2023.01.31

「オリジナルTVサウンドトラック / 宇宙船XL-5」バリー・グレイ

zaP2_G6436724W.jpg

聴いてみた、イギリスのTV人形劇のサントラ・アルバム。2020年発表。

「Fireball XL5」は1962年、「サンダーバード」等で知られるジェリー・アンダーソンにより制作されたSF人形劇。翌年には日本でも放映されたものの、途中から谷啓のナレーションを加え「谷啓の宇宙冒険」と改題された。…その後は幻の作品となっていたが、近年CS放送等で日本語字幕版が見られる様になった。

本作は元々、ファンクラブ用だったものを一般販売したサントラ。同作の音楽担当は勿論、アンダーソン作品には欠かせないBarry Gray。印象の強いホーン類のほか、電子楽器オンド・マルトノ等も加えて宇宙感覚を醸し出している。

筆者も近年のCS放送で、同作を初めて見たんだけど…正直これまで見たどのアンダーソン作品よりも好きになった。割と定番的なスぺオペ的題材ながら、サンダーバードの救助・キャプスカの侵略・UFOの迎撃・1999の惑星探訪という要素が早くも描かれていて驚愕。折角見られる様になったのだから、是非に。
posted by ぬきやまがいせい at 20:17 | Comment(0) | TrackBack(0) | 音楽

2023.01.29

「The very best of hero」THE SWANKY'S

1008471694.jpg

聴いてみた、日本のハードコア・パンクバンド。1985年発表。

「ザ・スワンキーズ」は1981年、九州福岡の博多で結成。一時期「Gai」とバンド名を改めて活動を行っていたのだが、名義を元に戻して制作したのが本作である1stアルバム。その際のラインナップはBeer(dr)、Loods(g)、TV(b)、Watch(vo)の4名だが、Gaiの時から(なぜか)メンバー名まで変わっている。

Dogma Recordsより発売された本作は、国内より海外で高く評価された。だが長年再発されず、2022年に漸くKing's World Recordsより、CDとして正規リリースされた。…筆者もずっと聴きたかっただけに、待っといてよかった。

内容はシャーシャーいうギターが暴れ狂うノイズコア。同郷のConfuseにも匹敵するノイズを背後に、ポップとも言える初期パンク的なメロディーを、酔っぱらったかの様なボーカルが歌っている。ジャケでパロディしたからか、PistolsにThanksが捧げられているけれど、当バンドのその後の音楽性を考えるとそれも納得。
posted by ぬきやまがいせい at 21:20 | Comment(0) | TrackBack(0) | 音楽

2023.01.28

「(same)」QUIET RIOT

71tzuvwC9vL._AC_SL1000_.jpg

聴いてみた、アメリカのハードロック/ヘヴィメタル・バンド。1978年発表。

「クワイェット・ライェット」は1978年、Kevin Dubrow(vo)、Randy Rhoads(g)、Kelly Garni(b)、Drew Forsyth(dr)というラインナップで、1stアルバムを発表。CBSソニーから日本盤のみのリリースで、「静かなる暴動」という邦題が付けられた。なお本作は2ndと共に、本国アメリカでは未発売との事。

以前も書いた通り、リリースより40年以上もの間CD化されていなかった本作。2022年、ギリシアのNo Remorse Recordsより遂に再発された。まあ自分は一応レコードも持ってるけど(いや帯無しなのでそこまで高くはなかった)…シングルからの音源をボーナスとして3曲加えており、これは買っておかないと。

マスターテープの劣化により、レコードの盤起こしとの事だが、音質は上々。ただ肝心の内容は…すごくアマチュア臭いので、Rhoadsに興味がある人以外には薦められない。逆に言うと筆者は、長年の希望がようやく叶ったので満足。

more reading
posted by ぬきやまがいせい at 21:26 | Comment(0) | TrackBack(0) | 音楽

2023.01.26

「フラッツに捧ぐ」セミラミス

51CC55oDrmL._AC_SX466_.jpg

聴いてみた、イタリアのプログレッシヴ・ロックバンド。1973年発表。

「Semiramis」は1970年、当時15歳のMaurizio Zarrillo(key)とMarcello Reddavide(b)らにより結成。その後Michele Zarrillo(g,vo)、Paolo Faenza(dr)、Giampiero Artegiani(g,syn)を加え、1stである本作をリリースした。バンド自体はアルバム1枚に終わったものの、傑作として評価されている。

