2024.04.13

津軽のカマリ

観てみた、大西功一監督によるドキュメンタリー映画。2018年公開。

1910年の青森で誕生した「高橋竹山」。幼くして視力を失い、盲目の彼は生きる為に三味線を手にした。やがてその活動は全国的に知られる事となり、彼は津軽三味線の第一人者として評価されるまでに至った。本作はインタビューや演奏風景、彼の親族や弟子たちの証言から、竹山の生涯を追う…という内容。

ハンディキャップに加えて、貧困と差別を耐え抜く事で得られたのが竹山の芸。さらに東北の厳しい風土に、戦争や災害と言った時代の困難を超えた、彼の言葉や演奏には重みがある。…ただ初代竹山だけではなくそうした幅広い話題を(説明として以上に)扱っており、話があっちこっちするのが映画としてはちと。

演奏自体を見るのなら、初代よりも二代目竹山の方が印象的だったくらいかも。とは言え自分にも津軽三味線の魅力の、一端程度はわかった様な…個人的に三味線なら浄瑠璃がアヴァンギャルドで好きだけど、こちらもいいもんだね。
posted by ぬきやまがいせい at 23:20 | Comment(0) | TrackBack(0) | 映画

2024.04.11

ディンゴ

観てみた。C・フリールズ主演、ロルフ・デ・ヘール監督映画。1991年公開。

1969年。豪州の田舎町に飛行機が緊急着陸した。機内から現れたのはビリー・クロスというジャズ演奏家で、その場に居合わせた少年は演奏に魅せられトランペッターを目指す事に。そして青年となった「ディンゴ」は荒野で野犬と格闘する生活の中、彼もクロスとステージで共演する夢を見るのだが…という内容。

ジャズの帝王ことMiles Davisが、唯一本格的に演技をした劇映画。逝去は公開と同年だが演奏シーンは勿論、案外しっかり演じている。眠りに就いたまま彼の出番が終わるのが、死を暗示している様でしんみりしてしまうが…本作は割とベタなシンデレラストーリー。帝王と共演できるなんて、夢みたいすぎるだろ。

まあマイルスの出番はそう多い訳ではないので、満足度は人それぞれだと思うけれど…本作は彼の自伝的な内容だとの事で、そういう意味でも悪くはないんじゃないかな。帝王が主人公に向ける眼差しが、優し気だったのにも頷けた。
posted by ぬきやまがいせい at 17:08 | Comment(0) | TrackBack(0) | 映画

2024.04.08

ザ・バンド / かつて僕らは兄弟だった

観てみた、ダニエル・ロアー監督によるドキュメンタリー映画。2019年公開。

カナダ出身のメンバーを中心としたグループが、Bob Dylanのバックで演奏する様になり名乗った名前が「The Band」。その後独立し画期的な作品を発表したものの音楽性の違いから解散する事となり、最後のコンサートを撮影した映画が「ラスト・ワルツ」。本作はそこに至る、彼らの歴史を振り返る…という内容。

親分のディランやラスト・ワルツを監督したスコセッシも、ちゃんと顔を見せてくれているのが嬉しい。…本作はRobbie Robertson(g)の回想録を元に、製作されたもの。実はThe Bandは度々再結成をしているのだが、Robertsonが参加していないので、本作の様に「映画」が終着点として描かれているのだろう。

ラスト・ワルツは以前観たけれど、本作で経緯を知った上だと同じ映像でもより感動…いや感傷的な気分になった。その感傷は恐らく、Robertson自身が感じていたものだったのではないかと。そして彼もまたこの世を去った…切ない。
posted by ぬきやまがいせい at 23:03 | Comment(0) | TrackBack(0) | 映画

2024.04.05

バカ共相手のボランティアさ

観てみた、瀬下黄太監督によるドキュメンタリー映画。2024年公開。

1981年に福岡で結成されたパンクバンド、「The Swanky’s」。一時「Gai」の名前でハードコア化していたものの、オリジナルパンク・ロック的演奏に回帰し、九州や日本国内に留まらず世界中に愛好者を生み出した。本作では中心メンバー4人による証言や、貴重なライブ映像から彼らの歴史を追う…という内容。

