動は?…という気もしたけれど。まあこれはこれで。
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2022.12.31

グッバイ、ドン・グリーズ!

観てみた、いしづかあつこ監督によるアニメーション映画。2022年公開。

「ドン・グリーズ」こと、親友のロウマとトト。高1の夏、新たにドロップを仲間に加え、彼らは花火大会の夜にドローンを飛ばす。自分達を疎外して来た連中を見返す積りが、同夜発生した山火事が彼らの原因と疑われてしまう。3人は喪失したドローンの録画データを探して、山中へ分け入ったのだが…という内容。

同じスタッフが手掛けた「宇宙よりも遠い場所」の男子版。と言うよりも、要はアニメ版「スタンド・バイ・ミー」か。女子会アニメだった前作が男子会映画に置き換わった感じで、幾つかの共通点が勿論あるけど…どうも男性的に、ウェットな感覚まで引き継いだのは、正直良し悪し(まあ感動路線にしたかったのだろう)。

むしろ「よりもい」の女子達の方が、もっとサバサバしたメンタリティじゃなかったっけ?、という気も。ただまあこれをそのまま女の子キャラでやっていたら、もっと好きになってただろうな…と言ってしまう自分は、かなりな正直者だと思う。
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2022.12.29

竜とそばかすの姫

観てみた、細田守監督によるアニメーション映画。2021年公開。

母の死で、歌う事が出来なくなった高校生・すず。だが仮想世界・Uでは歌姫「ベル」の姿になる事で、彼女の歌は多くの人に感銘を与えた。そんな時Uで暴れる謎の「竜」が現れ、ベルのコンサートを台無しにしてしまう。彼の傷ついた姿に自分自身を重ねたすずは、竜の現実世界での正体を探るのだが…という内容。

情緒不安定な映画。…上記した設定の主人公は仕方ないとしても、出てくるキャラほぼ全員見ていて不安になる。コメディシーンすら笑うより前に、人物の挙動不審さから心配になった。加えていつもの細田アニメの田舎風景から、ディズニーアニメ調のU世界に頻繁に切り替わるので、作品自体が落ち着く暇が無い。

よく言えば多彩な要素を採り入れているけれど、逆に言うと映画としてバタバタしすぎでは。…とは言えクライマックスの歌唱シーンでは、結構感動してしまったのも確か。歌と映像美に焦点を絞ってくれていれば、もっとよかったかも。
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2022.12.28

神在月のこども

観てみた、四戸俊成監督によるアニメーション映画。2021年公開。

母・弥生の死で、走る事が出来なくなったカンナ。旧暦10月・出雲で言う「神在月」のある日、母が実は韋駄天の末裔だと知った。カンナは母の務めだった各地の「馳走」を集め、神々の集う出雲へと運ぶ役目の為に旅立つ。導き手の白兎の言う、その地で母との再会が叶うとの言葉を信じての事だが…という内容。

MTBじゃない方の韋駄天。なので本作では少女が徒歩で、東京から出雲まで行くという話。その間試練があったり挫折したりして、最後には母親の死を克服して成長するという…公民館で上映されそうな、児童向けの教育アニメっぽい。

決して悪くはないけど、主人公の声を例によって俳優さんが当てているのを始め(子役の方が上手いじゃん)、どうも乗り切れない。日本神話モチーフは興味深いだけに、岬のマヨイガの時に言った「類似作のふんわり感」がそのまま当て嵌まってしまうのが惜しい。…まあでも、児童向けならむしろこれでいいのかな。
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2022.12.26

思い、思われ、ふり、ふられ

観てみた、黒柳トシマサ監督によるアニメーション映画。2020年公開。

少女漫画に憧れる由奈と、恋愛にはドライな朱里。同じマンションに住み親友同士ながら、対照的な女子高生の2人。しかも由奈は朱里の弟で、幼い頃に憧れた王子様そっくりの理央に恋してしまう。だが理央には既に想い人がおり、由奈は失恋してしまった。朱里もまた、由奈の幼馴染の和臣に対して…という内容。

継母の連れ子がドメスティックな彼女だった。…まあ咲坂伊緒の原作は少女漫画なので(「ママレード・ボーイ」が例えに挙がったりもするけれど)、似た状況設定でもラノベや少年漫画とは違って、本当にピュアなお話になるんだなと。

ただ本作も恋に一途な由奈と、恋多くその為に傷つきやすい朱里をダブルヒロインとする、対照的な恋模様。これは「昔ながらの少女漫画」と「現代的な恋愛観の少女漫画」と並行して描く、ジャンルにおける自己言及的表現を含むのが興味深い。いや多分そういう批評眼は、本作を観る上で余計だとは思うんだけど…
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2022.12.25

ジョゼと虎と魚たち

観てみた、タムラコータロー監督によるアニメーション映画。2020年公開。

海外留学の夢の為、ダイビングショップを始め幾つもバイトを兼ねる大学生・恒夫。そんな彼が出逢ったのが車椅子の女性、ジョゼことクミ子。祖母・チヅからの申し出で、恒夫はジョゼの世話をする事になったのだが、気の強い彼女に振り回されっぱなし。そんな2人が、徐々に打ち解けたそんな時…という内容。