内容としては、伊プログレによくある「あんな感じ」を想像したらいい。なので正直「またこんな感じか」…と思ってしまったのだが。でもリリースされた1973年は同国でまさに「こんな感じ」の音楽が最盛期だった頃なので、平均年齢17歳(!)という当バンドが、シーンの最先端にいたというのは、驚異としか言えん。

高校生バンドなんて、スモーク・オン・ザ・ウォーターとかふわふわ時間(青春コンプレックスでもよいが)を学園祭で演奏してる頃じゃん! とは言え個人的には、ちょっとばかりパンチに欠けるかなとも思ったけど…やはりすごい作品。
posted by ぬきやまがいせい at 20:09 | Comment(0) | TrackBack(0) | 音楽

2023.01.25

「オーヴァーローディング」アナクドタ

1200x1200bf-60.jpg

聴いてみた、イスラエルのプログレッシヴ・ロックバンド。2016年発表。

「Anakdota」は2013年にテルアビブの郊外で、Erez Aviram(p,key)、Guy Bernfeld(b)、Yogev Gabay(dr)により結成。当初はYoutubeでの公開を目的としたものだったが、後にRay Livnat(vo)、Ayala Fossfeld(vo)を加えて、2016年に現在のところ唯一作である当1stアルバムをリリースした。

本作の内容は、Gentle GiantやNational Health等が譬えとして挙がるのから判る通り、テクニカルなジャズロック。加えて10tやカンタベリー的な親しみやすいメロディが魅力的だけれど…イスラエルのバンドは(以前紹介したのも含めて)、「その土地ならでは」という音楽性が無いのは共通している様に思う。

ただAnakdotaに関しては、どれもイギリスのグループが例に挙がる辺り興味深い。イスラエル建国の際、同地を統治していた英国を相手に戦った訳だが…彼らが立ち去る際、音楽に関しての「感性」を残していったのかもしれない。
posted by ぬきやまがいせい at 20:05 | Comment(0) | TrackBack(0) | 音楽

2023.01.23

「Edition zeitgenössische musik」PETER MICHAEL HAMEL

71GlvVSPoBL._SY355_.jpg

聴いてみた、ドイツの現代音楽作曲家。1993年発表。

「ペーター・ミヒャエル・ハーメル」は1947年、ミュンヘンで誕生。保守派と前衛派という両極端な2人の恩師から音楽教育を受けた後、1970年には「Between」というクラウト・ロックバンドを結成した。その際ニューエイジと呼ばれる音楽への志向を見せた後、西洋とそれ以外の音楽を綜合する方面へと進んでいく。

本作は1970年代から1980年代にかけての作品を収録したもので、基本的にはバイオリンや管弦を中心とした西洋音楽的な編成ながら、東洋や中近東の非西洋的な音像を採り入れている。まあ現代音楽における周辺世界への志向はこれまでにも触れた通りだが、「クラウト・ロック」の文脈とも併せると成程なって。

Betweenでの活動が、Popol Vuhとも比較されたりしているのも面白い。(クラウト・ロックも幅があるけど)本作を聴くとドイツの現代音楽は、Stockhausen周辺やケルンスタジオやらの、電子音楽関連だけじゃないんだって判るな。
posted by ぬきやまがいせい at 22:08 | Comment(0) | TrackBack(0) | 音楽

2023.01.22

「Le grand macabre」GYÖRGY LIGETI

R-3366194-1345050987-3779.jpg

聴いてみた、オーストリアの現代音楽作曲家。1991年発表。

「ジェルジュ・リゲティ」は1923年にルーマニアで、ユダヤ系ハンガリー人の家庭に生まれる。第二次大戦中はナチスにより強制収容所に送られ、戦後は音楽を学んだブダペストから動乱を逃れて、ウィーンへと亡命する。その後は同地やケルンで現代音楽に触れ、その分野での第一人者として活躍した。2006年没。

キューブリックの映画に(無断で?)使用された事が有名な作曲家。自分も伊藤計劃がネタにしたみたいに、前衛的な声楽曲のイメージだったけど…本作は彼が遺した唯一のオペラ。現代曲のオペラとしてはポピュラーな作品との事。

