2025.01.29

「別冊ベストカー / The 重建機」三推社、講談社刊

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読んでみた、日本の出版社による自動車雑誌別冊/ムック。2003年発表。

建築・土木作業用の特殊車両である建機の中でも、特に巨大なものを「重建機」と呼ぶ。本書では巨大ブルドーザーや巨大トラックを始めとする重車両を始め、クレーンやシールドマシンといった大規模建機類を紹介していく…という内容。

先日紹介した「The 建機」が全般的な内容なのと違い、本書では巨大建機に絞って採り上げている。まあ海外には有名な「バケットホイール・エクスカベータ」を始め尋常じゃない代物があるけど(日本メーカーも建造はしている)、国内でもこんな家みたいな大きさの車両が走り回っているというのにはワクワクする。

本書では六本木ヒルズの建設に使用された「クライミングクレーン」や、シールド工法を詳細に解説している辺り興味深い。…多分興味深い人もいるだろう、自分はそんなにシールドマシンに興味津々な人っているのかな?、と首を傾げたけれど。とは言え各車両の内部や細部等、写真も多く掲載されており楽しく読める。
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2025.01.28

「別冊ベストカー / The 消防車」三推社、講談社刊

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読んでみた、日本の出版社による自動車雑誌別冊/ムック。2001年発表。

火災の発生に対して、現場に急行し消火や救助活動を行うのが「消防車」。ポンプの力で強力な放水を行うポンプ車に、ハシゴを伸ばして高所の火事を消火するハシゴ車等。そうした代表的な車両に加えて、水上火災に対応する消火艇やヘリコプターといった、機材の側面から消防活動を紹介していく…という内容。

ハシゴ車はハシゴ車でも、ハシゴが途中で曲がって高所の障害を乗り越えて放水する「先端屈折型」というのが、トピック的に紹介されている。刊行当時の最新式だったという事だろうけど…その存在を、自分は今回初めて知った訳で。

それ以外にも多種多様に、機能分化した車両が見られて面白い。あんまりにも多様なので、見ただけではよく判らんな…と思ったものの、安心ですよ。車体の横に大抵は「水難救助車」「原子力災害対策車」(物騒だな)といった、名前がちゃんと書いてあるので。しかし意外に、ウニモグの採用が多いのも興味深い。
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2025.01.26

「別冊ベストカー / The 特装トラック」三推社、講談社刊

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読んでみた、日本の出版社による自動車雑誌別冊/ムック。2001年発表。

通常のトラックに、特殊用途の装備・機能を加えた「特装トラック」。コンクリートミキサー車やタンクローリーにクレーン車といった、様々な業務に携わる多数の車両を、カラーのグラビアや企画記事等により紹介していく…という内容。

上記の様な車両は「特装」として判りやすいけれど、元々はトラックなので何らかの物品を運ぶ為のものがやはり多い。特に冷凍車なんか結構紙幅を割いて解説している…まあ、どんだけ読者需要があるものかはよく知らない(ミキサー車のグルグル回る部分の仕組みとかなたら、個人的には面白いと言えるのだが)。

とは言え相当に多彩な車両を紹介しているので、今後道端でそうした車両が作業している場面に出会ったら、じっくり見てしまうかもしれないな。…ちなみにバキュームカーも載ってはいるものの、(カラーではなく白黒で)扱いが小さい。まあイメージの問題…という以上に、近年では出番が減ったからかもしれない。
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2025.01.25

「別冊ベストカー / The 建機」三推社、講談社刊

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読んでみた、日本の出版社による自動車雑誌別冊/ムック。2001年発表。

ブルドーザーやクレーン車といった、建設・土木作業に用いられる特殊車両が「建機」。本書はその威容に目を見張る巨大車両を中心に、国産・外国産の建機をカラー写真や各種データ、雑学エピソード等から紹介する…という内容。

