2025.12.15

「Uボート・エース」J・ヴァウス著、雨倉孝之訳

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読んでみた、アメリカ人著者によるノンフィクション/戦記。1990年発表。

第二次世界大戦中、ドイツ軍が通商破壊作戦に投入した潜水艦群「Uボート」。本書は中でも多大な戦果を挙げて、「エース」と呼ばれた潜水艦艦長である「ヴォルフガング・リュート」を中心に、Uボートの戦いを紹介する…という内容。

エースとしては彼よりも更に多くのトン数を沈めた、オットー・クレッチマーという人がいるけれど…捕虜になった為、実は1年と少々での戦果。リュートも戦争後半は教官となったのに加えて、U-43の艦長時に自艦を母港停泊中にミスで沈めてしまって暫く謹慎していたという。そうした不名誉な話も、むしろ面白い。

艦長としては乗員を「褒めて伸ばす」系の指導者で、艦内の催し等から士気を上げる事に長けている辺り、日本の潜水艦戦記を読んだ印象とは違うなあって。…でもそういう人がドイツの降伏直後、悲劇的な死を遂げたというのだから謎めいている。本書はそうした複雑な人物像と共に、Uボートを広く知られて良い。
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2025.12.14

「戦艦対戦艦」三野正洋著

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読んでみた、日本人著者によるノンフィクション/戦記。1994年発表。

数万トンの船体に巨大な砲を搭載し、海上を征く鉄の城「戦艦」。だが第二次大戦を最後に、世界から消え去る運命を迎えた。本書では戦艦同士が行った代表的な戦いや豊富なデータにより、最強の兵器・戦艦を解説する…という内容。

割と雑学本に近いけれど、ドレッドノートの登場から湾岸戦争に投入されたアイオワ級までの歴史。加えて各国の戦艦の諸元や来歴等の情報等、案外幅広く深い内容。でも航空機=空母の台頭による戦力外化といった景気の悪い話は、綺麗に避けているので…まあ偏っていると言えば、相当偏っているのは確か。

何も出来ずに終わった多くの艦に較べたら、フッドを沈めたビスマルクはむしろ幸運だったのかも?、と思えたり。…本書はマニア(著者自身を含む)が面白がれるものとして書かれているので。大和とアイオワどっちが強い?、なんて今時小学生でも気にせんわという与太話でも、大真面目に検討してるのが楽しい。
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2025.12.12

「ポケット戦艦」T・クランケ、H・J・ブレネケ著、伊藤哲訳

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読んでみた、西ドイツ人著者によるノンフィクション/戦記。1958年発表。

ドイツが第二次大戦中、通商破壊作戦に投入した「ポケット戦艦」ことドイッチュランド級装甲艦。中でも最大の戦果を挙げたのが「アドミラル・シェア」で、本書は1940年から翌年にかけての戦闘航海を記録したもの…という内容。

で著者の1人テオドール・クランケが、その際の艦長。同艦は1945年の終戦直前、空爆を受け沈没したが…本書では華々しい活躍と共に、騎士道精神に溢れた人々の振る舞いが読める。特に当事者らしい詳細な語り口ながら、臨場感の割に悲壮感が無いのは特筆したい。戦記なのに安心して読めるのはよい。

通商破壊なんて言ってしまえば、非軍艦に対する弱い者イジメなのだから、その辺仁義は通していてほしい…と内心で希望していた通りという所もあるし。同時期には同型艦シュペーや戦艦ビスマルクの悲劇も一方であった訳で、本書の様な冒険小説もかくやという戦場もあったというのは、なんかいいかもね。
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2025.12.11

「巨大戦艦ビスマルク / 独・英艦隊、最後の大海戦」ブルカルト・フォン ミュレンハイム=レッヒベルク著、佐和誠訳

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読んでみた、西ドイツ人著者によるノンフィクション/戦記。1980年発表。