「大いなる死」を予言する死神が現れ、生と死の均衡が崩れ混乱する…といったシュールな内容で、聴いた印象では結構難解。でも単に独語で歌われているせいか、本作でも聴衆が端々で笑い声を上げており、難しいばかりではなさそう。…自分も粗筋を読んだ上なら、判ったような気になって聴けたのでお薦め。
posted by ぬきやまがいせい at 20:54 | Comment(0) | TrackBack(0) | 音楽

2023.01.20

「Works by Lou Harrison」KEITH JARRETT

mqdefault.jpg

聴いてみた、アメリカの現代音楽作曲家。1988年発表。

「ルー・ハリスン」は1917年、オレゴン州ポートランドで誕生。サンフランシスコ州立大学で音楽を学んだ後、John Cageを始めとする多くの音楽家達と交流を持つ。同性愛者である彼は私生活で苦労する一方、音律の追求や非西洋音楽・民族音楽を積極的に採り入れる事で、作風を確立していく。2003年逝去。

本作でピアノを演奏しているのは、勿論ジャズ方面で有名な「キース・ジャレット」。加えて「Piano Concerto」では大友直人が、新日本フィルを指揮している。この手のにしては相当聴きやすいと思うけど…どうかな。躍動的なピアノ演奏が楽しいのに、ビックリする程の不協和音まみれ。でも難解さはあまりないかと。

バリ島のガムランに影響を受けたと言われると成る程、プリミティブなリズムと併せて非西洋音楽的な響きがユニークだ。Jarretに関しては個人的に、電化Miles Davisくらいしか知らなかったけれど…現代音楽でも、すごくいいい感じ。
posted by ぬきやまがいせい at 20:55 | Comment(0) | TrackBack(0) | 音楽

2023.01.19

「In our name」ANNEA LOCKWOOD

NW80729CD_PROD.jpg

聴いてみた、アメリカの現代音楽作曲家。2012年発表。

「アニア・ロックウッド」は1939年に、ニュージーランドで誕生。同地の他にヨーロッパ各国の大学で音楽を学んだ後に、作品発表を始める。70年代のピアノを燃やすといったパフォーマンス・アート的な作品を経て、ニューヨークに転居した後に「環境音」を採り入れる手法を見い出す。現在も活動中の女性音楽家。

本作は2000年代の楽曲を、3曲収録した内容だが…音楽かそうでないかの境界を攻めるかの様で、相当に実験的。アンビエントノイズみたいだったり、環境音を背景に喋ってるだけだったり。慣れない人には訳わからんよなあ、これ。

とは言え「環境音」というテーマを踏まえた上だと、まるで(ジャケットの水紋の如く)水辺の環境自体をコンポジションしているかの様な音で、構成しているのが判って興味深い。ミュジーク・コンクレートともフィールドレコーディングとも少々違った、これはこれで豊かな自然を再現した「音楽」という気がする。…かも?
posted by ぬきやまがいせい at 21:51 | Comment(0) | TrackBack(0) | 音楽

2023.01.17

「Aura, Marea, Related rocks」MAGNUS LINDBERG

ダウンロード (1).jpg

聴いてみた、フィンランドの現代音楽作曲家。2021年発表。

1958年、ヘルシンキで誕生した「マグヌス・リンドベルイ」。シベリウス音楽院で学んだ際、恩師より前衛音楽の制作を薦められた事から、グループ「Korvat auki!(=耳を開け!)」を結成した。その後も精力的に、活動を行っている。

本作は90年代に作られた楽曲をHannu Lintuの指揮で、2019年から2020年にかけて3曲収録したもの。特に「Marea」は、「サントリーホール国際作曲委嘱シリーズ」として制作された(初演も同ホール)。Lindberg自身も2004年度「武満徹作曲賞」に審査員として参加している辺り、日本とは関り深い様だ。

内容としては管弦主体の「現代音楽」だが、過度に難解ではなく(それでも慣れない人にはつらいか)、いわゆるクラシック系。でも打楽器や電子楽器を採り入れているので、Varèse等を思い浮かべたらいいかも。…ピアノ2台に打楽器2台、それに電子楽器を加えた「Related Rocks」がパーカッシヴでかっこいい。
posted by ぬきやまがいせい at 20:48 | Comment(0) | TrackBack(0) | 音楽