NHK‐BSで「ウルトラ重機」って番組がだいぶ長く続いているのを見るに、結構人気あるんだろうなというこのジャンル。ただ本書では国内での取材が中心なので、まあ海外の途方もない巨大機械よりはスケールが落ちる。とは言え、日本に存在する様々な車両が一堂に見られるという辺り、大変読み応えある一冊。

まあこのムックも結構前の刊行なので、最新の機種が判る訳ではないものの…基礎知識・用語や蘊蓄などは、ちょっと自慢したくなるのも多い(ユンボの語源とか。なんだショベルカーの方が正式名称なんじゃない)。多くは一般道を走る為の車両ではないので、身近とは言いがたいけれど、大変に興味深いものです。
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2025.01.23

「別冊ベストカー / The TRUCK ザ・トラック」三推社、講談社刊

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読んでみた、日本の出版社による自動車雑誌別冊/ムック。2000年発表。

身近なものとして日頃目にしていながら、一般ドライバーや自動車愛好家にもその実情を殆ど知られていない「巨大トラック」。本書はそうした各メーカーの大型トラックを、様々なデータや雑学と共に紹介していくムック…という内容。

まあ結構古い本ではあるので、紹介されている各車種の情報自体は正直あまり活用しようがないかも。なので総論的なデータや蘊蓄が読めればいいかなと。…トラック関係のそうした豆知識として有名な「トレーラーではハンドルを逆に切る」とか「キャビン屋根のランプは速度を表す」とか、当然のごとく載っていた。

でも印象としては、巨大トラックも運転するだけなら普通乗用車とそんなに変わらないのでは?、というイメージだったり。まあ軽い読み物としてのムックで、そんな判った様な気になられても…という話ではあるが。しかし空港や自衛隊の特殊車両も載っていたけど、これトラックじゃないよね?、というのもチラホラ。
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2025.01.14

「Racing on No. 446 / コスワース」三栄書房刊

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読んでみた、日本の出版社による自動車雑誌/ムック。2010年発表。

1958年に創業した、イギリスのレーシングエンジン・ビルダーが「コスワース」。同社は特に1960〜1980年代のF1レースで、名機「DFV」エンジンの供給により一時代を築いた。本書では、コスワースの歴史を解説する…という内容。

DFVエンジンはフォードからの支援を受けて開発されたので、「フォード・コスワース」と車名に付けられる事が多い。でも下位チームだと体面から(?)単に「コスワース」だったという話に苦笑。…とは言えそうしたプライベーターにも安価で手に入った上に高性能というDFVは、まさに歴史を作ったエンジンだと言える。

本書はDFV搭載マシンだけでなく、エンジン部品の展開写真なども載っていて楽しい。…まあ個人的にリアルタイムだと正直DFVの印象は余りなく、後継の「DFR」の名前ならフジTVの中継でよく聞いていた(中嶋悟の愛車ティレルに搭載されていたし)。レースエンジンの歴史とか好きなので、ためになりましたな。
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2025.01.12

「Racing on No. 489 / グループCクロニクル vol.4 ランチア&プジョー」三栄刊

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読んでみた、日本の出版社による自動車雑誌/ムック。2017年発表。

1980〜1990年代にかけて開催された、プロトタイプカーによるレースカテゴリ「グループC」。同シリーズにはラリーで有名なランチアや、プジョーも参加していた。本書はそれら2チームの活動を中心に紹介していく…という内容。

自分はラリーランチアのファンではあるけれど、サーキットでの活動も知っておきたかったので。ランチアが同カテゴリで出走したのは「LC1」と「LC2」という2車種。そのうちLC1は、開催間もないグループCが参加チームの少なさから、特例的に前身の「グループ6」レギュレーションの車でのエントリーも認めた。そのルールを逆手に取った車体なので、厳密には違うという(説明が難しいなあ…)。