まあ驚きの映画と言っておいていいのでしょうな。活動は80年代の上に九州中心、しかも音源が入手困難なのに加え高い海外人気という謎めいた状況から、実際伝説化していたので。…逆に言うとその謎めいた存在感を抜きにしたら、ごく平凡な歩みをした一ローカルバンドだったのだなと(悪口ではないです)。

その伝説を形に残す意味で、大変価値があるのも確か。エピソードの数々は楽しいし、同郷のバンドに対する印象が聞けたのもよかった。個人的にはGaiの方が好きなので、ゲストの芸人連中にはあまり共感できなかったかもね?
posted by ぬきやまがいせい at 02:31 | Comment(0) | TrackBack(0) | 映画

2024.04.03

約束の地、メンフィス / テイク・ミー・トゥー・ザ・リバー

観てみた、マーティン・ショア監督によるドキュメンタリー映画。2014年公開。

ソウル・ミュージック発祥の地として、世界中の音楽家達から尊敬の念を集めて来たテネシー州「メンフィス」。本作では現地で活動して来た伝説的なベテランと、若い世代のミュージシャンによるレコーディング・セッションを通して、メンフィスという街が辿った音楽の歴史と、託された未来への希望を描く…という内容。

多分関係はないだろうけど、先日紹介した「アイ・アム・ザ・ブルース」とは姉妹編みたいな印象。ソウルとブルースとの違いはあっても、黒人発祥の音楽だけあって近い歴史を持ち…更に全盛期世代は次々にこの世を去っていっている辺り、似てしまう。ただそちらと比較すると本作は、そこまで悲壮感は感じない。

何が違うのかと言うと、新世代のミュージシャンがセッションで旧世代をリスペクトし、実際の音楽として新たに生み落とされる現場を見せてくれるからだろうな。…苦難の歴史と将来への不安だけが、米黒人音楽の先行きではないよね。
posted by ぬきやまがいせい at 22:43 | Comment(0) | TrackBack(0) | 映画

2024.03.31

ジャズ・ロフト

観てみた、サラ・フィシュコ監督によるドキュメンタリー映画。2015年公開。

1950年代。マンハッタンの老朽化したビルを利用して、ジャズミュージシャンが気ままに演奏を行う「ロフト」が作られた。その中心となったのは写真家、ユージン・スミス。本作は彼が撮影した膨大な写真と録音されたテープ、そして実際に参加した演奏家や関係者の証言により、当時の熱気を振り返る…という内容。

スミス本人に関しては水俣病の実情を全世界に伝え、ジョニー・デップ主演で映画化もされた人、と言うのが一番通りがよさそう。個人的には自身の子供を撮影した代表作「楽園への道」の印象が強く、あぁあの写真の!となった。なので本作は単純な音楽ドキュメンタリーとはかなり違っていると、言っていいだろう。

有名なミュージシャンも参加しており、大変に貴重な記録のはずだが…それらも皆スミスの閉じられた内面世界を形作るもの、という印象があって息苦しい。ゆえにやはり「楽園への道」を残してくれた事は、見る側にも救いになるなあ。
posted by ぬきやまがいせい at 22:46 | Comment(0) | TrackBack(0) | 映画

2024.03.30

デソレーション・センター

観てみた、S・スウェジー監督によるドキュメンタリー映画。2019年公開。

1980年代のLAではパンクロックの人気に比例して、警察からの暴力的な圧力も高まっていた。そこで彼らは有志を募って、広大な砂漠地帯で無許可のロックライブイベントを開催した。「デソレーション・センター」と名付けられたその催しは、特別な音楽空間を現出させカルト的な人気を集めるのだが…という内容。

そのイベントに出演したのが地元のMinutemenを始め、Sonic Youthや西独のEinstürzende Neubauten。更に破壊的なマシンバトルを繰り広げる、SRLも参加したというのだから面白い。知られざる米国ロック史の一面だな。