2022.08.28

「夜想音像版別冊2 / 上海星屑(しゃんはいすたーだすと)」ペヨトル工房刊

f8c6e32c16.jpg

聴いてみた、日本の出版社による雑誌別冊/カセットブック。1983年発表。

雑誌「夜想」、音像版別冊の第2弾である本書。ブックレットの趣旨としては、既に日本とは頻繁に行き来のあった戦前「上海」に関して特集したもの。丸尾末広のイラストや、当時を振り返ったエッセイ等が収録されている…という内容。

でカセットの方は上海のホテルで活動していた、2つのジャズバンドの音源を収録している。40年代ジャズをそのまま凍結保存した様な演奏は冊子によると、文革を経てもなぜか奇跡の様に命脈を保っていたとの事。演奏・存在そのものが持つノスタルジーの魅力から、本書刊行に至ったのではないかと想像する。

でも奇跡というのはそう長続きするものではなく、本書刊行の前には社会情勢の変化からバンドは活動終了を余儀なくされた様だ。内容的には「虹の彼方に」を始めとするスタンドナンバーを収録したものだが、ホテルでの録音がガレージパンクみたいに荒れた音質(この例え合ってるかなあ?)で雰囲気出ている。
posted by ぬきやまがいせい at 22:54 | Comment(0) | TrackBack(0) | 音楽

2022.08.24

「リッチー・ブラックモア・アンソロジーVOL.1」リッチー・ブラックモア

41N5BZBP44L._AC_.jpg

聴いてみた、英国人ギタリストのアンソロジー・アルバム。1995年発表。

「Ritchie Blackmore」は1945年にサマセット州で誕生し、ミドルセックス州ヘストンで育つ。11歳時にギターを手にしてより、様々なグループに所属した。1967年にはDeep Purpleを結成、ハードロック・ギタリストとして世界的存在となる。その後もRainbowやNightといった、自身のバンドで演奏を行っている。

本作はその「様々なグループ」で残した、貴重な録音を集大成したシリーズ。恐らく日本盤のみのリリースで、リッチーの日本での人気の高さが窺える。Glenda Collins、Heinz、The Outlawsといったバンドでの音源が中心だが…パープルやレインボーのライブも入っている辺り、親切仕様と言うべきだろうか。

というのもやっぱりパープル以前はジャンル傾向がだいぶ違うので、HRを期待したら面食らってしまうかも。…筆者は逆にそうした時代にやっていたのが、「ガレージパンク」だと聞いて興味を持ったからいいんだけど。Heinzなんかは成る程尖った演奏で結構イケる。ただ曲自体としては今一つなのは致し方ないか。

more reading
posted by ぬきやまがいせい at 22:10 | Comment(0) | TrackBack(0) | 音楽

2022.08.17

「X - X section」V.A.

ダウンロード.jpg

聴いてみた、オーストラリアの音楽レーベルのオムニバス。1991年発表。

「Extreme」レーベルは1985年、Ülex Xaneにより設立。当初は地元豪州のミュージシャンをカセットでリリースしていたものの、1987年にはRoger Richardsにレーベルは譲渡された。その後もエレクトロ系中心に、アンビエントやノイズのアーティストを、国際的に広く登用した。2000年代まで活動していた模様。

まあ今聴いてる人もあまりいなさそうだけれど…筆者は長年積んでたユリイカの、1993年4月「ロック」号を最近読んだもんで。その特集で同レーベルに関する記事があって、久し振りに思い出していた(当時でも同レーベルに着目してるのはすごい)。で本作は、同レーベル関連アーティストを集めたオムニバス盤。

内容は大まかにエレクトロ系だが、Shinjuku ThiefやMuslimgauzeがエスニック要素を採り入れており、その印象が強かった。まあこのアルバム自体は散漫で、正直そこまでお薦め出来ないけど…日本から参加のMerzbowを始めとして、名前を挙げたアーティストの作品は、聴いておいていいんじゃないかな。
posted by ぬきやまがいせい at 21:54 | Comment(0) | TrackBack(0) | 音楽

2022.08.12

「輪廻交響楽」芸能山城組

d047568cb0c1266a4584a2f6163ddfced0ab0a61.58.9.9.3.jpeg

聴いてみた、日本の音楽グループ。1986年発表。

科学者としての本業を持つ傍ら、別名義で音楽活動もする「山城祥二」。「芸能山城組」は山城を中心に1974年、日本でのケチャ上演をきっかけに結成。多分野・大人数のメンバーで演奏される楽曲は、バリ島のケチャやガムランを始めとする、世界中の民族音楽要素を採り入れたもの。現在も不定期的に活動中。