第二次大戦中にドイツが建造した、巨大戦艦「ビスマルク」。イギリス艦隊との激しい戦闘を行った同艦で砲術士官を務めた著者が、ビスマルクの誕生からその悲劇的な最期までを、乗組員の視点から詳細に描いていく…という内容。

ビスマルク就役は1940年8月だが、初陣「ライン演習作戦」に出撃したのが1941年5月18日。そして沈没は同月27日だというのだから、本書の内容も激動と言うか慌ただしいのなんの。姉妹艦のティルピッツが3年程は健在だった事を思うと対照的だが、英戦艦フッド撃沈という語り草な戦果のある点も対照的だ。

本書は当事者ならではの記述で、苦境に際した海兵の嘆き(操舵不能の為、早くから絶望的状況が認識されていた)や、救助から見捨てられた多数の乗員の姿などは胸が苦しくなる。通商破壊作戦自体が無謀だった訳ではないし、やはり悲劇的ともいえる不運。…ビスマルクはまさに「悲劇の艦」の名に相応しい。
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2025.12.09

「欧州海戦記 / ヨーロッパ列強 海の主役22隻の航跡」木俣滋郎著

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読んでみた、日本人著者によるノンフィクション/戦記。2000年発表。

日本が太平洋を舞台に行った大規模な戦闘とは、また一味違うのが欧州における海の戦い。本書ではジュットランドから戦艦ローマの撃沈まで、ヨーロッパの各国が第一次・第二次大戦で行った、22の海戦を紹介していく…という内容。

本書は1988年に「撃沈戦記」の題で刊行されたものの文庫版。航空機による戦闘が中心の太平洋とは違い、艦砲による砲撃戦が多く紹介されている(でもローマは世界初のミサイル攻撃による戦没)。華々しい戦艦の戦いだけでなく、通商破壊戦に投入された比較的小規模の艦艇の知られざる逸話など興味深い。

独戦艦ビスマルクも登場するけれど、どちらかと言うと撃沈された戦艦フッドの方にフォーカスしてたり。フランス軍艦の戦いも肝心のドイツ相手ではなく、降伏後の連合国相手だったりと…「海戦」という言葉から連想される勇壮なイメージばかりでなく、戦時における数奇な物語として読めるのが、よいのではないかと。
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2025.11.02

「もののあはれ / ケン・リュウ短篇傑作集2」ケン・リュウ著、古沢嘉通訳

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読んでみた、中国系アメリカ人作家によるSF小説短編集。2017年発表。

小惑星衝突による人類絶滅を逃れ、他恒星系へ向けて飛行する宇宙船。ところが船の太陽帆が破損し、このままでは目的地に到着出来ない。危険を負って修理を敢行する主人公は…という表題作を含んだ、全8編が収録されている。

近年盛り上がりを見せる中国SFで、一早く注目された著者による短編集。アメリカ在住という事で英語による執筆との事だが、中国や(日本を含む)東洋文化を作品に採り入れており、独特の感性が目を引く。本書でも漢字や俳句、「もののあはれ」といった日本的な興趣がSFとして昇華されており、見事な出来栄え。

悲劇とも言い切れない(勿論西洋的な楽天主義とは全く異なる)「無常観」とでも呼ぶべき感覚で通底しており、読む者の心を締め付ける。ただ下手すると、説教臭いと感じてしまう面もあって…だからなのかな、比較的ハッピーエンドと言える「良い狩りを」の人気が高いのは。でも個人的に、表題作は本当に好きだ。

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2025.10.27

「わが愛しき娘たちよ」コニー・ウィリス著、大森望他訳

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読んでみた、アメリカ人作家によるSF小説短編集。1984年発表。

社会的担保の為に男性は「信託子」という遺伝上の子供をもうけるも、愛情も交流すら持たない時代。全寮制学校の女生徒・タヴィは、男子生徒達が奇妙なペットを飼っていると知り…という表題作を含んだ、全12編が収録されている。

表題作は発表後アメリカで賛否両論、フェミニズム的面から激しい議論が起きた。と解説にはあるけれど、個人的には…当時の日本の若者言葉(プッツンだのタカビーだの)を採り入れた訳文体が、余りにも強烈で内容が頭に入って来なかった。自分が上記論題に、何か言う資格があるとも思わないし…まあいいや。