まあとにかく比較的マイナーな存在の車を特集してくれた、大変ありがたい本。フィオリオはラリーが本命でこっちはおまけ、とか言ってたしマイナーなのも仕方ないのか。プジョーの話も併せて、面白く読めるのではないでしょうか。

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2025.01.11

「LanciaとGr.Bの時代」学研プラス刊

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読んでみた、日本の出版社によるビジュアルムック+DVD。2006年発表。

WRCで前人未到の6年連続、マニュファクチャラー優勝を成し遂げたイタリアの自動車メーカー「ランチア」。本書では伝説的な「グループB」の時代を、解説記事や写真と共に、DVD収録の貴重な映像から回顧していく…という内容。

自分はラリーランチアとグループBのファンなので、こういう本があったら迷わず買ってしまうよ。しかも本書には80分もの映像が入ったDVDが付属しているので、マストバイでしょう。…ランチアのラリー車両はいつ見てもカッコよくてしびれてしまいますが、他チームグループB車の映像や解説もあって仲々よいです。

そう言えば今年からランチアが、長年途絶えていたラリー競技に復帰するそうで。ただイプシロンという車種は意外な事にFF…これを聞くと、WRCトップカテゴリには出ないのかなあという気が。とは言え実は、ラリーランチア初期の名車「フルヴィア」がFFなのだそうで、そこに回帰したと考えると結構感慨深いかも?
posted by ぬきやまがいせい at 12:06 | Comment(0) | TrackBack(0) | 読書

2025.01.09

「RALLY CARS Vol.27 / DATSUN 240Z」三栄刊

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読んでみた、日本の出版社による自動車雑誌/ムック。2021年発表。

1970年代、海外のラリーに打って出た日産。日本メーカーでは初のサファリ優勝に加えて、WRC初勝利を成し遂げた車両が「240Z」。本書は同車の写真や関係者インタビューから、栄光の名車・240Zを振り返っていく…という内容。

サファリ優勝というイメージが強いので、自分は赤黒の240Zラリー車両を「サファリカラー」と呼んでいた。でも実際にはモンテカルロ始め、他のラリーでも出走していたという。参加大会数を絞った事もあって、その印象になったんじゃないかな。仮に全戦出場していたら…というifは、今でもファンの話題に上る模様。

ラリー車両としては、240Zは大振りで不利だった…と聞くと意外だったものの、実際当時最強のA110の方がはるかに小さい。でもラリーの240Zは(貴婦人の名に反して)ごつい所がいいんじゃん。そのせいか(?)本書でも、240Zの事を「悪魔」と言っててちょっと笑った。くるおしく、身をよじらせてたに違いない。
posted by ぬきやまがいせい at 03:12 | Comment(0) | TrackBack(0) | 読書

2025.01.08

「RALLY CARS Vol.26 / TOYOTA CELICA TURBO 4WD」三栄刊

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読んでみた、日本の出版社による自動車雑誌/ムック。2020年発表。

1990年代のWRC「グループA」に参戦し、トヨタに日本チーム初のマニュファクチャラーズ優勝の栄冠をもたらした「セリカ GT-FOUR ST185」。本書は実車レース写真や関係者インタビューにより、同車を解説していく…という内容。

「ST185」は市販の「T180型」をベースに開発された競技用車両。「GT-FOUR」と呼ばれるセリカの中では、「ガンダム GT-FOUR」の元ネタとして印象が強い(…強くないか、そんな事言うのガノタだけだな)。個人的にはランチアのワークス撤退による、ドライバーの移籍やなんやらで因縁深い辺りが興味深く読めた。

ランチアとの関係と言えば本書は、本来デルタの特集として予告があったので予約したというのに、何故かこの本が発売されたという。通販で届いてしまったのでまあいいかと。奇妙な因縁がこんな所でも発揮されたのかもしれない。…とは言え内容は面白く、次代「ST205」でのドタバタ前の栄光だけにやはり良い。
posted by ぬきやまがいせい at 08:45 | Comment(0) | TrackBack(0) | 読書