期待した程には演奏風景の映像が見られた訳ではないものの、貴重でユニークなドキュメンタリーではあると思う。個人的にビックリしたのは…まあノイバウテンのBlixa Bargeldの、現在の姿かなあ。正直誰?、と思ってしまう変貌ぶりだったけど(なんかワインの飲みすぎで太ったと、Wikipediaには書いてある)。
posted by ぬきやまがいせい at 23:12 | Comment(0) | TrackBack(0) | 映画

2024.02.29

サタンタンゴ

観てみた、タル・ベーラ監督映画。1994年公開。

ハンガリーの片田舎にある村。ある男は村人達で積み立てた共同貯金を持ち逃げする算段を女房に話し、村唯一の医者は深酒がたたって倒れる。そして村の中で猫を相手に孤独に過ごす少女が、突然命を落とす。そんな最中1年半前に死んだと思われた、イリミアーシュという男が帰って来るのだが…という内容。

438分、7時間以上という長さで有名な本作。何でそんなにも長いのかと言うと、1カットや1シーンが無闇に長いせいで、特段語るべきストーリーあるから長いという訳ではない。長くする為に長くしてるだけだろ、という作品だが…代わりに本作は「動く写真展」とでも言うべき、モノクロ・静止画的な映像美に満ちている。

人物が地平線・消失点に歩み去る姿、ゆったりした移動の後に静止する人々の姿。動く絵画と言われる映画(パラジャーノフとか)とも違い、本作の遅々として何事も進まない様は、紛れもなく異様なのだが…不思議にどこか美しい。
posted by ぬきやまがいせい at 21:27 | Comment(0) | TrackBack(0) | 映画

2024.02.28

ウェンディ&ルーシー

観てみた。M・ウィリアムズ主演、K・ライカート監督映画。2008年公開。

乏しい所持金と愛犬・ルーシーを伴い、ウェンディはアラスカで仕事を得る為、自動車での旅を続けていた。しかし愛車は故障してしまい、ルーシーの餌を万引きした廉で彼女は警察に拘留されてしまう。その隙にルーシーは姿を消してしまい、ウェンディは愛犬の行方を捜すべく八方手を尽くしたのだが…という内容。

何だかイタリアのネオレアリズモ映画みたいと言うか、ビットリオ・デ・シーカ作品を米インディペンデント風にアレンジしたみたいと言うか。…別に貧困問題を声高に叫ぶような作品でもないし、むしろ小市民的な社会困難(動物に対する情愛も)を「無関心に描いている」という印象は、本作独特の肌合いがあるかも。

ネオレアリズモと言えば、個人的にはなんとなく「母をたずねて三千里」を連想したのだけれど…あっちこっち引き回されて、右往左往させられるせいかな。でも三千里のアメデオは原作にいないオリキャラなのに、すごく有能なんだよ。
posted by ぬきやまがいせい at 22:37 | Comment(0) | TrackBack(0) | 映画

2024.02.26

レネットとミラベル / 四つの冒険

観てみた。エリック・ロメール脚本、監督映画。1987年公開。

田舎道で自転車がパンクしたところを、レネットに救われたミラベル。対照的な2人だが直ぐに意気投合して、パリでの共同生活を始める。だがお互いの価値観の違いから、言い争いにもなって…という本作は「青い時間」「カフェのボーイ」「物乞い 窃盗常習犯 女詐欺師」「絵の売買」、4部構成での内容となっている。

本作は16oでの撮影との事で、かなりラフな映像と共に「小品」という印象のある映画。まあロメール作品で大作と感じた事はこれまで1度もないので、元々小品スケールの作家ではある訳だが。…とは言え毎度の通り2人の人物の対話を軸にしているものの、本作では特に「対立軸」が意識されている様にも感じる。

主人公2人の「田舎と都会」の対立はまだ判るとして、万引き女性を巡るミラベルの考え方は無理筋と言うか…これがフランス流なのか、コメディとして笑っておくところなのか。でも一種の脱力系「話芸」として、完成の域にあるよなあ。
posted by ぬきやまがいせい at 23:08 | Comment(0) | TrackBack(0) | 映画