本書は状況設定こそSFの要素はあるものの、そこで描かれるお話自体は一般小説的。だからSFはまずアイデアでおっと言わせてくれよ、と思う自分には正直ピンと来ない。とは言えSFはかつて、ラジカルな主張を含んだ表現分野でもあった…そうした文学的先端としてのSFを、懐かしむのにはいいかもしれない。
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2025.10.25

「ヴァーチャル・ガール」エイミー・トムスン著、田中一江訳

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読んでみた、アメリカ人作家による長編SF小説。1993年発表。

大企業家の父親と対立する、天才エンジニアのアーノルド。彼はAIが違法とされる中、自身の理想を形にした少女型ロボット「マギー」を完成させる。2人が各地を転々とする中、マギーは自我を育み成長していくのだが…という内容。

女性型AIは最後に、イプセンの「人形の家」オマージュする決まりでもあるのかね。まあネタバレだけど、予め知っていた方がいい気はする。マギーの反逆が唐突(読者しか知らない筈の情報まで知ってるかの様)なのに加えて、女性作者らしいフェミニズム思想が滲み出ているので…正直好き嫌いが別れるから。

現在の実際の(ネットの情報力ありきという)AI事情を鑑みると、本作の「AI禁止法」下ならではのマギーの成長はドラマチック。でもその後の展開を見たら、やっぱりAIは危険で禁止やむなしじゃんとなる。まあジェンダーやマイノリティ問題の置き換えなのも判るけど…今一つ釈然としないというのが素直な感想。
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2025.10.24

「無限アセンブラ」ケヴィン・J・アンダースン&ダグ・ビースン著、内田昌之訳

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読んでみた、アメリカ人作家による長編SF小説。1993年発表。

月の裏側に突如巨大な建造物が出現し、接近した宇宙飛行士が絶命。それは異星より飛来した「ナノマシン」によるもので、月面に滞在する人員が微細機械に汚染される事態にまで発展した。果たしてそれらの目的とは…という内容。

「ナノテクノロジー」を大々的に採り上げた、かなり初期のSF小説。何でも出来る(思考停止な)便利ガジェットとしてあっという間に広がってしまったけれど…作中でも言及している様にナノマシンをウイルス感染に準えたり、ナノテクの可能性や将来的な脅威まで見越したハードSF的内容は、今読んでも興味深い。

日本人なら「太陽の簒奪者」(1999年)を連想してもいいかも。ただ実は小説としてプロット上最大の脅威となるのは、非科学予言ババアや(ブラッドミュージックみたいに)アホな事する科学者だという。そういう辺り嚙み合わせが悪くて、もうちょっと座りがよく出来なかったもんかとは思うけど…面白い本なのは確か。
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2025.10.22

「ヴァート」ジェフ・ヌーン著、田中一江訳

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読んでみた、イギリス人作家による長編SF小説。1993年発表。

近未来のマンチェスターでは、仮想世界への扉が開くという「羽根」の形状をしたドラッグ、「ヴァート」が流行していた。スクリブルはヴァートの使用で別世界へと消えた妹・デスデモーナを取り戻すべく、奮闘するのだが…という内容。

音楽の街というイメージのあるマンチェスターを舞台にするだけあって、作者自身もパンクバンドのメンバー出身だそうで。でも内容はW・S・バロウズをギブスンの文体で書いたと言うか、「トレインスポッティング」のSF版とでも言うか(こっちはアイルランドだけど、原書の刊行は同じく1993年というのが興味深い)。

ストーリーと言っても本書の場合ずっとジャンキー生活が語られるだけで、謎の宇宙生物やら仮想空間やらのSF的なガジェット類も、全部バッドトリップの妄想にしか思えないのが困る(そういう辺りは、ディック「暗闇のスキャナー」辺りのフォロワー感も)。まあそれより、「不良小説」として読む方が楽しい気はするな。
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2025.10.21