で代表作は言わずと知れた、アニメ映画「AKIRA」での音楽。実は製作前に大友監督から、本作の曲を使いたいという打診があったとの事。結局は新曲が作られた訳だけど、もし本作から使われていたら…という興味があって聴いた。

実際AKIRAを思わせる曲も多く、成る程という感じだが…実は本作中にはアクション場面に合いそうな音楽がないので、映画の印象も変わっていたかも。メロディが弱い浮遊感のあるエレクトロ系の楽曲は、MuslimgauzeやShinjuku Thief等を輩出した、Extremeレーベルを連想した(…知ってる人いなさそう)。
posted by ぬきやまがいせい at 22:19 | Comment(0) | TrackBack(0) | 音楽

2022.08.11

「The sinking of the Titanic」GAVIN BRYARS

532.jpg

聴いてみた、イギリスの現代音楽作曲家。2014年発表。

「ギャヴィン・ブライアーズ」は1943年、ヨークシャーのグールで誕生。シェフィールド大学で哲学と音楽を学んだ後に、ジャズ・ベーシストとして活動を始めた。その後は主に作曲家として作品発表を続け、特に「タイタニック号の沈没」は彼のライフワークとも言える題材で、数度に渡って録音を行っているとの事。

特に有名なのは、1975年にBrian EnoのObscure Recordsよりリリースした最初の録音で、この作品でBryarsは世界的に知られる。タイタニックが沈没する際、同船の楽団が演奏を続けたというエピソードを元にした作品で、大変優れたコンセプトだが…同じ題材で他にも誰か曲を作ってた気がする。誰だっけ?

本作は2012年に行ったツアーで収録したライブ…実は1975年版と、間違えて買ったんだけど。本作もBryars自身のベースによるドローンを中心とした演奏で、物悲しい中に抒情的なメロディーを織り込んだ楽曲は、大変素晴らしい。
posted by ぬきやまがいせい at 23:12 | Comment(0) | TrackBack(0) | 音楽

2022.08.09

「Sweeter than the day」WAYNE HORVITZ

Sweeter_Than_the_Day.jpg

聴いてみた、アメリカのピアニスト/現代作曲家。2001年発表。

「ウェイン・ホーヴィッツ」は1955年、シアトルにて誕生。1980年代にJohn ZornのNaked Cityに参加した事で注目を集める。その後も演奏者としてだけでなく、オーケストラや演劇用の作曲といった幅広い分野で活動を行っている。

本作はピアニストとしてのリーダーズアルバムで、Timothy Young(g)、Keith Lowe(b)、Andy Roth(dr)というメンバーと共に…まあジャズをやっている。ただ編成を見れば判る様に「管」が入っていないので、いわゆる暑苦しい感じのジャズではなく、彼の作品らしいノンジャンル・境界的な作風となっている。

中でもアヴァンギャルドに振れた演奏は、フリージャズと言うより現代音楽、あるいは前衛ロック的な即興と言えるかも(Naked Cityの同僚Fred Frithの、Henry Cowでの感覚に近いというか)。まあ個人的にはそういう方が取っ付きやすいのだが、その他の曲での演奏はもっと(一般的な意味で)聴きやすいと思う。
posted by ぬきやまがいせい at 23:02 | Comment(0) | TrackBack(0) | 音楽

2022.08.03

「Chorbuch Les inventions d'adolphe sax」MAURICIO KAGEL

025091019120.jpg

聴いてみた、アルゼンチンの現代音楽作曲家。2012年発表。

「マウリシオ・カーゲル」(現地語表記: mauˈɾisjo ˈkaɣel)は1931年、ブエノスアイレスで誕生。1957年に西ドイツのケルンに移住し、Herbert Eimertが設立した(世界初の電子音楽スタジオとして知られる)「ケルン電子音楽スタジオ」で音楽の制作を行った。その後もドイツで活動し、2008年にこの世を去った。

本作は彼が2007年、ネーデルランド室内合唱団とラッシャー・サクソフォン四重奏団の演奏で録音したもの。内容としては、いかにも現代音楽の声楽曲といった感じを想像すればいい。自分はプログレ者なので、Opus Avantraみたいかな…と思ったけれど、取っ付き悪い「Strata」よりもっと取っ付き悪かった。