2024.02.25

さらば、愛の言葉よ

観てみた、ジャン=リュック・ゴダール監督映画。2014年公開。

ある既婚女性とある独身男性が出逢う。2人は激しく愛し合い、1匹の犬は辺りを彷徨い歩く。だが愛情はいつしか不和を生み、移ろいゆく両者の関係は遂に破局を迎える。そして時は過ぎて、彼らは再び巡り合うのだが…という内容。

カンヌ映画祭で審査員賞を獲得した本作。当時84歳のゴダール監督にとって、初めて3D撮影を用いた映画だとの事。ただ演出面では、断片的なカットのコラージュや書物からの引用による朗読台詞、思わせぶりな字幕挿入等々と…実は「ジガ・ヴェルトフ集団」時代とやっている事が、ほぼ同じ。ただ本作の場合語っているのが政治的な主張ではなく、男女関係に関するものという違いはある。

難解そのものだけれど、自分は(上記の通り)それなりに「見方」自体は心得ていたつもりだったのに。まあジガ・ヴェルトフと較べると、今一つユーモアを感じない点は物足りないかな。寸止めスラブ行進曲は笑うべきだったのかも…
posted by ぬきやまがいせい at 23:42 | Comment(0) | TrackBack(0) | 映画

2024.02.23

セイント・フランシス

観てみた、アレックス・トンプソン監督映画。2019年公開。

34歳の独身女性・ブリジットはレストラン給仕の仕事を辞め、近く出産を迎える女性の同性カップルの娘、6歳の少女・フランシスのベビーシッターを引き受ける。生意気な所もあるフランシスとの生活は、山もあり谷もあり。しかもブリジットはパートナーとの間に子を授かったものの、中絶を選んだ事で…という内容。

ブリジット役を演じたケリー・オサリヴァンは、本作では脚本の方も担当している。そのお陰(?)か、実に濃密なジェンダー臭。臭どころか、女性の人生的な岐路を描いたという以上に、経血やら堕胎やら(おそらくは女性性を象徴する)「血」の描写が頻発しており、一介の男性である自分には苦手な事この上ない。

タイトルにもなっているから少女との交流がメインかと思えば、そうとも言い切れない感じが何とも。素朴な感動がありそうな、期待感だけはあったのだけれど…まあ現代ではこれくらいのLGBTQ要素があって、ようやく「素朴」なのかも。
posted by ぬきやまがいせい at 23:18 | Comment(0) | TrackBack(0) | 映画

2024.02.22

ロングデイズ・ジャーニー / この夜の涯てへ

観てみた。ホアン・ジエ主演、ビー・ガン脚本、監督映画。2018年公開。

12年振りに故郷の凱里に戻った、ルオ・ホンウ。彼は過去に出逢った、ワン・チーウェンという女性の記憶に囚われていた。父親の遺品から出て来た彼女の写真を頼りに、旁海という町を訪ねる事に。そこでは彼女にそっくりなカイチェンがおり、やがて現実と幻想が混然となった異空間へと踏み入って…という内容。

後半の60分は2Dから3Dへと切り替わり、そこから1シーン1カットの連続した長廻し映像となる事で話題となった作品。…ただ長いというだけではなく、空間を上下移動も駆使して立体的に浮遊する幻惑感ある本作の映像は、(何だかピタゴラスイッチを連想させるからか)ストーリーの方が頭から抜け落ちてしまった。

まあストーリーを追う事中心な作品でないのも確かだから、主人公の視点に同一化しながら本作に没入するのがよいのではなかろうか。…個人的に連想したのはギャスパー・ノエの作品だけれど、ああいうバッドトリップ感もないしね。
posted by ぬきやまがいせい at 23:41 | Comment(0) | TrackBack(0) | 映画

2024.02.20

エル プラネタ

観てみた。アマリア・ウルマン主演、脚本、監督映画。2021年公開。

ロンドンでの留学生活を終えたレオは、スペインのヒホンという町でスタイリストとして働いていた。一方彼女の母親は金策もままならぬ状態に陥り、アパートからは立ち退き勧告が出ていた。そんな苦境に見舞われても、ハイソサエティな生活を目指す母娘。そんなある日レオが雑貨店で出逢ったのが…という内容。