「ターミナル・エクスペリメント」ロバート・J・ソウヤー著、内田昌之訳

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読んでみた、カナダ人作家による長編SF小説。1995年発表。

人間の「魂」の存在が科学的に検出され、世界は大騒ぎとなる。発見者のホブスンは更に研究を進めるべく、自分の人格をコンピュータ内に再現。ところがその3つある異った仮想人格のどれかが、殺人を犯してしまい…という内容。

ネビュラ賞受賞の本作。面白い…んだけど釈然としない、というのが正直な感想。と言うのも(ネタバレ?)主題となる殺人事件は別に、魂云々の話が無くても成立してしまう。事件の動機となるのは夫婦間の浮気問題だし…最終的に仮想人格研究も、魂の解明には何の役にも立ってなかった事が判って終わるという。

他にも色々とあって(何だよ不死人って)、どういうこっちゃと読み終えた後では思ってしまうものの…読んでいる間はグイグイ来られるので、楽しめたからまあええかと。…因みに本書で解説を担当するのは瀬名秀明。読んでいて「ブレイン・ヴァレー」を連想するなと思ったら、解説当時は同書執筆中だったらしい。
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2025.09.25

「流血の夏」梅本弘著

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読んでみた、日本人著者による戦記/ノンフィクション。1999年発表。

第二次世界大戦。フィンランドは1939年の「冬戦争」に引き続いて、1941年に再開された対ソ戦「継続戦争」に突入する事となる。本書では、1944年の終結までに起きた数々の戦闘を、詳細なデータと共に紹介していく…という内容。

同著者による冬戦争戦記「雪中の奇跡」(1989年)より続く、ソ芬戦争書籍が本書。今でこそWWUでのフィンランドの戦いに関する本も増えたけど、日本人著者による上記2冊の刊行は同国にとっても画期的だった模様。重厚とも単調とも言える内容だが、最後まで読むと感動してしまう辺り本当に素晴らしい本だ。

同戦争を広範に記述する内容ながら、実際に読んだ印象はまるで「V号突撃砲戦記」だなという活躍っぷり。勿論独から供与された車輛だけれど、何でV突が選ばれたのかは不明。でもひょっとしてその戦果=戦訓は、戦後(近い国情の)隣国スウェーデンが「Strv103」採用という形で反映させたんじゃ?、って。
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2025.09.24

「SS戦車隊」ヴィル・フェイ著、梅本弘訳

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読んでみた、ドイツ人著者による戦記/ノンフィクション。1990年?発表。

第二次大戦中。ナチス親衛隊には、ティーガー等の重戦車を運用する部隊が存在した。本書は戦車長としてティーガーUに搭乗した著者始め、当時の隊員の手記や戦闘報告から、終戦までのSS戦車隊の戦いを追う…という内容。

SSで重戦車大隊が設立されたのは1943年なので…本書では(ウクライナで行われた)第3次ハリコフ攻防戦から、1945年ベルリンの最終決戦までが描かれる。本書でもヴィットマンに触れているものの、まあ触り程度。中心は名も無き(あるけど)戦車兵達による決死の戦いの数々が、簡潔な筆致で綴られていく。

頁ごとに細かい注釈や写真が添えられ、内容を理解しやすい事もあって、(ヴィットマン物語みたいな英雄譚でなく)一介の兵士が戦場を見詰めた視線が窺えて、共感度が高いのではないかと。ティーガーUの様な強力な戦車に乗っていても、祖国の滅亡は止められないという無力感には、呆然とするものがある。
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2025.09.22

「ヴィットマン / LSSAHのティーガー戦車長たち」パトリック・アグテ著、岡崎淳子訳

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読んでみた、ドイツ人?著者による戦記/ノンフィクション。2000年発表。

「ミハエル・ヴィットマン」は第二次大戦中、ドイツ武装親衛隊の戦車長として、138輛もの敵戦車を撃破した事で知られる人物。本書はヴィットマンを中心に、彼の所属した「ライプシュタンダルテ」師団の戦いを紹介していく…という内容。