2025.01.06

「RALLY CARS Vol.34 / ALPINE-RENAULT A110」三栄刊

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読んでみた、日本の出版社による自動車雑誌/ムック。2023年発表。

ルノーの市販車をベースに、FRP製のモノコックボディ等の改造を加えた競技用車両が「アルピーヌ A110」。ラリー等で目覚ましい活躍を見せ、特に1973年に初開催されたWRCで最初のマニュファクチャラー・チャンプとなった。本書は同車を貴重な写真や、関係者インタビュー等から解説していく…という内容。

ラリーで凄かったという知識はあっても、具体的な戦績は本書で初めて知った。A110を好きになったのは子供の時分だったし、単純にすごくカッコよく感じたからなので…実は気にした事がなかった。でもやっぱり、強いと嬉しいよね。

興味深いのはA110大勝利の翌年には、ランチアがストラトスを投入してWRCを席捲してしまう辺り。まさに鮮やかすぎる世代交代なのだが、どっちの車両も好きなので、もし当時を知っていたら複雑な気分になったかもな。…とは言え本書は、馴染みのない時代の話だけに、興味深く読めるのではないでしょうか。
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2025.01.05

「CAR GRAPHIC選集 / ルノー&アルピーヌ」二玄社刊

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読んでみた、日本の出版社による自動車雑誌別冊。1991年発表。

1899年に創業したフランスの自動車会社「ルノー」。そして同社から派生したレースカー・ブランドが「アルピーヌ」。本書はその2社の代表的な車種を採り上げた「CAR GRAPHIC」誌の記事から、集成した別冊である…という内容。

古くは1963年から1990年までの、同誌らしい「ロードインプレッション」の記事が中心。なので特に興味のない車種は、正直読むのが億劫になった。…しかし自動車誌の試乗レポートというのは、昔から意識高い感じがする。淡々と自動車を解説してるだけな筈なのに、横文字だらけになってしまうせいかもなあ。

個人的なお目当ては「アルピーヌA110」だったのだけれど、分量としてはそこまででも(ミサトさんの愛車こと、A310の方が扱いが大きかったし)。とは言え同車の試乗記事というだけで、貴重だし興味深いものがある。…それ以外にもルノー・アルピーヌ両社の歴史も紹介してくれているので、仲々勉強になった。
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2025.01.03

「GP CAR STORY Special Edition 2022 / Gilles Villeneuve」三栄刊

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読んでみた、日本の出版社によるビジュアル・ムック。2022年発表。

フェラーリの伝説的なドライバーである「ジル・ヴィルヌーヴ」。本書は彼のF1デビューからその最期まで、当時の同僚や関係者のインタビューに歴代搭乗マシンの紹介等、現在も根強い人気を誇るジルの歴史を振り返る…という内容。

本書は息子のジャックを始め、関係者インタビューが記事の中心なので、「悲劇的」という伝説からばかり語られる事の多い、ジルのパーソナルな一面(普段からスピード狂すぎる)が窺える辺りがいい。加えて歴代マシンの紹介記事は、個々の車両に関する解説はそこそこながら、ずらっと見せられると仲々壮観。

個人的にジルと言えば「312T4」だったんだけど…本書でユニークなのは、タミヤ製1/12プラモデルの開発者にもインタビューしている辺り。しかも当時のタミヤニュース記事まで載せてるし。自分その号(因みに100号と104号)今でも持ってるわ。自分にとってジルのイメージが、312T4だった理由が今頃判った。
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2025.01.02

「幻燈辻馬車」山田風太郎著

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読んでみた、日本人作家による長編伝奇/時代小説。1997年発表。

明治。元会津藩士・干潟干兵衛は孫娘の雛を連れ、辻馬車業を営んでいた。そんな彼も自由党との関りから、度々危険な目に遭う事に。その時雛が呼ぶのは、既に死没した息子の幽霊で…という表題作と共に全4編を収録している。