本作が初監督となるウルマンはアルゼンチン出身で、インスタレーションやメディア作品の発表を行うアーティスト。その彼女が実の母親であるアレと共演した本作は、アート…とも言い切れないけれど、ミニシアター系のコメディ?映画。

白黒映像で取り留めのない会話風景を切り取った内容は、初期のジャームッシュに喩えられると成程そんな感じ。でも本作には何故かスコセッシが(ニュース映像で)登場する。アート作品の方を知らないので、本作との共通点は判らないけれど…肩ひじ張らない自由な感覚は、現代のアートシーン的、なのかも。
posted by ぬきやまがいせい at 21:50 | Comment(0) | TrackBack(0) | 映画

2024.02.19

コロンバス

観てみた。コゴナダ脚本、監督映画。2017年公開。

モダニズム建築の名品が各所に点在する、インディアナ州の街「コロンバス」。講演でその地を訪れた建築学者の父親が倒れた為に、息子のジン・リーはコロンバスに留まる事に。そこで彼は図書館員の女性・ケイシーと出逢った。2人は同地の建築を巡ると共に、互いに問題を抱えた内面に触れ合って…という内容。

「コゴナダ」というのは耳馴染みのない響きだが、これはペンネーム。韓国出身でアメリカの監督である彼が、日本映画に敬意を捧げたものだとの事。特に小津安二郎から多大な影響を受けた様で…本作でも多くの場面を占める、2者の対話シーンにおける映像からは、成る程そうした息遣いが伝わって来る様だ。

とは言え個人的には本作で前景的/背景的に映される、モダニズム建築の数々に眼を惹かれる。むしろドラマは、そうした建築を「主役」として映像に捉える為のものだろうし…物言わぬ建築物が、そこに存在するだけで既に「映画」だ。
posted by ぬきやまがいせい at 23:08 | Comment(0) | TrackBack(0) | 映画

2024.02.17

リバー・オブ・グラス

観てみた。ケリー・ライカート脚本、監督映画。1994年公開。

フロリダ州を流れる「草の川」近くで暮らす、30代の主婦・コージー。家族との繋がりの意識が薄いまま漠然と日々を送る彼女は、ある日リーという男の車に轢かれそうになる。リーは警官が紛失した拳銃を所持しており、コージーはその拳銃をプールサイドで発射。てっきり誰かを射殺したと思い込み…という内容。

ライカートは米インディペンデント映画における、女性監督として世界的に有名。本作は彼女の初監督作だが、自主映画世界でも女性監督の活動は難しく、その後10年ほど長編を作れなかったらしい。本作もコージーの独白に女性監督らしい感性があるけど、印象としてはデビッド・リンチ作品を思わせる雰囲気。

米田舎の天然狂気みたいな辺りが共通するのかなと思うけれど、流石にリンチ程はイカレてはいない。何にも起きなさそうで、ボニー&クライドな展開(ワイルド・アット・ハートと言うべきだが)だったりするし、充分まともな感性だよなと。
posted by ぬきやまがいせい at 23:01 | Comment(0) | TrackBack(0) | 映画

2024.02.16

瞳をとじて

観てみた。マノロ・ソロ主演、ビクトル・エリセ監督映画。2023年公開。

元映画監督のミゲル・ガライは22年前、彼の映画の撮影中に失踪した俳優、フリオのドキュメンタリー番組に出演する事に。ミゲルは警察から自殺と判定された彼の足取りを、娘のアナや当時の関係者と共に追っていく。だが結局フリオの生死は掴めぬまま、海辺での変わりない生活に戻ったのだが…という内容。

「映画の奇跡」を描いた映画であり、「奇跡の映画」でもある本作。エリセ監督としては31年ぶりの長編、というだけで奇跡としか言い様がないのに加え…本作の映画としての佇まい、そして同監督が「映画」に向けた眼差しに感動する。