原作は田辺聖子の同名短編小説。こちら以外にも日本と韓国で、実写での映画化をされた様だけれど(未見)、本作はかなり自由に原作を翻案している模様。そのお陰で本作アニメ版は、「観て気持ちのいい恋愛映画」となっている。

これあれでしょ「とらドラ!」、虎も出るし(なんてボケたくなる)。ジョゼが釘宮声じゃないのが、不思議な位のツンデレキャラだし。まあいかにも現代日本のアニメ映画なのだけれど…勿論そこがいい訳で。この結末以外ありえないと思える形に、2人の物語が丁寧に積み重ねられる本作は、やはりこれ以外ありえない。
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2022.12.23

劇場版 SHIROBAKO

観てみた、水島努監督によるアニメーション映画。2020年公開。

あれから4年。一連の制作中止騒動により精彩を無くした「武蔵野アニメーション」で、同社社員の宮森あおいもまた物思いに沈む。そんな中、新作劇場アニメの元請け企画が持ち上がり、あおいも再び奮起する。意欲を失った者を励まし、散り散りになったスタッフを集めて、遂に制作は始まったのだが…という内容。

TVアニメシリーズ「SHIROBAKO」の続編である劇場版。同作はアニメのバックステージものとしては決定版的な内容で、恐らく今後これを超える様な作品は出ないだろう。…というのは、続編であるこの映画にも当て嵌ってしまった。

努力も苦労も一時の成功にしろ、同じ様に繰り返される。というのは正直な感懐だろうし、それが反映した本作もまた同様だろう。とは言えTVとはもう少し違う「アニメ制作の局面」が見たかったかなあって。でもコロナ蔓延に公開が丁度カチ合った本作の事を思うと、同じ様な日々でよかったんだって実感するけれど…
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2022.12.21

映画大好きポンポさん

観てみた、平尾隆之監督によるアニメーション映画。2021年公開。

映画の都で活躍する、有能な女性プロデューサー「ポンポさん」。彼女の下で働くジーンはある日突然、ポンポが執筆した脚本を映画化する監督として抜擢された。同時にヒロインとして選ばれたナタリーと共に動揺する2人だったが、周囲の人々の力もあって無事撮影完了。残るは肝心の編集作業で…という内容。

原作は杉谷庄吾【人間プラモ】の漫画。で本作では脚本も書いた平尾監督は、驚くなかれ「GOD EATER」の人。熱心に取り組むあまりスケジュールを大崩壊させた当人なら、本作のジーンに対する思い入れもひとしおだった事だろう。

要するに映画バックステージものだが、本作では特に「編集」に着目しているのは面白い。切って繋いで想いを形作ること、それを人生になぞらえるという本作の構想は無論感動的なのだけれど…上の話を踏まえてしまうと、それも感心すべきか苦笑すべきか。とは言え90分でまるっと収まる本作は実に小気味よい。
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2022.12.20

岬のマヨイガ

観てみた、川面真也監督によるアニメーション映画。2021年公開。

震災直後の東北。保護者不在のまま避難所生活を送る17歳のユイは、同じく親類を亡くした上に喋る事も出来なくなった8歳のひよりと出逢う。そんな2人をキワという老女が、岬に建つ古びた一軒家へといざなって共同生活を始める。実はその建物は昔話の中で語られる、不思議な家「マヨイガ」で…という内容。

原作は柏葉幸子の小説。でも映画化に当たり、人物設定等に変更が加えられている。…本作でも東日本大震災が大きく影を落としているが、脚本を担当しているのが「フラ・フラダンス」と同じく、吉田玲子なのは偶然ではないだろう。

大筋だけ見たらよくあるファンタジーだけど…震災という背景や舞台となる風景、加えて「遠野物語」で語られる伝承要素により、類似作のふんわり感とは違い「具体的なビジョン」として焦点を結んでいるのは大きな違い。それがつらくもあり、また美しくもあり。そしてあの時の思い出と共に、新たな想いへと紡いでゆく。
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2022.12.18

アイの歌声を聴かせて

観てみた、吉浦康裕監督によるアニメーション映画。2021年公開。

高校で孤立気味なサトミのクラスに、突如歌いだし彼女に幸せかと問う転校生がやって来た。その少女・シオンは、サトミの母親が開発し極秘実験中の人型AIだった。ところが幼馴染・トウマを始めとする生徒数名に正体が知られてしまい、サトミは母の為にシオンの秘密を、必死に守ろうとするのだが…という内容。

HMX-12 meets ラ・ラ・ランドみたいな。…吉浦監督は「イヴの時間」で注目されただけあって、AIはお得意の題材。でも陰気な(失礼)そちらと違って本作は、コメディ調のミュージカルアニメとなっている。お陰で大変楽しい作品だが、シオンの一見奇矯な行動の裏付けが語られると、不覚にもホロリと来てしまった。