「山田風太郎明治小説全集」として編まれたうちの2冊である本書。1975年に連載された本作は所謂「明治もの」と呼ばれ、当時の著名な実在人物(政治関係者だけでなく、坪内逍遥や森鴎外といった作家も盛りだくさんなのが面白い)が多数登場し、いまだ血腥い時代を舞台とした伝奇・活劇物語が展開される。

本書でユニークなのは、孫娘が呼んだら西南戦争で死んだ息子の幽霊が、血塗れの姿で出て来る事(更に息子が呼ぶと、やはり死んだ嫁まで出て来るし)。呼んだら出て来る系のヒーローか?、ダイヤモンドアイとかの。怪談と言うにはやけに即物的な扱いなのだが、それが陰惨な物語の中で救いにもなっている。
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2024.12.31

「完本 妖星伝」半村良著

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読んでみた、日本人作家による長編伝奇/SF小説。1998年発表。

歴史の裏面で暗躍して来た異能集団「鬼道衆」。江戸時代となって、彼らは長年待ち侘びた「外道皇帝」の誕生を察知する。ところがその謎めいた存在は同時に複数出現、しかもどうやらそれらは異星からの来訪者で…という内容。

1973年に連載が始まり、長い中断を経て1993年に完結した大長編伝奇小説。純粋な伝奇と言うより、伝奇的傾向の強い日本SF小説に先鞭を付けたという意義は大きい。「神州纐纈城」からの影響を出発点に、自由奔放に想像力を広げた上(前掲書とは違って)見事に完結させた点からして、実に大変な作品だ。

当初の活劇的内容もよいけれど…最終章で律義に伏線をまとめ上げ、仏教思想と宇宙論と生命観を独自の見解で綜合させた上、更にに突き抜けたスケールは実にもって法外。ここはやはり「SF」として、孤高の境地に達していると言うべきだろう。しかし長い…「完本」は文庫3冊だけど、流石に分厚過ぎるだろこれ。
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2024.12.29

「鳴門秘帖」吉川英治著

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読んでみた、日本人作家による長編伝奇/時代小説。1927-1933年発表。

江戸時代。幕府転覆の計略を探る為、阿波に隠密が送られた。虚無僧姿に身をやつす美剣士・法月弦之丞も、そうした1人。彼は10年前に囚われた隠密の娘であるお千絵を気に掛けつつも、危地へと身を投じるのだが…という内容。

1926年大阪毎日新聞で連載された著者の出世作。主人公も人気だったものの出番が少ないので、むしろ悪役や協力者の方が目立っている。しかも題名の「秘帖」は5/6過ぎて急に生えるし、「鳴門」も出はするけれど大して重要な場面でもないという。その場その場で盛り上がればいいという、新聞小説ならでは。

とは言え主人公が高らかに尺八を吹いて、悪役の前に颯爽と登場する演出はキカイダーかよと。加えて主人公が3人の女性から迫られるハーレム状態に至っては、ラノベ的でビックリ。人物の動機付けが色恋ばかりなのには閉口したものの、人間と言うのは昔からラノベ的なものが好物だったのだなあ…と納得。
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2024.12.28

「至福千年」石川淳著

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読んでみた、日本人作家による長編伝奇/時代小説。1967年発表。

幕末の激動のさ中。隠れキリシタンの集団はその混乱に乗じて、社会の大変革を画策していた。妖術を用いて下層階級の人々を操る加茂内記を筆頭に、様々な思惑を持った者達が歴史の裏側で暗躍する。そして遂には…という内容。

伝奇小説には違いないものの、幕末史の裏側ではこんな事もあったかも?、というif歴史小説といった趣き。妖術や予言、曰くありげな人物は登場するものの、正史から大きく逸脱する訳ではないので…スペクタクルや派手な立ち回りを期待したらアテが外れる(外れた)。まあ作者は文学者なんだから当然ではある。