アナ・トレントの再起用やフィルムへの郷愁、劇中劇や映画館/観客席との多重構造等、本作が映画である事は端々で意識させられる。特に時間芸術である映画にとって、本作における31年という「時間」は(俳優の変貌にとどまらず)大きな変転だろう。ないと言われても、そこに暖かな「奇跡」を見てもいいじゃない。
posted by ぬきやまがいせい at 23:49 | Comment(0) | TrackBack(0) | 映画

2024.02.14

エルミタージュ幻想

観てみた、アレクサンドル・ソクーロフ監督映画。2002年公開。

ロシアのサンクトペテルブルクに建つ、広壮な美術館「エルミタージュ」。現代の男性がなぜか時間を飛び越え、エルミタージュの歴史的現場や美術品に遭遇する。彼と歩みを共にするのは仏の外交官、キュスティーヌで…という内容。

本作はHDカメラを用いる事で99分の本編を何と、1シーン1カット中断される事なく(バードマンや1917等のなんちゃってとは違い)全編連続して撮影された。それだけで驚嘆する様な作品だが…エルミタージュ内部や群舞シーン、ロシア史上の情景を再現した映像の豪華さは呆れる程。全く以て圧倒されてしまう。

カメラは主人公の視線と一致させた一人称表現、加えてストーリーらしいストーリーが無い。要するに本作は映画というより「バーチャル映像体験」に近いので、そういう辺りで賛否はあるだろう。ただロシア史や美術の知識があるとまた違う様だし…逆に言うならば、それらが無くても楽しめる作りなんじゃないかな。
posted by ぬきやまがいせい at 23:16 | Comment(0) | TrackBack(0) | 映画

2024.02.13

アンダーグラウンド

観てみた、エミール・クストリッツァ監督映画。1995年公開。

第二次大戦下のユーゴスラビアで、抗独戦レジスタンスの英雄となったマルコ。彼は戦後チトー大統領の側近となる一方、友人のクロをまだ戦争が続いていると騙して、地下世界で武器の密造をさせて売買していた。だがクロの息子・ヨヴァンの結婚式の騒動の中、彼らは外の世界へ出る事になって…という内容。

「ユーゴスラビア」解体に伴い、同国出身のクストリッツァがその歴史を俯瞰した大作。ある国の近現代史をカリカチュアするアンゲロプロス的着想を、フェリーニ的な狂騒で演出したという感のある作品だけれど…今回観た通常版が170分、本来はTVドラマのミニシリーズなので、320分あるというのだから長すぎる。

とは言えハチャメチャだが構想に見合う映像的スケールもあって、見応えあるのも確か。特にソ連解体に伴うユーゴ内戦辺りの、黙示録的展開には(ニュース越しだけど一応当時を知っているし)圧倒された。成る程これは大変な作品。
posted by ぬきやまがいせい at 23:53 | Comment(0) | TrackBack(0) | 映画

2024.02.11

クラム

観てみた、T・ツワイゴフ監督によるドキュメンタリー映画。1994年公開。

「ロバート・クラム」は1943年、フィラデルフィアで誕生したアメリカのコミック・アーティスト。人物をコミカルにデフォルメした画風で世界的に有名なクラム、そして彼の家族を、友人である同監督が密着取材したのが本作…という内容。

Janis Joplinのアルバム「Cheap Thrills」のジャケット画を描いた人。クラムは画風のユーモラスさに反し、複雑な人物像なのが徐々に明らかになる。本人どころか彼の家族、皆が闇を抱えていて戦慄してしまう。本作を一種のカルト作品にしているのはそういう辺り…加えて一種のアールブリュット映画でもある。

彼の兄弟もまた絵を描いているんだけど、天然ものの狂気がどんどん溢れてくるのが本作の見所。クラムは間違いなく成功者だろうけれど、紙一重のギリギリなのが判ってしまう。…本作ではプロデューサーにデヴィッド・リンチが名を連ねており、(単なる名義貸しという話を聞いた上でも)妙に納得してしまうという。
posted by ぬきやまがいせい at 23:50 | Comment(0) | TrackBack(0) | 映画