Kagelは実は「ハプニング」系の作品で有名。楽譜上「指揮者が倒れる」とか「楽器に飛び込む」という指示があったり。本作は晩年の作だけに純音楽的だが…写真を見ると演奏者が変な帽子をかぶってる辺り、やっぱり変ではある。
posted by ぬきやまがいせい at 22:30 | Comment(0) | TrackBack(0) | 音楽

2022.07.29

「Music for films」ELENI KARAINDROU

51ik7kqwEcL._AC_.jpg

聴いてみた、ギリシャの現代音楽作曲家。1991年発表。

「エレニ・カラインドルー(現地語表記:Ελένη Καραΐνδρου)」は、1941年にティヒオで誕生。ギリシャ音楽院でピアノと作曲を学び、留学先のパリでは民族音楽を研究した。ギリシャに帰国してからはテオ・アンゲロプロス監督の作品を始めとして、多くの映画音楽を手掛けているとの事。…ちなみに女性の作曲家。

本作はそのアンゲロプロス作品から、「シテール島への船出」「蜂の旅人」「霧の中の風景」という3作の音楽を収録している。1984年の「シテール島」以降、遺作「エレニの帰郷」(2009年)まで全ての作品で劇伴を担当しており、実際本作を聴くとテオ作品の掛け替えのない一部として、思い起こす事が出来る筈。

逆に言えば3作から収録しているのに、何で全部の曲調が似た印象なんだとは思ってしまうけれど。とは言えぼんやりと霧に煙った情景や、曇天の淡い光を思わせる音楽は、アンゲロプロスの印象そのまま。そのままに胸を締め付ける。
posted by ぬきやまがいせい at 22:26 | Comment(0) | TrackBack(0) | 音楽

2021.04.09

「Anatomías」LUIS DE PABLO

cover-large_file.jpg

聴いてみた、スペインの現代音楽作曲家。2019年発表。

「ルイス・デ・パブロ」は1930年、スペインのビルバオで誕生。12歳から音楽を志し、ほぼ独学で作曲家となった。Pierre Boulezや武満徹の評価もあり(「風の道」という曲は武満に捧げられている)、世界的な知名度を獲得した。

とは言えスペインの現代音楽というのは、(筆者もだけど)やはりそれ程知られている訳ではないらしい。だからDe Pabloの活動を説明するのなら…ビクトル・エリセの映画「ミツバチのささやき」で音楽を担当した人というのが、最も通りがよさそう。ぶっちゃけどんな曲だったか忘れたけれど、すごい事は伝わる筈。

本作は1979年から2007年にかけての3作品を、Zahir Ensembleの演奏で2010-2012年に録音。多分室内楽曲だと思うけど…無調で点描的な内容ながら(個人的にはVarèseを連想)それなりの規模の編成なので、やはり聴きやすいな。ミツバチもスペインも関係ない気がするものの、カッコいい音楽だ。
posted by ぬきやまがいせい at 21:09 | Comment(0) | 音楽

2021.04.08

「Patterns in a chromatic field」MORTON FELDMAN

61kuJ2NgXrL._SX355_.jpg

聴いてみた、アメリカの現代音楽作曲家。2019年発表。

「モートン・フェルドマン」は1926年にNYで誕生、作曲を学んだものの意見の相違から周囲と対立。そんな頃John Cageと接触し、彼の周辺で活動を行う中「図形楽譜」を世界で最初に用いた。この画期的技法はCage始め、世界中で広く受け入れられる。その後も作品発表を続けるも、1987年にこの世を去った。

本盤収録の表題曲は1981年に発表された作品で、Antonis AnissegosのピアノとMathis Mayrのバイオリンチェロによる二重奏で、2016年に録音されたもの。まあ要は80分近く2人だけで演奏してる訳だが…ピアノがポロンポロン、バイオリンチェロがキーキー。一言でいえばそんな感じのが延々続く、そりゃ延々と。

無調でリズム感も乏しく、まさに現代音楽…という晦渋な楽曲。Feldman本人は図形楽譜を70年代既に放棄してしまったので、本作では用いていない筈だが、確かにこういう単調な曲には向いてない技法だと思う。嫌いではないけど。
posted by ぬきやまがいせい at 22:56 | Comment(0) | 音楽