殆ど会話してるばっかりじゃんという内容で、読みながら正直ヤキモキした。いや神州纐纈城と同じ、活劇を期待したのが間違いだった訳で。本書はむしろ、その江戸ことばを用いた語り(ビックリする程調子よく読める)を楽しむべきなんじゃないかな。それを最初から判ってたらな…「紫苑物語」とか好きなんだし。
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2024.12.26

「神州纐纈城(しんしゅうこうけつじょう)」国枝史郎著

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読んでみた、日本人作家による長編伝奇/時代小説。1968年発表。

武田信玄の家臣、土屋庄三郎昌春が手に入れた紅色の不思議な布。彼はその紅布の導きで、富士山麓に密かに築城された「神州纐纈城」の存在を知る。伝説でその布は、人血を絞って染め上げた物だというのだが…という内容。

1925年から翌年にかけて、雑誌「苦楽」で連載された本作。伝奇小説の大名作として名高いのだが、実は未完に終わっている。加えて行き当たりばったりとしか思えない筋運び、でもその奇想や奔放さが多くの人々を虜にして来た。三島が比較した谷崎の「乱菊物語」も未完だし、伝奇には未完が似合う…のかも?

大勢の人物が入り乱れ(上ではああ書いたけど、主人公っぽいのは陶器師か)、終いには本筋がよく判らなくなってしまう。作者がコントロール不能になってぶん投げたのも仕方ない。でも逆に言えば、そのとんでもない熱量のまま物語が閉じると言う…半村良の言う「未完の魅力」というのは、確かにあるなあと。
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2024.12.25

「南総里見八犬伝」曲亭馬琴著、小池藤五郎校訂

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読んでみた、日本人作家による長編伝奇小説/読本。1990年発表。

室町時代。南総里見家の伏姫と飼犬・八房との因縁を受け、霊玉を携えて誕生した8人の「犬士」達。姫の守護と宿命の導くまま、やがて集結する八犬士だが、彼らの行く手には常に試練と絶えざる敵との闘いがあって…という内容。

1814年から28年を掛けて執筆された、江戸時代を代表する大長編。馬琴はその間失明という困難に遭いながらも、完結を諦めなかったのには感服する。本当に面白く、日本が世界に誇る素晴らしい作品だが…当初の血沸き肉躍る伝奇冒険小説から、いつの間にやら軍記物へと、テイストが変わってしまうのがな。

あと素藤が登場した辺りから、八犬士の出番が激減してしまうのも。犬士がいないと実につまらなくなるのだけれど、だからって親兵衛ばかり出て来られても、どうにもいけ好かない。…といった様な自分の印象は、最終巻の内田魯庵による解説にそのまま書いてあって、ああ皆な昔から同じ様な感想だったんだなと。
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2024.11.23

「まぼろし小学校 / 昭和B級文化の記録」串間努著

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読んでみた、日本人著者によるノンフィクション。1996年発表。

「昭和時代の小学校生活ってどんなだっけ?」という疑問を抱いた著者が、アンケートや取材を元に当時の子供文化をまとめた1冊。文房具に給食、掃除や遠足等々という、小学生に欠かせなかったあれこれを回顧する…という内容。

大変な労作。案外類書が存在しないという意味でも、貴重な記録となっている。…ただ個人的には9割の内容はピンと来なかった。昭和と一口で言っても長いし、自分は結局そのうちの6年間しか(しかも狭い範囲での)体験しかしてない訳で。懐かしいよりもむしろ、自分と違うんだなあ、という印象の方が強かった。

あと当時流行ったアイテム等を、販売会社に取材する辺り凄いけど…その社の沿革を長々書かれてもな。加えてアンケートの文章をそのまま掲載していたり、読み物としては正直なんだなって。まあ律義に全部読もうとしたからこの感想なのであって、自分にヒットする話題だけつまんで読むのがいいんじゃないかな。
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