LSSAHとは「第1SS装甲師団 ライプシュタンダルテ・SS・アドルフ・ヒトラー」の略(長すぎるし、多分ヒトラーの名前は書名に入れたくなかったんじゃないか)。彼をよく知る隊員による証言や、当時の報道記事を介して、ヴィットマンの並外れた活躍を描いていく本書。それがまるで、英雄神話もかくやという華々しさ。

ところがヴィットマンの突然の戦死以降は空気がガラッと変わって同師団、そしてドイツが滅びへと向かう姿が淡々と綴られる。何だか三国志演義で、孔明までが舞台を去った後の物哀しさを思い起こさせる。でも大変詳細な資料を用いてティーガー、そしてティーガーU戦車の戦い振りを知る事が出来るすごい本。
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2025.09.21

「決定版[図説]ティーガー重戦車パーフェクトバイブル」学研刊

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読んでみた、日本の出版社によるビジュアルムック。2006年発表。

第二次大戦中、ドイツが開発した重戦車「ティーガーT」「ティーガーU」。88o砲を搭載して圧倒的な戦果を挙げた一方で、その巨大さ・過大な重量から運用の難しかった同車を、レストア写真や戦術研究等から解説する…という内容。

本書は「歴史群像」のムックシリーズなので、戦車専門誌や模型雑誌等とはちょっと切り口が違っているのが面白い。勿論歴史雑誌らしく「戦史」や、有名車長等の「関連人物」といった方面の紹介だけでなく、当時実際に独軍で配布された運用の手引き書、「ティーガーフィーベル」が復刻掲載されている辺りが目玉。

ティーガーを女性に擬人化して扱いを説明するという、妙なユーモア感覚が面白い。…それを抜きにしても、各型の解説や内部写真等ビジュアル的に楽しめていい。個人的にはティーガーを「自動車」の一種として評価するという解説は、意外とここまで踏み込んで考証したものを読んだ事がないので、唸らされた。
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2025.09.19

「世界の戦車メカニカル大図鑑」上田信著

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読んでみた、日本人著者によるビジュアルムック。2014年発表。

陸上兵器の主役「戦車」。本書は兵器研究家であり、(小松崎茂最後の内弟子だという)イラストレーターの著者によるモノクロ線画を中心に、世界各国の戦車の歴史やメカニズム、関連車輛の情報等も加えて解説していく…という内容。

本書は1997年、グランプリ出版より刊行された「戦車メカニズム図鑑」に増補加筆し、併せて版型も大きくした改訂版。戦車に関する広範な知識をひとまとめに綜合した、という意味で前掲書「世界の[戦車]がよくわかる本」にも近いけど…更に突っ込んだ解説と細密なイラストがメインなので、より見応えがある筈。

ただその増補したイラストが、やけにラフな感じなのが残念。写真だと昔の不鮮明な白黒銀塩と最新のデジタルカラーでは違いが出るので、イラストでタッチが統一される辺りが良かったのだが(あと解説文がどの絵を指すのか判りにくい、●じゃなく▲で示してほしい)。とは言え、その上で誰にでもお薦めできる良書。

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2025.09.18

「世界の[戦車]がよくわかる本」齋木伸生監修

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読んでみた、日本人監修者によるノンフィクション。2009年発表。

1916年、ソンムの戦いで歴史上初めて実戦に投入された「戦車」。その画期的な登場から現在まで、最も強力な陸上兵器の主軸として広く配備・発展して来た。本書では戦車の歴史と共に、各国の代表的車輛を紹介する…という内容。

ガルパンの水島努監督、お薦めの1冊という本書。実際入門書として広範な戦車に関する情報をコンパクトにまとめた上、案外マニアックな所にも目配りの効いた内容となっている。…ただ掲載された写真が小さく潰れているのは、モノクロ印刷の文庫なので仕方ない。その辺はネット検索等で補えばよいでしょう。