そういう辺り論理ゲーム的なイヴ世界とは真逆な感じで、(歌の表現によるエモーショナルさと共に)情感に直接訴えかける作品となっている。まあその「情感」が少々オタク臭いところで、客層を絞って感じるのがちと勿体ないかもな。
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2022.12.17

泣きたい私は猫をかぶる

観てみた。佐藤順一、柴山智隆監督によるアニメ映画。2020年公開。

周囲を驚かす行動でムゲと呼ばれる中学生・美代。彼女は賢人という男子にアタックを続けるも、彼の態度はいつも素っ気ない。そんなある夏祭りの夜、美代は猫妖怪から貰ったお面で「猫」に変身する能力を得る。猫として賢人と仲良しになった彼女は大はしゃぎだが、やがて大きな問題が持ち上がり…という内容。

同年4月に劇場公開予定だった本作だが、新型コロナの感染拡大を受けて中止、Webにて配信された。しかしその後、各地の映画館でも上映の運びとなったとの事。内容は割とストレートに、ジブリ作品(猫の恩返しとか)を連想させる。

でも本作での佐藤監督や脚本の岡田麿里といった外部スタッフの起用にも関わらず、すでに「スタジオコロリド」風というものが確立されており、単なる真似と言ってしまうのは失礼だな。…まあ主人公少女の躁鬱気味なテンションがむしろ、おジャ魔女のどれみを連想させる辺り、成る程サトジュンだわと思ったけれど。
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2022.12.15

フラ・フラダンス

観てみた、水島精二総監督によるアニメーション映画。2021年公開。

亡き姉が勤めていたハワイアン・センターに、同じく「フラダンサー」として入社した夏凪日羽。だがフラダンス経験が浅い彼女は当初から苦闘、更に新人チームと共に臨んだお披露目ステージで大失敗してしまう。そんな日羽も仲間や会社の人々の励ましもあって、フラ選手権という新たな目標を見出して…という内容。

福島県に実在する施設を舞台とした映画。(総監督は多分違うと思うけれど)本作には「アイカツ!」関連のスタッフが多数参加しているお陰か、観ていて頭に常にちらついてしまった。でもそれでよかったと言うか…作品の背後に厳然と存在する「震災」の影を、これ見よがしな手つきでなく自然に緩和してくれたから。

とは言え本作がありがちな青春ストーリーと一線を画するのはそうした所だろうし、主人公の成長に沿う形でその後の同地の行く末を、温かく見守る眼差しがある。まあ自分も説教する様な立場でもないし、ひとこと「観て」と言っておこう。
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2022.12.14

漁港の肉子ちゃん

観てみた、渡辺歩監督によるアニメーション映画。2021年公開。

お人好しで辛い目にばかり遭ってきた「肉子ちゃん」と、小学生の娘「キクリン」。漁港の焼肉店に住み込みで働く2人は、似ていない母子ながら周囲の人々と仲良く暮らしていた。だが少々達観した様なキクリンにも、クラスでの人間関係に悩んだり年頃らしい問題が。そんな彼女がある日、腹痛で倒れて…という内容。

原作は西加奈子の同名小説だが、明石家さんまが映像化を熱望し企画・プロデュースを務めた事で話題になった。題名や肉子ちゃんのビジュアル、そして声を元妻である大竹しのぶが担当…と聞くと正直反応に困ってしまう様な作品だけど、これが想像以上の力作。各地の映画祭で、受賞しているだけの事はある。

主役はキクリンの方なので、実は少年少女ひと夏の冒険系(?)だった。でも次第に人情噺的な側面が語られると、成程さんまが惚れ込む訳だなと。マニアックさ…とは少々違う意味でハードルのある作品だが、これは観た方がいいね。
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2022.11.02

JUNK HEAD

観てみた、堀貴秀監督によるモデル・アニメーション映画。2021年公開。

肉体を無機物に置き換える事で、不老不死を実現した人類。だがウイルスの蔓延により滅亡の危機に。彼らはかつて人類が作り出した人工生命体・マリガンが支配する地下世界へと、調査員・バートンを派遣する。使命は生殖能力復活の手掛かりを探る事だが、彼は事故で「頭部」だけになってしまい…という内容。

CG全盛のこの時代になんと、全編ストップモーション・アニメ。しかも監督の堀自身がほとんどの作業を単独で、数年をかけて行ったという大変な力作。…本作は3部作予定の第1作で、今後も引き続いて公開が予定されているとの事。

感じとしてはドロヘドロ辺りに近い、猥雑空間での(地下だけに眼が退化している)奇妙生物との闘いを描いたSFだが…感覚的にはチェコのモデル・アニメーション作品に近いのが面白い。日本語ではなく、謎言語に字幕を付ける趣向のせいもあるかな。突飛なくせに泣かせる展開を用意してる辺り、意外や懐が深い。
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