一部には「日本戦車びいき」との指摘もあるものの、自分の読んだ限りでは「〜だから仕方ない」的な苦しいフォローばかりしている感じ。その上で成る程なあ、と魅力の一端が感じられたらよいのでは。…本書は「10式」の配備前で流石に古い本と言わざるを得ないけれど、まあ「配備前だから仕方ない」。しつこい?
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2025.08.23

「白銀の墟 玄の月(しろがねのおか くろのつき) / 十二国記」小野不由美著

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読んでみた、日本人作家による長編ファンタジー小説。2019年発表。

人間界より十二国へ帰還を果たした、戴国の麒麟・泰麒。彼は阿選の謀反で荒れ果てた戴で、行方不明となった王・驍宗を探し求める。泰麒は協力者の元を離れ、かつて彼を害した阿選が座す、宮城へと乗り込むのだが…という内容。

小野による代表的シリーズ「十二国記」最新作、しかも長編としては18年振りの刊行となる。内容はシリーズ前の序章から持ち越した泰麒の行く末と、驍宗失踪の解明に戴国の激動が描かれる。…んだけどむしろ短編集「丕緒の鳥」から引き続いて、異世界・十二国で生きる人々が背負う苦難が、これでもかと。

ファンタジー飢饉ばかり書かれるのはしんどいなあ、しかも足踏みと無駄足の連続。まあ最後まで読んだら流石の面白さと思ったけど、重厚長大すぎて(もしホワイトハートのままだったら、こうはなってなかったんじゃないか)。…とは言え「魔性の子」から追ってきた物語が終わると思うと、感慨もひとしおではある。
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2025.08.21

「仮面物語 或は鏡の王国の記」山尾悠子著

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読んでみた、日本人作家による長編ファンタジー/幻想小説。1980年発表。

各所に「鏡」が配された鏡市で、死の間際の人間を粘土に写す彫刻師・善助は、己れが「影盗み」として恐れられる存在だと知った。人々の「たましいの顔」を暴き出す彼は、自らの作り出した粘土の分身に殺害されて…という内容。

著者の初長編だが、高く評価されながらも再刊を拒み続け(「〜作品集成」に中編リライト版「ゴーレム」は収録)、ようやく23年に復刊がかなった。印象としてはダークファンタジーかな?…でも巨大建築・ゴーレム・自動人形・ドッペルゲンゲル、といった幻想方面モチーフを、これでもかとばかりに盛り込んでいる。

ただどうも正直若書きと言うか、ちょっと張り切りすぎたという気持ちがあったのかも。…ジャンル的に幻想文学と呼ぶには現実との接点・対比視点が無さすぎで、足の裏が地面に一箇所も接していないかの様なフワフワ感は、正直好みではない。なのでやけに趣味の良い「ファンタジー」小説として楽しんだ感じ。
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2025.08.20

「拷問者の影 / 新装版 新しい太陽の書1」ジーン・ウルフ著、岡部宏之訳

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読んでみた、アメリカ人作家による長編ファンタジー/SF小説。1980年発表。

太陽が衰えつつある惑星・ウールス。独裁者が統治する共和国で「拷問者」となるべく修行中のセヴェリアンは、反逆者・ヴォダルスの命を助けた。そして高貴人の女性・セクラの自殺幇助をした為、追放される事となって…という内容。

著者の代表的シリーズ「新しい太陽の書」の第1巻。同作はファンタジーそのものといった内容として始まるが、SF的な世界設定を背景に持っている(らしい)。まあそれ自体は「パーンの竜騎士」だって同じだし、特段珍しくもないとは思うけれど…当初その事は伏せられ、次第に明らかになる辺りが注目点(らしい)。

まあむしろ(この記事では一応ネタバレに気を使ったけど)最初から知った上で、本書の今一つ要領を得ない説明描写を解明しつつ読む方がいい気がしたかも。ここ最近ファンタジーばかり読んで疲れ気味だったせいで、早くSFにならないかなと思いつつ読んでたのに…この巻は、最後までファンタジーだったという。
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